対巨大生物対処局特殊戦術課 作:火薬好き
特戦課一係
「いやぁコウ君。係長の椅子の座り心地には慣れた?」
「むしろ、今まで平気で座っていた課長に敬服だよ。一応主導は課長のまま。だけど課長は全ての係の出動に合わせて過度な転戦が確定。ゲートに対処できるとされる俺がいる俺の一係はともかく、他が大変だな」
「征陸のとっつぁんや雑賀の雅道さんは指揮は経験済みだけど、コウ君や六合塚さんはまだ実際に部隊指揮は経験なし。ある意味ギノさんが適正ありだけど、やっかみが来るのは俺でもわかるくらいだ。だけど、課長が」
「一応先達として実際の戦闘の経験講演で五期や六期にも顔を出したが、あの三人はやばいよ。最初はただ単に実力があるが、三人がそれぞれ特化していたから宝の持ち腐れだと思っていたが、全部を揃えたうえで骨太ってレベルじゃない課長を見たらあの三人が今どう成長しているか、不安と期待で半々だな」
「不安が先に来ている時点で・・・」
「だが、幸い天塚は四期で知り合い。その上、陸自からのわざわざ再研修を受けている。ノウハウは俺よりはあるだろう。あの性格が雲取には合わないのは遠くてもわかるが、燻ってないといいがな」
「・・・しかし、かなり見事な組み分けですね。一係には専任の実力を加味して六期生を主体とした実地演習のため。征陸さんの二係や雑賀さんの三係には実力はあるものの、態度が少々悪い人間の更生、切り落としを主体に。六合塚さんは女性でも能力があるとしっかりとポストがあると今後の人員に示すと同時に六合塚さんへの指揮経験のため」
「あの・・・ボクは射撃能力はB。戦闘では・・・」
「大丈夫。誰かにしっかりと適切な役割を割り振るのが課長だ。雛河くんもしっかりと課長は信じているよ」
「しかし、課長室がまさか局長室に移動とはね」
「監視されている課長が局長室預かりとなれば監視カメラすら付けれない。その上でダイレクトに出動命令を聞ける。後は俺たちに正当に局長室への抗議を可能としたというべきか・・・っと、来たようだな」
案内役を戦闘に十数人が入ってくる。
「一応のまとめ役の四期生、天塚弥生、以下五期生一人と六期の臨時研修修了員12名。本日付で配属されました」
「急な配属に応じてくれて感謝する。特戦課一係係長の狡噛だ。よろしく頼む。他の先任たち、自己紹介を」
「四期生の縢だ。よろしくね~」
「五期生の常森です」
「同じく五期生の雛河・・・です」
「では、そちらも自己紹介を頼む」
「私はいいか。んじゃ伊丹から」
「えぇっと五期生の伊丹耀司。趣味がモットー」
「・・・次、六期生」
「はいはいはーい!!六期生の六車宮古です!!」
「六期生のクラウディア・ブラフォードだ。父を含め紛争を理由に欧州から日本に来た。だが今は欧州よりも日本を守ろうとした父の遺志をついで日本のために戦うことをここで誓う」
「はぁ・・・御大層に。駒込・アズズ、この二人の手綱持ちだ。よろしく頼む」
「六期生の栗林志乃です」
「同じく富田章です」
「倉田武雄です」
「古田均です」
「黒川茉莉です」
「笹川隼人です」
「勝本航です」
「・・・はねっかえりがいなさそうだな」
「おやおや?痛い目でも見たいかい」
過去の件がある狡噛や行動には出なかったが一触触発であったのが周知の事実である常森は顔をそっぽ向けた。
「さて、これから局内の設備や行動規則などの説明が一から五までの全ての係合同で行われる・・・っと、ギノから終わり次第集合がかかった。全員ブリーフィングルームに集合だ」
「了解・・・って私は凪・・・課長に挨拶したいから残ってもいいかい?一応ここで研修を受けたわけだし」
「・・・まぁ、後から気になれば自由時間を費やすことになるぞ。まぁ、初見メンバーへの説明が主目的だからな。で、なんで課長に?」
「個人的な付き合いさね。で、課長は?」
「特戦課の人事改革に伴って課長室は局長室に併設されたからそこにいるよ」
「局長・・・狭間さんか。ちょうどいい一気に顔合わせができる。んじゃ行ってくる。お前たちも突っ走らないようにな」
そういってひらひらと出て行った。それと同時に五期生の伊丹と六期生もブリーフィングルームに向かった。
「天塚弥生。今思えば、最初出会ったときに感じた雰囲気、課長やとっつぁんに似ていたな・・・まさか」
「三係に行った須郷君と同じ陸自から再研修を受けた四期生。須郷君は年齢的に出てないと思うけど・・・天塚さんはまさか・・・」
局長室
各地に派遣された自衛隊の偵察報告を読みながら片手間に将棋をしていた狭間と凪島。そこにドアがノック・・・アクセスがあった。
「・・・このIDは陸自の一尉のパスだな」
「天塚でしょう、ほら」
「やーやー。天塚、推参ってね。古典すぎるけど。狭間さんも将棋するほどお元気そうで何より。凪も元気そうう・・・って訳じゃなさそうだ。って・・・その階級章は・・・」
「あぁ、まだ通達はしてないけど、特将補、陸自だと陸将補相当に昇進したよ」
「・・・あまり嬉しくないように見える」
「これから来る方々への配慮だ。指揮系統が混乱する可能性もあるからな」
「いや、東京防衛線で近接部隊が全滅した後、一区画にて二時間の単独奮戦で第二防衛ラインを無傷で構築させておいて、英雄事件もあった。今更すぎないか?って、これからくる方々?」
「・・・姉御。古巣との連絡はどうしている?」
「あぁ、古典的だが、年賀と季節の挨拶はしっかりやってるよ・・・て、まさか」
「噴火しかけの佐官殿らが大臣に直訴してウチ預かりで戦闘があり次第、順繰りで肩慣らしが予定されている」
「確か今の佐官以上の幹部は確かにそういった人物ばかりだな」
「で、顔見せは建前だろ?」
「まぁね。で、今はどこまで想定しているんだ?」
「包み隠さずいうと後手にすら回れていない」
「凪島?」
「がっつり現地で戦った間柄。その上、現地での行動は彼女から教わりましたので」
「どれだけ師匠がいるんだか・・・」
「その上私の初の子分ですんで」
「・・・あの時のお前がそうまで吐露しているとは加納さんも驚くだろうな」
「あの時はお互い酒が飲めない未成年という立場で意気投合したんですよ」
「んじゃ今いる常森や六期生は凪からすれば渡りに船・・・課長権限で未成年を集めたか?」
「・・・まさか。っと、そろそろギノさんの説明会も終わる。課長として顔見せに行かないとな」
「・・・ついに、お前と同じ年代まで戦場に立つことになったな」
「どの道、それを防げなかった我々全員の責任です。今の我々にできるのは今後防衛よりも犠牲をなくすことに尽力することです。犠牲を減らせれば防衛の成功にも繋がりますので」
「あぁ。そうだな」
「んじゃ私も撤収っと」
そういって凪島と天塚は局長室を出た。
「で、雲取ではその気概を失わなくて何よりだ」
「ほお、私がそんな軟弱者だと?」
「冗談だ。で、特別に推薦してきた伊丹って人。何か能力でも?」
「能力は平均的。だが時折見せる義侠心、その上怠け者だ」
「ただの怠け者ではないな?」
「あぁ。雲取はレーダーで感知しているものの、不意の遭遇戦が当然だった。だが、奴は誰よりも迅速に動けていた。能ある鷹は爪を隠すといったところだろうな」
「そうか・・・ほかにも頼んでいないのに色々と人選リストの原案を作ってくれていたこと、感謝しているよ。おかげで一気に編成が済んだ。後は実戦で動けるかどうかだな」
「征陸さんの二係と雑賀さんの息子の三係は言動こそ強い節があるが、持っている気骨は上の好みなはずだろう?」
「まぁな」
「しっかし、六期生は同じ年代なのに階級章と言いき章といい、腰を抜かすだろうね」
そう雑談をしながらブリーフィングルームについた。
「課長、どこで油を・・・ゲッ」
「随分な挨拶だなぁ、宜野座」
「さてっと。こちらの要請に答えてくれて局長に代わって感謝を。特戦課課長の凪島特将補だ」
「・・・将補!?」
「若い・・・よな?」
「それに、胸のき章、東京防衛戦の生き残りに配られたときに公表された物と類似していますね」
「ただ者じゃないことは確かだが・・・」
「若すぎる」
「・・・言いたいことはそれだけか?」
腕組みをしていた凪島がわずかに指を動かしただけで室内の雰囲気が一変した。ここにいる全員は一回は実戦を経験している。それに似た雰囲気ではあるが、生易しいものじゃなかった。
「・・・指一つであの戦場の再現とは、恐れ入るよ」
「先日までは二佐だったが、うちの課、というか俺預かりで幕僚監部の運用部や防衛計画部をはじめとして、陸自の佐官の一部が防衛戦を想定して事前に小さくとも戦場で肩慣らしをすることになった」
「幹部の道楽ですか?」
「今、発言したのは誰だ?」
今までとは違い完全な怒気を纏った凪島の問いに対して起立したのは二係預かりとなった五期生の柳田だった。
「先日将補になられたということは、こられる佐官の方々との軋轢を生まないようにするための肩書。人事による昇進など・・・」
「おい、口を慎め」
「姉御?」
六車達は今まで見たこともない怒気を放つ天塚に困惑していた。
「私は陸自出身で雲取山にいた。階級を重んじるお前の意見ももっともだ。だが、コイツの唯一の保持者である特殊潜入部隊き章及び東京防衛の功労賞は伊達じゃないぞ。疑問があるなら、今すぐに巣ができしだい、潜ってみるか?」
「・・・っ」
「今ここにいるメンバーはこれまで積んだ経験や射撃能力などの実力を加味して戦闘に耐えうると見て招集した。雲取にいたメンバーに行っておく。特戦課の任務は敵とにらめっこなどではなく、見つけ次第こちらから仕掛ける強襲戦だ。怖気づく程度なら今すぐに転属希望を出せ。すぐに了承されることは保証する。他に何かないか?」
凪島の問いに誰も応えずそのまま特戦課全体の顔合わせは終わった。
特戦課一係
「狡噛係長!!」
「なんだ?六車だっけか」
「六車です!!一係で近接課程を行っていると聞いてぜひ私も受けたいんです!!」
「私も、ぜひお願いします」
「駒込?手綱が握れてないぞ?」
「仕方ないだろ。変わってくれるなら変わってほしいんだが?」
なぜか一係にいた凪島と駒込が普通に皮肉を叩きあっている。
「・・・知り合いか?」
「研修の見学で行ったときに身バレしてな。一日だったが、年齢も同じだからかなり打ち解けてな」
その光景を後ろからにやけ顔で見ている天塚と少々微妙な表情の常森だった。
「狡噛さんは既に近接課程を修めたと聞いています。ぜひご教授を!!」
「・・・六車、年上に対してはきっちりとしているんだな」
「実家が厳しくてな。礼儀作法やら武芸やら叩き込まれているのは、言ってなかったか」
「ブラフォード・・・英雄事件の時の濡れ衣で被害を受けた人の中にその名前があった気がするな」
「あぁ。クラウディアの父も日本の自衛隊で奮戦したと聞いている。だが、英雄事件のおかげで・・・」
「当の本人は曇ってはいないのか?」
「復讐となれば日本になるが全くそんな考えは持っていない。その上日本を守るという決意は私が保証する」
「そうか。で、手綱持ちはこのままでいいのか?」
「・・・あぁ、確かにな。狡噛さん」
「・・・今度は駒込、だったか」
「私も近接課程を受けたいと思っている。だが、私たち三人は興味本位などで希望しているわけじゃない。私たち三人は東京がそうだったように近接部隊をけしかけて、自分たちは安全圏で戦うくらいなら、命令違反をしてでも、前衛のそばで全員で助かるようにしたいんだ。戦場も知らない新米がどの口をというが・・・目の前で仲間を死なせたくないんだ!!」
そういう駒込の雰囲気に友であった六車とクラウディアまでが困惑していた。
「相駆らわずだねぇ」
ただ一人、天塚だけが嬉しそうに見ていた。
「あー、駒込。あんまり人物観察は得意じゃないが、目つきは・・・戦場に立つときの課長に似ていることから覚悟は決まっているのだろう。だがな、俺は弟子であって、教官じゃないんだ。頼むなら、そこに座っているボスに頼むんだな」
「・・・どういうことです?」
「近接課程は誰が認可すると聞いている?」
「現場の判断を踏まえて研修の許可が下りて、最終的な認可は局長がすると・・・」
「なんだが、実際の判断も、研修・指導をするのも、局長に申請を出すのも、全部課長がやっている」
「課長ー!!」
「・・・悪いが、状況が落ち着くまで却下だ」
「どうして!?」
「研修は座学だけでなく、実地での実戦も数回は必要だ。だが、いつ敵が都市部近くに現れるかすらわからない現状、中途半端に知識を与えるのは逆効果だ。その上、まだ着任初日でどのような任務をするかの記録すら見ていない。まずは座学だけやっておけ」
「・・・わかりましたぁ!!」
「後は近接課程を目指すからと体力的な訓練は抑えておけ。いつ出動するかもわからん状況で体力温存は基本だ。いいな?」
「了解!!」
「さて、他の係の方にも顔をだすかね」
そういってひらひらと凪島は出て行った。だがその背中を駒込を怪訝な目で見ていた。
「アズズ、どうしたの?」
「ブリーフィングルームに入った時の落ち着き様、その後の威圧的な雰囲気。そして怒気の籠った圧。そして今のような気軽な態度。本当に一人の人間か?」
「んー。アズズの言い方は相変わらずわかりづらいよ」
「・・・狡噛さんはどう見ている?あれが全て課長の姿なのか?」
「どういうことだ?」
「一人の人間に、多数の顔。多重人格じゃないかって。圧に関しては防衛戦の経験から、気楽さはウチの教官や似たような人からの影響。さらに年齢に合わない立場と過酷な経験。変化が出るには十分な状況だ」
「・・・そうか。だからなんだ?」
「どういうことです?」
「人格が分かれていたとしても、今まで近くで。特に近接課程の時はみっちり仕込まれたし、個人的な付き合いもあって色々と見てきた。だが、課長の根底には必ず国を守るという意思がはっきりと表れていた。その上、理由はわからんが、課長は健康管理なのかレントゲンや血液検査、カウンセリングを全部月一で受けている。何か問題があるのなら、部下にも通達されるはずだ。だから、今は心配するよりも戦いに専念しろ。お前さんは特にあの二人を守らないといけないんだろ?」
「あぁ。そのつもりだ」