対巨大生物対処局特殊戦術課   作:火薬好き

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第九話

ムカデ出現と対処開始から一週間。

 

特戦課の雰囲気は日に日に悪くなっていく一方だった。何せ課長の凪島の落ち着きのなさが日々増しているのである。

 

「よう。調子は・・・最悪だな。頭がそれでどうする」

 

やってきたのは雑賀譲二。

 

「・・・先生」

 

「息子が調停役に来てくれと頼んできたから来たわけだが・・・なるほど。叩くハンマーを構えてはいるが、モグラが一向に出てこないから焦っているわけか」

 

「来なくてもわかるでしょうに・・・」

 

「自ら恐怖を煽る行為を嫌う性分なのはわかるが、実際に戦うのはお前だけじゃないだろうに・・・平時の冷静が薄れつつあるな」

 

「はぁ・・・んじゃとりあえず今は上と擦り合わせていた状態の一つに当たり、その上悪い方向に向かいつつある」

 

「というと?」

 

「これから小規模の巣が同時に出現する可能性と、大規模洞窟が瞬時に出現する可能性だ」

 

「ムカデについての予想スペックもついでに届けに来た」

 

「・・・そっちを先にくださいよ。・・・やっぱそうか。とりあえず見てくれ」

 

壁に置かれていたモニターにムカデの体長が一番長く記録された画像と頭部の画像が映し出された。

 

「出現時の行動からしてコイツの内部にはゲートと類似した存在を持っている可能性。無くとも数は不明だが卵を輩出する機能は映像で確認済み。その上・・・」

 

「この顎の強度、そして横幅から推測できることは一つ。コイツがら地中でらせん状に回転できるならば、掘削性能は出現時の半分の速度が出せるとしたら時速15キロ程度は出せると俺たち研究五課はそう踏んでいる」

 

「・・・敵の奇襲が可能って訳だ。完全に攻撃するってなるとできるだけ地下深くにゲートが作られると予想される。だが、まだ洞窟すら見つかってない現状、即時戦闘配置となってもまず防衛ラインを築くための防衛戦を想定しなければならない」

 

「・・・陸自の展開速度は?」

 

「大規模な陣地は無理だが、最小限の陣地は構築可能だ。一応各地方にいる自衛隊に平等に防衛陣地の物資を現在流している。とはいえ、大規模洞窟すら同時出現する可能性もある」

 

「・・・最悪だな」

 

「で、先生。もうすでに陸自はこのデータをもとに諸元入力中ですか?」

 

「あぁ。先に局長経由で送った。それから六期のドミネーターだが、三割程度配備完了。あと一週間もあれば最低限は行きわた・・・どうやらお客さんのようだな」

 

「・・・それも二つか。場所は蓼科山と空木岳・・・局長」

 

『どうした、は言うまでもないか。六期は30名が戦闘可能だ』

 

「んじゃすぐさま厚木に移動させてください」

 

『わかった・・・と言いたいが、先に待機させてある』

 

「さっすが~。よしこれに蓼科山へとっつぁん・コウ・ギノさん・六合塚さん・雛河さん・如月さん・入江さんに加えて六期30名で迎撃。ただ殲滅よりも防衛に徹すること」

 

「半人前新兵連れての遠足か・・・わかった」

 

「それから全員予定繰り上げで防護服を装備。・・・意味は分かっているな?」

 

「あぁ。装備と経験が整っている分殿役をということだな」

 

「コウについては敵の酸の射程距離に入った個体と完全な戦闘領域からの離脱個体への殲滅行動及び撤退戦終了までに限定し近接戦闘を許可する。・・・頼んだぞ」

 

「了解だ」

 

「で、俺とかがっちに雅道さん。それから常森さん・須郷さん・東金さんで一気に空木岳を潰す」

 

「りょ、了解」

 

「さて、気合の入れどころってか」

 

「よし、行くぞ!!」

 

一気に出て行った特戦課を見て寂しげな表情を見せる雑賀譲二であった。

 

~蓼科山・征陸隊~

 

「・・・随分と、顔だけは逞しいのをそろえたもんだな」

 

「そりゃ最初に投入されると見込むならそうなるだろう」

 

「・・・敵の巣がやけに騒がしいな」

 

「あぁ。誘導弾も撃ってないのに、下手すりゃ・・・動きやがった!!総員防衛体制!!六期は常に壁を使って射撃できる分撃ちまくれ!!伸元と六合塚は両翼から狙撃!!俺を含めてコウと五期生は正面だ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

最初に狙撃組の射撃が始まり、遅れて長距離型ドミネーターを配備された六期組の射撃が始まる。一応は教官預かりとなっている分、初戦ではあるものの統率は取れているように見える。

 

「さて、俺たちも意地を見せるか」

 

そしてようやく通常の射程まで到達されると征陸と狡噛、五期生の射撃が始まった。ただの経験有無に酒類の弾幕によって防衛ライン構築までの時間稼ぎは成功した。が、敵の様子がおかしい。

 

「・・・とっつぁん」

 

「あぁ。発見されてすぐにもかかわらず、かなりの量が出てきている。その上幼体はまだ見えてない。その上ゲートの存在の有無すらわからん状態だ。消耗戦は必至か」

 

「課長が夜間戦闘に備えて無人機のサーチライト装備航空機を陸自から提供してもらっているが、流石に夜間戦闘はご免こうむりたいところだ」

 

「泣き言を言うな。削れるだけ削る。そうすりゃ敵も・・・諦めてくれるといいがな」

 

戦闘が進むにつれて防衛ラインが厚くなる一方で不安もまた上がりつつあった。

 

~空木岳・凪島隊~

 

凪島は実験すらしていなかった特殊空挺装備を利用し一気に巣へ強襲を行った。専用機から吊り下げられた特殊板の前に降下し、足場として軽歩とグライダーを活用し、一気に距離を詰めたのである。そして遅れて残りのメンバーが射撃位置についた。

 

「うわぁ・・・まじで殺る気しかないね」

 

凪島の十六本八組からなるワイヤー式ブーメランの常時展開による完全制圧戦闘。ブーメランを適度に操りながら、適時ドミネーターに持ち替えて、ワイヤーは胴体のフックに着けて維持し射撃も用いるという姿勢。うち漏らしこそあるものの、それぞれ片手で数えれるほどしか射撃すらしていなかった。

 

「あれが課長の本気・・・」

 

「でも、まだ何か多数の技を隠している様子にも見えます」

 

「まぁ、俺もあの規模は初めて見るけど、多分練習だろうね」

 

「練習・・・都市防衛戦に向けてと?」

 

「自分が今どれだけ動けて、どれだけ殺せるのか。東京防衛よりも成長し経験を積んでいる。今の凪っちはただ防衛するんじゃなく、どれだけ被害を少なく防衛するかで手いっぱいなんだろうね。あーあ。マジで訓練積んどきゃよかったって後悔しかねぇよ・・・」

 

だが、幼体が出てきたのを見て凪島が電磁パルスを発生させる手榴弾や地雷をバラまいて一気に後退してきた。

 

「常森。行けるか?」

 

「え・・・はい!!」

 

「・・・あとかがっち」

 

「ん?」

 

「VRで俺の動き見てしこたま練習してんだろ?やってみるか?」

 

「・・・ヴぇ、調べてたん?」

 

「どうする?」

 

「やっていいってことは、マジな時もOKって訳だよね・・・というかしろってこと?」

 

「・・・それは任せる。とりあえず練習だけやってみな」

 

「わかった。背後は任せたよ」

 

「左翼は常森。右翼はかがっち。どちらも離れすぎるなよ」

 

「「了解!!」」

 

常森は抜刀。縢はさらに予備のドミネーターを取り出して合計六丁を装備。両者それぞれ近接戦闘を開始した。その後ろから凪島その中心で二人を援護を軸に戦闘を繰り広げた。

 

「げぇ・・・思ったより飛ぶなぁ・・・おわっとっ」

 

軽口を叩きつつ、縢は冷静に地面と空中を往復しながら着実に巨大蟻を屠っていった。常森は片手で長物のドミネイトブレイドを振り回しながら隙はも片方の手に持ったドミネーターで補うという戦闘方法で少しずつ確実に敵を倒している。前衛が二人と前衛支援の凪島で完全に敵は進出できず、防衛ラインにいる雅道と須郷、東金はただ、見守るだけであった。

 

「征陸さんの十二連射式・・・一丁でも支給できないか掛け合ってみるか」

 

「自分も、できるだけリコイル制御の練習に費やした分、課長に掛け合って二丁式を申請してみますか」

 

「俺は三期で一応は先輩だけど・・・何がいいのかさっぱりだよ・・・」

 

ただし、ただ見守るだけでなく、自分の今後を考えていた。そうして戦闘は終わった。

 

「で、どうだった?」

 

「ん~VRは浮遊感の練習。後は軽歩の立体機動の応用。ちょーと怒られることも多かったけど、やっててよかったよ。てか、いつかは忘れたけど変な訓練設備増えたの、課長が仕組んだ?」

 

「さぁてね。で、常森さんはどうだった?」

 

戦闘までの様子と一変。しっかりと目上の人物への態度に切り替わっていた。

 

「えぇっと、勝手に変な動きをしてしまいました・・・」

 

「・・・ドミネーターの誤射は危険ってレベルじゃない。今回はまだ余裕がある幼体との戦闘だったから外れも少なかったが、成体相手となれば的もデカイが、余裕は完全に無い。銃口を向けて照準、発射と時間がかかっている上にリコイル制御にも振り回されて余計に腕への負荷がかかっている。まだ近接戦に射撃は禁止だ」

 

「・・・了解です」

 

「とりあえず巣の調査が済み次第陸自に引き継いで父つぁんたちのところへ向かう。先に全員で準備していてくれ」

 

「「了解」」

 

そう二人を見送って凪島は装備の中からビデオカメラを取り出した。

 

「・・・やはりか」

 

山の斜面にできた巣の内部は今までのとは違い球状にくりぬかれていた。地下にも天井もかなり凸凹が激しかった。

 

「・・・まだ潜んでいる・・・先があるということか。デモンストレーション・・・もしくは既に行動中・・・」

 

何かを呟きながら巣の内部を撮影しそのままカメラを収納して凪島も戻り、装備の洗浄を済ませた。

 

「課長。移動準備、既に完了です」

 

「ご苦労。先にこっちへの移動で使った機体で向かっていてくれ」

 

「了解。そっちは連絡?」

 

「あぁ。流石に空じゃノイズやらなんやらで安定しないからな」

 

そう言って凪島は陸自の連絡部隊にコンタクト。

 

「すみません。特戦課の凪島です。蓼科山の基地と連絡を取り次いでもらえないでしょうか?」

 

「ご苦労様です。至急連絡を入れます」

 

『こちら空木岳迎撃部隊連絡部。どうぞ』

 

「特戦課の凪島です。状況を教えてください」

 

『現在も特戦課を主軸とした迎撃戦を展開中。されど卵の孵化は確認されていません』

 

「ありがとうございます。こちらの降下直前に余裕があれば征陸特戦課係長に空木岳殲滅完了と伝えておいてください」

 

『了解。通信終わり』

 

「では自分も向かいます」

 

「ご武運を」

 

一同の敬礼で見送られて凪島も空木岳を発った。

 

「・・・マジでやばいな」

 

「あぁ。やれと言われても無理だろ。その上数も馬鹿げている」

 

「確か、最大で八本だったか。何もなしの一本でも無理だな。練習すらどうすりゃいいのかわからんぞ」

 

「・・・しかし階級章、おかしくないか?」

 

「割れた桜・・・あれが地獄の生き残り、か」

 

「縁起が悪いってレベルじゃないだろ」

 

「・・・でも官民問わず死者は多い。その上でのと思っているのなら・・・」

 

それを契機に陸自の雰囲気はため息ではなく、謎の恐怖に襲われた。殺気でもない、見えなく、計り知れない覚悟の強さ。その氷山の一角を見たのである。

 

『縢。様子はどうだ?』

 

『こっちは全員状態良好。そっちも口調が戻っている分、持ち直したかい?』

 

『・・・まぁね。だが気は抜けんぞ』

 

『だろうね。その上、こっちの何倍ものドミネーターを投入したとっつぁんの方が迎撃戦って状態、どう見てる?』

 

『・・・実物とデータを見ないとわからんな』

 

『そういや課長、最初の接近戦の時にやけに近づいてデコンポーザー撃ったでしょ?』

 

『さすがに気づくか。さっさと処理しておきたかったからな』

 

『戦闘中にゲートが卵を運ぶのを防いだと・・・んじゃとっつぁんのとこが長引いているのって・・・』

 

『おそらくな』

 

『だぁぁぁ!!ただ座って待つって納得できねぇ・・・けど、こうするしかねぇのも事実か・・・』

 

『緩急激しすぎだ。同感ではあるがな』

 

『そっちはどう?第二波発射は』

 

『わからん。何せ今回が実証試験二度目だからな。それに下手に六期に奇怪現象を見せるわけにもいかんしな』

 

『あ、そういう心配りはできるんだ』

 

『はぁ・・・。次はホイスト降下だ。一応、研修での経験はあるだろうが、ドミネーター適正者の実戦は記録上初だ。心しておけ』

 

『了解!!』

 

~蓼科山・征陸隊~

 

「ちぃ・・・数が多すぎるな。こりゃ雲取にあった巨大ゲートで運搬されてきてるのか?」

 

「近づくことすらままならん物量だ。誘導弾でこっちに収集させて散らばらないようにしているが・・・」

 

「今のところ熱源探知も全力でやって現在も離脱個体の発見無し」

 

「流石に六期の弾幕も薄くなってきたな。初戦の上物量も想定外だろうから消耗体力は予想外だろうな」

 

「親父、どうする」

 

「どうするも、こっちは言い方は悪いが釘づけにして守りに徹すりゃ勝ちだ。凪が・・・あっちもこの規模だとすると望みは捨てた方がいいか」

 

「おいおい・・・」

 

『征陸係長!!空木岳の敵存在殲滅完了とのこと!!』

 

「了解だ。連絡感謝する」

 

≪朗報だ!!空木岳に向かった課長の部隊がこっちに移動中だ。もう少しの辛抱だ!!≫

 

「たった今、識別信号に課長たちの反応が追加されたんだが・・・」

 

「相変わらずこういう時の趣味は・・・微妙なところだ」

 

『誰の趣味がなんだって?』

 

「オープンで話した俺が悪かったな。で、どうする」

 

『どうも何も・・・六期の状態は?』

 

「指揮や管理は教官に任せてある。確認には時間がかかるぞ」

 

『縢、常森さん。状態は?』

 

『・・・マジ?まぁ、大丈夫だ』

 

『・・・反省を踏まえて近接のみを厳とします』

 

『コウ、状態は?』

 

「・・・常森はともかく『それは後でだ』問題ない、どころか出し惜しんでたところだ」

 

『了解。コウを中心に左翼を常森さん。右翼を縢クン。サポートは両翼からの狙撃と中央にとっつぁん・・・持たせられる?』

 

「久々の最前線だ。保証はできんが、お前を別に割り振るってことは期待していいんだな?」

 

『あぁ。少なくとも戦力を減らせる』

 

「了解だ。・・・この際だ。特戦課を全員前に進ませるか?」

 

『・・・通達すらしてないですよ』

 

「んじゃ、特戦課全員。前に出れない奴はいるか?」

 

征陸の問いに誰も応えない、全員の無言が前に出れると訴えていた。

 

「どうだ?」

 

『はぁ・・・局長にも行ってない腹案だったんですけど・・・』

 

「ぶっつけ本番よりお互いにとってマシだ。そうだろ?」

 

『全く・・・現場指揮は任せるよ』

 

「ほんじゃ俺の位置に狙撃組に五期生と雅道を追加配置。どれくらい持たせれるかはわからんが、そっちに賭けるぜ」

 

『あぁ』

 

合流した凪島以外の空木岳部隊と合流し特戦課は前進。凪島は戦闘すらせずに一気に巣に肉薄した。そして巣内部突入直前に試験用デコンポーザー特化ドミネーターを稼働。もう片手にはカメラを持っていた。

 

「・・・形状が違うが、排除することに変わりはない」

 

撮影しそしてすぐさまカメラをしまってエネルギーを収縮中のドミネーターを両手で構えて発射した。

 

≪急速冷k・・・kkk・・・ザザッ≫

 

「リミッター解除でこれか。威力は申し分ないが・・・うわっキモっ!?」

 

入り口寸前で撃ったにしろ、天井にも地下にも巨大蟻は大量に詰まっており、その腹部が凪島に狙いを定めていた。

 

「なんだ!?」

 

唐突に巣の入り口に大量の強酸性液体が瞬間的に噴出。それを自衛隊の監視部が捉えた。

 

「・・・まさか、突入失敗・・・?ダイバー!!ダイバー!!≫

 

唐突な完全なオープン回線での連呼。六期はともかく特戦課は逆に慌てている監視部の様子で戦慄した。

 

≪こちらダイバー、無事です。ゲートは破壊。卵は不明。成体多数≫

 

≪了解した。通信終わり・・・斜面の崩落!?≫

 

≪戦域および、敵の展開規模の増大が想定されます。観測を厳に要請します≫

 

≪至急状況把握に努める≫

 

『見ての通り、壁に詰まってたやつらが動き出したから一気に崩れた。その分出てくる数も増える。見込みが甘かったな』

 

そう言いながら一気に狡噛の近くに跳躍してきた凪島。

 

『特戦課総員防衛ラインへ全力で後退』

 

「・・・あぁ、わかった」

 

「さて、俺は残るぜ」

 

「んな・・・っ!?・・・横を頼む」

 

「大丈夫か!?」

 

「速度を上げた分、ちとな。戦闘に支障はない。射撃を主体に殿だ」

 

「んじゃ俺もっと」

 

「縢!?お前は近接は・・・」

 

「けど、とりあえず凪っちがゲートを破壊させるまで前衛は張れた。後で特殊近接の課程作成を申請するかね」

 

「私も、援護します」

 

「・・・全員軽歩がAA以上なのが幸いか。できるだけ遅滞戦闘で退く時は一気に退くぞ」

 

「「「了解!!」」

 

残った前衛組が遅滞戦闘を繰り広げながら会話する中、征陸たちはようやく防衛ラインへ全員が後退したのを確認した。

 

「凪、特戦課全員の後退を確認した」

 

「わかった。退くぞ」

 

凪島の号令と共に三人は一気に防衛ラインへ走り、凪島は電磁パルスを発生させる手榴弾や地雷を展開してから後退した。

 

『後衛組は前衛にありったけ持たせていた洗浄手榴弾を投げまくれ』

 

「投げるって・・・気分悪いですよ」

 

洗浄液を噴射じゃ四人分の洗浄はすぐには終わらない。ならばと、洗浄液噴射と同時に補佐用の分解成分を展開する物質が込められた手榴弾を前衛組の周囲にばらまいた。おかげで汚臭成分は急落した。

 

「で、どうする?突っ込んだ挙句、後退か。後で始末書書くぜ」

 

「局長への申請遅延ってことで処理しておく」

 

「・・・すまん」

 

「まずは生き残ることだよ。とっつぁん。んで、六期の状態把握はできたか?」

 

「少しはマシってレベルが斜面の崩落で一気に瓦解だ。その上、お前が前に出張ればないって状況を想定しての戦闘か」

 

「やっぱ、課長も頭に響くか」

 

「あぁ。空木岳の戦闘の無茶とさっきの強襲で負荷が想定以上に大きい。ブーメランは二つが限度。性質上側面への戦力配置ができない以上、前線構築は現状不可能だ」

 

「現状・・・最悪の場合は無茶を重ねるわけか。・・・全員、マジで狙え!!凪っちに無理させんな!!」

 

突然の縢の怒号。何を意味しているかはわからないが、その勢いだけで全員の目つきがより一層鋭くなった。

 

「・・・ごめん」

 

「いつも無理させてるのは俺らだ。少しは荷物持たせてくれってこった」

 

「・・・六期の弾幕も増えてきたな」

 

「こりゃ教官が縢のを聞いて蹴り入れたな」

 

嬉しい誤算で六期の弾幕も増え、一気に迎撃態勢が回復し、主導権を握れるまでになった。だが、今回は敵が目視で完全に確認できなくなるまで幼体は一体も確認されなかった。

 

「どういう状況だ・・・って、ボスは?」

 

「監査部に直接報告だとよ。何か尻尾でも掴んだのか、それとも・・・」

 

「呼んだか?」

 

「どわっ!?何度も言ってるだろ、気配を消して近づくなって」

 

「こんくらいで気配がないっていうなら、もう一度鍛えなおしだぞ」

 

「勘弁してくれ・・・で、どこに報告したんだ?」

 

「局長に。だけど今統幕副長と幕僚監部がウチで緊急協議中だ」

 

「ってことは、今回のゲートは新種か?」

 

「あぁ。巣の形状は今回の二件はほぼ同じ球状。以前までのドーム型ではない」

 

「進化している、ってことか?」

 

「最悪、地面にまで伏せる手段を敵が見つけたってことか?」

 

「どの道後手にしか回れん上に、こっちで対処できるのは二つまで。三つは無理だな」

 

「緊急で二係を作るか?」

 

「人員と、ノウハウの共有に時間がかかる。ただでさえ雲取の温床育ちだ。安全な防衛ラインではまぁ、った変えるだろうが、防衛ライン構築までの防衛は確実に無理だな」

 

「完全にアレだが、要塞まで作って籠らせたやつは!?」

 

ただ狡噛が正体不明の人物への愚痴を言おうとしたん瞬間、凪島が肩を叩いた。そして気まずそうに征陸が顔を背けていた。

 

「・・・すまんとっつぁん」

 

「面向かって言われるのはあれだが、心の中では既に切り離してる。ある意味俺の方が異常だからな」

 

「いざとなったら制服組選抜も考えるか・・・」

 

「・・・なぁ、聞かせてくれ。どうしてボスはそんなに自衛隊にまで干渉できるんだ?」

 

「・・・今の大臣はウチの前局長からそのまま選挙で大臣へ。その時同時に自衛隊幹部のほぼ全部の組織改革で政治家じゃなかった分、自衛隊で一種の派閥を作った。といっても権力争いじゃなく、完全に国防第一でね、それは俺が保証する。とっつぁんも何人か顔見知りがいると思うよ」

 

「東京防衛時の指揮官が揃ってるわけか。確かに信頼はできるな。といっても俺も実際は聞きたいところだが、今は内より外だ。だが、落ち着いたら聞かせてくれ」

 

「・・・あぁ」

 

少し頭を押さえながら凪島は答えた。

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