新たなACも完成した俺たちは、ハンドラー・ウォルター捜索という目的を再開した。
「まずはどこを探すの?」
『それなんだが…まずはRaDから情報を収集するのが良いんじゃないかと思う』
RaDはルビコン3で活動している技術者軍団のドーザー組織だ。パーツの製造、改造、修理を武器商人でもある。そんなルビコンの組織製パーツで、ルビコン星圏外のハウンズ達はACを組んでいた。ハンドラー・ウォルターとRaDとの間に何かしらの関係性がある可能性は高い。
という訳で垂直カタパルトを使い、俺たちはRaDが拠点としているグリッド086まで乗り込んだ。あくまで今回は情報を得るのが目的でRaDと敵対したい訳ではないので、企業からの依頼ではなく個人としてここまでやってきたのだが…
「なんか、警備薄くない?」
617の言うように、グリッド086の入り口にはMTの残骸が転がっているだけだ。まるで、何かの襲撃に遭ったかのような…
『そうだな…ジャンカー・コヨーテスの連中、あるいは依頼を受けた独立傭兵か?』
下調べによればジャンカー・コヨーテスはRaDのライバル的な組織だった筈だ。隔壁が既にこじ開けられている。警戒すべきはRaDの警備だけではないかもしれない。
〔おいおい…コヨーテスの奴ら
傭兵まで、それも2人雇ったのかい〕
この放送は…恐らくRaDの頭領、シンダー・カーラだろう。声色から判断するにRaDは結構苦戦しているようだな。相手のチャンネルと合わせて通信を試みる。
『RaDの頭領、提案がある。俺たちを雇う気はないか?』
〔ほう?あんた達はコヨーテスの雇われじゃないのかい?〕
『ああ、個人的な事情でRaDと話がしたくてきたんだが…襲撃に対して手が足りないようだからな』
〔手を貸してくれるってんなら助かるが…何が欲しいんだい?〕
『弾薬費と修理費、後はいくつか質問に答えて貰いたい』
〔それだけで良いのかい?…まあこれ以上話しているヒマも無さそうだね〕
『契約成立で構わないか?』
〔ああ、目障りなコヨーテ共をぶっ潰してきな!〕
『さて、臨時ではあるが仕事の時間だ、617。弾薬費は気にしなくて良いからぶっ放してこい!』
「了解!」
俺たちは指定された座標を目指して移動を開始。到着すると、ジャンカー・コヨーテスは大量のMTで………?なんだあのMT…ほんとにMTか?
丸まった状態で転がって展開と同時に弾丸をばら撒く?脚にパイルバンカー?電動ノコギリ?地雷投射機?スタンプラグ?なんでもアリかよ…正気か?
「カーラのヤツ、ビジターを雇いやがった!」
…とりあえず、コヨーテスはおもしろMTを引き連れて襲撃をしているようだ。
『見慣れない兵器群だ。
警戒は怠るなよ617』
「ガトリングで倒せるならどれも同じ」
俺が困惑しているうちに617はガトリングをばら撒いていたらしい。俺もマルチロックしたミサイルで汎用兵器をそれぞれ吹き飛ばし、ライフルでMTに攻撃していく。
〔コヨーテ共が使ってるMTはうちの製品だ…侮るんじゃないよ!〕
開発したのお前達かよ!?
酒でも飲みながら作って…いや、ドーザーならキメてるのはコーラルか。
実際まともに当たればタダでは済まない武装ばかりだ。
射程を活かして遠距離から潰していくべきだろう。
ありあわせ感満載の鉄板で囲まれた細身の4脚MTを617と挟撃して背後から攻撃。
これでここにいるのは全部片付いたようだな。
〔やるねえ…ビジター達。その調子で先にいるのも頼むよ〕
こんなのがまだまだいるのか…
引き受けた以上仕方ないので引き続き移動を…
「かかったな 取り立て屋!」
なんだコイツ!?!?!?
突如物陰から飛び出してきたACに奇襲を受ける。
「君たちに返済する道理はない、死んでもらおう!」
『待った、何か勘違いをしているんじゃないか!?』
取り立て屋も返済も俺たちには関係ない単語だ。
〔そいつはコヨーテ共に雇われた独立傭兵だ。痛い目に合わせてやりな!〕
なるほど、実害は無いからと見逃していたが金で抱き込まれて敵対した、といった所か…
『借りた金を返さないバカには制裁が必要だな、いくぞ617』
「了解、撃退する」
敵ACの機体構成を確認、右腕にレーザーハンドガン、左腕にバーストライフル、右肩に拡散バズーカ、左肩にシールドを装備してアーキバスとベイラムのフレームを使用…各勢力の優秀なパーツを揃えたバランス型といった所か。
「安心したまえ 君たちの融資を無駄にはしない。
ほら、この新しい機体を見てくれ、こうして私の信用は拡大していくのだ」
何を言ってるんだコイツ…理解が追いつかない…
バックラーを使って攻撃を凌ぎながらガトリングでヘイトを買う617の反対側からライフルとミサイルでACSに負荷を与えていく。
立派なシールドを装備しているようだが後方から攻撃されては意味が無いし、反動を抑えきれず逸れたガトリングが必要以上に命中している。
「くっ…どうして分からない…!
借りた金をなぜ返す必要がある…!」
『借り物だからだよ…』
敵ACのACSが負荷限界。ダウンしたACにチャージにより加速したリニアライフルの弾丸を直撃させる。
「私のビタープロミスが!?私の信用が!」
リニアライフルの衝撃で吹き飛んだ先に待ち構えていた617がコアを切り裂いた。
「ある金は活かすべきだ…何故理解しない…」
敵AC…本人曰くビタープロミスのジェネレータが爆発する。
『脱出したのか…』
「取り逃した…」
〔片付いたみたいだね、あとは掃除を頼むよ〕
シンダー・カーラの指示に従い、手分けして残党を排除。
これで臨時の仕事は終わり、ようやく本来の目的に戻れるな。