Fate/Infinity Lower limit   作:49番目

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五条先生ならサーヴァントとやり合えそうという勝手な想像からできた話。ノリと勢いで書いてるため、矛盾点あるだろうし続くかも怪しい。






1話

聖杯戦争

 

英霊を呼び出し、最後の一組になるまで殺しあうサバイバルゲーム。

最後まで残った一組には万能の願望器である『聖杯』が与えられる。

 

しかし、第三次聖杯戦争の際に聖杯は失われた。

そして聖杯戦争は一度も勝者を出すことなく終結した…と思われていた。

 

だが聖杯はユグドミレニアの一族が保管し、長きに渡る時間温めてられてきたという。聖杯を所有するユグドミレニア一族は本来魔術師の総本山である魔術協会から離反、宣戦布告をしてきた。

ユグドミレニア一族自体は衰退する魔術師一族が寄せ集められただけの集団。本来なら無視しても良い存在だが、聖杯という『魔法』に近い存在を使っての離反となると話は別。討伐する必要ができてきた。

 

 

 

討伐には選りすぐりの強者を選出。時計塔屈指の強者だけでなく、腕は確かなフリーランスの賞金稼ぎも雇い、討伐隊を結成した。

しかしどうしてもあと一枠が埋まらず、上層部が頭を悩ませていたところ、元々聖杯戦争が行われていた極東にある国の魔術師一族が名乗り出てきた。その一族の分家の者を一人この戦争に寄越すと。

時計塔としてはどちらでも良かった。本来、極東の魔術師などあまり相手にしないのだが、手が足りないことも事実。少なくとも腕が確かであることは確認できたため、指名された少年をユグドミレニア討伐のためルーマニアへと向かわせることにした。

 

これは、聖杯大戦に参戦した少年…伏黒恵と、別の世界線では現代最強の呪術師が戦い抜く物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

 少年、伏黒恵はため息を吐きながら手に入れた触媒の箱をセットする。左手に刻まれた令呪を見ながら、また内心でため息を吐く。

 

「なんで俺がこんなことに…」

 

 本来、恵はここにいることはなかった。恵は『禪院』という日本の魔術師一族出身だった。だが、恵は当主の息子ではない。数いる血筋の一つというだけだ。加えて、恵は禪院家…ひいては魔術師の世界に関わったのがろくでなしの父親がいなくなってからだ。父親は恵の母親が病死してしばらくしてから、別の女性と一緒になり、恵の苗字も伏黒となった。その女性の連子である姉と共に過ごして少しすると、父親と新しい母親は帰ってこなくなった。そして小学校一、二年生の時に禪院家に引き取られた。

 それからの生活は、地獄だった。魔術の鍛錬はいい。だが訓練とかこじつけて、元々次期当主候補だった男に殴られるわ姉が召使のように使われ挙げ句の果てには襲われかけるわと散々だった。才能があった恵はなんとかその精神的に劣悪な状況を乗り切り、姉を守り切ることができた。

 しかしそれを良く思わなかった次期当主候補は、恵をこの聖杯大戦に参加させるように勝手に決めた。色々な偶然が重なりそれが通ってしまったが、この時『自分が戻るまで一族全員姉に一切干渉しないこと』と『この一件がどのような形でも、終わったら自分と姉は禪院家から抜け、今後干渉しない』という魔術契約を結ぶことに成功したのは不幸中の幸いだろう。

 

「…あと少しだが、ここからだな」

 

 禪院家との繋がりを断つことは、魔術世界との隔絶を意味する。魔術の研鑽そのものは好きだが、それ以上に大切なものが恵にはあった。故に多少の心残りはあれど、後悔はない。だが同時に、この大戦を生き抜かねば自分に未来はない。

 

 これから行うのは、英霊召喚。触媒を用いて歴史に刻まれた偉人を呼び出し、使い魔として戦うことだ。恵自身も当主候補と互角に戦うことができるくらいの戦闘能力は有しているが、召喚された英霊は人間が持つ戦闘能力とは次元の違う強さを持っている。相性のいい英霊を呼ぶことができれば、戦いを有利に進めることができるだろう。

 

「始めるか…!」

 

 用意したのは、宝剣『天國』のかけら。かつて菅原道真が帯刀したという宝剣のかけらである。この触媒から呼べるとしたら、菅原道真本人か、菅原道真に由来する誰か。日本三大怨霊として知られる道真だが、生前は武芸にも秀でていたという逸話がある。弓と刀、どちらも優れた技能を持っていたため、召喚されるとしたら『アーチャー』か触媒に引っ張られたクラスの『セイバー』、または怨霊としての側面を持って召喚された場合、『キャスター』か『バーサーカー』の可能性もあると恵は考えていた。何にしても、呼びかけに応じてくれた英霊に全てを託すしかない。そう腹を括り、召喚の詠唱を始めた。

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

 全身から魔力が迸る。自身の魔力が吸われ、何かが応えようとしているのを感じた。

 

 

「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

 

 目が眩むほどの光に、恵は思わず目を覆う。全身から一気に魔力が吸われ、思わず膝を突いた。虚脱感が凄まじい。魔力の喪失は治癒術でどうにかなるようなものではない。この後は暫しの間、戦闘行為は厳しいだろう。

 

 光が収まり目を開くと、恵の前に一人の男が立っていた。

 190を超えるほどの高身長に、現代風の黒装束を身に纏った男だ。そして何より目を引くのは白髪と、目元を覆う目隠し。普通の人間ではないことが雰囲気からもわかる。

 男は恵に目隠しで覆われた目を向け、口を開いた。

 

「サーヴァント『赤のキャスター』、召喚に応じ参上したよ」

 

 

 

 

「君が僕の、マスターかな?」

 

 

 

 

 男は歯を剥き出しにして笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が…サーヴァント」

「そう!僕は君に呼ばれて来たサーヴァントだ。さっきも言ったけど、クラスはキャスター。よろしくね」

 

 キャスターはそう言って手を差し伸べてくる。恵はその手を見て、魔力が足りずに気怠い体に鞭打って立ち上がり、男の手を取った。

 

「よろしくお願いします。俺は…」

「伏黒恵…だよね?」

 

 キャスターの口から出たのは、己の名前。名乗る前から自身の名を知られていたことに驚き、恵は目を見張る。

 

「っ⁈な、なんで俺の名前を…」

「ふふふ…なんでだと思う〜?」

 

 煽るように覗き込んでくるキャスター。

 何故だろう、とても殺意が湧く煽り方だった。しかしここでキレるわけにもいかないため、怒りを内心に抑えつつ答える。

 

「真名看破とか…そういうスキル、ですか?」

「実はね、僕は君と縁があるサーヴァントなんだ」

「…は?」

 

 男の言葉に恵は再び目を見張る。恵の人生の中で、目の前の男のような人物との関わりはない。だと言うのに、このサーヴァントは恵の名前を言い当て、縁があったと言った。どういうことかわからず混乱する恵を見て、キャスターはにやりといやらしい笑みを浮かべた。

 

「どうやら、わかっていないようだね〜」

「……そりゃ、わかりませんよ。俺は貴方との関わりなんて無いんですから」

「確かに無いね。この世界線では(・・・・・・・)

「……?」

「君はね、別の世界線では僕の生徒だったんだ」

「はぁ⁈いや、だって俺は現代の…」

 

 そこで恵は一つの結論に辿り着き、信じられないような目でキャスターを見つめた。

 

「まさか…キャスターは」

「うん。僕は現代の英霊だ」

 

 恵は驚きと共に、わずかに落胆する。自分と関わりがある英霊なら、まず日本の英霊であることは間違いない。そして日本の英霊でも、現代に近いほど神秘は薄れる。神秘が薄ければ弱い英霊というわけではないが、ステータスや知名度補正が下がる傾向にある。少なくとも、目の前のサーヴァントが菅原道真ではないという事実が露見した。

 

「あ、今…ちょっとがっかりしたね?」

「い、いや!そんなことは…」

「ふふ、まあ英霊は現代に近いほど神秘が薄れるからね。それに…あの触媒を見たところ、呼びたいサーヴァントとは違ったみたいだし無理もない。ま、あれレプリカだけどね」

「は⁈」

「いや、レプリカは言い過ぎか…本物ではあるけど、本物が壊れて、それを修復したものって感じかな?何にしても、現物そのものではないよ」

 

 たくさんの情報を一気に叩き込まれ、恵は頭を抱える。自分が想定していたことを軽々と飛び越える事実に、頭が痛くなりそうな気持ちだった。

 『ま、それはともかく』とキャスターは話を切る。そして周辺に目を向けた。

 

「恵に客がいるみたいだね」

 

 キャスターの言葉を受け、恵は周辺の気配を索敵したところ、多数の気配が恵達を取り囲んでいた。

 恵は東京の西部にある霊脈の恩恵を豊富に受けられる山奥でキャスターを召喚した。だが、恵の後をつけてきた禪院家からの刺客が周囲をいつの間にか囲んでいたらしい。

 

(しまった…撒いたと思ったんだがな。召喚前に人払の結界張ってたんだが、それが仇になったか。結界から場所を特定されたな)

 

 普段の状態ならともかく、召喚で魔力を多大に消費した恵では逃げきれない。恐らく次期当主候補からの嫌がらせ兼刺客といってところだろう。あのドブカス野郎と内心で毒を吐きながらもどうするか考えようとしたところ、キャスターが恵の頭を軽く叩く。

 

「大丈夫。僕から離れないで」

「キャスター?」

「ちょうどいい。僕の力をここで見せてあげる」

 

 そう言ってキャスターは空を見上げる。そして不敵に笑うと、隠れている刺客に言い放った。

 

「出てこいよ雑魚共!恵を殺しに来たんだろ?やってみせろよ!」

 

 その瞬間、恵とキャスターに向けて殺気が放たれた。肌を刺すような殺気に恵は戦闘態勢に入るが、キャスターは不敵に笑っているままだった。

 突如、複数の刺客が視界に現れ、キャスターと恵に刀を振り下ろしてきた。咄嗟に防御のために掌印を組もうとするが、当然間に合わない。

 

 だが魔力を纏わせた刃が二人に迫るが、直前で刀が止まる。

 

「⁈」

「これは⁈」

「う、動かん!どうなってる!」

 

 刺客の刀はどんなに押しても動かない。引いて何度切り付けようが、刀は止まる。決して届くことはない。そんな刺客達を煽るようにキャスターは笑う。

 

「無限。アキレスと亀だよ」

「は?」

「勉強は大事ってこと」

 

 キャスターは一瞬にして刺客全員を殴り飛ばし、気絶させた。そして逃げようとしていた刺客の一人を謎の引力で引き寄せ、そちらも殴り飛ばした。ものの一瞬で全ての刺客を気絶させてしまう。

 

「な…」

「ま、こんなもんか。どう?今は人間相手だけど、ちゃーんと戦えるよ」

「正直…すごいです。これがサーヴァント…」

 

 寄越された刺客は決して弱くない。一人一人は恵なら問題なく倒せるレベルだが、三人まとめてこられるとさすがに手こずる。今の状態なら、間違いなく殺されていただろう。

 しかしキャスターは誰一人触れさせることなく、一瞬で気絶させた。しかも本気どころか、力をほとんど使うことなく。

 

 サーヴァントの力に内心で驚愕している恵を他所に、キャスターは刺客のうち一人の上に腰掛けた。

 

「こいつらどうする?殺しに来たんだし、殺されても文句はないと思うけど」

「……捕虜にしましょう。こいつらと引き換えに、刺客を放って来た元凶に『縛り』を結ばせます」

「ふふん、いいね。じゃ、捕縛くらいは手伝ってあげよう」

 

 キャスターと共に刺客達を縛り上げ、結界で魔力を封じる。これで刺客達は動けない状態になった。

 刺客の主人に連絡を取り、返事が来るのを待つ。すぐに帰ってくるとは思えないため、その間にできることをやろうと恵はキャスターに向き直った。

 

「キャスター」

「ん、終わった?」

「はい。守っていただき、ありがとうございました」

「ふふん、かわいい生徒(・・)の頼みだからね。当然のことさ」

 

 ニヤリと笑うキャスターに恵は真剣な視線を向ける。そして手の甲に刻まれた令呪を見せながら話し始めた。

 

「俺は、この聖杯大戦で貴方のマスターとして参加しています。黒の陣営を倒すために、共に戦い抜きたいと思っています」

「うんうん、そこら辺は把握してるよ。僕も恵と戦い抜きたいと思ってる」

「それで…貴方と戦う上で、貴方のことを知らないといけない。なので、キャスターの真名を教えてもらえますか」

 

 サーヴァントにとって真名は非常に重要なもの。真名が判明した場合、逸話から弱点を割り出すこともできる。敵に知られることはマイナスに働くが、逆に味方が知っていた場合は英雄の特性を活かした戦術を組むことが可能。特に己のサーヴァントとなると、真名くらいは把握しておかなければ動き方を決められない。

 しかしサーヴァントの気位が高い場合、恵のことを信用しないと真名を教えない可能性も考えていた。その場合はせめて戦闘能力くらいは把握しておかなければと考えていたが、キャスタークラスにしては相当の武闘派だというのが先程のやり取りで把握できた。最悪真名を知らなくてもいいが、できれば知っておきたいと恵は考えた。

 

「僕の真名か。マスターなら把握してたいよね」

「想定していたサーヴァントではないので、今の俺には真名の予想がつきません。なので、できれば教えていただきたいです」

「まーそうだよね〜」

 

 にやりと笑ってキャスターは恵に向き直る。だがキャスターはニヤニヤと笑いながら恵の顔を覗き込んだ。

 

「僕の真名…気になるよね?」

「それは…はい」

「当ててみな〜!」

(わかんねぇから聞いてんだろ)

 

 思わず内心で恵はキレる。

 当然ながら、恵にキャスターの真名など知らない。そして触媒に用いた『天國』から連想されるのは、菅原道真しかいない。故に、この触媒から連想できるサーヴァントはいない。そもそもキャスターは現代の英霊だと言っていた。

 

 結論、恵にわかるはずない。

 

「俺にわかるわけないでしょう」

「そっか〜恵にはわかんないか〜」

「…………」

「そんなに怒んないでよ〜怖いよ?」

 

 相変わらず恵を煽ってくるキャスターに、恵は無意識に青筋を立てていた。相手がサーヴァントでなければ殴っているところだが、恵の能力ではキャスターに勝てるはずがない。既に視界に映っているキャスターのステータスは、サーヴァントとしてはかなり高いもの。先ほど刺客達を止めた能力を使うことなく恵を殺すことができるほどだ。

 一頻り煽り、恵のキレ顔を堪能したためか、キャスターは近くにあった岩に腰掛ける。そして目隠しに覆われた目を恵に向け、にやりと笑った。

 

「それで、僕の真名についてだったね」

 

 キャスターは目を覆っていた目隠しを外す。

 閉じられた瞼が開くと、そこにあったのは空色の非常に美しい瞳。全てを見透かすような美しい光に、思わず恵は息を呑んだ。

 

「僕の真名は、五条悟。現代最強の呪術師だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五条…悟」

「さっきも言ったように、僕は現代の英霊でね。とはいっても、別の世界線での話だ。僕のことを知らなくても無理はない」

 

 キャスター…五条悟はそう言った。

 

「別の、世界線…」

「英霊の座に、時間の概念はない。過去の英霊しか呼び出せないわけじゃないよ。縁さえあれば、未来の英霊でも…そして、別の世界線の英霊でも呼び出すことができる」

(なるほど…つまり、呼び出すための縁は触媒以外にも、英霊側(・・・)の縁であってもいいのか)

 

 英霊の座に時間の概念はなく、過去、未来、世界線に関わらず登録されるもの。そして英霊も元は人。人である以上、縁は必ず存在する。その縁にマスターがいる可能性も、わずかながらある。どれほど低い確立なのかは言うまでもないが。

 

「ま、今回は恵が用意した触媒も良かったね」

「え?」

「僕ら五条家はね、元を辿れば菅原道真の子孫なんだよ」

「!」

「だから恵が用意した触媒も、役には立ってるよ」

 

 恵が用意した触媒は宝剣『天國』のかけら。現物ではないかもしれないが、菅原道真の子孫である悟を呼び出すための縁にはなったらしい。無論なかったらなかったで、別の世界線での縁で呼ぶことはできたかもしれないが。

 

「さて、自己紹介は終わりでいい?」

「あ…はい」

「…ん?何かまだ知りたいことでもあるの?」

 

 不満、とまでは言わないものの、まだ知りたいことがあるような雰囲気を悟は察する。

 

「あ、いや…さっき刺客の攻撃を止めたあれはなんだったのかなって…」

「ん、あれ?ああ、そっか。こっちじゃ知らないか」

 

 悟は納得したように頷くと、再び煽るような顔で恵を覗き込む。ニヤニヤと人が悪い笑みで覗き込まれて、恵は再び青筋を立てる。

 何故こんなにも殺意が湧くのか、と考えるが、悟がそんな恵に手を差し出す。なんだろう、と視線を向けると、悟はにやりと笑った。

 

「教えてあげる。手、出して」

(……すげえ殴りたい)

 

 やたら煽るのが上手い悟に対して殺意を抱きながらも、恵は言われたように悟の手に自らの手を差し出した。

 

「!」

 

 するとどうだろう。恵の手は悟に触れることなく、直前で止まった。引くことはできるが、どんなに押しても恵の手はキャスターに近づくことらできない。

 

「ね」

「これは…止まる?」

「止まってるっていうか、僕に近づくほど遅くなってんの。僕の術式(宝具)は、無限を現実に持ってくる『無下限呪術』って言うの」

 

 『無下限呪術』。それは五条家に伝わる相伝の術式。

 非常に強力な術式ではあるが、使いこなすには原子レベルの緻密な呪力(魔力)操作が要求される。そのため使いこなすことができた存在は、(悟の世界線で)ほとんどいない。

 

「近づくほど無限に遅くなる…つまり、ゼロにはならないけど無限に遅くなる。だから結果的にキャスターに辿り着くことがない…」

「そ。さすが恵、理解が早くて助かる」

 

 あらゆる対象を近づくほど遅くする能力。まさに最強の守りともいえる能力に、恵は思わず笑ってしまう。

 先ほどキャスターは己を『最強』と称した。キャスタークラスは陣地作成スキルによって自身に有利な空間を作り出すことが可能だが、互いにゼロベーススタートの戦闘の場合、不利になってしまう。その理由の一つとして、キャスターの攻撃手段は魔力による攻撃が主になることがある。

 しかし、サーヴァントには『対魔力』という魔力に耐性ができるスキルが存在する。それ故に、攻撃面でキャスタークラスはやや不利になってしまうが、キャスターはそれを理解した上で自身を『最強』と称した。この様子はとても嘘には思えないし、恵の目に映るキャスターのステータスは高い。

 

「これが僕の力。他にもあるけどね。で、どう?僕は君のサーヴァント足り得るかな?」

 

 キャスターは再び目隠しをつけると、恵に手を差し出す。

 恵は差し出された手をじっと見つめる。

 

「俺は、この聖杯戦争で死ぬわけにはいかない。キャスターとなら、戦い抜けると思います。だから、俺と共に戦ってくれますか」

 

 恵は悟の手を取る。

 元より他に選択肢などない。呼び出したキャスターと共にこの戦争を戦い抜くことしか、恵に道はないのだ。

 握手を交わすと同時に、恵は悟と契約を交わす。魔力のパスが繋がるのを感じ、悟はにやりと笑った。

 

「よし、契約完了だね。じゃあこれからよろしくね、(マスター)?」

「はい。よろしくお願いします、キャスター」

「五条先生」

「え?」

「五条先生って呼んでよ。恵からは、そう呼ばれる方がしっくりくる」

 

 そういえば、悟は別の世界線で恵を生徒としていたと言っていたことを思い出す。恐らく、別の世界線ではキャスターのことを『五条先生』と呼んでいたのだろうと予想した恵は、小さくため息を吐くと頷きながら言った。

 

「わかりましたよ、五条先生。これでいいですか?」

「うん、恵からはそう呼ばれるのがしっくりくるよ。じゃ、改めてよろしくね」

「よろしくお願いします」

 

 こうして、二人の呪術師による聖杯戦争が幕を開けるのだった。

 

 




五条悟
クラス:キャスター
マスター:伏黒恵
筋力:A
耐久:B
敏捷:B
魔力:A
幸運:C
宝具:A++

クラス別スキル
対魔力:B
自身で保有する膨大な呪力(魔力)が、生半可な魔術を跳ね除ける。術式(宝具)も併用すると、ほぼ無敵に思える耐性になる。

陣地作成:A
キャスターのクラススキル。自らに有利な陣地(結界)を作り上げる。術式(宝具)の奥の手にも関係があり、奥の手は本人曰く『当たればほぼ勝ち』とのこと。

保有スキル
六眼:EX
魔眼の一種として分類される。あらゆる呪力(魔力)を視覚に映し出し、対象の術式(魔術・宝具)の詳細を分析することができる。また、呪力操作も原子レベルで可能にする。術式使用による呪力の消費を限りなくゼロに近づけることも可能であり、どれだけ術式(宝具)を使用しても、マスターから呪力を引き出す必要がない(呪力効率が極限までいいため)。このスキルのおかげでどれほど未熟なマスターであっても召喚さえしてしまえば、理論上は万全の戦闘ができる。マスターという楔が現界には必要だが、呪力不足による退去は理論上しなくて済むため、stay nightの士郎と契約してもステータスが下がることがない。

呪力:A+
魔力は精神と肉体に結びついている。そのため、魔力を負の感情と掛け合わせることで発生する『負』の魔力が呪力。精神の力が上乗せされている分、魔力よりも簡単に肉体や物を強化させることは可能だが、一気に呪力をこめると器が適応できずに破壊される。また、魔力と違い、『負』のエネルギーであるため治癒することは不可能。
五条悟は膨大な呪力量を誇り、ただ呪力を纏うだけで対魔力と耐久スキルを底上げ可能。

反転術式:A+
『負』の力である呪力を掛け合わせることで、『正』の力を生み出す。魔力を用いた通常の治癒と比較して手間がかかり、難易度も遥かに高いものの、肉体の再生能力は治癒魔術とは比べ物にならず、欠損した四肢を再生することすら可能。呪力同士は脳で掛け合わせるため、脳を一撃で潰されると再生することはできない。また、他者へ反転術式をアウトプットすることは別の素質が必要であり、天才であった五条悟も他者へのアウトプットはできない。

宝具
無下限(むかげん)呪術(じゅじゅつ)
ランク:A
種別:対人宝具
『無限』の力で絶対不可侵の空間を創る術式。無下限を現実に創り出し、接近物を永久に減速させ、収束させる。五条悟は接近物の質量、危険度に応じて、術式効果の発動対象を自動で発動する呪力プログラムを組んでおり、最低限の防御は脳への負荷を最小限に留めつつ四六時中展開可能。また、呪力や反転術式によって強化することで、更なる力を発揮する。

術式順転『蒼』
無下限呪術を呪力でさらに強化した際に発生する空間の歪みにより、対象を吸い寄せる反応を創り出す。

術式反転『赫』
反転術式により生成した『正』のエネルギーを術式に流し込むことで発生する『発散』の力。順転とは逆に、対象を弾く力。



伏黒恵
年齢:15歳
誕生日:12月22日
好きなもの:生姜に合うもの
苦手なもの:パプリカ(甘いおかず全般)
魔術系統:十種影法術(式神)
魔術回路・質:B
魔術回路・量:C
聖杯戦争参加理由:次期禪院家当主(ドブカス)の策略、禪院家から姉と共に脱出するため

略歴
魔術師の家系である禪院家の血筋を引く少年。父親が禪院家の出自だが、魔術回路を持たない(魔術師としては)出来損ないだったため、さっさと家を出て恵が生まれる。しかし母親は恵が物心つく前に亡くなり、父親が引っ掛けた女性の先で姉に出会う。その後、父親と姉の母親が揃って失踪。2人が残した金が尽きそうになったところで、恵の存在が禪院家に知られて2人とも引き取られる。
恵自身はそれなりに好待遇だったものの、魔術回路を持たないかつ、男尊女卑の具現化である禪院家で姉が散々な目に合うのを見て、姉を連れて禪院家を出ることを決意。姉を守りつつ、魔術の研鑽を積み、次期禪院家当主(ドブカス)にも負けない実力を獲得したが、次期禪院家当主(ドブカス)を筆頭にそれを面白く思わなかった者がいた。そういった者達が徒党を組み、恵が脱出を画策している最中にたまたま枠が空いていた聖杯大戦の最後の一枠へ恵を推薦した。次期禪院家当主(ドブカス)の申告と人手不足が噛み合ってしまい、恵が聖杯大戦への参加を勝手に決められるものの、不意打ちによって生殺与奪の権を握り、聖杯戦争が終了したら姉共々禪院家との関わりを断つ契約を結ぶ。
聖遺物は現当主と交渉して手に入れた。

能力
影を媒体に、調伏した式神を操る『十種影法術』。
最初は2体の『玉犬』だけが与えられ、呼び出した式神を調伏していくことで手持ちの式神を増やしていく。調伏は原則術者本人しか行えず、2人以上で調伏した場合、調伏は後に無効となる。また、完全に破壊された式神は同じ形で呼び出すことはできないが、残された式神に能力を引き継ぐことが可能。

恵の現在の手持ち式神
玉犬(渾)

大蛇
蝦蟇
満象
脱兎

玉犬は本来、白と黒がいるが、次期禪院家当主(ドブカス)との戦闘で白が破壊。残された黒に白の能力が引き継がれた結果、渾として顕現。


禪院家
長く続く呪術師一族。かつては呪いや人外と戦う一族だったが、現在は先人が残した呪術ノウハウを用いて根源への到達を目指す武闘派の一族。歴史の長さは日本国内では指折りであるが、根源への到達を目指し始めたのは比較的最近。
相伝の術式を用いて根源への到達を目指すが、そのために必要なものが武力であるため、魔術の研鑽と共に戦う力を極めようとするかなり異端な一族。本来、魔術師にとって武力とはあくまで魔術の研鑽の副産物でしかない中、禪院家はその武力を目的としている。
現在の当主は『投射呪法』という『1秒を24分割、己の視界を画角とした24のコマとみなし、予め動きをアニメのコマ打ちの要領で制作。その後作った動きを高速でトレースする』術式を使用する。この術式を使うことで、術者は人間の強度でも亜音速まで到達可能。理論上は無限に加速可能であり、無限に加速させていくことで宇宙の果てを観測することで根源に至ろうと考えたが、人間の肉体で到達することは不可能と判断。現在は無限に加速するために必要な要素を研究している。
また、恵の持つ禪院家最初の相伝術式は、『あらゆる事象への適応ができる式神』を有しており、その力を肉体に下ろすことで物理的肉体強度だけでなく、時の流れにすら適応し、不老不死の存在になることで時の最果てを観測しようと考えられていた。しかし、そもそも式神が強すぎるため調伏ができないことと、相伝の術式を持って生まれる存在が稀有であったため、事実上諦められた方法だった。
現状考えられている方法は『適応能力を肉体に降ろし、無限の加速に適応していく』方法。

次期禪院家当主
恵を聖杯大戦に勝手に参戦させたドブカス。
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