『…V.Iイロハ ACアーキバス・アイビス 現着した』
…は?
〔おいおい…アーキバスの連中
随分と悪趣味なことをしてくれるじゃないか
これは本当に笑えないよ…〕
『俺の意味を…いや…人と…コーラルの…
違う…
オープン回線から聞こえてくる声は確かに彼のものだ。共にハンドラーを追いかけ、ハンドラーと再会してからも隣で戦ってきた聞き慣れた声。
そのはずなのに、何かが致命的に違う。まるで彼の意思を制限しているような、あるいは塗りつぶしているかのようにノイズが走っている。
『障害を…排除する』
《メインシステム 戦闘モード起動》
[メインシステム 戦闘モード起動]
敵機のシステム音声と共にアーキバス・アイビスの頭部カメラアイが開いていく。カメラアイの中では真紅の波形…コーラルが蠢いていた。
〔…617 イロハは今や俺たちにとって最大の脅威だ…
やらなければ…お前がやられるぞ〕
…イロハに私たちを殺させる訳にはいかない。止めないと…!
アーキバス・アイビスの武装はウォッチポイント・アルファの巨大高炉内で戦った無人ACと共通している。右腕にプラズマライフル、左腕に光波ブレード、両肩は光波キャノンだ。
大きくせり出した背部ユニットには他と比べて随分と大きいブースターが4つ取り付けられている。
〔617 光波攻撃にはコーラル技術も絡んでいる
ACS負荷の蓄積に注意しろ〕
ブレードから2度放たれる三日月状の光波を跳躍して回避。光波キャノンとプラズマ弾を躱しながらアサルトブーストで間合いを詰めていく。
無人ACと比べるとどの攻撃も出力が上がっているみたいだけれど、弾速に問題があるのか回避するぶんにはそれほど脅威を感じられない。
接近してミサイルとガトリングを浴びせるとイロハは冷却の完了したブレードから光波を放って迎撃し、距離を離していった。
《通信が入っています》
〔イロハ 何をしているのです…!〕
スネイル…!しぶとく生きながらえていたの…!?いや、それよりも奴の言動からして彼の行動がアーキバスにとっても想定外であるということが気にかかる…
〔まさかここに来て不具合が発覚するとは…
これも無能な上層部共が11世代だのと
言い出したばかりに…!!〕
第11世代…!?つまり彼は暴走状態にあるの?
〔ザイレム撃退は最早無意味です
その害獣は無視して撤退を…!〕
『そうだったな…
了解した…それと…
俺の…仲間には…敬意を示せ…』
〔待ちなさい!イロ…〕
言い終わらないうちにスネイルとの通信を切断。話の繋がりがめちゃくちゃで、スネイルと話しているようで他の誰かと話しているような気がする…
引っかかることはあるが、戦闘に集中しよう。イロハは光波キャノンとプラズマライフルでの引き撃ちを主体に近づいてきた私を光波ブレードで迎撃してくる。
追いながらミサイルとガトリングでダメージを蓄積させていくが、射撃と回避の癖を読まれているのか思うようにダメージを与えられていない上に、回避を誘われてガトリングの攻撃を定期的に中断されてしまう。
「流石に苦しそうだね…ビジター…
手を貸すよ!」
!カーラがトイボックス達を引き連れてイロハに攻撃を開始。
〔パルスプロテクション装備もいるようだな
617 活用していけ〕
『転がって…弾丸をばら撒く…?脚に…パイル…?
なんでも…アリ…正気か…?
見慣れない…兵器…警戒は怠るなよ…617…』
「初めて会った時を思い出すね!
笑える機体だろう?
見惚れてて良いのかい!」
停止したイロハに対してガトリングを浴びせていく。私への忠告にも聞き覚えがある…
光波キャノンをパルスプロテクション装備トイボックスに隠れて凌ぎ、カーラと共に一方的にミサイルを当てると、ACSが負荷限界。ガトリングでの追撃を狙ったけれどシステム復旧が早い…
『パルス…プロテクション…内側から…攻める…』
パルスプロテクション内部へ飛び込んだイロハがブレードをチャージ、回転しながら巨大な光波を放ちプロテクション内部の敵を一掃。
『雑魚が…群れた所で無意味…
片付いたか…次は…』
イロハは後方でミサイルによる弾幕を展開するカーラへ攻撃。
『この機体は…RaDの…用ACパーツ…
…用ACで惑星封鎖機構に挑むなんて…
使い捨てられた…』
「これはいよいよ笑えないね…
あんたの目は評価してたんだが…
アーキバスにくり抜かれちまったのかい!」
『懐に…入れば…追尾が…甘く…』
カーラに急速接近したイロハがたちまちのうちにフルコースのAPを削り取っていく。
「少し早いがデザートを食らいな!
悪いねビジター…先に戻ってるよ!」
カーラが機体を脱出した直後にアサルトアーマーを発動。背を向けていたイロハにダメージを与える。
ここからはまた1人での戦闘だけれど、カーラ達が大きくAPを削ってくれた。これ以上彼を苦しませる訳にはいかない。ここで終わらせる。
攻撃の中をアサルトブーストで強引に突っ切り、ブーストキック…アイビスのAPが尽きるのと、チャージされたプラズマライフルで私機体のACS負荷が限界を迎えるのは同時だった。なんとか押し切れたようだ。
ジェネレータの爆発に巻き込まれないようにシステムの復旧後距離を取る。
〔これは…!まだ終わっていない!〕
《
《
《
『負けられない…もう負けたくない…!』
〔周囲のコーラルと共鳴している…!?
617 これまでとは別物だと思え…!〕
墜落しかけていたアイビスがまるで息を吹き返したかのように紅い噴射炎と共に再起動。機体の各部が展開し放熱している…
双対ミサイルのような挟み込む挙動で二つの紅い光波が私に襲いかかってきた。
『何にも…誰にも…!』
光波の間を突っ切って回避した先で、左腕からブレードを展開し集積コーラルで戦ったアイビスのようにイロハが突進してくる。
久しぶりに酷い耳鳴りだ…突進してくる彼の機体に紅い何かが纏わりついているのを感じる。あれが彼を…
火種を…消さなければ。
クイックブーストで突進を躱わし攻撃後の隙に反撃を仕掛けようとしたが、嫌な予感がしたので後退。予感は的中し、ゆっくりと振り向いた彼のブレードが光波としてそのまま放たれた。
跳躍して回避したが、あのまま攻撃を仕掛けていれば私の機体はコアと脚部が切り離されていただろう。腕を振り抜いた状態で光波ブレードから放熱し、硬直しているイロハに攻撃。
〔動力をコーラルに切り替えたようだね…
ビジター!喰らったら機体が持たないよ〕
プラズマライフルから放たれる弾もコーラルに変化…弾速も向上している。私の躱したコーラル弾は後方で連鎖爆発を起こし、着弾したビルを抉り飛ばした。
8つの紅い光波と私の放ったミサイルがぶつかり合い、コーラル爆発が発生。さっきまでとは違い、近くに着弾されるだけでも掠ってしまいそう…引きつけての回避は得策ではないみたい。
チャージされたコーラルライフルを躱し、イロハを蹴り飛ばす。吹き飛んだ所にコーラル爆発に巻き込まれなかったミサイルが命中し、ACS負荷限界。ガトリングを斉射してAPを削っていく。
『
システムを復旧したイロハは再びブレードを展開。いつも使っていたレーザーブレードのような回転斬りによって全方位に光波を放ち、周囲のビル群が切り倒されていく。ザイレム上層街区はほとんど更地といった有様だ。
『
光波による弾幕を切り抜けて、イロハの元を目指す。コーラルライフルによって左肩のミサイルを、光波キャノンによって左腕そのものを吹き飛ばされるが、止まる訳にはいかない。躱しきれなかった光波ブレードが右肩のミサイルを切り落とす。それでも、私にはガトリングが残されている。
アーキバス・アイビスの武装は全てオーバーヒートしている。アサルトブーストの勢いを乗せた体当たりで彼の機体を壁に叩き付け、頭部にガトリングを押し当てる。私は、貴方の教えてくれた「意味」を果たしてみせる…!
『ここが…この…場所が…』
気づけば私は咆哮しながらトリガーを引いていた。
あの日、曇天の荒野でそうしたように。
〔ーーー…!ーーー617!
ーーーーーーーーが来るぞ!〕
ハンドラーの声も、耳鳴りも聞こえない。透明だ。
どれほど時が経ったのだろうか…
いや、一瞬気を失っていただけのようだ。爆発によって私の機体が吹き飛ばされ、意識を取り戻す。
『あぁ…とどかない…』
見上げると、アーキバス・アイビスが空中で爆発を繰り返している。
『おいつけない…』
彼が、私に向かって手を伸ばす…
『おいて…いかないで…くれ……』
一際大きくコーラルジェネレータが爆発した後、イロハの機体は私の目の前へ墜落した。
「よくやってくれたね…ビジター!」
「無事か!?617!
…よくやった」
ハンドラーとカーラがザイレム脱出艇に乗って私の元にやって来た。
「衛星砲も停止した…じきにザイレムは
バスキュラープラントに衝突する
621を迎えにいくぞ」
ハンドラーの指示に従ってコックピットからボロボロの身体を引き摺り出し、脱出艇に乗り込む。
「…側にいてやれと頼んだ筈だがな」
イロハを一瞥して、ハンドラーは呟いた。
すぐに脱出艇が出発し、封鎖ステーションへ向かう。
バスキュラープラントに迫るザイレムを見届けながら、私達はルビコンを去っていった。
コーラルを巡る争いに勝者はなく
炎と嵐の後にはかつての開発惑星の痕跡のみが残った
半ば死に体となった企業勢力は
惑星封鎖機構との共同声明を発表
ルビコンは廃星として
永久に放棄されることが合意された
そして
星系を焼き払った主犯
世界の敵たる独立傭兵は消息を絶ち
今はただその名だけが歴史に刻まれている
2度目の災禍 「レイヴンの火」 として
「あ、目が覚めた?」
『…ああ』
自己満足の小説にお付き合い頂きありがとうございました。
◯エア
なんかすごい邪悪な感じになってしまった。
ブルートゥに対する反応や第二形態開幕時の攻撃モーション、敗北後の手を伸ばす動作など、イロハとはやけに波長が合ったらしい。