半人半竜のヒーローアカデミア   作:十希

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はじめに


皆様、いつも本作品をお読み頂き、誠にありがとうございます!

なんとか1週間以内に投稿できました。
毎日毎日頑張ってます。


お気に入りしてくれた下記の方


氷聖 ゆうきち demonskopp ヴィルキス 暇人弐号 アルシェス


本当にありがとうございます!


また、いつも誤字報告してくださる方ありがとうございます!
感想や評価もお待ちしてます!


それでは本編をお楽しみ下さい!



仮免編
『信頼されるために。家庭訪問!』


 

 

『ヒーロービルボードチャートJP!

 

事件解決数!社会貢献度!国民からの支持率など諸々を計算し年二回発表される現役ヒーロー番付!

 

不動のNo.1がまさかの!日本のみならずヒーローの本場アメリカでも騒然!

 

オールマイト、本当の姿!体力の限界!事実上のヒーロー活動引退を表明!

 

そして

 

No.4ヒーロー ベストジーニスト!一命はとりとめたものの長期の活動休止!

 

No.9ヒーロー リューキュウ及びサイドキックのレイ!ベストジーニスト同様に一命はとりとめたが、1〜2ヶ月の活動休止を表明!

 

更にNo.32ヒーロー 根強い人気を誇るプッシーキャッツが誇るラグドール!"拉致"後、個性が使用不可になる変調から活動を見合わせ!

 

一夜にして多くのヒーロー達が大打撃を受けた

 

"神野の悪夢"!!

 

これからどうなる日本!そしてヒーローよ!

 

以上、今日のクイックニュースでした。

 

続いてはお天気の……』 ピッ。

 

 

俺は自宅のテレビから流れてきたニュースを見て、ソファーに体を預ける。

 

先日の話から何となくわかっちゃいたが、オールマイトは体力の限界で現役を引退。リューキュウさんとレイ兄さんはロードとの死闘による傷が原因で1〜2ヶ月の活動休止。プッシーキャッツもラグドールさんの個性が使えなくなった事で活動見合わせか…。

 

『神野の悪夢…その渦中にいた人間としては決して他人事とは思えないな。』

 

全部が全部俺のせいなんて事を言うつもりはないが…それでも責任の一端を感じてしまう。

 

俺と爆豪が攫われたりしなければオールマイトはまだ現役を続けて、リューキュウさんやレイ兄さんも死にかける事はなかったのに…と心の中で芽生えた考えを振り払う。

 

『……いや、この考え方はやめよう。それまで否定しちまったらあの日、全力で俺達を助けようとしてくれた人達の頑張りを無かったことにしてしまう。』

 

俺にできる事は…たった一つ。強くなることだ。

またああならないように。次はみんなを守れるように。

 

そう考えていると

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

俺の部屋のインターホンが鳴る。誰か来客があるなんて話は聞いてないが…

 

恐る恐るインターホンを確認するとそこにはオールマイトが立っていた。

 

『やぁ、破竜少年』

 

『オールマ…って、早く入ってください!あなた超有名人なんですから!』

 

俺がそう言ってドアを開けようとするとオールマイトからある誘いがあった。

 

『私に少し付き合ってくれないかい?』

 

『はい?』

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

そう言って連れてこられたのは雄英高校。校長室には校長先生、ブラドキング、そして相澤先生がいた。

 

『破竜?お前何でここに…』

 

『俺が聞きたいです…。』

 

『オールマイト…どう言うことですか?』

 

『えっと…それについてはね。』

 

オールマイトは相澤先生に近づいてこそこそ話を始める。

 

『彼には両親がいないだろう?4年前まではヒーロー協会が一時的に身元引き受けになっていたが、監察期間を過ぎた後は彼は一人暮らしになっている。今後についてここで説明しておけば合理的だと思って連れてきたんだ。』

 

『……はぁ、今度から俺にも一言言ってくださいね。』

 

そう言うと2人は離れて校長の話を待つ。しばらくして、校長は少しずつ話し出していく。

 

『その身を犠牲に沢山の人を救ってくれた。国民、ヒーロー、校長として感謝してもしきれやしない。ただね、君が雄英の教師を続けることに関して、批判的な意見が少なからず出ている。』

 

校長先生の話を要約するとこうだ。元はと言えばオールマイトが雄英に赴任してきたのが原因だと言う事、戦う力がなくなった今だからこそ、再び子供達が巻き込まれる事等がオールマイトひいては雄英高校を中心に決して少なくない批判の声が届いていた。

 

『ッ、ふざけるなよ…!戦えなくなったら今までの頑張りも何もかもがないことになんのかよ!?散々、平和の象徴だ犯罪の抑止力だって世話になっといてそんなのってあんまりじゃねぇかよ!』

 

『破竜少年、落ち着きなさい。私は大丈夫だから』

 

『でも…っ!……すみませんでした。』

 

『ありがとう破竜くん。確かに批判の意見は多いが、君のような人もいるから我々も頑張れているのさ。みんな不安なのさ。今度は我々で紡ぎ、強くしていかなければいけない。君が繋ぎ止めてくれたヒーローの信頼をね。』

 

『あの一件で気付かされました。あなた1人に背負わせてしまっていたこと。背負わせていたものの大きさを。』

 

『脅威は未だ拭い切れていない。これからはより強固に守り育てていかなければいけない。そこで兼ねてから考えていた案を実行に移す。私とブラドキングは被害の大きかったB組へ、オールマイトとイレイザーヘッドはA組に行ってくれるかい?』

 

考えていた案と言う言葉に引っかかり、俺は校長先生に問う。

 

『その…考えている案って…?』

 

『君にも関係のある話さ。』

 

そう言って机に置かれたのは父兄宛の『雄英高校 全寮制 導入検討のお知らせ』と書かれた紙だった。

 

『全寮制…雄英生全員を雄英高校内で…』

 

『そう。本来なら父兄の方も交えて相談するんだけど君には事情があるからね。』

 

『事情…とは?』

 

内容をよく知らないブラドキングは疑問を口にするが俺達4人の空気を見て口を閉じる。

 

『それでどうかな?』

 

断る理由がない。俺は雄英高校を信頼しているし、セキュリティー的にもプロヒーローである先生方がこの敷地内にいると言うのは大きい。

 

『はい。俺は賛成です。宜しくお願いします。』

 

『まずは…1人ですか。』

 

『ただし…条件が一つあります。』

 

そう言った俺を3人は見つめる。

 

『俺も…ついていっていいですか?家庭訪問』

 

俺の提案に3人は驚愕の表情で俺を見る。

 

『理由を聞いてもいいかい?』

 

『いくつかあります。一つは学校の先生方が行く方が信頼はあるでしょうが、どうしても学校側に偏った話し方になります。人によっては不信感に繋がりかねない。』

 

『悔しいけど…そうだね。』

 

『だからこその俺です。生徒の1人である俺が行くだけでもだいぶ印象は違うはずです。使える物は使って下さい。』

 

本音は少し違うが、ここは隠しておこう。

 

『……わかったよ。現状、君を1人で自宅にいさせる方が怖いからね。それじゃあ、オールマイトとイレイザーヘッド。宜しくね家庭訪問。』

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

それから俺と相澤先生、オールマイトの3人はA組のクラスメイト全員の自宅を回っていた。

 

『ふぅ…大変ですね。』

 

『わかっていたことだ。』

 

『破竜少年の言った通り、やはり現時点の我々への印象は最悪なものに近いね。』

 

話はさっき訪問した葉隠宅での話になる。簡単に言えば、葉隠の自宅は雄英の全寮制に強く反対しており、説得がかなり大変だった。

 

気持ちはわかる。葉隠に兄弟がいるって話は聞いたことが無いから恐らく一人娘。そんな大切な娘が敵の襲撃を受けて重傷で入院。しかも万全を期したにも関わらずの失態だ。そう思うのは当然と言えば当然だった。

 

『だが、正直お前がいてくれて助かった。』

 

『破竜少年は大丈夫だったのかい?きついことを言われていただろう?』

 

『……問題ないですよ。』

 

 

 

30分前

 

 

 

葉隠宅。

 

 

葉隠の全寮制への説得の最中、俺についても言及された。過去とはいえ、個性暴走の犯罪者と同じクラスでは信用ならないと目の前で言われた。ショックではあったが、事実だと受け止めていた俺の視線の端で相澤先生の目が一瞬鋭くなったのを俺は見逃さなかった。

 

だが、それを聞いて葉隠が助け舟を出してくれた。

 

『破竜くんは重傷を負った私を助けてくれる為にたった1人で(ヴィラン)と戦ってたんだよ!昔の事はよくわからないけど、一緒に同じクラスで色んな所をたくさん見てきたからわかるよ!何か理由があるかもしれないのに憶測で私の友達に酷いこと言わないで!』

 

それを聞いて全員黙ってしまう中、俺は立ち上がって葉隠の両親に頭を下げる。

 

『確かに…俺は過去に罪を犯しました。それは紛れもない事実で一生背負うべき罪です。でも、過去の俺の罪と今の雄英の事は何も関係ありません。俺の事はどう思ってもいい。それでも、これから変わろうとしている雄英高校の事をほんの少しでも見てくれませんか?納得できない事もあるかもしれません。それでも…どうか…お願いします。』

 

『破竜少年…』

 

『破竜…』

 

『破竜くん……』

 

『お願いします…!!』

 

俺は誠心誠意、頭を下げ続ける。

 

『ねぇ、お父さん、お母さん、お願い。破竜くんの事も雄英高校の事も信じて欲しい。』

 

その一言で葉隠の両親も折れてくれたのか最終的には葉隠の全寮制への了承を取ることができた。

 

『次の家は…耳郎か。』

 

『破竜少年は少し休むかい?』

 

『問題ありません。』

 

相澤先生が車を走らせる事15分。

 

 

 

 

耳郎宅。

 

 

 

耳郎の家に着いた俺とオールマイト、相澤先生はソファーに座って耳郎のお父さんとお母さん、耳郎を含めた7人で会話していた。

 

『んー、ロックじゃないよね。今回の件でウチの娘に直接的な被害はなかったとはいえ、しれっと全寮制にしますっていうのはどうなのかな?』

 

『お父さんのおっしゃることはごもっともです。しかし、我々が知らず知らずのうちに芽生えていた慢心、怠慢を見直しやれることを考えています。どうか今一度、任せていただけないでしょうか?必ず響香さんを立派なヒーローに育て上げて見せますので…』

 

頭を下げる相澤先生をまっすぐ見つめる耳郎のお父さんとお母さん。耳郎は何か言いかけたが、お母さんがそれを制す。すると…

 

『うん、任せるよ。』

 

『『えっ…?』』

 

あっさりと了承の返事を返した耳郎のお父さんに相澤先生とオールマイトの声が重なる。今度は入れ替わりでお母さんが話し出す。

 

『雄英に入学してからこの短い期間で沢山、危険なことがありました。響香にも破竜くんにも。でも、オールマイト先生や相澤先生はその都度、命懸けで生徒達を導き、助けてくれた。それだけで十分です。破竜くんも攫われたけど、無事に戻ってきたし。』

 

そう言って俺をニコリと見る耳郎のお母さん。な、なんか恥ずかしいんだけど…。

 

『その代わり、一つだけお願いがあります。』

 

『……なんなりと。』

 

『私達にとっては実の子である響香は勿論大切です。ですが、破竜くんも響香と同じようにとても大切なんです。』

 

『!?』

 

驚く俺をよそにお母さんとお父さんの声が重なる。

 

『『しっかりと守り導いてあげてください。』』

 

『……必ず!』

 

『……任せてください。』

 

それを聞いて俺は改めて耳郎の両親を見つめる。その目はいつも耳郎に向ける優しくて温かい目を俺にも向けてくれていた。

 

『破竜くん。』

 

『は、はい…』

 

『何か困った時は私達を頼りなさい。出来る限り、力になるから。』

 

『今日のご飯はウチで食べていく?響香にも伝えていたけどなかなか機会がなくて困ってたのよ。』

 

全く……最近、周りの人の優しさが身に染みる。涙がこぼれそうになるのを必死で堪えながら返す。

 

『今日…みんなの家に行くのでそれが終わったら…でいいですか?』

 

『『  もちろん!  』』

 

今日の夜の約束をして、耳郎宅を後にする。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

次の自宅である爆豪家に向かっている最中、相澤先生が珍しく俺に話題を振ってきた。

 

『前から気になっていたんだが…』

 

『はい?』

 

『お前、耳郎と付き合ってるのか?』

 

『ぶっ!ゴホッ!!ゴホッ!!!!』

 

唐突な質問に俺は飲みかけのお茶が喉にむせてしまい、盛大に咳き込む。

 

『だ、大丈夫かい!破竜少年!?』

 

『な、何つー質問を…』

 

『一応、お前らの担任としては気になるからな。それで?実際はどうなんだ?』

 

な、なんでこの逃げ場のない車中でこんな質問するんだと突っ込みたくなる気持ちを抑えつつ

 

『……俺の片想いですよ。恥ずかしい話ですけど、人を好きになるのなんて初めてで全然わかんないです。それに耳郎って可愛いからすごいモテるだろうし…』

 

教師相手に何を言ってんだ俺は!!

 

『…そうか。恥ずかしい事を聞いたな。忘れてくれ。』

 

『忘れられるわけないでしょうが…っ!!』

 

『(コイツ、意外と鈍感なんだな。外野から見ている俺でさえ、お前と耳郎は両想いだと思うんだが…耳郎から何か動いている様子はなさそうだし、他のクラスメイト達の心労が心配だ。今度何か差し入れてやるとするか。)』

 

相澤は破竜、耳郎の意外な鈍感さとそれに付き合わされる他のクラスメイトの内情を憂いながら次の家庭である爆豪家へ車を走らせる。

 

 

 

 

爆豪家

 

 

『あ、はい。宜しくお願いします。』

 

スパァン!!!

 

小気味の良い音ともに爆豪の頭がしばかれる。

 

『ババァ!叩くんじゃねぇぞ!ぶっ飛ばすぞコラ!』

 

『うっさい!元はといえばアンタが弱っちいからとっ捕まってご迷惑かけたんでしょ!』

 

『グハッ!』

 

グサリと俺の心にもナイフが刺さる。俺に言われてるわけじゃないのになんか心が痛い…

 

『や、やめろよぉ…2人とも。先生方だけじゃなくて一緒に来てる彼も困ってるじゃないか…』

 

『うっせぇんだよ!クソオヤジ!テメェは黙ってろ!』

 

『うっせぇのは勝己でしょ!アンタも喋るならもっとハキハキと喋りなさいよ!!!』

 

『んん〜(何この闇深い家庭…)』

 

『あの…本当によろしいんでしょうか?』

 

『ん?あぁ、寮でしょ?むしろありがたいよ!』

 

そういうと爆豪の頭を掴んで話出す。

 

『勝己はなまじ何でもできちゃうし能力も恵まれちゃってさ。他所様からチヤホヤされてここまで来ちゃった。薄っぺらい所ばっかり褒められて…だからあの会見の言葉が嬉しかったんだよね。あぁ…この学校は勝己を見てくれてるって。一時は不安でどうなるかと思ったけど、こうして5体満足で帰ってきてるワケだしさ。しばらく風当たりは強いかもしんないけど私は信頼して任せるよ。な?』

 

『うん』

 

『…………』

 

爆豪のお母さんの独白を俺が黙って聞いていると今度は俺の方を見てニコリと笑う。

 

『ん?あの…なにか?』

 

『それに…勝己が必ず勝ちたいって強く思うライバルみたいな子もいてくれるしね。』

 

『なっ…!?うっせぇよ!ババア!』

 

『アンタは黙んな!』

 

スパァンと綺麗な一撃が頭に入る。痛そう…

つーか、俺の事そう思ってたの?

 

爆豪をニヤニヤと見つめていると

 

『ニヤニヤしてんじゃねぇよドラゴン野郎!』

 

『口の利き方!!』

 

スパァンと本日3回目のシバキが頭を直撃する。すると、爆豪の頭を掴んで先生達に頭を下げる。

 

『ま、こんなどうしようもない奴だけどみっちりしごいて良いヒーローにしてやってください。それと破竜くん、友達として、ライバルとして勝己の事、宜しくね。』

 

『……はい、もちろんです。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪家を後にした俺達は残りの人数と家の方向面などを考えて二手に分かれることになった。

 

相澤先生は単独。俺は次の緑谷家を最後に本日の家庭訪問を終わらせるようだ。オールマイトはタクシーでその後も回るようだが、これ以上俺を連れ回すのは得策ではないと考えたみたいだ。

 

緑谷宅へ向かう最中

 

『オールマイト、一ついいですか?』

 

『何だい?破竜少年。』

 

『……爆豪と何を話していたんですか?』

 

先程、爆豪とオールマイトが2人だけで何かを話していたのを見えた。何言ってるかまではわからなかったけど…

 

『………いや、大したことではないさ。』

 

『そうですか……』

 

その言葉を聞いて俺は咄嗟に嘘だと感じ取る。オールマイトは気づいているのかどうか知らないが嘘をつく時、必ず一拍開いてから答える事が多い。

 

ま、誰にでも隠したい事の一つや二つあるだろう。オールマイトが言ってもいいと思ったタイミングで教えてくれればいい。

 

俺がそう考えているとオールマイトが目の前に見えてきた団地を指差す。

 

『あれが……緑谷少年の家だよ。』

 

 

 

 

 

 

緑谷宅

 

 

『ささ…あ、上がって、くください…。』

 

『失礼します…』

 

『失礼します。』

 

緑谷と緑谷のお母さんは緊張しているのか挙動が明らかに怪しい。というか、お母さんはまだしもお前(緑谷)が緊張してどうする。

 

にしても…

 

『すっげぇ…オールマイトだらけだ。』

 

家の至る所にオールマイトのポスターやコスチューム、緑谷の部屋であろうドアのネームプレートはオールマイトの触角を模した物が飾られていた。

 

『破竜少年…口に出さないでくれ…。なぜだがわからないがものすごく気まずい。』

 

『オールマイトまでギクシャクしないでください。』

 

リビングで全員座ったのを確認したオールマイトは全寮制の説明を始める。緑谷の表情を見る限り、事前に了承は得たと言った顔つきだ。問題なく進めばこのまま話は進むだろうが…それはないだろうな。

 

 

 

 

なぜなら……

 

 

 

『私、嫌です。』

 

『えっ!?』

 

『………………』

 

お母さんの纏う空気がそれを認めたくないものだったのを理解してしまったからだ。

 

『お母さん!?昨日はうんって…』

 

『考えてたよ!それでも嫌なの!出久は個性がでなくて、それでもずっとあなたに憧れてきました。でも、奇跡的に個性が発現してから…雄英に入ってから…出久の怪我、どんどんボロボロになっているんです。出久の腕知ってますか?これ以上怪我すると二度と動かなくなるかもしれないって…。』

 

なっ…コイツ…そんな状態で神野に来てあんだけ無茶しやがったのか?

 

『先日の戦い。1人の一般人として、とても感謝しております。が…親としては怖かったです。出久の行く末があんな血みどろの未来なら私は…私は…"無個性"のまま、ヒーローの活躍を楽しそうに眺めているのが、この子の幸せだったんじゃないかと思ってしまったんです。』

 

ズキリと胸が痛む。俺には全くもって無縁の話だが、緑谷のお母さんの立場になればそう言いたくなる気持ちもほんの少しわかる。

 

それを聞いて緑谷は立ち上がって反論しようとする。

 

『お母さん!』

 

『出久、応援はするけど心配しないって事にはならないって言ったよね。出久はこのまま雄英に通いたいよね。でも…ごめんね。ハッキリ申し上げます。出久の親として…

 

 

 

今の雄英に息子を預けられるほど私の肝は据わっておりません。

 

 

そう言い切ったお母さんの目は今まで見た確固たる意志を持ったヒーロー達と同じ目をしていた。

 

『あなたがどれだけ素晴らしいヒーローでも関係ありません。敵に襲われてまともな授業もできない。生徒の大怪我も止められない。そんな学校にこれ以上通わせたくない私は。』

 

『お母さん違うよ!僕がダメなんだ!先生方はなんべんも言ってくれていて…それを僕が…』

 

『結果、この現状なら学校の責任なんじゃありませんか?』

 

『で、でも…!!』

 

『緑谷よせ。』

 

どうにか説得しようとする緑谷を俺は止める。

 

『破竜くん!君も何か言って…!!』

 

『悪いが…お母さんの言う通りだ。今の俺達にはさっきの言葉を覆せるものはなにもない。お前でも…オールマイトでも…俺でもな。』

 

『破竜くん…』

 

『破竜少年の言う通りだ。一旦座ろう。』

 

『モンスターペアレンツかもしれません。でも、モンスターでいいです。私は出久の夢を奪いたくないんです。どうしてもヒーローになりたいなら…雄英でなくてもヒーロー科はたくさんありますよね?』

 

その言葉を聞いて緑谷は唇を噛みしめて下を向く。場に重い空気が流れると、緑谷はドアを開けて走り去ってしまう。

 

『出久!すみません、呼び戻してきます!』

 

そう言って追いかけようとした瞬間、ドアがまた開く。そこには封筒とその中に入っていたであろう手紙を持った緑谷が立っていた。

 

『いいよ…雄英でなくったって。』

 

唐突な発言に俺とオールマイトは驚く。

 

『見て。お母さん、オールマイト、破竜くん…手紙をもらったんだ。合宿の時に助けた子から。』

 

その言葉で俺の脳裏に林間合宿で緑谷がずっと気にかけていた少年の顔が思い浮かぶ。

 

『洸汰くん…だな。』

 

『うん…ヒーローどころか"個性"すら嫌ってた子がありがとうって…くれたんだ。まだめちゃ心配されてダメダメだけど、一瞬でも…この手紙が…僕をヒーローにしてくれた…嬉しかった!!

 

 

 

雄英でなくたってどこだっていいよ!僕はヒーローになるから!!!!!

 

 

そう言った緑谷を見てオールマイトはマッスルフォームに変身してお母さんの前で土下座する。

 

『え…な…ちょっと!?やめてください!何ですか!?』

 

『平和の象徴だったもの…としての謝罪です。彼の憧れに甘え、教育を怠ってきたことを謝罪いたします。そして、雄英教師としての懇願です。確かに私の道は血生臭いものでした。だからこそ…彼に同じ道を歩ませぬよう共に歩んでいきたいと思っています。今の雄英に不安を抱かれるのは仕方のない事です!しかし雄英ヒーロー達もこのままではいけないと…変わろうとしています!どうか()()()()ではなく、()()()()()()()に目を向けて頂けないでしょうか!』

 

最後の言葉を聞いて俺はハッとする。

それは葉隠の家で俺が言った事と全く同じだった。

 

『出久少年に私の全てを注がせてはもらえないでしょうか!この命に変えても守り育てます!』

 

そう宣言したオールマイトを見て、俺はらしくない感情が心の中を渦巻いていた。

 

『(らしくねーなぁ…。俺の方がずっと前から知ってて…沢山見てもらってた憧れの人にこんなに言わせる緑谷に嫉妬するなんて…ホントらしくない。)』

 

『…………やっぱり嫌です。』

 

ダメ…か。

 

『だって、あなたは出久の生きがいなんです。雄英が嫌いなわけじゃないんです…私。出久に幸せになって欲しいだけなんです。だから…命に変えないで。ちゃんと守り育ててください。それを約束して下さるのなら私も折れましょう。』

 

『お母さん!』

 

『約束します』

 

『出久も雄英で生活していくなら…わかってるね?』

 

『絶対に心配させない!!』

 

そう言った緑谷の方に手を置いて俺も声をかける。

 

『大丈夫です。俺や周りの友達もいます。緑谷一人だけが傷つくような事だけは絶対にさせない。』

 

『あなたは…出久の友達なの?』

 

『はい。友達で…お互いにNo.1を目指すライバルですから。』

 

お母さんの目を見てはっきりと答えると

 

『そっか。友達…できたんだね出久。破竜くんだったよね…出久の事、宜しくお願いします。』

 

『はい。』

 

その言葉を最後に俺とオールマイト、緑谷の3人は外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タクシーを待ってる間、オールマイトと緑谷は2人だけで何かを話しているが明らかに怪しい…

 

『平和の象徴の後継か……』

 

……緑谷とオールマイトの間に何かあるのは確かだ。それはオールマイトと俺の関係性に近いもので決して人には言えない事。そしてオール・フォー・ワンとの戦いの後の台詞。

 

俺は今までの緑谷との事を思い出す。

 

オールマイトと似た個性。無個性だったのに高校入学を境にいきなり発現した個性。オールマイトに目をかけられている事。俺の知らないオールマイトの何かを知っている事。

 

やっぱり……

 

 

 

 

『破竜くん?』

 

『ん?どうした緑谷?』

 

『いや、オールマイト次のところに向かっちゃったよ?』

 

そう言うとタクシーに乗り込んで次の現場に向かったオールマイトの姿が見えた。まぁ、元々俺の役目はここまでだから問題ない。

 

『いや、大丈夫。……さてと、俺は次の用事があるからここで帰る。次は寮で会おうぜ?緑谷。』

 

『待って、破竜くん。』

 

振り向いた俺に緑谷が声をかける。

 

『んー?』

 

『聞きたいことがあるんだ』

 

『……なんだ?』

 

『…破竜くん、君は一体なんなの…?その……犯罪者だった過去もそうだし、オールマイト達と家庭訪問してたり…僕との事をあんな風に言ってくれた友達の事、もっとよく知りたい。』

 

『………………………………』

 

俺はあえて何も言わずにそのまま背を向けて歩き出す。

 

『ね、ねぇ!待ってよ破竜くん!』

 

『今はまだ…けど、いつか話すよ。その時は俺の事だけじゃなくて()()()()も教えてくれよ。』

 

『!?』

 

驚愕する緑谷を背に俺は夕飯を約束した耳郎の家に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして始まる

 

 

雄英での…新生活が!!!!!

 

 

 

 

 

 

 






あとがきです。

今回はA組の各家庭訪問へ破竜君を放り込んでみました。基本的にA組の人達は異常なくらい優しいので葉隠さんの家のような意見があるのは当然です。彼にとってはショックだと思いますが、これからずっとそれを背負っていかないといけません。

これからは社会からの信頼回復にも努めていこうな!



ではでは、次話もお楽しみに!




次回予告




『ここが…俺達の新しい家ですか?』

『大事な話だいいか。』

『お部屋披露大会しませんか!?』





『俺の部屋だけはホントにやめて…!!』




次回!
半人半竜のヒーローアカデミア





『みんなで楽しく寮生活!!』





『な、何この部屋!?』








更に向こうへ!Plus ultra!!!

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