悪の敵より、拳と蹴りを手向けてやる   作:蓮太郎

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1.大量発生です

『お前は俺か?』『お前は俺だ』『お前も俺か?』『お前も俺だ』『お前は俺かも』『キチキチキチ……』『お前も俺のはず?』『ちくわ大明神』『お前は俺っぽい気がする』『俺はお前だ』『なんだ今の』『普通に虫混じってないか?』

 

『ひとまず状況を整理しよう』

 

『俺達は13人で…………いや、人じゃないけど同じ存在で合ってるな?』

 

『間違いなく』『当然』『多分』『恐らく』『メイビー』

 

『分かったから一度そこで切ろう。他の俺も同意見のはずだ』

 

『『『『『『『『『『『『

大量発生型相変異バッタオーグだよな

』』』』』』』』』』』』

 

『チキチキチキ…………』

 

『顔も怪人、バッタオーグのものかつ人型であり』

 

『13人の思考は共有されて』

 

『有り余るパワーを宿してることを感じて』

 

『真っ当に人の思考を回すことができて』

 

『言葉に出さずとも決してズレのない行動も取れる』

 

『疑問に思うのは、何故13人なのか…………』

 

『つまり同じ俺たちの中に1号と2号も混じっている?』

 

『じゃあこの中の誰かが異常個体になる訳か?』

 

『でも、元は前世ある人間であり、「シン・仮面ライダー」の知識を有している』

 

『だが今に至るまでの記憶はない』

 

『この身体にはプロテクターも備え付けられてあるが』

 

『ヘルメットは何処にもない』

 

『チキチキ…………』

 

『…………作るか?』

 

『五感も強化されてるようだからハリボテでも作る価値はある』

 

『そもそも俺たちの顔は怖いし』

 

『ヘルメット人数分拾ってきたぞ』

 

『『『『『『『『『『『

でかした!

』』』』』』』』』』』』

 

『とりあえず街へ情報収集しに行くか』

 

『幸いにも周りは現代っぽいからある程度は見当がつくはずだ』

 

『図書館、コンビニで立ち読みあたりが妥当か?』

 

『ヘルメット常時してる奴を怪しみそうだが』

 

『そこは適時対応だ』

 

『チキチキチキ…………』

 

『そこの俺は留守番な』

 

『流石にチキチキだけだとダメなのよ』

 

『チキッ!?』

 

『このプロテクターを隠す服も見つけないといけないな』

 

『こんなのが集団で歩いていたら不審者か暴徒以外ないよ』

 

『やっぱりコートも必要か』

 

『物資集めから必要だな』

 

『仕方ない、今は古着や捨てられた雑誌を集めてみるか』

 

『情報が古くはなるとはいえ、世界観を知ることは出来る』

 

『この世界に、俺たちのような「異物(蝗害)」が居てもいいのか』

 

『それとも俺たちは…………』

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 それは偶然だった。

 

「おい兄ちゃん。いいもん着てる割にはゴミあさりか?」

 

「服、置いてってくれよ」

 

「浮浪者がいっちょ前に服着てんじゃねーよ」

 

 明らかに嫌な目つきをした男二人がヘルメットをかぶってゴミあさりをしている浮浪者に声をかけた。

 

 確かにゴミあさりをしている割にはプロテクターや革(のように見える)ズボンをはいていたりと装備だけはいい。

 

 それ故にチンピラは彼に目をつけた。

 

 ヘルメットをしているという事は襲われることを自覚している、そう思いながら。

 

「…………」

 

「黙ってるんじゃねえよ。早く脱げよ」

 

「じゃないと痛い目見るぜ~?」

 

 そういうとチンピラの一人の腕が刃物のように尖っていく。

 

 これぞまさしく手刀、と言わんばかりの鋭さでありながら斬りつけてやろうかと脅してきているのだ。

 

 だが、ヘルメットの男はチンピラたちを無視して再びゴミあさりを再開する。

 

 命よりも捨てられた雑誌が優先と言いたいのか、どちらにせよチンピラ共の頭を沸騰させるには十分だった。

 

「無視するなや!毟るぞ!」

 

「痛い目に合わなきゃいけないみたいだなぁ!」

 

 手をとがらせたチンピラが前に出て、横にいたもう一人のチンピラが影を泳ぐかのようにヘルメットの男の背後に回る。

 

 尖った手を喉元へ刺そうとするその時、グローブが手を掴んだ。

 

「なっ!亜音速の俺の手を掴むとは!だがな、俺の手は其処らの刃物よりも鋭い!お前の手はズタズタだ!」

 

 切り裂かれた手の痛みで離すだろうと思われていたその手は微動だにしない。

 

 むしろギチギチと力が入っていきチンピラの顔に冷や汗が垂れ始める。

 

 だが遅かった。最初から相手が悪かった。

 

 ぐしゃり、と肉が潰される音が全員の耳に入る。

 

 何が起こったかわからない顔をしたチンピラだったが、自分の硬化して鋭くなった筈の手が潰されたことに気付き、悲鳴をあげた。

 

「ぎゃああっ!?お、俺の手ガッ、潰れっ!?」

 

「野郎!これでも食らえ!」

 

 影から背後に回ったチンピラが不意打ちとしてヘルメットの男の首元にスタンガンを当てて電撃を放つ。

 

 一般人なら昏倒、ヒーローでも意識を保てるかという違法アイテムなのだが倒れない。

 

 5秒も当て続けても倒れないどころか振り返ってチンピラをにらみつけている。

 

 真っ当な人間では出せない迫力に一歩引いたチンピラだったがヘルメットの男は逃がさない。

 

 手を潰したチンピラを放り投げて影を移動できるチンピラへと身体を向け、そのまま拳を振り上げる。

 

「う、うわああああ!」

 

 直感的に死の恐怖を感じたチンピラは情けない悲鳴を上げ、『個性』を使うこともままならずへたりこみ動くことも出来ない。

 

 ヘルメットの男が放った拳は音速を突き抜けていた。衝撃波を放ち顔面へと吸い込まれる。

 

 しかし、直撃すると思われていた拳はチンピラの眼前で止まる。

 

 止まったとはいえ衝撃波によってチンピラは後方へ倒れて頭を強打したが。

 

 腕を潰されたチンピラも、もはや泣いて這いつくばり逃げることしか出来ないためヘルメットの男は興味を無くしたかのように再び先ほど漁っていたゴミ、もとい雑誌を拾い上げる。

 

「…………『個性』、『ヒーロー』、『オールマイト』」

 

 ヒーロー特集と書かれてある雑誌を1ページ1ページめくりながら彼は現場を去る。

 

 これが全ての始まり、とある物語の始発点。

 

 『ヒーロー』ではない。されど決して『(ヴィラン)』とも呼び難い。

 

 決して加減せず、悪であるなら容赦なく叩き潰す怪物が今、誕生した。

 

「ヒーローに、仮面ライダーに…………俺たちはなることはできない(・・・・・・・・・)

 

 そして、最後の一人になってでも戦い続けるでもある彼らの一人はそのまま建物の影へ溶け込むように気配を消し、そして闇へ消えていくのであった。




・大量発生型相変異バッタオーグ×13
本作の主人公(達)。複数意識はあるように見えるが全て自分自身であるため実質一人。
だが戦闘力はしっかりバッタオーグであり、足りないものと言えば戦闘経験と伝手くらいである。
流石にオールマイトには単体では敵わない。一斉に挑めば1%くらいで勝てるかもしれない(希望的観測)
それでも大抵の(ヴィラン)は殺すことは出来る。
暴力には基本的に忌避はなく、チンピラ程度なら重症で見逃すことはあるが、ネームドクラスなら絶対に殺す。
それに困ってる人は見過ごすわけにはいかない善性も持ち合わせていることが彼らの苦悩を引き立たせている…………のかもしれない。
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