対巨大生物対処局特殊戦術課   作:火薬好き

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第五話

雲取山大空洞攻撃作戦発令日

 

『機材の最終点検異常なし。正常作動を確認』

 

『電磁パルス防壁、正常に稼働中』

 

幕僚監部主導で着々と準備が進められていたが、五か洞窟の一つから苦情が入ってきていた。

 

『こちら第五ポイント。戦力の引き抜き。到底承服できません』

 

「俺から話す」

 

そう言って加納は通信を始めた。

 

『一体どんな基準でそこの戦力を計り、その上でどう結論付けての苦情かね?』

 

『防衛戦力の半数を引き抜かれ、なおかつ補充が分隊規模。大臣はここを捨てるつもりなのですか?』

 

『こちらとしては日夜来るかわからない敵を甘く見て訓練すらまともに続けてない戦力とは到底釣り合わないほどの戦力を回した。送った部隊は日夜先達が命すらかけて得た情報をもとに日夜訓練を怠らない精鋭だ。君たちはどの程度の訓練を積んだ?』

 

『・・・ですが半数が五期生。経験で言えば・・・』

 

『作戦前にも何度か出動していると報告を受けているが、安全な防壁と即席の防壁で戦った者。どちらが結果を出すか。意地があると言うのであれば結果で示せ』

 

そう言って加納は通信を終えた。

 

「室長。この件についてとやかく言うつもりも責任を問うつもりはない。逆に今まであの程度の気概しかない連中でよく持たせてくれた。ならば俺は出せる全ての権限を使ってでもここを粉砕し後顧の憂いをたつ」

 

「すいません。通信・・・それもここ宛のオープンチャンネルです」

 

「差し障りがないのなら繋げてくれ」

 

『凪島です。かなりの若輩ながら一つお願いが』

 

「・・・お前の願いはロクなためしがないんだが?」

 

『では助言に変更で。今はご自身の部下よりもご自身の上官のフォローを優先すべきかと』

 

「・・・今回だけでなく、非常事態のキーマンは常にお前だ。まずは自分の心配をしろ」

 

『あなたが、そこにおられるあなたがたが外を守っていただき続けていただける限り、自分は前で戦うことができます』

 

「・・・そうか。成功よりも帰還を最優先にしろ。これは命令だ」

 

『了解』

 

通信が終わると対策室の視線が狭間に向けられる。

 

「・・・ようは、俺たちにホイホイと前線に出るなということか」

 

「大臣が戦場・・・それも一区画に出ておられる時点で・・・」

 

「醜いが外が危険だと言われ続けて東京防衛後は出れないのであれば、内部改革に努め、成果を得た。ならば次は国民から選ばれた以上、戦場で結果を残す。幸いこれはそちらが整えてくれていたようだからな。時間だ。ダイバーに伝達だ」

 

「コウ。どうだ?初潜入が大規模洞窟の感想は?」

 

「とっつぁんに言われたよ。ビビる時点で親父を超えられないと」

 

「・・・判断基準はこちらで決めているが、それは言っては意味がない。ならアドバイスだ。超えることを目標にして、その後はどうする?そのことを考えておけ」

 

「先か・・・」

 

『こちら対策室。予定時刻となったため潜入開始』

 

「了解。ダイバー1、ダイバー2。潜入する」

 

そうして凪島と狡噛は暗い洞窟を蛍光スティックだよりに進んでいく。

 

「・・・この壁自体が岩に擬態した蟻の可能性は?」

 

「無いな。もしそうならすでに襲われている。何せこの耐酸性防具には特殊な電磁波も使われている。電磁波系統を嫌う相手からすれば絶大な目覚ましになるだろうからな・・・ついたぞ」

 

「・・・でかいってレベルじゃないな。破壊できるのか?」

 

「斬るのはこちらでやる。ドミネーターを構えていつでもデコンポーザーを撃てるようにしておけ」

 

「了解」

 

そうして凪島は背中に背負っていた長物の刀で目にも止まらぬという領域すら超えた怒涛の剣閃を放ち続けた。そうして身長的に届かない上部はともかく、射程範囲のゲートは数秒で塵レベルにまで消滅していた。

 

「コウ!!」

 

「デコンポーザー、起動する」

 

≪執行モード、デストロイ・デコンポーザー。対象を完全排除します≫

 

カートリッジを既に交換済みの狡噛のドミネーターが変形しデコンポーザー発射状態に入ると同時に、

凪島も二丁のドミネーターのカートリッジを器用に交換し、二丁体制でデコンポーザー発射に入った。

 

「嘘だろ・・・?」

 

「実行できるからこその今の俺の立場であり、俺はどんな手段も使う」

 

三発のデコンポーザーを受け、観測史上最大の物質消滅現象が起こり性質上、狡噛が少し爆風に引き寄せられそうになるもそれは事前に予測できていた凪島が繋ぎ止めた。が、まだ危機は動き出したばかりだった。

 

「おいおい・・・そこら中から気持ち悪い気配ばかりだ」

 

「一気に空洞入り口まで戻るぞ。コウは一直線に目指せ。こちらは確認と殿とあるからな。こっちは気にせず行け」

 

「・・・了解だ」

 

狡噛が撤収している間、わずかな光源と気配で動きが活発な個体からできるだけ凪島はドミネーターで排除していった。

 

「ボス、ついたぞ!!」

 

「よし、取り合ず合流だ」

 

そして目にも止まらぬ移動速度、ドミネーター適正者なら必須の軽歩という特殊技能で一気に狡噛と合流そしてゲートがあったであろう位置を見て、安堵の息を吐いて、一気に地上を目指しながら通信を始めた。

 

「こちらダイバー1。ゲートの破壊に成功した。しかし内部の個体が動き始めたことにより落盤の兆候が見え始めた。注意を」

 

『よく成し遂げてくれた。戻り次第、通常戦闘に移ってくれ』

 

「了解」

 

そして二人が地上に戻って少し後に一気に空洞が落盤。今まで見えていなかった全貌が明らかになった。

 

『壁が・・・蟻の形を・・・それも何重にも・・・』

 

『泣き言をいうな!!引き続き航空隊は敵の動向の観察を頼む。もし電磁パルス防壁を超えそうな個体は30mmの使用を許可する』

 

『コピー。敵の観察および防衛線突破個体の排除を目標に』

 

『こちらポイント04。敵個体に変化あり!!茶色の外郭と思われる物が変質。通常個体に似た姿に変化あり』

 

「どうやら、茶という個体は眠っている、もしくは寝起き直後のみの姿で、攻撃を受けたと感じたら即座に戦闘の姿に変化するというわけか・・・鹵獲はどうする」

 

「変化通常個体に似た姿に変化。それを目視、映像で記録でき、なおかつ今はどの区画でも制圧射撃中です。鹵獲となれば射撃中止が必要となりますので今回は見送ったほうがよろしいかと」

 

「そうか。ところで、狭間。どのタイミングで出る?」

 

「・・・今出ても政治家、上層部の勝てる戦で実績作りととられるかと。出るならば腑抜けが出ることを想定して激を飛ばすためにも、我慢を」

 

「すでに戦闘は始まっているが・・・特戦課の射撃は優秀すぎる。場数はかなり少ないが、よほど一つ一つから着実に積んでいるようだ。その代わり、既存の防衛部隊のドミネーター適正者の射撃は・・・豆鉄砲か」

 

「・・・どうしますか?」

 

「これより指揮権を通信部に移譲。俺を含め、今まで政治的判断で安全な指揮所に抑えられていた将官・佐官の諸君。準備は対巨大生物対処局が整えてくれた。弱腰の奴らを今まで戦争によって得て、磨き上げられた国を守る気概を持って穴に落ちない程度に盛大に尻を叩いてやるぞ」

 

「おう!!」

 

そういって加納を先頭に全員が入り口に用意されていたドミネーターを受け取ってそれぞれ予定通りのポイントに向かった。

 

≪こちら防衛大臣の加納だ。いくら何でも数をそろえてこの体たらく。俺は安全地帯で収まってる玉じゃないからな。勇猛旺盛な奴らをそれぞれ送った。巨大生物との実践は諸君らよりは劣るだろうが、気概に関しては雲泥・・・石器と銃レベルで違う。先達の気概で本来の任務について学びなおすように≫

 

「・・・これ、まじですか課長」

 

「そりゃぁ、血気盛んッてレベルじゃないほど大臣以下幕僚監部・・・幕僚関係者は大抵こうだからな。俺らの方には来ないが、マジで経験少ないのに戦力は半端ないからな」

 

「落盤のおかげで敵の残存数がわかっているなら後は誰がより多く狩り取るかだな」

 

「こっちは奴らに特化した部隊だ。上官?立場?関係ないね。難癖を受けて後ろで燻っていた連中になど負けられんぞ。必要と見れば各自の判断でリミッターを外して一気に叩き込め!!」

 

「はっ!!」

 

そうして特戦課の区画と、勇猛旺盛な大臣以下将官・佐官らの怒涛の弾幕で現れた個体はすべてわずかにでも地上に頭を見せた個体から瞬時に殲滅された。

 

「どうやら、通常の代物じゃなさそうだな」

 

「継続火力よりも弾速を強化しています。そちらの方が性に合うのでは?」

 

「あぁ、、気配りといい、至れり尽くせりだ」

 

「では今後はどのように?」

 

「とりあえず経過観察は監査室に引き続き任せ、俺は今回の戦闘記録を持って幕僚監部を引き連れて今後の部隊再編に手を付ける」

 

「そのことですが、出発前に凪島から伝言が」

 

「なんだ?」

 

「安全が確認されても雲取山のドミネーター適正者および自衛隊の人員は次の空洞対策に新たな特別カリキュラムを受講を考えてほしいとのことです」

 

「・・・なるほど。今ここで部隊を解散すれば宙ぶらりんとなった部隊を上が常時防衛戦力として引き抜きく可能性を潰すために予備役として一応顔を立たせるために受講ということで手の届く範囲に置いておくべきか。わかった。そこも熟慮する」

 

そういって珍しく気分上々な加納一派は防衛省に帰っていった。

 

そして変わって特戦課

 

「まさかマジで大臣すら出てくるって・・・」

 

「それが大臣以下骨太ってレベルじゃない気概の持ち主の集団。一種の蹴り上げ部隊だな」

 

「蹴り上げって・・・」

 

「課長。一つ山場は越えました。これからはいつも通りの行動で?」

 

「いや。おそらく今回の結果でここの部隊は再訓練となるだろう。その特別マニュアルの作成を依頼されるだろう。今回のような大規模な射撃戦を踏まえて戦闘記録を書いておいてくれ」

 

「了解!!」

 

「ボス」

 

「コウ・・・まぁ、聞きたいことはわかるよ」

 

「なら、どうなんだ?」

 

「・・・あえて言うが、全然親父さんの姿すら捉えていないからな」

 

「そんなに・・・違うのか?」

 

「何をもって超えたとみるか。酷だか、死んだ人間と張り合うことすら無理なんだ。それでも固執するのか?」

 

「・・・確かにそうかもしれん。だが、認められることで踏ん切りがつくって、情に訴えてみるか」

 

「ならなおのこと未熟と言ってやる」

 

「・・・そうか」

 

「・・・課長、言いすぎだ」

 

「冷酷、頑固なんでもいい。俺は一々他人と比較してそれを上回ろうとする人間はいいとは思わん」

 

「なら・・・」

 

「ギノさん。アンタはどうなんだ?コウと同じで超えたがっていた・・・見下ろしたかっただろ?」

 

「まぁ、な。だが、実際は違った。親父も俺も一人の人間だ。超えるってことは同じ立場、同じところで相手以上の結果を出してようやく勝てる。そう気づいてからは親父の手綱を握ることに専念することにした。課長の口癖の発想の切り替えか」

 

「ならコウには言うな。自分で気づくからこそ意味がって、ようやくそこでコウの場合は親父さんを超えられる」

 

「わかった」

 

「さて、今度は歓迎会だな」

 

既に今は四月末。来月には故郷を離れ救援任務に就いていた者たちが戻てくるのだから

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