対巨大生物対処局特殊戦術課 作:火薬好き
研究課五課
「やはり脳への負担が大きい。いくら模倣で切るとはいえ、流石に練習もなしに一度に八本も操ればこうなるとわかっていただろう?」
「・・・すみません」
「かといって、これだけの広さを必要とする練習区画なんぞ建てれるわけもなし。その上VRでの疑似操作も無理か・・・必要な物理エンジンやモデルなどを用意してさらに実用化するための時間と投資をするくらいならそのまんま実地演習の方が手っ取り早いのは皮肉だな」
「防衛戦まで耐え切れるでしょうか?」
「過負荷の原理どおりならば、と言いたいが実際に起こったのは数日間の意識不明状態。酷な言い方だが、複数の防衛戦への持久力を残しておきたいのなら、過度な前線維持はせず、仲間に託せ。肝心な時にお前が倒れることが一番の敗因となることぐらい、わかっているだろう?」
「立てない、という先生の立場はこんな感じなのでしょうか?」
「・・・そうだな。今の俺は後押しするしかできない。だがお前さんは犠牲を考えなければいつでも仲間を救える。このいつでもを今は温存するんだ」
「・・・はい」
「過度な戦力を作らないための安全装置でもあり、今や軍とみなされる自衛隊の防衛への立場向上の抑制のためのドミネーター適正。アメリカは軍がそもそも存在していたためこんなものなど必要がない。だが日本は長く自衛隊を軍と見なさなかったため、反発も大きかった。上はもう勝った気で次の争いに備えようとしている。だが、実際は戦力不足で勝てるかすら不明・・・。やはりろくなことにはならんな」
「珍しく、苛立ちを見せていますね」
「あぁ。こんなもんすらなければ、俺だって・・・いや、俺が立てないおかげでこうしてお前さんの補佐ができると考えればマシか。ある意味、俺以上にバックアップできる気概があるやつなんているのかね?」
「確かに」
そういって凪島と雑賀譲二は笑った。
「しかし、やけに静かだな。だが、嗅覚が捉えてるからこそ、焦っているわけだ。こちらも技術は進歩しているが、敵もまた変化している。厄介なものを贈ってきたものだよ」
「・・・局長からです。報告と相談に来てくれと」
「相変わらず大賑わい・・・これも皮肉か」
「立場上、当然のことでしょう。今後もお願いします」
「あぁ」
そういって凪島は振舞われたコーヒーを飲み干して研究課五課を出て局長室へ向かった。
「あぁ、きつい時期にすまんな」
「何か進展でも?」
「とりあえず、体調の方はどうだ?」
「・・・平時は無理は禁物だそうです」
「そうか。で、こっちはあまりよくない報告がきた。再研修の雲取山人員。コイツらがどっからかぎつけたのかは知らないが、六期へ配備を進めている長距離式ドミネーターをよこせと言ってきた」
「はぁ・・・。で、実戦の方は?」
「今まで要塞に籠っていた連中だ。六期よりも動けん・・・というかこの前連れて行った六期の方が強すぎないか?」
「長月教官の指導の賜物でしょう」
「研修教官への出向は最初こそ渋っていたが、現場を見たら鬼教官に早変わりか。変わってなかったか?」
「えぇ。むしろ前線にすら出れない分、燻っている・・・先の戦闘で噴火しましたね」
「アイツらしい。今は生産ラインを増やして通常式のドミネーターの基準をアメリカ製長距離式に変えようという動きは統括課や次官あたりからも来ているが・・・」
「友好国とはいえ、他国発祥の技術を基準にするのは信頼しづらいと」
「その上パーツ単位での置き換えとなると、生産設備すら変えないといかん。そうなると、一般市民からの不満を考えると・・・」
「今の極度な防衛への緊張感を刺激するだけでなく、下手に動いているとみれば加納さんへの不信任案すら出かねん」
「・・・既に、対抗馬も用意していて、隙を伺っている段階だと?」
「政府としてはほぼ独立した防衛機関を好ましく見てないのだろうな。かといって完全な国民総出で選んだ大臣を唐突に罷免はできないし、それが逆に自分の首を絞めることにもなる。上が足並みそろわない現状、勝てるかすら心配になるよ」
「特戦課の係分けはどうします?」
「そもそも指揮能力評価は高いやつは特戦にはいるが・・・今特戦課をバラすとどうなるか・・・現場としては?」
「・・・一係に狡噛。二係に征陸さん。三係に雅道さんで四係に六合塚さんと分けて、それぞれ人員を分配。空いた分再研修中の予備役から活きがいいのを回してもらえれば、何とか四つ同時にまで対処可能かと。後、牽制としても今のうちに作っておくべきかと」
「予備役をそのまま首都圏防衛に引き抜かれる可能性か」
「大抵の議員の支持母体は首都圏の名だたる投資家や企業家。当然そこの防衛を暗黙で保証しているから今の内閣は成り立っているとみていい。となれば・・・」
「いざ遠方で防衛戦となっても、安全の保障など誰もしてくれないから、見える戦力で保証するということか。逆に言えば先に特戦課の戦力を増やせばそのまま信頼できる戦力全てを防衛戦に連れて行けるわけか。一応人選は少し進めておいた。先の戦闘で結果を出せた六期の早期繰り上げはどうする?」
「通るんですか?」
「どの道後は実地演習だけで、座学は基礎は既に一年目で修了。体力訓練を随時こちらでフォローすれば可能だろう。後、まだ完全に腹案段階だが、加納さん含め幕僚監部からの提案の研修課程変更。これを今年訓練開始の七期からの適応に繰り上げようと言われた」
「期間研修ではなく、単位研修。教官の判断がさらに重要となりますが・・・そこは既に人選まで済ませているでしょうね」
「あぁ。六期の一部の繰り上げと同時に行えば上手く説明が付けれるからな。だが、一応現場としての判断を仰ぎたいとのことだった」
「こちらとしては・・ちょっと六期と研修中の予備役の選抜人員の名簿、見せてもらえます?」
「・・・相変わらず勘が良い」
そういって狭間は書類の束と記憶媒体の二種類の資料を渡して肩を叩いて凪島を見送った。
特戦課
「だぁぁぁぁぁ!!」
と、特戦課に戻ってきてすぐに資料に目を通した凪島がその紙の資料を勢いよく破った。
「・・・古典すぎるだろ」
「こうでもさせてもらえないと整理すらできないんですよ!!」
「戦闘では敵なしの凪っちでも、書類仕事は年相応だからねぇ」
「資料、破って良かったのですか?」
「これは破るための物。一応同じデータがこっちに」
「紙の資料は今や破るための物。ドラマですら古典的と言われているのに・・・で、何があった」
「一応、特戦課を分ける方針で動いている」
「分ける・・・人員はどうされるです?」
「とりあえず三分割。一係にコウ。二係にとっつぁん。三係に雅道さん。四係に六合塚さんの予定」
「私に、ですか?」
「正直ギノさんも当てての五編成がベストなんだけど・・・」
「縁故採用と隙を晒したくないわけだな」
「すみません・・・」
「どうやら俺の血筋は有能らしいな?」
「・・・いらんとこで誇らしくしないでくれ」
「で、何が課長をそう荒立てさせているのですか?」
「五期組は知ってるでしょ?六期の問題児三人衆」
「・・・問題児、でしょうか?」
「ある意味問題児だな」
「ちょっと入江」
「課長は会ったことが?」
「そりゃこの立場にいるなら研修中に顔出すさ。何か若すぎる奴が混じった制服組が来たことがあるだろ?」
「・・・そういえば」
「しかしあの子たちは実力で言えば完全に上澄みの中の上澄み。何が問題なのですか?」
「一発で俺の正体見破りやがった」
「そこ?」
「だけじゃなく、そこに四期の天塚が加わるとなれば?」
「無理ですね」
「俺も無理だな。ギノはなぜか絡まれてたし、縢も波長が合うんじゃないか?」
「胃が痛い」
「俺もパス、気骨がありすぎる」
「・・・なら俺預かりか」
「俺は会ったことがないんだが、課長以外で誰かピンポイントに表せないか?」
「課長がそれぞれの分野に分裂して、全員がある意味で能天気になっているのが三馬鹿。それを唯一操れたのが天塚ってくらい?」
「よし、課長に預ける」
「とっつぁん!?」
「気性で頭を悩ませているだけで、実力はあるんだろ?それに、一応俺もいるから安心・・・できるか?」
「ある意味問題だよ。絶対気質上近接課程申し込んでくるぞ」
「・・・俺、どっかに割り振ってくれないか?」
「どんな権限使ってでも却下」
「・・・なら逆に常森も残して近接特化にするか?」
「それが最善とは到底言えないけどそうなるね」
「とりあえず先生にさらに追加でドミネイトブレイドを用意してもらうか・・・」
とうとう机に突っ伏した凪島。しかし皮肉なことに人事で頭を悩ませれる分今は平和なのである