半人半竜のヒーローアカデミア   作:十希

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はじめに


皆様、いつも本作品をお読み頂き、誠にありがとうございます!

実は一昨日発売されたドラゴンボール最新作のスパーキングゼロをやりこんでいた為、1日遅れてしまいました。

本当にすみません…だって面白いんだもん!俺の青春なんだもん!お金ない時にPS2で死ぬほどやり込んでたやつの正統続編だもん!しょうが…『おい、作者…早く本編行け。』はい、いつも通りに戻ります。


それと本作のお気に入りが400人を突破しました!これもいつも読んでくれるみなさんのおかげです!是非、評価の方もよろしくお願いします!



お気に入りしてくれた下記の方

Sneh 電源コード MAKO12 レイン1341 セルベックス No.29 裏路地の自称9級フィクサー ロペ175 ロデオT ワールドレコーダー taka-take 富士田 stk665 ドラえもんドラゴンボール

本当にありがとうございます!


それでは本編をお楽しみ下さい!





『明かされる過去…』

 

 

とある小さな島でその予兆は起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破竜真人 4歳

 

 

 

『ハァ…ハァ…うわァァぁぁ!!!』

 

 

 

 

キィィィィン!!!!

 

 

 

 

DOGOOOOOOM!!!

 

 

 

『な、なんだ!?』

 

『破竜さんのお家からよ!』

 

『ふ、2人は!?』

 

『今、パトロールに行ってる!』

 

 

 

 

『グルォォォォォォッ!!!!』

 

 

 

 

平和そのものだった島に突如響き渡る竜の咆哮。

俺の個性が発現したのは4歳になる前…

 

『どうしたの!?』

 

『どうかしましたか!?』

 

その場に現れたのはその島に唯一と言っていい存在であるプロヒーロー。俺の親だったフォーマーとメタライズの2人。

 

2人はその場に現れたドラゴンを見て顔色が変わった。

 

『これは……まさか……! !!』

 

『なんでアイツがここに…』

 

『破竜さん!あなた方の家の中から急にド、ドラゴンが現れて…』

 

『なっ…ま、真人!!!』

 

『皆さんはすぐに避難を!』

 

『は、はいぃ〜!!』

 

その場から散らばっていく住民達を見届け、2人のプロヒーローは突如現れたドラゴンの目の前に立つ。

 

『メタライズ!無力化するぞ!』

 

『命令口調やめろって言ったでしょ!』

 

フォーマーは背中に鳥の翼を生やすと、全身を虎に変身させる。逆にメタライズは一歩下がっていつでも具現化できるように精神力を集中させる。

 

グ…グルォォォォォッ(お願い…助けて!)!』

 

2人のプロヒーローとドラゴンが激突するが、彼らはまだ気づいていなかった…そのドラゴンの正体に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うっ………僕は……』

 

『ま、真人。起きたかい…?』

 

『大丈夫?真人…』

 

急に発現した個性による初めての暴走。それを助けてくれたのは紛れもなく両親だった。でも、その顔はなぜか引き攣っていた。

 

『僕は……何があったの?』

 

『……………………………』

 

『なんなんだよ…そいつ。』

 

2人は何も話さない。だが、周りの人達の目は()を…見ていなかった。()()()()()()()()を見て怯えていたように見えた。

 

『ば、化け物…』

 

『……何?ねぇ、なんなの!?』

 

 

 

 

 

 

 

みんなのその目は…何?

 

 

 

その………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで化け物を見るような目は…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

俺は自身が覚えている事を少しずつ話していく。

 

初めて個性が発現した日の事。その暴走は両親が止めてくれたが、その日から様子が少しずつおかしくなっていった事。

 

『……俺の個性が発現したのは4歳になる前。だが、初めからこの力を扱えていたわけじゃない。ちゃんと扱えるようになり始めたのは5年前。10歳くらいの話だ。』

 

『ちょ、ちょっと待って!4歳から10歳までって6年間、何にも制御できなかったの!?』

 

『あぁ、体が勝手にドラゴンに竜変身しては解除されてを繰り返してた。幸いな事にその間に破壊活動なんかは一切してなかったみたいだけどね。』

 

こう話すと自分がいかにヤバい存在だったのかが理解できる。力を制御できない異形の存在。

 

『自分の体に宿る力を制御できずに異形の姿に何度も変身を繰り返すまだまだ小さなガキ。それが昔の俺だった。あえて嫌な事を聞くよ耳郎。そんな奴が野放しにされていたらどう思う?』

 

『どうって…そんなの怖…ッ!』

 

そう言いかけた耳郎は咄嗟に口元を隠す。

そう…それが正常な反応なんだ。

 

『そ。怖いんだよ…普通はね。俺は元々、本島から離れた小さな島の出身だった。比較的平和だったけど、閉鎖的な島でさ、プロヒーローも俺の親が赴任するまでは誰もいなかった田舎さ。そのせいってわけじゃないけど、さっきの件も相まって俺は余計に腫れ物扱いだった。』

 

淡々と話す破竜。

 

『で、でもさ!アンタの両親はプロヒーローだったんでしょ!?個性の制御の仕方とか教えて…』

 

『くれなかったよ。あの日から…アイツらは俺に全くと言っていいほど近づかなくなった。』

 

『そ、そんな…』

 

『いっつもいっつもヒーロー活動ヒーロー活動で家を空けてさ。しかもその島で問題が起こらなかった事をいいことに活動範囲を昔のように日本全国にしたせいで、まともに顔を見た事なんて年に一度くらいしかなかった。しかも、当時の俺の個性練度を見た時なんかはたった一言。体の鍛え方が足りない、個性を使えてないだぜ?誰も俺の個性のことを理解してくれない、助けてくれない…。俺だって好きでこんな個性に生まれて、暴走してたわけじゃないのに…な』

 

驚愕する耳郎とA組を横目に破竜は更に続ける。

 

『1人…島に残された続けた俺は竜に変身しては人に戻り、人に戻っては竜に変身する日々が続いた。それを見た島の人達は俺の事をこう呼び始めた。半人半竜の化け物だと。』

 

『あ…………』

 

言い得て妙なあだ名だが、その時の俺はまだ小学生だ。いくらなんでもまだまだ小さなガキにそんな名をつけるなんて酷過ぎるもんだ。

 

『だから、必然的に親の事なんて何も期待しなくなったし、大嫌いになった。ずっと助けてって目の前で救いを求めて、足掻いて、伸ばしていた俺の手を掴もうとしなかったあんなクソ両親の事なんてな。』

 

破竜から話される彼が生まれてからここに至るまでの過去。それはその場にいた全員が想像していた以上に辛いものだった。

 

『だけど、ある日、俺の環境はまた変わった。』

 

『…?』

 

『俺を放置してたクソ両親が死んだ。』

 

『どうして死んだの?』

 

『耳郎、轟、八百万、飯田、切島、緑谷は神野で見たはずだ。オールマイトが倒したオールフォーワンと呼ばれていた敵と一緒にいた男。』

 

耳郎の脳裏に神野区で一瞬だけ対峙した紫色の髪、首と全体に特徴的な傷を持つ男が浮かび上がる。

 

『確か名前は…』

 

『うん。ロード、アイツが俺の親を殺した。でも、当時の俺はロードが殺したことなんて知らなかったし、死んだっていう事実だけが俺の元に届いた。その結果、どうなったと思う?』

 

『……………………………』

 

耳郎は何も答えれなかった。いや、もしかしたら答えは想像できたかもしれないが、そんなこと考えたくなかったのかもしれない。

 

『……周りの非難は今まで以上に酷くなった。当たり前さ。自分の個性も制御できずに暴れ回る可能性のある化け物が自分達の周りで野放しにされている。そんなの殺すしかないだろ?』

 

『ッ…!!』

 

『でも…それは俺も同じだった。』

 

『え…?』

 

『何をやっても…どうやっても…俺という存在は認められなかった。挙げ句の果ては俺を殺そうと島の人間全員が結託したんだ。生きてる価値がないなら…全てが壊れてしまえばいいと…この呪われた竜の力で全てを破壊してプロヒーローとして崇められてたあのクソ両親に汚名を着せて死んでやるって思ってたよ。』

 

今の破竜からは想像がつかない物騒な考え。当時、10歳の少年の心をここまで蝕んだ島の住民達に皆が怒りを感じていたその時、

 

『でも…そんなバカな考えと個性を恨んで自暴自棄になっていた俺を救ってくれたのはオールマイトだ。』

 

『オールマイトが……』

 

『力に善悪はない、それを振るう者次第。俺はこの言葉に救われた。恥ずかしい話、あの人がいなかったら俺はこの場にはいない。いや、下手したら敵としてお前らの前に立ち塞がっていたのかもしれない。』

 

それを聞いたメンバー達はゾクリと背中に鳥肌がたった。それは共に戦ったからこそわかるその強さ、そして最も頼れる男が自分達の命を狙う。

 

そんなこと考えたくもなかった。

 

『ま、事情があったとはいえ島を焼き尽くしたって事から元犯罪者って扱いにはなるよ。その後は1年間だけヒーロー公安委員会に身元を一時的に引き取られて生活をしながらオールマイトに修行してもらう日々。雄英を紹介されたのもその時さ。ま、そっから先は特に大したこともないから話すようなこともないな。何か他に気になる事ある?』

 

『………何個かある。』

 

『どうぞ』

 

『ロードとかいう敵。なんでかわかんないけどアンタにものすごく固執してた。何か知ってる?』

 

『……残念だけど、俺もわからない。』

 

『そっか…』

 

そうは言ったが、なんとなく想像がつく。恐らくアイツが俺に固執するのは同じ個性である"竜変身"のせいだろう。ジーン達が以前言っていた俺にとって大きな戦いが迫っているっていう言葉。今だからわかる…それは同じ個性を持つロードとの因縁があることを示唆していたんだ。詳しい事は知らないけど…

 

すると耳郎は真剣な表情で俺を見つめていた。

 

『どうしたの?』

 

『…アンタはさ、このまま過ごしていくの?』

 

『ん?』

 

『だって…アンタはテレビを通して犯罪者って事だけが発信された!そんな辛い過去があるなんてなんっも知らない人達がアンタの事を好き勝手に貶していく!そんなの………辛すぎるよ!』

 

『…………………………………』

 

耳郎のその言葉は隠れて聞いていた他のA組メンバー達も同じ気持ちだった。これから先、世間が破竜を見る時は必ず元犯罪者という影がチラつく。どれだけ正当な活躍をしても彼を懐疑的な目で見る人間が0になる事はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、破竜は静かに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…いいんだ。』

 

『なんで!?』

 

その目は優しく耳郎を見つめる。

 

『耳郎が…ううん、A組のみんなが…俺と関わって俺の事を知ってくれた人達が見てくれるから。』

 

『っ…』

 

耳郎は泣きそうになる顔を必死で抑える。

 

『世間が俺をどんな目で見ようと構わない。俺のヒーローの原点は何があろうともう決してブレない。

あの日、オールマイトが俺に手を差し伸べてくれたように俺もいつかそう言った人達に手を差し伸べられるヒーローになりたい。その為に俺はこれからも自分の道を突き進むだけだ。』

 

それに……

 

『耳郎は覚えてる?俺達が初めて会った時の事。』

 

『…当たり前じゃん。雄英試験の時だよね』

 

『うん。俺さ、あの時初めてオールマイト以外の人の前で竜変身したんだ。異形の姿を見て怖がられるかもしれないって思ってたけど…耳郎は変身した()()姿()じゃなくて、その中にいる()を見てくれた。あれが…半人半竜の化け物って揶揄されてた俺には本当に嬉しかったんだ。』

 

『うん……っ』

 

『だから…俺はもう大丈夫』

 

それを聞いていたA組のメンバーは裏で何人かが嗚咽を堪えていた。そんな経験をすれば誰でも自身の個性を…生まれを…環境を…恨んでしまう。だが、それを変えてくれたのは世間から認められている最高のNo.1ヒーローと1人の普通の女の子だった。

 

『……ぐすっ』

 

『あー、もう泣かないでよ。泣かせたいわけじゃないのに…俺は耳郎の笑った顔が好きなんだから。』

 

コイツはウチの想いも知らずに…。そんな簡単に女の子に好きとかいうな。勘違いしちゃうじゃん。

 

『破竜のバカ……』

 

『な、なんで!?』

 

『教えてやんない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳郎が落ち着くまでその場でしばらく待つ。

 

『泣き止んだ?』

 

『うっさい、揶揄わないで。』

 

『はは、ごめん。』

 

よかった…俺のせいで泣かせちゃったから罪悪感が物凄い。そろそろ夜も遅くなってきたな…

 

『さてと…部屋に戻ろっか。』

 

『うん。あのさ…アンタはこの事、他のみんなには…』

 

『いや、ちゃんと言うよ。明日にでも…』

 

『その必要はないぞ、破竜。』

 

 

 

『『  !?  』』

 

 

 

そう言いながら俺たちの会話に入ってきたのは轟だった。

 

『お前、なんで…』

 

『俺だけじゃないぞ』

 

轟の視線を追うと談話室の影からおずおずと顔を出す緑谷、爆豪を除いたA組全員の姿が。

 

『…全員で盗み聞きか?趣味悪いぞ』

 

『わりぃ…』

 

『……冗談だ。』

 

…にしても気配に全く気づかなかった。全員の隠密能力が上がったのか?いや、俺達2人が会話に集中したせいだと思いたい。

 

すると、飯田が代表して一歩前に出る。

 

『破竜君…』

 

『飯田…お前らどこから聞いてた?』

 

『すまない…初めから全部聞いてた。君の個性が発現してからご両親にも住んでいた島の人にも見捨てられて…その…殺されそうになった事も全部…』

 

『マジか…まぁ、話す手間が省けてよかった。みんなに隠してた俺の過去はさっき話した通りだ。特に無ければ…』

 

そう言うと珍しく麗日が手を挙げた。

 

『……一つ聞いてもええんやろか?』

 

『いいよ。』

 

『破竜くんはやっぱりご両親の事許せないの?私はお父さんとお母さんと仲良い家庭だったから…仲違いしたままってなんか…ごめん、上手く言えへんけど。』

 

『……そうだな。確かに世の中には麗日や耳郎のご両親みたいにいい親もいるが、反対にそうじゃない親も絶対にいる。話し合って和解できればそれに越した事はない。でも、もう死んだ人間とは二度と会話なんてできない以上、俺がアイツらを許す事はない。』

 

それに…仮に生きていたとしても、俺はあの人達を許す気にはなれない。

 

『そっか…ごめんね、嫌なこと聞いて。』

 

そんな中、轟が話し出す。

 

『お前も両親で苦労してたんだな。』

 

『轟ほどじゃないけどね。』

 

 実際、俺と轟のどっちがキツイかって言ったら轟の方だろう。親は現在No.2ヒーロー。オールマイト引退後の世において、いずれはNo.1になる人間だ。そんな人間と家族間での強い確執があるなんて想像しただけで身震いする。

 

『だとしてもだ。お前と緑谷は雄英体育祭で俺の過去を知って、ずっとそばで気にかけて助けてくれた。だから…お前が俺を気にかけて助けてくれたように今度は俺がお前を助ける。俺の初めての友達だから。』

 

 

 

そう強く言い切った轟をぽかんと見つめる。

 

 

 

『ははは…なんだそ…れ…』

 

俺の目が…体全体がとても熱くなる。

なんだそれ、お人好しすぎねぇか?

 

『轟君だけじゃないぞ!もちろん俺もだ!』

 

それに飯田も続き、他のみんなも続いていく。

 

『お前、漢だぜ!そんな辛い過去あんなら相談しろよ!1人で抱え込みやがって!』

 

『ほんとほんと。普段、上鳴の事アホ呼ばわりしてるけどこれに関してはお前も相当だぜ?たまには頼れっての。』

 

『なんか腑に落ちないけど…お前だって相当なバカだ!友達だからこそ助けさせろって!』

 

『破竜にもそんな過去があるなんて知らなかった…よし!今日はオイラ秘蔵のエロ本で元気に…』

 

ビシッ!と梅雨ちゃんの舌が襲いかかる。

 

『しゅみまちぇん……』

 

『峰田…話がズレちゃって来てるから…まぁ、俺も同じ気持ちだよ破竜。』

 

涙を流す切島と冷静に笑って俺を諭す瀬呂、友達だからこそ助けさせろと普段から想像もつかない熱い言葉で俺を叱る上鳴。決して褒められない独特な励まし方を実践しようとする峰田、苦笑いしながら自分の気持ちを伝える尾白。

 

『破竜ちゃんの過去、とてもとても辛いものだわ。けれど、今は私達がいるわ。』

 

『みんな破竜くんの事頼りにしとるんやから、破竜くんも私達のこと頼って欲しいよ!』

 

『そうそう!ていうか、今度の試験勉強手伝ってよ!男子と響香ちゃんばっかに教えててズルい!』

 

『でも、その時は優しく教えてくれると助かるけどなぁ…破竜君、結構厳しいんだもん。』

 

『その時は私もお力添え致しますから…!』

 

梅雨ちゃんと麗日が俺を励まし頼る様に、芦戸と葉隠がいつものように明るくその場を盛り上げ、八百万はそんな皆をみながらも俺の負担を気にかける。

 

『前にお前に言われたことを返そう。お前が辛くなった時は迷わず俺達を頼ってくれ。』

 

『うん!僕も君の力になりたい…!』

 

『俺に出来ることなんて限られてるけどよ!気持ちは同じなんだぜ!』

 

『闇が濃いほど光もまた強く輝くものだ』

 

『フミカゲモコウイッテルゼ!』

 

『僕が見ている君はいつもキラキラしてるよ⭐︎』

 

障子と口田、砂藤は俺の支えに…力になりたいと言ってくれた。常闇に黒影、青山は何を言いたいのかよくわからないが、彼らなりの言い方で励ましてくれてるのはなんとなく伝わる。

 

『バカ…ばっか…だな。ホント……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポタッ…ポタッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない間に俺の目から涙が流れていた。流れる涙で顔がぐちゃぐちゃになって前が見えなくなった俺の背中を耳郎が優しく叩く。

 

『バカで結構だよ。』

 

『ホントずるい……』

 

涙を拭いて改めて全員を見つめる。

 

守りたい。

いつか対峙するあの凶悪な敵達からみんなを…

 

 

また一つ自身の中に芽生えた強い信念を胸に秘め、みんなに語りかける。

 

 

『なぁ、みんなが助けてほしい時、辛くなった時は俺を頼って欲しい。俺が必ず力になる。その代わり…俺が辛くなった時は助けてくれるか…?』

 

 

 

 

『『『  任せろ!!!!  』』』

 

 

 

 

即答かよ…でも、その優しさが…心の強さが…今の俺にはとても眩しく見えてしまった。

 

涙を流す破竜のそばに寄り添い、からかい、笑いながら、談笑するA組メンバーを見つめる2人の影。

 

『よかったね…破竜少年。』

 

『ったく…オールマイトさんは早くあのバカ2人を連れ戻してきて下さい。コイツらは俺が先に説教しとくので』

 

『わかったよ…。それと相澤君、あまり言い過ぎないでくれると嬉しい。彼にとっては大きな一歩を踏み出した貴重な瞬間だと思うから…』

 

『………わかってますよ。』

 

破竜は良くも悪くも自分の内面を見せなかった。特殊な出自が関係している事からアイツは自分で何もかも解決しようとする節があったが、ここに来てようやく少し変わる事が出来たか。

 

 

 

『たまには不合理も悪くないもんだ。』

 

 

 

ほんの少しだけ笑みを浮かべた相澤は捕縛布を携えて談話室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破竜の過去を知り、一段と結束を強めたA組。暗いムードを吹き飛ばすように談話室でバカ騒ぎをしていた彼らは忘れていた。

 

すぐそばまで来ていた恐怖を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 

ギリギリギリギリ!!!

 

 

 

 

『仮免試験終了日のこんな遅くまで談話室でバカ騒ぎとは元気があって宜しい。で、何か言い訳はあるか?お前ら…』

 

『あ、ありません……』

 

俺達は見回りに来た相澤先生の捕縛布で拘束されていた。他のメンバーも軒並み床に正座させられている。しかも黒影まで…可哀想に。

 

『あの…先生。今回はウチが…』

 

『いや、そもそも俺がここに呼び出して話してるので俺の責任です。』

 

『俺らは勝手にここに来ただけです。』

 

『相澤先生!俺達も彼らの話を隠れて聞いていたので同罪です!罰なら全員で受けます!』

 

 

 

『勝手に巻き込むな!!!』

 

 

 

耳郎、俺、轟、飯田の言い訳を聞いていた相澤先生は

はぁ…と溜め息をついた。

 

『今回だけは…見なかった事にしてやる。』

 

『マジっすか!』

 

『ガチ天国〜!!!』

 

上鳴と芦戸がその場で喜びを表現する。

 

この人、多分さっきのやりとり見てたな。しかも結構初めから…合理的云々言うくせに結構甘い所多い。絶対に認めないだろうけど。

 

『ただし!』

 

『!?』

 

『明日の課題を2倍にする。』

 

その場にいた全員の表情が固くなる。前言撤回、相澤先生って基本的には優しいけどそれと同じくらい厳しい人だわ。

 

『うそぉ…』

 

『勘弁してよォ!!寝られなくなっちゃうよ!!』

 

芦戸と上鳴の顔が絶望に染まる。

 

『なら、終わらない奴はそこにいる破竜を頼る事だな』

 

『えっ!俺ですか!?』

 

『確か…みんなが助けてほしい時、辛くなった時は力になるんだったよな?』

 

ニヤニヤしながらそう告げる相澤先生。その一言で俺の逃げ道は完全に塞がれてしまった。

 

『…珍しく意地悪ですね。』

 

『俺はこの後も用事があるんだ。これで済ませてるだけありがたいと思え。』

 

『しょうがないか…』

 

明日も寝るのは遅くなるだろうなと覚悟して、頭を抑えて地面に倒れ込みそうになる芦戸と上鳴に声をかける。

 

『明日は俺も手伝う…。その代わり、課題終わるまでは寝られるとは思わなよ?』

 

 

『『 ありがとうォォォォォ!!! 』』

 

 

涙を流しながら俺の手を取る2人。ひっどい顔だな。どんだけ課題2倍が地獄なのか…

 

『さ、お前らはさっさと寝ろ。俺はこの後、やる事あるんだから。』

 

『ハッ!そうだな、皆んな!これ以上相澤先生のお時間を取らせるわけにはいかない!』

 

『そうですわね。早くお部屋に戻りましょう。』

 

全員がゾロゾロと動き出す中、俺は立ち止まって窓の外に視線を向ける。そんな俺が俺が気になったのか相澤先生が声をかける。

 

『どうした破竜?』

 

『相澤先生…アイツら大丈夫ですよね?』

 

『なんだ、気づいてたのか。』

 

『一応……』

 

『……気づいてたなら止めて欲しかったが。』

 

『先生の手間を増やしてしまった事は悪かったと思います。でも、なんか止めたくなかったんです。』

 

『なんで?』

 

怪訝そうな顔で俺を見つめる相澤先生。

 

『………………………何となく。』

 

『合理的じゃないなその考えは。』

 

『すみません。ただ…ずっと思ってた事なんです。もし、2人がお互いの気持ちにちゃんと向き合うことが出来たなら…今みたいな中途半端じゃない…対等なライバルになれる。今日はそんな予感がしたから…止められなかったんです。』

 

爆豪と緑谷とそれなりに絡んできた中で気づいたことがある。それはビックリするほどあの2人は正反対だという事。

 

生まれてからずっと弱者でようやく憧れの人物を追いかけ始めた緑谷の気持ちを爆豪がわからないように、生まれてからずっと強者で見下していた相手に追いかけられる恐怖を感じる爆豪の気持ちは緑谷にわからない。それが拗れてずっとがんじがらめになっているのがあの2人だ。

 

だが、そんな絡まっていた鎖をぶち壊しに行ったのは爆豪だ。俺は見てみたい。あの2人が真っ当なライバルになるところを。

 

『……そうか。悪かったな引き留めて。』

 

『いえ…』

 

『破竜!早く行こうぜ!』

 

『早く戻ろう…明日もはえーから俺もそろそろ…』

 

上鳴と轟が俺のそばまでやってくる。にしても轟の顔酷いな。ほとんど目が開いてない。イケメンが台無しだ。

 

『お前も今日はさっさと休め』

 

『お手数おかけしました。おやすみなさい。』

 

『はい、おやすみ。』

 

そう言って俺達は各々が部屋に戻る。緑谷と爆豪の事は気になるが、明日も通常通りの学校だ。さっさと戻って休む…前に

 

『あ、そうだ。ねぇ、耳郎。』

 

『ん?なに?』

 

自室に戻ろうとしていた耳郎を呼び止める。

 

『あのさ…今日はほんとありがとう。また明日から宜しくね。おやすみ耳郎。』

 

『うん、明日からまたよろしくね。おやすみ。』

 

そう言って今度こそ俺は自室に戻ってベッドに身を投げる。

 

俺はさっきまでのことを思い出していた。みんなが俺の過去を知った上で受け入れてくれたこと、そして自分達を頼って欲しいと叱られたこと。

 

『……ここに来て本当によかった。』

 

ほんの少しだけ穏やかになった気持ちのまま、破竜は眠りにつく。これから訪れる更なる脅威から皆を。そして己を守れるように強くなると決意を固めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が寝静まってから1時間後

 

グラウンドβ(ベータ)で喧嘩をしていた緑谷と爆豪の2人はオールマイトに連れられ、寮に戻ると

 

『全く、仮免試験を終えたその当日にお前らは喧嘩…アイツらは談話室でバカ騒ぎ…お前らは俺を過労死させる気か?あぁ"?』

 

『俺に関係ねぇのまで入れんなや…』

 

 

 

ギリギリギリギリ!!!

 

 

 

『なんか言ったか…爆豪』

 

『な、なんでもねぇ……』

 

2人が外で喧嘩をしている間に起こった談話室騒ぎの件でイライラが頂点に達していた相澤先生は完全にブチ切れモードだった。

 

『あ、相澤くん…これには私に原因があって…』

 

『原因?なんですかそれは』

 

2人の顔がギクリと青ざめる。それをみてオールマイトは耳打ちする。

 

『爆豪少年は私の引退に負い目を感じていた。そのモヤモヤを抱えたまま仮免試験を受けた結果、彼の劣等感が爆発した。彼の心のうちに気づかずメンタルケアを怠ってきた我々教師の責任なんだよ。』

 

『……………んん、だからと言ってルールを犯しても仕方ない…で済む話ではありません。然るべき処置は下します。先に手を出したのは!?』

 

『俺』

 

『僕も結構ガッツリ…』

 

『ハァ…爆豪は4日間!緑谷は3日間の寮内謹慎!その間の寮内共有スペースの清掃!それも朝と晩!+反省文の提出!怪我については痛みが増したりひかないようなら保健室に行け!ただし、余程のことでなければ婆さんの個性には頼るな!自分の傷は自分たちで勝手に治せ!』

 

一息で2人への処罰を言い切る。

 

『それと…』

 

『?』

 

『お前らはちゃんと向き合うことはできたのか?』

 

その一言は2人の喧嘩の原因を的確についた質問だった。実際は破竜から聞いた内容を自分なりに噛み砕いたものだったが。

 

『たぶん…向き合えたと思います。』

 

『チッ!不本意だけどな。』

 

『そうか…。なら、謹慎期間が開けた後、破竜にしっかり礼をいう事だ。』

 

『あン!?』

 

『破竜くんに?』

 

唐突に出た名前に2人は困惑する。

 

『お前らのこと心配してたからな。アイツも自分のことで大変なくせに余計なところばっかに気を遣ってるからな。』

 

2人は一瞬だけお互いに目を合わせる。

 

『わかりました。』

 

『チッ…わぁーったよ。』

 

『よし、ならさっさと寝ろ!』

 

2人は傷だらけのまま部屋に戻り、明日以降のことを考える。新たに知った緑谷とオールマイトの関係性。

 

そして、彼らを除いたメンバーが知った破竜の過去。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波乱の二学期はもう明日に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







あとがきです。



ようやく明かされた破竜君の過去。

彼にとって自身の個性による姿ではなく、その中にいる彼を見てくれた人達のことが本当に大切なんです。特に耳郎さんはオールマイトを除いて初めて自分の個性を認めてくれた人でもあるので彼女の事を誰よりも大切に思ってます。

そして本編でも何回か出てきた彼の根本にあるヒーロー像。それは助けを求める人に手を差し伸べられるヒーローです。それは緑谷くんの"助けるヒーロー"、爆豪くんの"勝つヒーロー"、轟くんの"何物にも囚われないヒーロー"と同じもので、彼もまたオールマイトへの強い憧れを持っています。ここだけはどうしても描きたい部分だったので、ようやく書くことができて安心しました。


50話も目前に迫って、次回から怒涛の2学期へ移っていきます!新しい出会いとさらなる激闘を乗り越えることができるのか要チェックや!


皆様の感想や評価など、お待ちしてます!
これからも頑張るのでお付き合いください!


ではでは、次話もお楽しみに!




次回予告




『喧嘩して謹慎!?』

『ヒーローインターンってなんですか?』

『ねぇねぇ!リューキュウとレイから聞いたよ!君が前に事務所に来てくれた子だよね!?』



『通称:ビッグ3の皆んなだ。』




次回!
半人半竜のヒーローアカデミア





『新たな出会い!雄英ビッグ3!』





『想像以上に強ぇ…ワクワクしてくるぜ!』








更に向こうへ!Plus ultra!!!
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