対巨大生物対処局特殊戦術課   作:火薬好き

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第一話

特戦課課長の凪島は最初期に起こった東京防衛戦の余波で対処できずに放置されている雲取山にある五か所の洞窟の威力潜入調査に赴き、特戦課は係長である征陸が臨時で課長代理として行動。そして配属する五期生の迎え入れを行った。

 

「本日付で配属となりました常森朱、以下六名、到着しました」

 

四月一日。常守朱・東金朔夜・雛河翔・入江一途・如月真緒・須郷徹平の五期生六名が着任した。

 

「あぁ、ご苦労さん。とりあえず俺たちの仕事の資料には目を通しているか?」

 

「はい。数時間ごとに行われる自衛隊の航空偵察隊から敵巨大生物の存在を見つけ次第急行し、殲滅すると」

 

「そうだ。雲取山での実地演習はどうだった?」

 

「まぁ、戦闘自体が余り無いと聞いていたので実際は・・・」

 

「一応、私は遭遇戦の時に参加し、実際の戦場を見ることができました」

 

「確か東金か。で、どうだった?」

 

「VRなどで再現される物とは全く別物。直観ですが、本当に同じ生物なのでしょうか?」

 

「まぁ、そこは確かに疑問に思うよ。とりあえず正式に着任したことでウチの本気の練習施設が使えるようになった。ドミネーターは使えんが、VRの模擬射撃を含め研修所とは全く違う形の訓練、そして実戦に一番近い形で訓練を積める。だが・・・」

 

「何か?」

 

「通常は訓練。出動となれば戦闘。だが寝れるタイミングは不明だ。訓練は当然必要だが、休めるときには休んでおけ。コイツは東京防衛戦に参加した俺からの助言だ」

 

「・・・地獄の東京」

 

「なぜあなたが課長ではないのですか?」

 

「ちょ、常森さん!?」

 

「あー・・・そっちにも目を通したのか」

 

「課長不在・・・ということは学校に?」

 

「・・・課長は陸自との合同調査に出動中。一か月は帰れんだろうと言っていた」

 

「あー、新人君たち?」

 

「おい、縢」

 

「ウチの課長。まぁ、ここにいる連中の中・・・というか絶対関係者全員の中で一番若いけど・・・マジでやばいから」

 

「・・・それは怒らせたら、ということですか?」

 

「んにゃ。ただ単に今ここにいる俺たちが倍に増えた戦力でも課長のほうが先に敵を潰せるってだけ。ま、実際に見た方が早いよ、これは。で、とっつぁん、他に何かある?」

 

「とりあえず聞きたいことはすぐに誰かに聞いた方がいい。俺たちは文字通り命がけで仕事をやるわけだからな。変な齟齬なんてあった日にゃ、仲間も道連れに消えちまうからな。とりあえず席は割り振ってあるからそこでウチのサーバーにある戦闘記録を読むなり訓練なりするといい。あぁ、休憩でも構わんぞ」

 

「給料泥棒を促進させてどうするんだ」

 

「あー・・・、それとアレ」

 

征陸が指をさしたところにはカメラが設置してあった。

 

「上にはうるさい連中ばかりでな、ウチの課の行動や音声はすべて記録されているから気を付けるように」

 

そう言って話を締めくくって五期生はとりあえず自分の席に座って記録を読むことから始めた。

 

【雲取山】

 

『こちらダイバー1。これより既存の記録地帯を抜けて未到達地帯へ入る』

 

『わかった。今のところ映像に不備はない。都度面倒な注文が入るだろうが頼む』

 

『ソナーには?』

 

『今のところ反応なし。だが逆に反応がなさ過ぎて不気味すぎる』

 

『・・・取り合えず通信終わり』

 

「ふぅ・・・陸自の幕僚監部主導の調査だけど・・・実際はすでに五か所の洞窟がすでに中央で合流可能。ただソナーでの予測探知だからって一人でほん投げないでくれないかねぇ・・・」

 

暗い洞窟を凪島はゆっくりと進む。光源は長時間発行できる蛍光スティック。しかし進めば進むほどより下層部へと行くのが酸素濃度などから感じ取れていた。そしてようやく、個人で想定した物を見つける。

 

『こちらダイバー1。ゲートを見つけた。映像は映ってるか?』

 

『あぁ、確認したが、大きすぎないか?』

 

『えぇ。自分も初めて見る大きさです』

 

『破壊はできそうか?』

 

『どうやら・・・っ!?』

 

『どうした!?』

 

『・・・蟻って繭に隠れますっけ?』

 

『いや・・・というか卵の反応すらないのはおかしすぎるぞ。何かないか?』

 

『・・・サーチライトの使用許可を。ただし、かなり厄介な物が映る可能性が高いです』

 

『・・・許可する』

 

許可を得て凪島は近くの壁をサーチライトで照らした。そこに移っていたのはほぼ壁と同化していた巨大生物の蟻だった。

 

『なっ!?熱源探知もすぐに!!』

 

『いや・・・しない方がいいでしょうね。コイツら・・・ただ眠ってるだけかと』

 

『眠っている?』

 

『少し場の空気自体が変化した。光源で刺激が受けたと思われます。おそらく何体かは動き出す可能性あり』

 

『・・・撤収だ。ここで唯一潜れる戦力を失うわけにはいかん』

 

『了解。全速で撤収します』

 

そう言って凪島はありえない速さで走り出して蛍光スティックの明かりを頼りに一直線に地上を目指した。

 

≪こちら陸上自衛隊雲取山監査室。雲取山全域を戦闘態勢へ移行。以降48時間は戦闘待機とする≫

 

一方で地上では即時に防衛体制に入った。陸上自衛隊は火器、ドミネーター適正者はドミネーターを装備し待機に入った。

 

「ふー。空気がうまい」

 

『こちらダイバー1。地上に出た。洗浄班を出してくれ』

 

『わかった。すぐに向かわせる。それから洗浄が終わり次第すぐに監査室に来てくれ』

 

『了解』

 

洗浄。巨大生物の蟻は強力な酸を腹部から噴き出すと同時に洞窟内ではフェロモンと分類される成分が多く充満しており、両者はともにかなりの汚臭がする。一応耐酸性の装備を纏ってはいるものの、臭いは防げないため、消毒成分を含んだ洗浄液で装備を洗浄する必要がある。

 

「ふー、ダイバー1改め特戦課の凪島です」

 

「あぁ、ご苦労だった」

 

凪島を出迎えたのは陸上自衛隊雲取山監査室の室長、本位。そして室内にはかなりの人員が座っていた。

だが彼らの視線は共通して未成年だからと侮っているような目線は一つもない、いわば完全に凪島を未成年ではなく正式な人員として見ていた。

 

「いえ。それより、陸自・・・自衛隊は今後どうされますか?」

 

「あぁ、それを踏まえて協議したい。大臣の意向もあってメディアに露出する前に整理だけでもしておきたい。それで、あれはいったいどういうものだと思う?直観でもいいし説があるならそれで構わない」

 

「・・・現物を見た感じ、あれは仮眠・・・コールドスリープ、仮死状態に分類される物かと」

 

「仮死状態・・・数は?」

 

「ライトで照らした部分だけでもみっしり詰まっていたわけですし、最悪、壁もまた仮死状態の個体が重なってできている可能性も考慮すべきかと」

 

「恐ろしいが、戦力も把握できず、その上五期生も着任したばかりのこの時期に大規模な戦闘など・・・。それと、君が提唱していた論文から推測するとあのゲートは・・・」

 

「えぇ、通常発見される卵運搬と思われる物の大きさではなく、大きさから成体の移動も可能かと思われます」

 

「室長。この場合、今まで地上に姿を見せていた個体を、既存固体か特殊個体かだけでも分析する必要があるかと」

 

「それはそうだが・・・どう判別する?」

 

「・・・装備はすでに用意しているので鹵獲要請があればすぐにでも」

 

「・・・さすがは零期唯一の生存者。いけるか?」

 

「えぇ。それにソナーにも反応が出ているとおり、出てくるかと。そして先ほどのライトの刺激で起きた個体であれば、確実にサンプルとしては初です。ですので、半数はウチの局で受け取りをしたいのですが」

 

「あぁ、そうでないとな。しかし戦闘に分析、そして交渉。独り言だけど・・・やっぱ大臣の申し出受けた方がよかったんじゃない?」

 

「来るだけバッチコイですけど・・・ウチ、ご存じの通り派閥争いが面倒でして・・・」

 

「政府といい、過去の英雄事件といい・・・権力、実績をしっかり認識しない人間はロクなことにならんな」

 

「・・・そろそろ自分も出ます。出現予測位置の防衛ラインに射撃静止を要請します」

 

「わかった。こちらで出しておく」

 

「では」

 

そういって凪島は監査室を出てすぐに装備を整えて出現予測位置に向かった。

 

「あれが狭間局長の虎の子か」

 

「噂以上・・・室長。今後正式に幕僚監部を通じて情報交換の協議会をすべきかと。政治的理由で最高戦力をひっきりなしに操作されては今後・・・」

 

「それは大臣も同じ考えであり、ここの全員が同じ考えだろう?」

 

本部の問いに全員が頷いた。

 

「・・・いくら予備人員を確保するための12歳以上の制限なしの適性検査を実際に通ってしまって今に至る、か。五月には予定通りなら米国へ援助派遣した三期生が帰ってくる。それまでにできるだけ情報はそろえておくぞ」

 

「はっ!!」

 

「室長。巨大生物が予測位置にて出現。すでに凪島特戦課長が戦闘中です。映像も来ていますがどうされます?」

 

「一応記録はしておいてくれ」

 

送られてきた映像では実際に初観測の茶色い個体の蟻を相手に単独で鹵獲用ブレードを振るう凪島の姿があった。現在はドミネーターの弾丸を打ち込むことによって細胞自体を瞬間壊死させて消滅させているが、鹵獲は旧式の電流刃による物理的切断と切断面へ電流を流すことで姿かたちを残したまま蟻を殲滅する特殊行動だった。そして瞬く間に凪島によって出現した個体は切断されて研究用サンプルと化した。

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