半人半竜のヒーローアカデミア   作:十希

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はじめに


皆様、いつも本作品をお読み頂き、誠にありがとうございます!

また遅れてしまって申し訳ないです!

今回の話はレイの過去話になります。想像以上に長くなったので1話丸々使ってます。それに伴い、前回の次回予告を一部変更してます。

宜しくお願いします!

それと気づいているかどうかわかりませんが、実は本作品のプロフィール紹介に一部オリジナルキャラ達の挿絵を入れてます。気になった方は確認してみてください!



それでは本編をお楽しみ下さい!





『復讐に生きる虎人!レイの過去』

 

 

 

 

『すみません、女の子をお願いします。』

 

『わかった。とりあえずは入院させるつもりだが、同時並行でこの子の親族関係も調べてみるつもりだ。時間があったら顔を出しにきてくれ。』

 

『わかりました。』

 

破竜と耳郎は駆けつけた警察に保護した女の子を引き渡す。その女の子は極度の緊張や疲労から引き渡す時も起きなかったものの穏やかな顔つきで運ばれていった。

 

『さてと…俺達は一旦事務所に戻ろっか。』

 

『うん…そう…だね。』

 

『………………………』

 

破竜と耳郎は事務所までトコトコと歩くが、2人の間に会話はない。先程のレイとの会話や初めて遭遇したヒーローが実際に対峙する闇の部分にどう言っていいのか…どう触れてもいいのかわからなかったからだった。

 

無言で帰ってきた2人を出迎えたのは先に仕事を終わらせていたリューキュウ達だった。

 

『破竜くん!響香ちゃんおかえり!』

 

『ケロケロ!無事に帰ってきて何よりだわ。あなた達の仕事はとても大変だったと聞いていたから…』

 

『おかえり2人とも。レイはどうしたの?』

 

『まだ…帰ってきてないんですか?』

 

『……どういう事?』

 

 それから破竜はポツポツと話し出した。闇市の摘発自体は女の子が奴隷扱いされていたという想定外が一つあったものの無事に終わった事。その中で現在、世間を騒がせている敵連合や聞いたことの無い死穢八斎會という組織の名前が出てきた事を。

 

それを聞いた麗日、梅雨ちゃんは驚愕の目で俺達を見つめる。

 

『敵連合が関わってるって…』

 

『彼らはその場にはいなかったの?』

 

『不幸中の幸いっていうか…その場に敵連合は誰もいなかったよ。ウチの索敵で周辺も警戒してたけど誰もいなかった。』

 

それを聞き2人はほっと胸を撫で下ろした。

 

『でも、それだけだとレイがあなた達と一緒に帰ってこない理由にはならないわね。何か他にもあるんでしょ?隠さないで話しなさい。』

 

リューキュウさんの鋭い目が俺と耳郎の2人を射抜く。さすがに耳郎は居た堪れなくなったのか、俺に視線を向ける。

 

『破竜……』

 

『(ハァ………この人に隠し事は無理か。)』

 

俺は内心でため息を吐く。普段と違うレイ兄さんの様子から変に追及されないように敵連合の話まで出して話題を変えたのに…

 

破竜は観念して話を続ける。

 

『…捕まえた闇商人の1人が発した言葉に過剰に反応してました。聞き間違いじゃなければ面子を潰されたミクバ・バリオ・サントが必ず俺達に復讐に来る…と。』

 

それを聞いたリューキュウは血相を変えて椅子から立ち上がった。

 

『本当にそういったの!?リュウ!』

 

『え、えぇ…聞き間違いじゃなければですが。』

 

『まさか…ここでアイツらが現れるなんてね。運命というかなんというか…』

 

どういう事だ?

 

まさか…リューキュウさんもその3人の事について何か知ってるのか?

 

『知りたい…って顔してるわね。』

 

『ぇ…あ、すみません。』

 

『いいのよ、貴方達…というか、リュウには特に関係のある話だから。』

 

『俺に…?』

 

そう言うと視線を俺に向ける。

 

『以前、あなたが職場体験にきた時、初日の夜に私とレイと話した事を覚えているかしら?』

 

『それは……』

 

当然覚えている。

 

みんなには言わなかったが、あの時の俺は異形に変身するこの個性に伴う差別にどう向き合えばいいのかと悩んでいた時期だった。似た個性を持ったリューキュウさんなら同じような悩みを抱いた事があるかもしれないという思いから数あるヒーロー事務所からここを職場体験に選んでいた。

 

結果として、「見るべきは過去の事じゃなくこれからの未来」のことだと諭された事も。

 

そして俺の原点「オールマイトのように"助けを求める人間に手を差し伸べられるヒーロー"」になりたいという想いを明確に意識した日の事だ。

 

『もちろん…です。』

 

『でもね、私はあの時にこうも言ったわ。「私の実力不足で救えたはずの人を救えなかった事があるから」ともね。』

 

その一言でその場にいた4人はその後に続く言葉をなんとなく察してしまった。なぜなら…

 

『レイの家族を殺したのは…私よ。私のせいでレイの家族を事件に巻き込んでしまった上、結果として見殺しにしてしまったのだから。』

 

辛そうな顔で語るリューキュウさんの姿を見てしまったからだ。

 

『ここまできたら話してあげるわ。レイの過去を…そして、私のヒーロー人生の中で最も屈辱でいまだに後悔しっぱなしのあの日のことを。』

 

 

 

 

破竜、耳郎、麗日、蛙吹の4人がリューキュウからレイの過去を聞いている間、レイは1人事務所から離れたとある廃屋に来ていた。

 

そこはとうに人が住めるような環境ではなくなっていたが、レイは数年前までここに住んでいた。

 

『ティーポ…ババデルのおっさん…』

 

ようやく…見つけたぜ。あのクソ野郎どもを…もう逃がさねぇ。その為にこの力を身につけたんだ。例え、この資格を失おうともアイツらは俺がケリをつける。

 

レイは目を閉じる。

 

その脳裏には6年前の自分にとって最愛の家族を失ったあの日のことが思い出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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レイside 12年前。

 

 

 

俺は昔、親に捨てられた。理由なんか知らねぇが、たぶんこの外見のせい。生まれて数年は元親の所で暮らしてたけど…それから先は…

 

いや、この事はあまり話したくねぇ。

 

色々あって、この掃き溜めみたいな街に流れ着いた。ここは人間が行き着く最底辺みたいな場所で、生きる為にゴミを漁って…生きる為に物を盗んで…生きる為に人を脅したりする事もあった…

 

そうやって生きる日がずっと続くんだろうなって思ってた。

 

明日の飯の心配をして毎日必死に生きていた俺の…

灰色だった日はこのおっさんとの出会いで変わった。

 

『お前がレイか?』

 

『あァ"?誰だよおっさん…』

 

『……お前を引き取りに来た。』

 

『…………ハァ!?』

 

まー、色々あって俺は10歳くらいの時にこのババデルとかいうおっさんに引き取られた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

それから暫くして俺と同じような生活をしていたティーポとかいうのまで引き取りやがった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ティーポはこの時、7歳くらいだったらしい。

 

決して裕福じゃねぇおっさんが何で俺達を引き取ったのかはわかんなかったけど俺は嬉しかったし、とてつもないほどに感謝した。あの地獄のような生活から救い出してくれたこのおっさんの心の大きさに。

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に住むようになってから四年が経過したある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒーロー科?』

 

怪訝な顔で俺を見つめるおっさんの威圧感に一瞬たじろぐが、意を決して話し出す。

 

『あぁ、アンタが俺達を救ってくれたように俺もそういう人間を救えるようなヒーローになりてぇ。金がかかんのもわかってる。俺の一生をかけてでもアンタに返す!だから…頼む!』

 

『……………………………』

 

俺は土下座をしてまで頼み込んだ。人生初の土下座でこれであってるなんて知らねぇけど、誠心誠意込めて頭を下げる。ティーポも固唾を飲んで見守る。

 

『……好きにしな。ちゃんと返せよ。』

 

『へっ…ありがとよ、ババデルのおっさん。』

 

『やったね!レイ兄ちゃん!』

 

歳が割と近かったティーポは俺を兄のように慕ってくれた。んで、俺の事をレイ兄ちゃんって呼ぶようになったのもこの頃だった。

 

受験もトントン拍子で受かっちまって後はそれなりに有名だったヒーロー科に入学。

 

 

 

 

 

 

それから3ヶ月くらいが経って

 

 

 

 

 

『お前は相変わらずだな、レイ。もう少しヒーロー科の生徒らしくできんのか?』

 

『わかってんだけどよぉ…』

 

頭をガシガシと掻きながら視線を逸らすレイの目の前には座学のテストが鎮座しており、右上には25という数字が並んでいた。

 

『ほんとだぜ、レイ兄ちゃん!せっかく高い金払ってヒーロー科入ったのに成績最底辺じゃ誰も取ってくれないんじゃね?』

 

『へぇ…言う様になったじゃねぇかティーポ!』

 

『いてぇってレイ兄ちゃん!グリグリ禁止!』

 

『てか、ババデルのおっさんまで口出すんじゃねぇよ!実技なら文句なく1位なんだからよ!』

 

『それを座学でもなんとかしろと言ってるんだ。』

 

ギジギシと軋む廃屋に似つかわしくない談笑が響き渡る。レイは実技こそ他の生徒の追従を許さないほどに優秀な成績だったが座学が残念ながらそれに追いついていなかった。

 

 

 

まさに運動はできるが勉強はできないというバカの典型例だった。

 

 

 

『全く…ん?レイ、お前武器の刃が欠けているぞ?』

 

『あ?あ、やっべぇ…明後日実技あるのによ…』

 

『ってて…、どーすんの?レイ兄ちゃん』

 

『しゃあねぇけど、武器なしでやるしかねぇだろ。元々、安物の短刀なんだ。サポート科の奴に言ってもあんまいいやつ出来ねぇから諦めてた。』

 

俺の個性なら別に虎化しちまえば腕が武器になっちまうからあんまりいらねぇけど、毎回毎回虎化するとなぁ…。

 

『なら…俺の知り合いに刃物系を取り扱う関係者がいる。明日会いに行くぞ。』

 

『前々から思ってたんだけど、アンタ何の仕事してんだよ。頑なに教えてくれねぇし。』

 

『ふん、気にするだけ無駄だ。で、どうする?』

 

『あんま時間ないけど、まぁいいか。』

 

『俺も行く!』

 

『だそうだが?』

 

『じゃあ、3人で行くかディーポ。』

 

『へへっ、やった!!』

 

レイはそんな会話を見て笑みを浮かべる。血は繋がっていないがどこにでもある家族のような時間。

 

俺にとってはそれが全てだった。

 

いつかヒーローになってババデルのおっさんに恩返しして…ティーポは俺と同じようにヒーローを目指すのかな…なんて。

 

まだ見ぬ希望の未来に期待を抱いていた俺は

あっという間に絶望のどん底に叩き落とされた。

 

 

 

 

アイツらのせいで!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

リューキュウは一旦そこまで語ると椅子から立ち上がる。憂いを帯びたその目は破竜を捉えた。

 

『ババデルにティーポ。この2人とレイは血は繋がっていないけど、3人で家族のように住んでいたわ。特にティーポとは年齢が近い事もあって実の弟のように感じていたらしいわ。わかりやすく言うと、そうね…今のあなたとレイの関係性が1番近いかしら。』

 

『ちょっとま、待って…ください。なんでリューキュウさんがそんな詳しく…レイ兄さんの過去を知っているんですか…?』

 

『私は…レイをサイドキックにするにあたって彼の過去を調べたわ。高校入学以前の彼の素性が何も分かってなかったからね。』

 

そこまで聞いて麗日と耳郎が口を挟んだ。

 

『そもそも…ヒーローって人の過去をそんな風に調べたりすることもできるんですか?それって個人情報というか…』

 

『うん…ウチもそれ気になる。そんな重い過去をヒーローだからって理由で調べられるなんて初めて知った。』

 

麗日と耳郎の疑問は最もだが…

梅雨ちゃんがそんな2人の疑問に答えた。

 

『それなりの閲覧権限はあると思うわ。ヒーロー側としてサイドキックで雇う相手のある程度の情報がないと信用度にかけるもの。破竜ちゃんのようなケースの場合はどうかわからないけど…』

 

『そうだね。俺の場合はヒーロー公安委員会が相手方の要求に対してそれ相応の理由がない限りその情報を開示しないって聞いてる。』

 

『その通りよ。貴方がここに職場体験にくるって聞いた時、少し調べてみたけど不自然なほどに情報が不明になっていたわ。何かあると思って念の為にヒーロー公安委員会に質問を投げてみたけど案の定、無記入だったから。さっきの疑問に対する答えとしてはリュウのような特殊なケース以外、問題ならない範囲で情報を閲覧できるわ。』

 

それを聞いて麗日と耳郎は納得したみたいだ。

 

『それとこの話はここまでにしましょう。話が脱線しちゃうから。さて、どこまで話したかしら…そう、あの日は雨の日だったわ。激しい雨が降り注いで…とても視界が悪かった。』

 

 

 

 

 

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レイ、ババデル、ティーポの3人はババデル知り合いの製鉄工場に来ていた。そこでレイの手の形や握りの癖、体格や動きを見て扱いやすい短刀を仕上げてくれるとのことだった。

 

『つーか、来たはいいものの俺はこれが完成するまでここで待てって辛すぎねぇ?俺も買い物行きたかったんだけど…』

 

他の2人はそれなりに時間がかかる為、近くにあるデパートまで買い物に行っていたようだった。

 

一人置いてけぼりを喰らったレイは椅子に寄り掛かりつつ短刀を仕上げてくれている職人に声を掛けた。

 

『文句言いなさんな。あのババデルがお前の為にわざわざ時間作って俺に頼みにきてくれてんだぞ?』

 

『なぁ、アンタあのおっさんがなんの仕事してるか知ってんのか?』

 

『なんだ?お前知らなかったのか?あの人は元プロヒーローだったんだぞ?』

 

『は!?嘘!?あのおっさんが!?』

 

『嘘つくもんかい。活動期間は2年くらいの短い間だったが、ババデルって名前は俺達おっさん世代にはそれなりに有名だったもんよ。敵との戦いで深い傷負っちまってプロヒーロー引退しちまったが、まだまだやれると思ってたんだがなぁ…あ、ちなみに俺とはその時からの付き合いだ。ほれ、完成したぞ!』

 

『お、おー、思ったよりも早かった…。』

 

そこには無骨ながらも握りやすくレイの手にしっかりと馴染むように作られた愛刀が出来上がっていた。

 

『なぁー、兄ちゃんよ。』

 

『ぁん?』

 

『ババデルは気難しいし、口数はあんま多い方じゃねぇがよ。いい奴だ。そんな人間が3ヶ月前くらいに「今度、俺の息子がヒーロー科に入るんだが、いまだにそこらへんで買った安物のナイフ使ってやがる。少しでもまともなやつでヒーロー目指して欲しいだが…何とか作ってくれねぇか?」って相談に来てよ…流石に驚いたぜ。』

 

『…………………………』

 

『大事にしな。その短刀も…ババデルのおっさんもあの弟さんもよ。』

 

俺はククッと頭を抑えて笑う。

 

『……ゆかいだねぇ。どんだけ不器用なんだよあのおっさん。ティーポと一緒にいじってやるか!この短刀ありがとよ!大事に使うぜ!』

 

『おう!気をつけてな兄ちゃん!』

 

愛刀を受け取ったレイは製鉄所を後にすると急いでデパートまでの道を走っていた。

 

だが…

 

『チッ、にしても人が多いな。動きづらいったらありゃしねぇぜ。しかも…雨まで降ってきやがった。』

 

その雨も本降り…というか土砂降りになってきた為、一旦おっさんとティーポに連絡するか?と思った時、デパートの方向から放送が流れる!

 

『皆さん、今すぐデパート付近から離れてください!近くで交戦中の敵が数名逃走中の模様!凶悪な敵です!巻き込まれないように今すぐ逃げてください!』

 

『は?』

 

その放送後、先ほどとは比べ物にならないほどの人混みがレイの行く先を阻むように雪崩れ込む。

 

『早く逃げよう!』

 

『おい邪魔だ!そこ退けよ!』

 

ヒーローが誰もいないせいか避難経路の誘導や案内は誰もできず、その場は混沌を極めていた。

 

『(く、くそ…動けねぇ…連絡とりてえのに…!ババデルのおっさん…!ティーポ!!)』

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、デパート内で買い物をしていたババデルとティーポも異変に気づいた。

 

『おい…おっさん!』

 

『わかってる…今すぐ逃げるぞ!』

 

すぐにその場を離れようと行動に移した2人だったが、遅かった。

 

 

 

DOGOOOOM!!!!

 

 

 

逃げようとした彼らの進行方向を塞ぐように、壁をぶち壊して入ってきた人の異形が立ち塞がっていた。

 

『あ、兄者!ミクバの親分!さっさと逃げねぇとヒーローがここにきちまうよ!俺は怖いのは勘弁なんじゃー!』

 

『焦るな弟よ。幸いここには沢山の人間がいる。人質にすれば1人あたり…3分は稼げるぞ。』

 

『サント…お前はもう少しバリオのように冷静になる事を覚えろ。』

 

情けない声で喚くサントと呼ばれた茶色の馬人間と冷静かつ冷酷に状況を分析するバリオと呼ばれた水色の馬人間。

 

 

【挿絵表示】

 

 

どちらも異形の姿形をしていたがババデルが驚いたのは奥にいたもう1人の方だった。

 

その姿はまるで物語に出てくる悪魔のようで、手には斧槍を携え、体格も何もかもが常人のそれを遥かに上回る姿だったからだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

『なら、兄者!ここにいる人間はワシがやってもええか!ヒーローもおらんし、どうせ大したことない奴らじゃろ!?』

 

『ハァ…好きにしろ。』

 

『ふん、任せる。だが、一気に殺すなよ。』

 

 

 

『う…うわぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

 

それを見た他の人達は自分がその標的にならないようにする為、他人を押し退けてでもその場から逃げようとする。そんなサントから1番近い位置にいたのはティーポとババデルの2人。

 

『ハッハー!まずはお前じゃあ!!!』

 

『おっさん!!』

 

そう言うと馬人間らしい高速移動でサントはババデルに突進する!

 

『ぬぅ……!!!』

 

 

グググググ……!!!!

 

 

ピタッ…

 

 

『へっ?ワシの突進を止めおった!?』

 

『ぐっ…ぬぅわぁぉぁ!!!』

 

 

ドッガァァァァァン!!

 

 

その突進を止めたババデルは勢いを利用し、逆にサントをデパート内の店舗の中まで投げ飛ばす怪力を見せつける。

 

『いてぇのぉ!なんつーパワーじゃ!このオッサン!』

 

『へぇ…やるな。あのサントの突進攻撃を受け流しながらぶん投げるとはな。』

 

『…………………』

 

『ティーポ!早く他の人と逃げるんだ。早く!』

 

『ぁ…あ…う、うん…』

 

出遅れてしまったが、竦む足を無理やり動かして他の人達と同様に避難しようとしたティーポ。

 

 

だが…

 

 

『ごほっ……』

 

後方から突如聞こえた呻き声に反射的に足を止めてしまう。

 

『…どれだけ怪力だろうが所詮は人間だ。』

 

『お、おっさん…!!!!!』

 

ミクバと呼ばれた男がババデルの胸元を斧槍の先端で貫いていた姿だった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『(なんだ…何か嫌な予感がする。)』

 

レイは自身の胸の内に渦巻く嫌な予感を振り払うように全力でデパート内を走っていた。さっきの人の雪崩れを突破する為に勝手に個性使ったけどまぁ…いいよなと個性の無断使用も止むなしと自己完結していた。

 

すると、レイの鼻はその場にあるべきはずじゃない異臭を捉えた。

 

『うっ…これは血の匂いか…?』

 

どっから…と視線を上に向けたレイはその時の事を一生忘れられないだろう。

 

胸を貫かれたババデルが大量の血を流しながら最上階からレイのいる最下層まで落とされそうになっていた。

 

『バ、ババテルの…おっさん…!!!!』

 

な、なにが…あって…

 

その時に脳裏に浮かんだのは自身を兄と呼ぶティーポの存在。まさか…まだあの場所にいるんじゃ…

 

そこからのレイの行動は早かった。虎化させた脚で跳躍したレイはあっという間にその場まで辿り着いた。

 

 

 

ドンッ!!!!!

 

 

 

『何やってんだテメェら…!!!』

 

『ん?なんじゃコイツは?』

 

『またか…殺すのが面倒だな。』

 

『大した時間をかけなければいいだけだ。このおっさんとそこのガキのようにな。』

 

ミクバの視線を追うと、そこには必死で逃げようとしていたティーポの背中をナイフで突き刺し、悪魔なような笑みを浮かべていたバリオの姿。

 

『ティーポ…ま、まで…』

 

『なんじゃ、2人ともお前さんの知り合いか?悪かったのぉー、ワシらが人質増やそうとしたのをそこのおっさんが邪魔しよったから…』

 

『はじめに俺が殺してやった。』

 

そう言うとミクバは斧槍で貫いていたババデルをゴミのように引き抜いてその場に投げ捨てる。

 

『テ‥テメェら』

 

この時点でレイの怒りは限界を迎えていたが次のバリオの一言でその怒りに更なる火が着いた。

 

『ちなみに、そこのガキは喚かれると面倒だったから()()()に殺した。で、なんか質問あるか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぶっ殺してやる!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の父親だけでなく、大切な弟を理由もなく…

 

ただの()()()

 

殺したと発言したバリオにレイは我を忘れてワータイガーに完全変化する!

 

グルォォォォラァァァ!!!!(ぶっ殺してやるテメェら!!!!)

 

『おー、虎の個性か!強そうじゃのー』

 

『言ってる場合か。見た感じそこそこ強そうだ。ミクバの親分、アンタだけでも殺れるとは思うが時間はかけたくない。俺らも協力するがどうする?』

 

『なら、協力しろ。』

 

『あぁ…。おい、弟よ』

 

『我らの力を見せる時じゃな兄者!』

 

3人の敵は戦闘モードに入ってワータイガー状態のレイと対峙する。だが、そこから先は一方的な展開だった、流石のレイも3対1でしかも相手はプロヒーローから逃走中の凶悪敵。

 

レイの勝てる可能性は……………0だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『く…そ……許さねぇ…て、テメェら…お、俺が…』

 

『まだ生きてるぜ、兄者。しっぶといの。』

 

『放っておけ。そんな雑魚は』

 

『それにそろそろヒーローどもが追いついてくる頃だ。まぁ、そもそも追い付いてきた所で最初に来るのは雨如きで俺達を見失ったあの間抜けなドラグーンヒーローだ。それにこの惨状を見たら俺達を追うどころではない。ヒーローとかいうバカな生き物は目の前の人間を助けるのが仕事らしいからな。』

 

そう言うとミクバはその場で倒れながらもこちらを睨みつけるレイに視線を向けた。

 

『所詮はただの虎…無様なもんだ。弱かったら死に方も選べねぇ。次、俺達に歯向かってきたら今度はその2人と同じところに送り届けてやる。その方がお前にとっては救いかもしれねぇがな。ハッハハハハハ!!』

 

そう言うと、その3人はその場から何事もなかったかのように消えていった。

 

『くそっ…くそっ…くそっ…!!!』

 

『レ、レイ…』

 

『ッ…おっさん!!!』

 

悔しさに打ちひしがれるレイを呼んだのは胸を貫かれていた大量出血していたババデルだった。レイは這いつくばってなんとかその場まで体を寄せる。

 

『すまない…俺がいながら…ティーポを』

 

『喋んなよ…今…救急車何とか呼ぶから…まだ…アンタに何も恩返しできてねぇんだ…頼むから…生きててくれよ!!!』

 

『……何を馬鹿な事を。恩返しならしてくれてるじゃないか…お前がヒーローを目指してくれている…それだけで俺は…』

 

『な、なぁ、やめてくれよ…死ぬなって…なぁ…おっさん!!』

 

レイは必死で呼びかけるが、血が体から無くなっていく事でババデルの意識は少しずつ遠のいていた。

 

『俺はな…レイ。人を見る目はある方だ…と思ってる。あの日…プロヒーロー……を引退した俺が…なんの気まぐれか…掃き溜めの街で必死で生きるお前を見つけた。あ…んな…ゴミみたいな街で生きてた…お前の目は…誰よ…りも…真っ直ぐ……だった。』

 

『や、やめてくれよ!!!そんなこと……今聞きたくねぇんだよ!!!…頼むよ…死なないでくれって!!!なぁ!!!』

 

『そ…んなお前…だから…こそ助けられる命…がある。人の…底を知って…るお前だから…みんなが…目を背けるような…人間に寄り添える…見て…や…れる優しさがある。お前が……そんなヒーローになる…姿を…-俺はみたかっ……た。』

 

気力で持たせていたババデルは遂に力尽きてしまう。

 

『………おい、おっさん…ババデルのおっさん?な、なんとか言えよ…なぁ…!!』

 

そんなレイの悲痛な声にババデルは何も反応しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな…こんなのって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『に、兄ちゃん…?』

 

『ティーポ…?お前…生きて…ッ!?』

 

レイは反応があったティーポの方向を振り向くが、その瞳に映した光景が信じられなかった。まだ13になったばかりの子供の心臓から血が噴き出ており、女だと見前違えそうな程に綺麗な肌をしていた彼の姿はその色を少しずつ失っていた。

 

『ティーポ…!!い…いま病院に…!!』

 

『ダメ…だよ…レイ兄ちゃん。』

 

そう言って俺の手に重ねたその手はとても白くて…およそ人間のものとは思えない冷たさを纏っていた。

 

『わ、わかるんだ…もう俺の命…そんなに…長くない。』

 

『なに言ってんだよ…!!頼む…おっさんだけじゃなくて…お前までいなくなっちまったら俺は…』

 

『だ、大丈夫だよ……レイ兄ちゃん…はそんな…弱くない。ね、ねぇ…にいちゃん…俺…生まれてか…ら、家族とか…いなくてさ…ず…、っと1人‥ぼっちだった…。で、でも…おっさんに引き取られて…兄ちゃんと会って…初めて家族ってこうなんだ…ってわかった…兄ちゃんも…そうだった?』

 

『ぁ…あぁ!俺も一緒だ。だ、だから…』

 

『俺…こんな…死に方やだよ…もっ…と兄ちゃんと…おっさん…と……ず…っと……かぞ…くで……いた…か…………っ…』

 

カクンと力が抜けたその体をレイはなんとか抱き止める。心臓が鼓動を止めたその体に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の暖かさはとうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うぅ…うおおぉぉぉぉ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カッはぁ……ハァ…ハァ……!!』

 

 

 

6年前の悪夢…

 

 

"みんなが目を背ける様な人にも目を向けてやれる優しいヒーロー"になって欲しいと言う父親(ババデル)の願い、こんな死に方は嫌だと…まだまだ3人で家族でいたかったという(ティーポ)の願い。

 

そんな願いを理不尽に奪ったあの敵達への憎悪。

 

2人がレイに伝えた最期の願いと敵達への憎悪は相反する呪いのように6年間、ずっとずっと…………

レイの心を蝕んでいた。

 

レイは目を開け、腰に納刀していた短刀を取り出す。あの忌々しい日に出来上がったその短刀は奇しくも2人の形見のようなものになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう…逃がさねぇ。例え俺が…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローでなくなったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短刀に映るレイの顔は誰よりも憎悪に満ちた表情だった。

 

 

 

 

 

 

 






あとがきです。



これがレイ兄さんの過去になります。

簡単に言うと、親に捨てられ、スラムのような場所で1人必死で生きてきた中、ようやくできた家族同然の存在を唐突に現れた敵に何の理由もなく殺され、自身は殺す価値もないと判断され、無様に生かされる。しかも、2人の最期を何も出来ずに看取ることに…

いや、これ結構辛くね?よくあんなフラフラと軽く生きていられるのか。


良ければ皆様のご感想、面白かったなーと思って頂けたらお気に入りやまだの方は評価など、お待ちしてます!


ではでは、次話もお楽しみに!




次回予告




『ウチらに出来ることってなんかないのかな…』

『お兄ちゃん、助けてくれてありがとう。』

『みんな活躍してるけど…』











『俺達に出来ることは………』














次回!
半人半竜のヒーローアカデミア











『ヒーローとしての責務!』

















『あれ……今日はみんなこっちなの?』













更に向こうへ!Plus ultra!!!



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