父を訪ねて617光年   作:おーるどあっくす

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◯イロハ
やや独善的ではあるがちゃんと自分の間違いを認められる
色々と拗らせてるが根っこはお人好し



強化人間C7-168

『俺は…何をやっているんだろうな…』

 

 拠点のベッドで寝息を立てる少女を見ながら俺は呟く。

 顔もそうだが、随分と身なりの整った少女だ。首についているのは発声デバイスか?ハンドラー・ウォルターは使い捨てであろうと自分の物はしっかり整えるタイプなのかもしれない。

 

 ACのコックピットにいた少女が生きていることに気がついた俺は、彼女をパンタレイのコックピットに入れ、ACに残っていたデータを抜き取ったのちに拠点へ戻り、傷を手当てして彼女を自分のベッドに寝かしていた。

 

 その後、アーキバス社には惑星封鎖機構監視基地の設備が完全に機能停止していることを調査データを添付して報告。

 そして惑星封鎖機構にも同様に調査の結果分かったことを報告していった。

 

 ………「襲撃者は独立傭兵、AC3機全滅を確認」と。

 

 

 本当に、俺は何をしているんだろうな…

 この女を惑星封鎖機構に突き出してハンドラーの猟犬、ハウンズである事を伝えてやれば、報酬が大幅に増額されたのは間違いないだろう。

 それなのに俺は、あろうことかデータを隠蔽して彼女らとハンドラー・ウォルターが結びつかないようにしている。

 

 使い捨てられた旧型強化人間に情でも湧いたか?

 いや、俺が誰かの理不尽に憤れるような殊勝な性格をしていないことは俺が一番良く知っている。むしろ俺は旧型強化人間を蹴落として来た側だ。

 

 

 …第7世代強化人間。

 脳深部コーラル管理デバイスを用いた第1〜6世代強化人間とコーラル代替技術を用いた「ニューエイジ」と呼ばれる第8〜10世代強化人間。その「狭間の世代」としてコーラル代替技術を用いた凄惨な実験事故の数々の中での成功者が俺たち第7世代強化人間である。

 

 両親の借金を払う為に実験体としてアーキバスに売られた俺、C7-168は奇跡的に実験が成功。後遺症なく強化人間としての活躍ができるようになり、傭兵として活躍していく。

 

 しかし、それから程なくして第8世代強化人間が登場した。旧世代型強化人間を完全に無価値化したと評される「ニューエイジ」の登場で、俺は時代遅れの用済みとなった。

 

 

 

 

 そうか、同情か…

 仕事を果たし、生存したにも関わらずあの場所に残されていた強化人間の少女。俺は勝手に彼女を「用済み仲間」と感じていたのだろう。

 

 幸いにも彼女はハンドラーの方から手綱を離されたわけだ。これからどこにだって行けるだろう。せっかく助けたんだから見捨てるのも忍びない。やりたいことがないかを聞いて、支度金でも渡して自由にしてやろう。

 

 そう思い、俺もソファで眠りについた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、目が覚めたか』

 

 翌日、少女は目を覚ましたようだ。彼女の首元から、機械的だが可愛らしい声が出る。

 

「こ、こは?私は確か…」

 

 直前までコックピットにいたはずがベッドにいるのだから困惑もするだろう。

 

『ここは俺の拠点だ。仕事の時に君を見つけて拾って来た』

 

「あなたは?」

 

『俺は独立傭兵のイロハだ。君は?』

 

「…C4-617」

 

 第4世代か…不安定だが安くて戦闘能力に長けている上に自我が薄くなるか性格が激しくなるかの両極端。利用しやすそうでいかにもハンドラー・ウォルターが好みそうだな。

 

「何の仕事?」

 

 やましい事はない依頼だ。隠す必要はないだろう。

 

『惑星封鎖機構の監視基地調査だ。

 襲撃者の情報を集めろってな』

 

「私を惑星封鎖機構に売るつもり?」

 

『そのつもりだったが…やめた』

 

「どうして?」

 

『特に深い理由はないよ。

 このまま君を自由にするつもりだが…

 何かやりたい事はあるか?』

 

 さて、ここからが重要だ。自我の薄い第4世代だとやりたいことも無い可能性だってあるだろう。そうなったら俺のACの予備機でも渡して…再手術の為の金を貯めさせるのも有りだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハンドラーに会いたい」

 

 

 

 

 

 …は?

 

 理解が出来ない。彼女はハンドラー・ウォルターに使い捨てられたんじゃ無いのか?生きていると分かればどうせまた使い捨てられるだけだ。

 

 

『落ち着け、君は自由になったんだぞ?

 恐らくだが、君はあの作戦で使い捨てられ…』

 

「私達のハンドラーはそんな事しない!!」

 

『ッ…!?』

 

 

 …は??

 彼女は洗脳でもされてるのか?

 

 いや、落ち着け………

 何故彼女はハンドラー・ウォルターを庇うんだ?

 

 考えてみればおかしいところはあった。彼女の身なりは異常なほどに整えられている。パイロットスーツはピッタリと身体にあったサイズで、髪も丁寧に手入れされているのが分かり、身体も清潔だ。

 使い捨ての駒相手にわざわざスーツを合わせるのか?女性らしい待遇を与えるのか?

 

 俺は…何かハンドラー・ウォルターを勘違いしている?

 

 

『何も知らないくせに口を出した。

 …すまなかった』

 

「ハンドラーが誤解されてるのは知ってる。

 分かってくれたなら…良い」

 

 

 俺のかつての雇い主と違い、ハンドラー・ウォルターは随分と信用されているようだ。

 

 

 

『なんで会いたいのか、聞いて良いか?』

 

「ハンドラーは 私達に「意味」をくれた

 私はその意味を果たしたい。

 それは仲間との約束でもあるから」

 

『意味……約束………』

 

『ハンドラーの拠点は分かるか?』

 

「…?知ってるけど…」

 

『俺がそこまで送ろう。その代わり、

 俺にも君のハンドラーに会わせて欲しい』




◯旧雇い主
エアプハンドラー・ウォルター
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