半人半竜のヒーローアカデミア 作:十希
はじめに
皆様、いつも本作品をお読み頂き、誠にありがとうございます!
そして新年明けましておめでとう御座います!
本年も本作品を頑張って投稿していきますので是非宜しくお願い致します。
お気に入りしてくれた下記の方
リメイル シラスアズサ 中野正裕 Rin23 クルトアイズ リウス@999 月曜日の朝 ユーウ 月香の狩人 レイヴン 滝河あさひ 森田雅也 白鳥巧 rin-k Капитан 春夏 秋冬 ひじりいろ あやにむゆりてる ミカヅキ anndon うゆゆ
本当にありがとうございます!
それでは本編をお楽しみ下さい!
『闇市への潜入任務!インターン開始!』
翌朝
1年A組の教室に耳郎の驚愕した声が響き渡った。
『ウチがリューキュウ事務所に!?』
『あぁ、昨日連絡が来てな。』
『すごーい!響香ちゃん!』
『ケロ!しかもNo.2からの直接指名なんて羨ましいわ。一緒に頑張りましょう。』
『行ってきた感想教えてね!』
『私も気になる〜!』
『ですが、無茶だけはしないでくださいね。』
朝早くに破竜から伝えられた大ニュース。リューキュウ事務所No.2:レイから耳郎への直接指名は1年A組内に驚きの旋風を巻き起こしていた。
実際にみんなが驚く気持ちもわかる。レイ兄さんやリューキュウさんの実力は期末テストでみんなが目の前で見てる。それだけにトップ層にいるヒーローからの指名というのは想像している以上にすごい事だ。
『んで?もちろん来るよな?』
『っ、あったりまえじゃん!』
『お前ら、そろそろ席につけ。』
ドアを開けて入ってきた相澤先生を見て各々が素早く自分の席につく。俺も自分の席について相澤先生の言葉を待つ。
『さて…お前らも知ってるだろうが、昨日から今日にかけて早速インターン先が決まった生徒が何人かいる。』
すると、該当するメンバー以外の視線が俺達に集まる。そんな見ないでくれ。なんか恥ずかしい…
『ウチのクラスでは現在、破竜、耳郎、麗日、蛙吹の4人がリューキュウ事務所へのインターンが決まってる。お前ら4人はインターンがある間の欠席については公欠扱いとするが、授業内容については別日でしっかり予習してもらう。ヒーロー活動と学生の両立…
かなりきついと思うが、しっかりとやれ。』
『『『 はい! 』』』
俺達はヒーローでもあり学生。その本分たる学業は疎かにせず、ヒーローインターンで更なる力を身につけてみせる!
『(気後れしてる様子はない…無駄な心配だったみたいだ。)』
それに…
『(破竜くんに負けてられない…!ワン・フォー・オールの後継者としてライバルとして僕も早く!)』
『(通形先輩にインターンの斡旋頼んでみようかな…俺もこのまま置いてかれるわけにはいかねぇからな!)』
『(ドラゴン野郎はまた経験を糧に新しい力を身につけて帰ってくる…クソがッ!)』
『(俺も早く仮免取得しねぇとな…!)』
緑谷、切島、爆豪、轟を筆頭にクラスの雰囲気が変わる。その姿は自分達より一歩でも先に進もうと努力を続けるライバル達に負けてなるものかという対抗意識が見え隠れしていた。
全く…負けず嫌いが多いね。うちのクラスは…
フッと軽く笑った相澤は教壇の目の前にいる
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして、あっという間にインターン当日!!!
『うぅ…緊張する。』
『私も緊張するわ…』
『ぶっちゃけウチも……』
『みんな緊張しすぎじゃないか?』
今回、インターン参加組の4人でリューキュウ事務所に向かっているが…俺以外は見事に緊張している。
あまり想像したくはないが、こんな調子じゃ自己紹介の時に誰か1人くらいはやらかしそうだ。
『破竜くんは全然緊張しとらんね…』
『まぁな。やっぱり職場体験で行ってる分、人間関係はみんなよりも築けてるからね。だけど、そんな緊張しなくたって大丈夫だよ。波動先輩もいるし、リューキュウさんもレイ兄さんも他のサイドキックの人達もみんな優しいから。』
その一言で全員の表情が少しずつ柔らかくなっていく。
『まぁ、職場体験とは俺達の立場も現場の空気感も違うだろうからあまり当てにしない方がいいけど。』
『参考になんないじゃん!!!』
余計な一言を発した破竜にツッコミを入れる耳郎を横目に4人が駅からの道を歩く事10分。
リューキュウ事務所
『うわぁ…大きい。』
事務所に到着した俺達だが、みんなは想像以上に大きい事務所に圧倒されていた。俺?前にエンデヴァー事務所を見てるから問題なし。
『あら…リュウくん!久しぶりー!』
エントランスでサイドキックの1人から話しかけられる。
『お久しぶりです!インターン宜しくお願いします!今日来ることって聞いてましたよね?』
『えぇ、勿論よ!
リューキュウさん達はね…。みんなって言わないあたり、俺はなんとなくレイ兄さんが遅刻してるだろうなーっていう可能性が頭の中をよぎる。
『了解!さ、みんな行こ!』
『『『 いや、馴染みすぎでしょ!! 』』』
そんな3人の声をスルーしてエントランスを進んでいくと奥の方に職場体験でお世話になった皆と俺にとって尊敬する人物の1人が現れた。
『ふふっ、久しぶりねリュウ。あれから特に変わりはない?』
『……変わりありませんよ。お久しぶりですリューキュウさん!』
前と変わらずに俺達を出迎えてくれたリューキュウさんに対して軽くお辞儀をする。すると
『それから…後ろにいる耳郎ちゃん、麗日ちゃん、蛙吹ちゃんは初めましてね。知ってると思うけど、改めて自己紹介するわ。私はリューキュウ。ヒーロービルボードチャートNo.9のヒーローよ。今日はよく来てくれました。歓迎するわ。』
『『『 よ、宜しくお願いします! 』』』
26歳には到底思えない貫禄のあるリューキュウの姿や空気に一瞬飲み込まれた3人だが、すぐに立て直す。
『それで……』
『……?』
『あの男は…また遅刻かしら?』
『ヒッ…』
ゴゴゴゴゴ…と聞こえてきそうなリューキュウさんの怒りを見てサイドキックの何人かから息の漏れる音が聞こえた。
『(あーあ、レイ兄さん早く来ないとやばいことになるよ。)』
そんな俺の心配と祈りが通じたのかエントランスのドアが開く。
『いやー、リュウの時も遅刻したけどまさか今回も遅刻するとはなぁ…。』
『レイ兄さんおはようございます。リューキュウさんめっちゃ怒ってますけど…』
視線の先には額にこれでもかというくらいに青筋を立てているリューキュウさんの姿。うわ、マジで怖い。
『ん〜?あぁ、大丈夫だいじょーぶ。』
いや、なんであれを見てそんな余裕そうに大丈夫大丈夫と言えるのか。
『重役出勤ご苦労様、レイ。昨日も言ったと思うけど…
『ゆかいだねぇ。そんな怒んなくたって…』
『レイ……!』
『はははー…、すんません。マジで。』
『……全く、3人ともごめんね。期末試験で私と一緒にリュウと戦ってるからわかると思うけど、この遅刻魔がレイ。耳郎ちゃんを直接指名したのが彼よ。』
『この人が…こ、今回は指名して頂いて本当にありがとうございます!』
『おー、期待してんぜ。俺はリューキュウ事務所No.2のレイだ。ま、そんなに気張んな。』
『は、はい!』
『期末テストの時に知ったけど、この人が破竜くんのお兄さん…な、ナンヨネ?』
『なんか微妙にニュアンスが違うよ麗日!』
『え!? 破竜くんとレイって兄弟だったの!? でも、全然似てないね!ふっしぎー!』
緊張しすぎた麗日の一言で勘違いを加速させた波動先輩が俺とレイ兄さんの周りをぐるぐる回りながら比較し始めた。
『…お兄さんみたいな人ってことよお茶子ちゃん。』
『……訂正ありがとう梅雨ちゃん。それと波動先輩は真に受けないでください。ややこしくなるので…』
そもそもの話、レイ兄さん呼びはみんなが揶揄ってそう呼ばせてるだけで俺達は別に血は繋がってない。確かに兄のように慕ってはいるけど。
すると、リューキュウさんが手をパンパンと叩いて場を引き締める。
『はいはい、挨拶に軽い自己紹介はこれくらいにして…早速、仕事内容の説明をするわ。ウラビティとフロッピー、ねじれちゃんはこっちに。リュウとイヤホン=ジャックはレイ、宜しくね。』
『はいはい、そんじゃあこっちに来いよ2人とも。』
先導するレイ兄さんを追いかけるように事務所内の別室に移動すると、すでに俺達が行うであろう仕事の資料一式が広げてあった。まさか…
『遅刻したのって…これが原因?』
『ははは、まぁそんなとこだ。さてと、改めてリュウにイヤホン=ジャック、お前らには俺の仕事を本格的に手伝ってもらう。』
先程までとは違い、レイ兄さんの雰囲気が変わった。
『具体的には…何を?』
『ここの記事読んでみ。』
俺と耳郎は2人でレイ兄さんが示した資料に目を通す。そこに書かれていたのはこの間の電話で聞かされた闇市の事。だが、その資料の中に驚愕の内容が記載されていた。
『な…』
『うそ…』
『今お前らが見てるとこが今回の調査内容だ。"個性を擬似的に破壊する薬"その流通を断つ。』
『ちょっと待って…!ください。個性を擬似的に破壊する薬ってそんなのが…』
驚きのあまりタメ口になる耳郎。
個性を消失させる薬…そんなものがあったらヒーロー社会が根本から崩壊する。俺の竜変身も…耳郎のイヤホンジャックも…レイ兄さんのワータイガーも何もかもがなくなる世界。
『残念ながらあるんだよ。だが、今回の任務としてはヤクの回収とこれを捌いてる大元の確保。製造元は現在、他のヒーローが追跡中だ。さ、打ち合わせしていくぜ。』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
インターン初日から数日後
俺と耳郎、レイ兄さんは高層ビルが立ち並ぶ都心の一角。その並びに佇むとある雑居ビルに来ていた。
『こんな所に闇市が?ちょっと失礼だと思うけど…』
『…ただの廃墟ビルにしか見えない』
そんな俺達の感想をレイ兄さんは確かになと一部認めつつも否定する。
『闇市だからって目につきづらそうなだだっ広い所で公にやるわけじゃない。世に出回らないものを取り扱う以上、コイツらの目線は敏感だ。っと噂をすれば…』
『おい…アンタらここで何してる?』
坊主頭に黒スーツという「私、いかにも裏稼業に関わってますが何か?」と全身から自己主張しているおっさんが現れる。
『いや?特になんも…ねぇよ!』
ドゴォン!
『ぐっへ…』
ドサッ
おじさんの腹にレイ兄さんのとてつもなく重い一撃が入る。一般人相手から聞こえていい音じゃない。
…超痛そう。
『さーてと、邪魔者は消えたし、早速摘発に動いていきますかね。イヤホンジャック、索敵頼むぜ?』
『りょ、了解!』
そう言って耳郎は壁にイヤホンジャックを突き刺して索敵を開始する。耳郎の索敵は対策されていない限り、相手の動きを確実に捕捉できるからこういった場面ではかなり有効だ。しかも建物の構造まである程度わかるし。
『それとリュウ、お前は俺と一緒に来い。あんまり時間をかけずに全員捕まえるぞ。』
『え、俺でいいんですか?他のサイドキックとかもいるのに…』
そう言いながら視線をビルの陰に向ける。そこには俺達以外のサイドキック数人がビルの周辺を囲むように配置されていた。
そんな俺の意見を受け止めつつ
『いや、俺のスピードについて来れんのはお前だけだ。それに外にいるアイツらはどっちかつーと拘束するのがメイン。各々を得意な場所に配置して最大の効果を発揮させる。適材適所ってやつだな。お前も指揮する立場が多いなら短時間で組む相手の得意を見極めるのも大事だぜ。』
『了解!』
『さて、どーよイヤホンジャック。中の状況を的確に素早く報告してみな。』
『人数は…20人くらい。いるのは地下かな?話を聞く限り、レイさんの言うように薬を横流してる連中みたい…それにこのビルの大きさに対してかなり反響して声が聞こえる。空間が思ったよりも広いのかも。』
的確な報告にレイはニヤリと笑ったが、索敵を続けていた耳郎の顔色が優れない事に気づいた。
『どうした?』
『そ、それと…い…言いづらいんですけど…大人の声がたくさん聞こえる中から小さな子供の泣き声が聞こえる…』
『1人か?』
『う、うん…』
『……ほんとだな?』
コクリと頷いた耳郎の報告にレイの表情から色が消えた。
『りょーかいだ。リュウ、方向性を変えるぞ。その子供の救出を第一優先。ヤクの回収及び大元の確保は二の次だ。イヤホンジャックはとりあえずサイドキックの元まで戻れ。ただし、俺らの動きは常に索敵しながら捉えておけ。場合によっては人数絞って援軍に来い。タイミングはお前に任せる。リュウ、行くぞ。』
『はい!耳郎、気をつけて』
『アンタこそ気をつけなよ?』
耳郎に見送られた俺とレイ兄さんは廃ビルの扉を開けて階段を降りていく。その先に見えてきたのは…
廃ビルの地下とは思えないほどだだっ広い空間の中を薄暗いライトだけが明かりを灯す市場だった。
『これが闇市…!この廃ビルの地下にこれだけの空間を作ってたのか…!?』
『…この広さにしてはやけに規模感がデケェ。やっぱヤク捌いてるっていうのはホントっぽいな。』
破竜は初めてみる闇市の状況に驚愕し、レイは想像していた通りの状況に早速動き出す準備を始めた。
すると彼らの近くに荷運びをしている数人の会話が聞こえてくる。その足元には小さな子供が鎖をつけられて引き摺られていた。
『おい早く荷運びしやがれ!この場所をヒーローが嗅ぎつけたらどうすんだ』
『うぅ…ご、ごめんなさい…ぶたないで…』
その女の子は明らかに栄養が足りていない細腕でそれなりの大きさの荷物を運び出していた。だが、その足取りは重く今にも倒れそうだった。
『まぁ、そんな焦るこたぁねーだろ。こんな廃ビルの地下でヤク捌いて人身売買してるなんてヒーローがわかるわけねぇだろ。』
『……それもそうだな!』
ガハハハハハと笑う市場の商人達を見て破竜は腸が煮え繰り返りそうな怒りが沸々と沸き上がっていた。
『クソ野郎どもが…!!!』
『……バレてんだよな。俺に。』
『レイ兄さん…早く行こう。俺ならいつでもアイツらを片付けられる!』
トントンと軽く地面を踏み、いつでも飛び出せる体制を整える破竜にレイは腕を出して制す。
『焦んな…。確かに早く制圧してあの子供を救ってヤクの被害を抑えたい気持ちはわかる。ヒーローの気持ちとしては正解だけど…確実に抑えられるチャンスが来るまで少し待て。そうしないと助けられるもんも助けられなくなる。わかったな?』
『くっ…は、はい。』
破竜は今すぐにでも飛び出したい自分の気持ちを抑えて、レイの言うチャンスを待つ。
すると、その中で気になる話が飛び出した。
『…にしてもこの廃ビルの地下にこんなの作った親分達は本当凄えな。今回のヤクも製造元との付き合いがあったから優先的に譲ってもらってんだろ?』
『それがよ…聞いた話によるとこのヤクはまだ未完成品らしい。』
『未完成?これが?』
『あぁ。本来は個性を完全に消失させることを目的にしてるが、資金の枯渇で研究がなかなか思うように進まないらしい。そこで今回、ある組織の名前を使って資金調達しようとしてるって話だ。』
『なんつー組織?』
『聞いて驚くなよ…あの敵連合だよ。』
『な…ッ!』
『敵連合…ここで関わってくるかよ。』
その言葉に破竜とレイは驚きを隠せなかった。さらに話は続く。
『そこに親分達も便乗して資金提供するって話さ。上手くいけば敵連合とのコネクトも作りながら製造元でもある「死穢八斎會」にも恩を売れる。一石二鳥ってわけ。労働力ならこのガキを餌に他の奴らも従わせればいいんだからよ!』
『ま…待って…あの子達はまだ小さいの…私、頑張るから…お願い…』
『あ"ァ!? 奴隷風情が俺達に意見してんじゃねぇよ!』
ドカッ!
『痛い…ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!』
体を縮こませて謝り続ける少女。その無様この上ない姿を見て破竜の中で何かが切れる音がした。
ブチッ…!!
『もう………許せねえ!!!』
敵連合はともかくとして…死穢八斎會。聞いたことない組織だが、これでわかった。コイツらは今すぐにでも捕まえなきゃいけない奴らだってことが…!!!
『もういいですよね…!!』
『あぁ…よく我慢したな!行くぞ!』
その言葉と同時にレイはワータイガーの力を解放し、破竜はいつも通りジーンの力を引き出して身体能力を強化させ、女の子を殴っていたクソ野郎に突撃する!
ドッガァァァァン!
『な、なんだテメェら!』
その一言に周りにいた連中も二人を取り囲むように動き出した。
『ぁ……だ、誰…?』
『もう大丈夫だよ。』
破竜はそう声をかけながら女の子に自身の上着を被せる。
『少し待っててね。すぐに助けてあげるから。』
『俺達はリューキュウ事務所のヒーローだ。テメェら全員捕まえにきた。』
『リューキュウ事務所だぁ!? チッ、No.9のヒーロー事務所か!お前らやっちまえ!!』
『おぉ!!!!』
破竜は女の子を壁際に座らせてその敵達に相対していた。
『に、逃げて…!この人達強い…よ…!』
『大丈夫だよ、怖かったら目を瞑ってて?すぐに終わらせる。』
『(なんで…なんでこんなに怖いのに…とても安心するような声を掛けてくれるの?)し…信じていいの?』
『勿論だ!』
『っ…!』
その言葉を信じて女の子は目を閉じた。
すると、自身の顔に纏わりつく想像以上の風圧とそれに負けないくらいの打撃音がその場に響き渡る。不思議と自分を使役していたクズ野郎どもの叫び声はなにも聞こえてこなかった。
『な、…なにが?』
『もう目を開けていいよ。』
目を開けた少女が目にしたのは敵対していた20人ほどの人間達をものの数秒で制圧した2人の姿。
1人は虎のような外見は変わらなかったが、もう1人は違った。その体の周りには吹き荒れる炎のような赤いオーラだけでなく…
『な、なんだこれ……』
バチバチバチバチと青白い稲妻が走っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『これは…?』
『リュウ!? お前…どうしたその稲妻…』
『わ、わかんないです!一体なにが…?』
その瞬間、体に纏っていた稲妻は霧散してしまい、いつも通り赤いオーラだけがその場に残った。
『戻った…みたいだな。』
『…ですね。いや、そんなことよりも女の子の方は!?』
そう言って個性を解除し、辺りを見渡すと壁側の方でこちらをポカンと見つめていた少女は立ち上がって走り出すとガバッと破竜に抱きつき、先程までとは違って子供らしく大声で泣いた。
『ぅ…ぅわぁぁぁぁん!!!痛かったよぉぉ…!!こわかったよぉぉぉー!!!』
『あ…うん、大丈夫だよ。落ち着いて?』
『ふぅ…なんとかなったか。リュウ、お前はその子を落ち着かせながら辺りを警戒してろ。俺は大元がいないかどうか確認してくる。』
『
『ッ…!?』
『どうしたの?
『い、いや…なんでもねぇ。』
レイはその場を足早に離れる。
『(最近…リュウがアイツに見えてくる時がある。ははは…もう6年も前の話だぜ?いい加減に割り切らねぇと…な。)』
そのまま向こう側に歩いていくレイと自身の胸の中で泣く女の子に対する違和感を抱きつつも破竜はその背中を優しくさする。
すると…
『破竜!レイさん!大丈夫!?』
耳郎を初めとする外にいた待機組が続々と地下に雪崩れ込んできた。
『耳郎!こっちは大丈夫だけどそっちは?』
『こっちは問題ないよ!みんなで中に入ろうとした連中も拘束しているから誰も逃げてないはず。』
『そっか…良かった。』
ホッと一息ついた破竜だったが、耳郎がこちらをじーっと見つめていることに気づいた。
『どうしたの?』
『あ…えっと、とりあえず一旦こっちでその子は預かろっか?アンタはまだレイさんと中の状況確認しに行かなきゃでしょ?』
『そうだね…耳郎、少しだけこの子よろしく。』
そう言って女の子を耳郎に預けると
『あれ…この子…いや、なんでもない。』
耳郎も俺の感じた違和感に気づいたようだったが、空気を読んでなにも言わずに女の子の背中をポンポンと叩いていた。
その姿を見送ってから破竜はレイの元まで歩いて行く。今回の目的は闇市の摘発と薬を捌いていた大元の確保だ。
『レイ兄さん、どうですか?』
『ここで捌いてたヤクは全部回収できそうだが…大元はタイミング悪くいなかった。』
『そうですか……』
『そんなに凹むなよ。全取りできれば理想的だったが、ヤクの回収に敵連合、死穢八斎會の関わりを知れただけでも十分にお釣りはくる。それに、こんだけ派手にやってやったんだ。大元もメンツ潰されてたって事で俺達に必ず接触してくる。この案件が解決するまで気ィ抜くんじゃねぇぞ?』
『はい!』
それじゃあ全員連れて帰るかーといつも通りの雰囲気に戻ったレイ兄さんが捕まえた連中の前を通ると
『っくしょ!
『あぁ"?テメェ今なんつった?』
グイッ!
『あが…ッ』
『レ、レイ兄さん!? なにを!?』
焦った破竜の声に周囲もなんだなんだと気になって視線を向けるとレイが捕まえた商人の1人の首を締め上げていた。
『レイ!なにしてんだ!』
『離しなさい!』
『ウルセェ…黙ってろ。』
その一言でその場にいた全員が威圧されてしまう。レイの珍しい姿を見てさすがの破竜も狼狽する。
破竜のイメージでは良くも悪くもレイは軽い。それ故に感情が大きく爆発する事は極めて少ない。あったとしても破竜が攫われた時や職場体験でバーニンに破竜が八つ当たりされた時くらいだ。
どう考えても激情型の人間ではないはずなのに…その目は今すぐ言わないと殺すぞと身体中から殺気が溢れ出しているようだった。
『もう一度聞くぞ…?テメェ今なんつった?』
『ミ、ミクバの親分がいたらこんなことにはならなかったって言ったんだよ!覚悟しろよヒーローども!ここにはミクバの親分も直属のバリオとサントの二人もいねぇ!だが、ここを壊されたって分かればあの3人は必ず報復に出るぞ!?』
『構わねぇ。寧ろこっちにきて欲しいくらいだぜ。今度は俺があのクソ野郎どもをぶち殺してやるよ。』
その一言でレイは締め上げる力を強めて闇商人を気絶させる。その場にいた全員が絶句する中、
『捕まえた連中を警察に引き渡したら今日は終わりだ。リュウとイヤホンジャックはその女の子を警察に預けたら今日はそのまま帰れ。報告書とかその他は俺が諸々やって帰る。』
『ちょっと待ってください!レイ兄さん!』
『わかったな?』
こちらを振り向いたレイはその場にいるヒーロー達にその後について淡々と指示を出すとたった1人外に出ていってしまった。
『な、なんだったの…レイさん。』
『わかんねぇ…でも、あんな姿初めてみた。』
破竜と耳郎のリューキュウ事務所でのインターン初の大仕事である闇市の摘発。結果としては成功だった。
だが、敵連合の関わり、死穢八斎會、ミクバ、バリオ、サントと呼ばれた薬を捌いていた大元の存在。
それらだけではなく、レイの変貌ぶりなど、様々な事が重なった彼らの初任務はどうにも腑に落ちないものとなってしまった。
あとがきです。
ようやくインターン編を本格的にスタートさせることができました。この話を読んでみて『耳郎ちゃん、この任務に必要だった?』と感じる人もいると思います。
レイ兄さんが耳郎ちゃんを呼んだのにはしっかりとしたわけがあります。基本的に冷静な時の彼は常に最悪を想定して動いています。それは彼自身の過去がきっかけでそう考えるようになっており、耳郎ちゃんはその最悪を避ける為の保険として呼んでいました。
ここからの話はオリジナル部分が増える為、想像つかない人も多々いるとは思いますが、なるべくその絵をイメージできるように頑張って執筆していきたいと思います!
良ければ皆様のご感想、面白かったなーと思って頂けたら高評価など、お待ちしてます!
ではでは、次話もお楽しみに!
次回予告
『ティーポ…ババデルのおっさん…』
『レイの家族が死んだのは私のせいよ』
『所詮はただの虎…無様なもんだ。』
『頼むよ…死なないでくれって!!!なぁ!!!』
次回!
半人半竜のヒーローアカデミア
『復讐に生きる虎人!レイの過去』
『もう逃がさねえ。例え、俺が……』
更に向こうへ!Plus ultra!!!