ガンダムビルドセーバーズ   作:地水

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 早速出来上がりました最初の第1話。

今回お送りするのは、この物語の主人公と鍵となるヒロインの出会い。

ガンプラファイトが普及したこの世界で、彼らの出逢いは何を起こすのか。


BATTLE:01 出逢、新たなる不死鳥 (前編)

 いくつもの情報が溢れている空間。

外部の情報端末から手に入れた数多のデータが集結しているこの場所で、『私』は目覚めた。

まるで過去の歴史の中で世界最大と謳われたアレクサンドリア図書館を彷彿とさせる情報量だ。

目の前に展開されているウィンドウモニターには、外の世界の光景が映し出された。

 

二ホンと呼ばれる極東の国、近未来的に発展した街並み、そこで行きかう人々。

その中でも『私』が目についたのは笑顔で遊ぶ子供達。

彼らはプラスチックでできた小さな人型の玩具を手にし、どこかへと向かっていた。

その先にあるのは、ショッピングモールと呼ばれる大型の商業施設であり、彼ら子供達が目指している場所だ。

彼らが中に入ると、そこに広がっていた光景は巨大な一体のロボットの立体像。

白を基調に赤、黄色、青のトリコロールカラーで彩られたその立体像に子供達は目を輝かせていた。

羨望と歓喜の秘めたその瞳を見て、興味を惹かれた私はこの有り余る情報網を使って検索を開始した。

自分の頭の中に思い浮かべて数秒後、すぐさま検索結果に辿り着き、その正式名称を口にした。

 

 

「ビギニング、ガンダム」

 

 

『ビギニングガンダム』。

世間一般でよく知られるRX-78-2ガンダムとは別の作品である『模型戦士ガンプラビルダーズ』で初登場したガンダム。

数多あるガンダム作品の中ではじめてガンプラを題材とした作品で、そこで登場したオリジナルの主役ガンプラであり、同じガンプラを題材とした後続作品である"ガンダムビルドシリーズ"のきっかけとなった始まりのガンダムでもある。

ここにあるのは体長10mにも及ぶ巨大立像のビギニングガンダム像であり、今開かれているショッピングモールでの目玉といえる代物だ。

その立体像を前にして子供達が見る目はまるで水晶玉のように輝いており、嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「……」

 

子供達が歓喜する様子を見て、『私』はどこか心が揺らいだ。

今まで動くことはなかったと思った内の中にある何かが動いた……自分の生まれた存在意義を考えると、何とも信じ難い現象だと思ってしまった。

何時からか、『私』は胸に灯ったこの情報の名前を無意識に探していた。

まるで人間の感情のようにざわつくこの何かを見つけるために、日夜情報を集めていた。

胸の内に響くこの情報の答えを、見つけるべく。

 

「あれ……あの人」

 

そんな最中であった、『私』はとある光景に視線を移した。

そこには、楽しく遊んでいる子供達に囲まれて何らかの作業をする一人の若い少年。

年は8歳から10歳くらい子供達と比べて年上……年齢的には15~16歳くらいの若さと推測する。

黒髪に青い瞳を持ったその少年は、大き目のスマホ型の情報端末ガジェット……ガンダムビルドクリエイターこと通称GBCを手に持ち、タッチペンのような工具を使って作業をしていた。

手慣れた手つきでGBCに映し出された立体モニターをタッチし、その中で起きていた障害(バグ)を修正していく。

瞬く間に直した彼は、笑顔を浮かべて渡した。

 

『はい、これで君のGBCは直ったよ』

 

『ありがとう!』

 

少年にお礼のあいさつを口にした後、子供達はすぐさまガンプラファイトを再開する。

嬉しそうに戦っている彼らの様子を見て、少年は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

まるで自分の事のように少年は笑っていた……。

その笑顔に、『私』は……鼓動が、唸ってしまった。

 

そこで、私は初めて自分が生まれたその空間(場所)から離れた。

会場にいるであろう黒髪の少年と、初めて出会うために。

 

 

 

~~~~

 

 

 

ガンプラファイト・イベント会場。

そこで会場のイベントスタッフとして未成年ながら手伝っている人物がいた。

黒髪青眼の少年――ジェイクこと『ジェイ・C・コードウェル』は来客のGBCやガンプラファイトに必要な筐体機材をメンテナンスしている。

自分にとっては朝飯前な事を行いながら、ジェイクは一息つく。

 

「ふぅ……こうしてGPFが流行ってるのはいいことなのかな」

 

ジェイクは近くで賑わっているGPFの光景を見ていた。

そこではいくつもの仮想空間が球体上のホログラフに映し出され、その電脳空間で映し出されていた。

 

一つは飛行機に手足を取り付けたような白を基調とした機体・ガンダムアブルホールが壮絶怒涛な飛行を魅せながらミサイルサーカスを取り入れ、長距離砲を備えた重火器武装メインに変えたMSズサと撃ち合っている。

 

一つは燃え盛る炎の中、モスグリーンに赤く塗装された肩武装を持つザクフリッパーが、無数のザクウォーリア達を上手に捌いていくという硝煙と火薬の薫り漂う光景。

 

一つは本来のカラーから黒鉄色に染められた大型モビルスーツ・ガンダムトライオン3が両腕を射出する攻撃・アームドブースターを飛ばし、ν(ニュー)-ジオンガンダムとぶつかり合う。

 

三者三葉をはじめとした熱いバトルを繰り広げている光景を見て、ジェイクは笑顔を浮かべた。

自分が及ばずながら整備したことによって楽しんでいる姿にどこか嬉しさを感じる。

そんな嬉しそうな笑顔を露わにしているジェイクへ、話しかける人物がいた。

 

「ジェイク、お前も戦いんじゃないのかい?」

 

「ああ、ダイチさん」

 

ジェイクが振り向くと、そこにいたのは一人の青年。

短く切った黒髪に整った顔立ちを有する日本人らしい容姿を持つその人は、楽しそうな笑みを浮かべていた。

その青年――『高石ダイチ』はジェイクの今の保護者であり、機械に強い彼を連れて時折ガンプラファイトのイベントに連れ回しているのだ。

なんでもダイチはガンプラの世界でも有名な"メイジン・カワグチ"なる凄腕の人物に迫る新星(ニュースター)……と、若干ジェイク本人は記憶している。

GPFの事には興味あるものの、未だにガンプラの世界には詳しくないジェイクにとって、ダイチはこの国での信頼すべき知人であり、尊敬している人生の先輩なのだ。

ダイチはジェイクの傍によると、にやりと不敵な笑みを向ける。

 

「どうだ? ガンプラファイトのイベントは? 退屈してないか?」

 

「いや、スタッフでも楽しんではいるよ。そっちこそ暇持て余してないですか?」

 

「へへっ、残念ながらこう見えても多忙なのさ」

 

ジェイクの冗談交じりの一言に、ダイチは余裕ぶった笑みで返す。

その直後にダイチを呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「「ダイチめいじーん!」」

 

ジェイクが振り向くと、そこにはこのイベントに遊びに来た二人の幼い男女の姿があった。

小学生くらい彼ら二人はそれぞれのガンプラを持ってダイチへと駆け寄ってくると、我ながら上手く出来上がったその出来を二人に見せた。

 

「ぼくのダブルオーガンダム見て! この日のために塗装練習して頑張ったんだ!」

 

「わたしのストライクガンダムも! 赤と白をメインカラーにしたんだー!」

 

「おうおう、どっちもいい出来じゃないか。世界で一つだけのオリジナルガンプラができて、偉いぞ」

 

憧れの存在でもあるダイチにそれぞれ作り上げたガンプラを見せて、嬉しさを露わにする男の子と女の子の二人。

どうやらガンプラの塗装を頑張ったようで、小学生にしては非常に綺麗に仕上がっている。

片やダブルオーガンダムは白と青を基調とした青空のようなカラーリングに、片やストライクガンダムは白と赤を基調とした鮮やかなカラーリングに、それぞれ二色をメインとした塗装をしている。

ダイチはそのカラーリングを見て、何処か綻んだ様な笑顔を見せていた。

 

「あぁ、カラーリングはリクサラにレイアイかぁ……いいねぇ、とってもいいぞ」

 

「ダイチさん、顔緩み切ってますよ?」

 

「えっ!? やっべっ!?」

 

ジェイクの指摘によって自分のだらしない笑顔を見せてしまい、ダイチは急に引き締める。

二人のやり取りを見て苦笑いを浮かべる幼い男女の二人だが、ダイチは一旦咳払いをすると二人に向けて笑顔で話し始めた。

 

「さぁ二人とも、君達のガンプラで戦ってきなさい。相手はオレが用意しよう」

 

「「わぁーい! ありがとう!」」

 

お礼を言いながら二人の子供達はダイチが提示したGPF筐体へと向かっていく。

他の筐体より大きめな舞台として映るでは既に準備が整っており、あとはGBCと自分達のガンプラを設置するだけ。

男の子はダブルオーガンダムを、女の子はストライクガンダムをそれぞれ設置を終えると、筐体とGBCに内蔵された特殊エフェクトが展開。

二人の目の前に操縦桿型の操縦コンソールが出現し、二人はそれを握る。

瞬間、命が吹き込んだかのように二機のガンダムのカメラアイに光が灯る。

 

「照井ユースケ、ダブルオーガンダム!」

 

ダブルオーガンダムを操縦するのは、優しいまなざしを有した小学生くらいの男の子。

操縦者の名前は照井ユースケ。

 

「國立サオリ、ストライクガンダム!」

 

ストライクガンダムを操縦するのは、元気いっぱいな様子の小学生くらいの女の子。

操縦者の名前は國立サオリ。

 

二機のガンプラは格納庫を模した場所に変わり、その眼前には合図を告げるエフェクトが浮かび上がる。

数字のカウントダウンと共に、二人の鼓動が高鳴る。

 

【3 2 1】

 

【RAUNCH】

 

「「出撃!」」

 

二人が叫んだと同時に、二人が作ったガンダム達は足元のカタパルト射出、そのまま格納庫から出撃する。

少しして目の前に広がるのは、何処までも続きそうな大空とアメリカのモニュメントバレーを思わせる巨大な岩山が乱立する赤土色の荒野。

ガンダム作品でよく見る世界を背部スラスターを吹かしながら飛ぶダブルオーガンダムとストライクガンダムは縦横無尽に動かしていた。

自分の思い通りに動くその姿に、照井ユースケと國立サオリは嬉しさと感動の声を上げた。

 

「わぁぁぁぁぁ……これが、ガンプラファイトの世界かぁ!」

 

「いえーい! 私達飛んでるー! 私達の作ったガンプラが飛んでるー!」

 

嬉しそうに操縦するユースケとサオリのガンプラ達。

年相応にはしゃぐその姿に、ジェイクとダイチは面白そうに眺めていた。

特にダイチは初めてのガンプラを動かす姿を見て、一層嬉しそうな表情を見せていた。

 

「あぁ、何時見ても初心者がガンプラファイトの世界に触れるのは嬉しいねぇ」

 

心身共に嬉しそうな声を呟くダイチ。

そんな彼の様子を見て、ジェイクは『この人はガンプラファイトが大好きなんだな』と心底感じるのであった。

ジェイク自身はガンプラファイトは何度か経験しているが、勝ったことはそれほどない。

それは何故か?……それは、相手のファイター達の熱意に負けるのだ。

 

自分より優れた巧みな操縦技術。

歴代ガンダムの戦い方をはじめとした豊富な知識。

既存作品に囚われない自由なガンプラ改造。

 

そのどれもが、ガンダムに関する事であり、今の自分にはないものだ。

ファイター達のガンプラやガンダム作品に対する情熱と愛情、彼らの有する『好き』という感情にどうしても勝てなかった。

自分が積み重ねてきたモノを考えると、どうしても勝てる気がしなかった。

 

それでも、と思いながらジェイクはポツリと呟いた。

 

 

「それでも、諦めたくはないかなぁ」

 

 

誰にも聞かれたくない、自分だけの我儘。

それは自分の描いている夢から来ていたモノであり、簡単にはあきらめきれない事だ。

それこそGPFが大好きなファイター達に負けないくらいの熱意はある。

だからこそ、目の前に立つ壁がどうすれば乗り越えられるか自分の頭で考えていた。

 

――そんな時だった、可憐な声が不意に聞こえてきたのは。

 

 

「いいんじゃない? 諦めなくて」

 

 

ジェイクが振り向くと、そこにいたのは長髪の若い少女。

金髪碧眼の外国人のモデルのような綺麗な顔立ちで、まるで天使のような柔和な笑みを浮かべている。

見た目の年に関しては自分達と同じくらいの10代後半くらいで、彼女はこちらへ嬉しそうにステップを踏みながら近づくとジェイクに話しかけてきた。

 

「ココにいる皆、楽しそうにしていていいね」

 

「ああ、まあ。ガンプラファイトを楽しみにしてきているからね」

 

「こんな素敵な場所を作っているアナタも結構楽しんでるんじゃない」

 

「まあ、そうだね。機械いじりは得意だし……」

 

可愛い少女に話しかけられて、ジェイクは苦笑しながら答えた。

彼女のキラキラとした碧い瞳が何処か嬉しそうに見えており、ジェイクはその様子に気になった。

我ながら珍しく異性に興味を抱いていると思いながら、少女の名前を聞くためにジェイクは自己紹介をする。

 

「僕はジェイク、ジェイ・C・コードウェル。君は?」

 

「私はエヴァっていうの。よろしくね、ジェイク」

 

金髪の少女――『エヴァ』はジェイクに対してそう名乗った。

 

何気ないガンプラファイトイベントにて、運命の二人がココに出会った。

 

彼ら二人がこれから巡り合うバトルの数々、そのきっかけとなる『最初の事件』が今まさに、起きようとしていた。


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