半人半竜のヒーローアカデミア   作:十希

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はじめに


皆様、いつも本作品をお読み頂き、誠にありがとうございます!


本当に遅れてごめんなさい。もうプライベートが忙しくて…待ってた人とかいないよね。

ゴールデンウィーク中にもやりたい事は沢山あるので、頑張って本作も進めていけるように頑張ります!





それでは本編をお楽しみ下さい!






『嫌な話』

 

前回までのあらすじ

 

 

2学期が始まり、雄英高校から制限付きで実施されたインターン活動。破竜、耳郎、麗日、蛙吹の4人はリューキュウ事務所でインターン中、ある案件をきっかけに過去、レイの身に起こった凄惨な過去を知ってしまう。

 

同時にリューキュウ、サーナイトアイ、ファットガムの元でインターンを行う緑谷、切島、雄英ビッグ3。

 

そして数多のプロヒーローを巻き込んだ大きな案件が今、動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは順を追って話します。』

 

サー・ナイト・アイが音頭を取るとその場にいた全員が席へ移動を始める。

 

『(リューキュウさんにレイ兄さんは当然としてグラントリノに相澤先生は割と有名だ。だが、それ以外には…見た事のねぇヒーロー達が多い。所謂、マイナーヒーロー。そんな人達を集めてまでやるって事はかなり大規模な作戦を展開しようとしてんのか?)』

 

『あの…ウチらも関係あるって…どういう…』

 

『話聞けばわかる。席に着くぞ。』

 

『……は、はい。』

 

そう言って俺達を誘導するレイ兄さん。普段の軽薄そうな雰囲気はそこにはなく、重い空気がずっと纏わりついているようだった。

 

『先生!』

 

『先生が何でここに!?』

 

『急に声掛けられたんだ。協力を頼まれてな…ざっくりとだが事情も聞いてる。言わなきゃならん事もあるしな。』

 

『俺、話についてけてないんスけど…ハッサイ?何スか?』

 

『悪いこと考えとるかもしれへんから皆で煮詰めましょうのお時間や。お前らも十分関係してくるんやで。』

 

『………………………』

 

全員が席に着いたのを確認してナイトアイ事務所のバブルガールが資料を見て話し出す。

 

『我々ナイトアイ事務所は約2週間程前から死穢八斎會という指定敵団体について独自調査を進めています!!』

 

『キッカケは?』

 

『レザボアドックスと名乗る強盗団の事故からです』

 

『あぁ…ありましたね』

 

『普察は事故として片付けてしまいましたが腑に落ちない点が数多く、追跡を始めました。』

 

『私サイドキックのセンチピーダーがナイトアイの指示のもと、追跡調査を進めて参りました。』

 

同じくナイトアイ事務所のセンチピーダーの話を真剣に聞いているとふと、俺に向けられた視線に気づく。

 

『…………ん?』

 

『………………』

 

その視線の先にいたのはサー・ナイトアイ。緑谷のインターン先のプロヒーローだ…。なぜに俺に視線を?

 

『おい、リュウ聞いてるか?無関係じゃねぇんだからしっかり聞いてろよ?』

 

集中が途切れかけてた破竜にレイから注意が入る。

 

『……すみません。』

 

『………なんかあったか?』

 

『いや…多分気のせいです。すんません、意識戻します。』

 

そんなやりとりを交わしている間にも話は進んでいた。

 

『えー…このような過程もあり、HNを使って皆さんに協力を要請したというわけです!『そこ飛ばしていいよ』はい!』

 

『HN?』

 

緑谷、切島、麗日、梅雨ちゃん、耳郎の5人は聞き馴染みのない言葉に首を傾げる。

 

確か…

 

『ヒーローネットワークの事ですね?』

 

『へぇー!破竜くん知ってるんだ!?』

 

『はい。ヒーローネットワーク、訳して「HN」。プロ免許を持った人だけが使えるネットサービスで全国各地で活動するヒーローの活動報告を見れたり、便利な"個性"を持つヒーローに協力を要請することができる。ほら、たまに活動区域が違うヒーロー同士でチームアップ組んだりするケースなんかあるだろ?そういう時は相性を踏まえてだいたいこういうのを使ってるってレイ兄さんから教えてもらってる。』

 

『へぇ〜』

 

『で、合ってますよね?レイ兄さん。』

 

『おー、概ねあってんぜ。』

 

すると、そんな会話を聞いていたドレッドヘアが特徴的なヒーローがこちらを一瞥する。

 

『そんな基本的なことは知ってて当然だ。てかよ、こんな事にいちいち時間かけてちゃ肝心の本題に行くまでに日が暮れちまうぜ。』

 

すると恰幅の良いヒーローがぬかせ!と大声を出しながら立ち上がる。

 

『ここにいる2人はスーパー重要参考人やぞ!』

 

『へっ…?オレたち?』

 

『ノリがキツイ…』

 

『とりあえず初対面の方が多いと思いますんで!ファットガムですよろしくね!』

 

『丸くて可愛いわ』

 

『アメちゃんやろーな!』

 

ファットガムと梅雨ちゃんの可愛らしいやりとりでその場が少しだけほっこりする。

 

『ふぅ、続けます。八斎會は以前から認可されていない薬物の捌きをシノギの一つにしていた疑いがあります。そこでその道に詳しいヒーローに協力を要請しました。』

 

『(そういやファット…そんなこと言ってたような。)』

 

『昔はゴリゴリにそういうんぶっ潰しておりました。そんで先日の烈怒頼雄斗デビュー戦!今までに見たことのないもんが環に撃ち込まれた…

 

 

 

個性を壊す"クスリ"』

 

 

『個性を壊すクスリ!?』

 

『破竜!レイさん!それって…!!』

 

耳郎のいう通りだ…。

 

恐らく、それを捌いていたのはあのクソ野郎どもで間違いない。切島のいる関東と今回摘発した闇市は直線距離で結べる位置にある。あの薬物は完成系じゃないって事は…

 

『個性自体は完全に破壊されてはいない…はずですよね?天喰先輩。』

 

『良くわかったね破竜くん。寝たら回復してたよ、見てくれこの立派な牛の蹄。』

 

『朝御飯は牛丼かな!?』

 

『だったら問題ねぇな…致命傷にはならねぇ。』

 

『その辺りの説明はイレイザーヘッドから…』

 

『俺の抹消とは少し違うみたいですね。俺は個性因子を攻撃しているわけではないので。基本となる人体に特別な仕組みが+αされたものが個性。+αされたものを一括りに個性因子と呼ばれています。俺はあくまでその個性因子を一時停止させてるだけでダメージを与えることはできない。』

 

なるほど…

 

つまり、相澤先生は発動型もしくは変形型の個性持ちしか抹消することはできないのか。例外に分類される異形型は存在自体が個性みたいなもんだから、抹消した所で異形部分の個性を消して人間に戻すことは出来ないって事か…。

 

それでも強力な個性に変わりはないけど…

 

『環に弾が撃ち込まれた直後、病院に連れて行ったんやが、その個性因子が傷ついておった。幸い今は自然治癒で元通りやけど。』

 

『その撃ち込まれたモノの解析は?』

 

『それが環の身体は他に異常なし!ただただ個性”だけが攻撃された!撃った連中もダンマリ!銃はバラバラ!!弾も撃ったっキリしか所持していなかった!ただ…切島くんが身を挺して弾いたおかげで中身の入った弾が手に入ったっちゅーわけや!』

 

『っうぉ!俺か!びっくりした!!急にきた!!』

 

『切島くんお手柄やね!』

 

『カッコイイわ』

 

『私知ってるよ!硬化だよね!知ってるー!うってつけだね!』

 

『そしてその中身を調べた結果ムッチャ気色悪いモンが出てきた…人の血ィや細胞が入っとった…!!』

 

 

 

ドクン……

 

 

 

 

『えぇ…』

 

『別世界のお話のよう…』

 

『うそでしょ…』

 

『…大丈夫か?』

 

『だ、大丈夫。』

 

あまりにも悍ましい話に麗日、梅雨ちゃん、耳郎の3人は絶句してしまう。緑谷と切島は……なんとか堪えてるな。

 

『つまり、その効果は人由来…個性って事?個性による個性破壊。』

 

『うーん…さっきから話が見えてこないんだがそれがどうやって八斎會と繋がる?』

 

『今回、切島くんが捕えた男!そいつが使用した違法薬物な。そういうプツの流通経路は複雑でな…今でこそかなり縮小されたが色んな人間・グループ・組織が何段階にも卸売りを重ねてようやっと末端に行き着くんや。八斎會がブツ捌いとった証拠はないけど、その中間売買組織の一つと八斎會は交流があった!』

 

『それだけ!?』

 

『先日、リューキュウ達が退治した敵グループ同士の抗争。片方のグループの元締めがその交流のあった中間売買組織だった。』

 

『巨大化した一人は効果の持続が短い粗悪品を打っていたそうよ。それとレイ…報告してくれる?』

 

『あぁ…。』

 

そう言ってレイは資料をもとに説明し出した。

 

『今回、俺達リューキュウ事務所の別働隊は個性を擬似的に破壊する薬が闇市で流通されてるっていう噂を聞いて摘発に動いた。結果、多くの粗悪品である薬の回収及びそれらを捌いていた多くの闇商人達を逮捕するまでに至った。恐らく、ファットガム達が八斎會が薬を捌いた所まで追いきれなかったのはこういう奴らが間に入っていたのが原因だ。』

 

『なるほどなぁ…って、だとしたら必ず元締めがおるはずやろ?そいつらはどうしたんや?』

 

『……………その場にはいなかった。だが、誰が捌いていたかは確定した。八斎會と協力関係にある闇市の元締め…ミクバの大親分様がな。』

 

『や、闇市の超大物やないかい!』

 

ガタリと席を立ち上がったファットガムに視線を向ける。

 

『知ってるんですか?』

 

『あぁ。現在の日本で違法薬物として捌かれてる薬の大体はコイツが絡んどる。それほどの敵や…。コイツは勿論、奴の両腕と言われとるバリオ・サントの馬兄弟も別の意味で裏では有名や。』

 

『別の意味?』

 

そう言うとハァ…と息を吐く。

 

『狡猾で残虐、挙げ句の果てにはズル賢いねんコイツら。確か、6年くらい前に警察と協力して追い詰めたけど…結局は逃げられてしもうたからな。』

 

チラリとレイ兄さんにリューキュウさんに視線を移す。2人とも普段と変わらない…ように見えるが、レイ兄さんの顔はさっきよりも鋭くなってるし、リューキュウさんは何かを堪えるように視線を下に向けた。

 

『話を戻すが…最近多発している組織的犯行の多くが、八斎會につなげようと思えばつながるのか。』

 

『ちょっとまだわからんな…流通経路はそのミクバ?とか呼ばれてる奴を経由しているとしても八斎會をどうにかクロにしたくてこじつけてるような…もっとこうバシッとつながらんかね』

 

議論が進んでいる中、破竜がスッと手を上げる。ナイトアイはその姿を一瞥すると

 

『君はリューキュウ事務所のインターン生。リュウだったな。なにか?』

 

『すみません。少し話を整理するんですが、今回の薬の効果が個性由来という事は…()()()()()()()()()()()()()()()()()にしている。つまり、不特定多数の人間を使ってもその個性破壊弾を量産することはできない…はずですよね?』

 

『……………』

 

無言を貫くナイトアイ。それを肯定だと捉えて破竜は更に続ける。

 

『グロい話、個性破壊弾一発につき…例えば指一本分だと仮定した場合、現時点で見つかってる製造数があまりにおかしすぎる。今回、天喰先輩が喰らった一発と切島が弾いた一発、そしてリューキュウさん達と対峙した敵グループ、そして別働隊で動いていたNo.2チームが摘発した闇市で回収した多くの粗悪品、全ての弾丸に()()()()()()()()()()()。人の血や細胞が弾丸から見つかっている以上、そんな事したら…』

 

限界が来るはず……と言いかけて俺は何かが引っかかってしまう。

 

なんだ…何かが引っかかってる。さっき自分で言った事の中にとんでもない答えが隠されてるような気が…

 

待て…急ぐな。自分の中で一旦整理しろ。息を吸って破竜はまた考え込む。

 

 八斎會が製造元なのはわかった。事実、あの闇市でそういう話が飛び交っていた。だが、さっきみんなが話していた通り、個性を破壊するものが個性…つまり、人由来のものなら()()()()()()()()()弾を作る材料は揃ってる。

 だが、現時点で八斎會は資金不足故か完成系まで漕ぎ着けることは出来ていない。だって、天喰先輩の個性を完全に破壊できてないんだから。だが、その粗悪品を流通できるくらいに個性破壊弾を作る事は出来ている。なら、その元である人は()()()()()使()()()()()()()()使()()()()()にある。壊れたものを修復して再利用する事ができる…

 

 

 

 

 

 

 

 

個性…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま、まさか…』

 

『なんだよ?何1人で黙りこくってんだ?』

 

ロックロックが何かに気づいた破竜に答えを急かすように話す。

 

『一つ……確認させてください。製造元の八斎會…その若頭の個性は何ですか?』

 

『………治崎の個性はオーバーホール。対象の()()()()()()が可能な個性だ。』

 

『『『   !?   』』』

 

プロヒーロー達が驚愕するのと同時にバンッ!!!とその場に突如として大きな音が鳴り響き、何人かがビクリと反応する。その発生源は破竜が拳を机に叩きつけた音だった。

 

『……クソ野郎が!!!』

 

『な、なんだよ…なんだってんだよ破竜!?』

 

『……リュウ、落ち着け。』

 

『でもっ…ッ、すみません。』

 

叩きつけた拳を引き、再度席に座り直す。

 

『……続けます。若頭、治崎の個性はオーバーホール。対象の分解、修復が可能な個性です。分解…一度「壊し」「治す」個性。そして個性を破壊する弾。』

 

今日ほど自分の予感が当たった事を恨んだ日はない。予想をはるかに超えた悍ましさにゾッとし、身震いしてしまう。視線を移すと緑谷と通形さんの2人が俺と同じ…いや、俺以上に震えていた。

 

『治崎には娘がいる。出生届もなく詳細は不明ですがこの2人が遭遇した時は手と足に夥しいほどの包帯が巻かれていた。』

 

『そんなことを…』

 

『超人社会だ。やろうと思えば誰だって似たようなことはできる。』

 

『な、…なに?なんスか……』

 

『やっぱガキは連れてこねぇ方が良かったんじゃねぇの?分かれよな。つまり治崎ってヤローは…

 

 

 

自分の娘の体を銃弾にして捌いてるんじゃねぇかって話だ。』

 

他の4人も治崎が行っている人間の度を超えた鬼畜の所業に怒りを通り越して恐ろしさを感じてしまう。

 

更にナイトアイは続ける。

 

その治崎と呼ばれた男と女の子は緑谷と通形先輩がインターン初日のパトロール中に一度出会っていたこと。結果として…その場では見逃さざるを得なかったことを。

 

『(これに関しては2人を責められねぇ。女の子を"今すぐ"にでも助け出したかった緑谷。"最悪"の場面を想定して、感情を押し殺して見逃した通形先輩。どっちも間違いじゃない。俺だって闇市の時、レイ兄さんがいなかったら後先考えずに感情のまま行動してた。間違いじゃない…間違いじゃないからこそ…この結果だ…。悔しいな。)』

 

『ケッ、コイツらがガキ保護してれば一発で解決だったんじゃねぇの?』

 

破竜の思いとは裏腹にロックロックは項垂れている緑谷と通形を非難するような目で見つめる。

 

『それは違う。』

 

『あ?』

 

『とった行動の正否はどうあれ、その場にいなかった人間が後からこうすればよかった、あーすれば良かったなんてたらればはいくらだって言える。2人を責めるのはお門違いですよロックロックさん。』

 

『……仮免許取得したばかりのガキンチョヒーローが一丁前に説教か?』

 

その一言で破竜の顔はほんの少しだけムッとしたような…怒りを見せた表情に変わる。

 

『説教じゃない。俺は事実を言ってるだけです。それに仮免許取得したばかりだからなんですか?まさかとは思いますが、プロヒーローが年功序列でモノを語るつもりか?ヒーローに年齢も活動期間も関係ねぇよ。この場にいる以上、全員1人のヒーローだろうが。』

 

俺の反論にロックロックもなんだと!?と返してこちらを威圧するように睨みつけるが、この程度大したことはない。

 

レイ兄さんがキレた時の方が何倍も怖いね。

 

 

『そこまでです。』

 

 

険悪な雰囲気が流れるその場をナイトアイが鎮める。

 

『彼の肩を持つわけではありませんが、今回のミスは全て私の責任です。間違っても2人を責めないで頂きたい。』

 

『………そうかよ。』

 

『(なにが…ッ、最高のヒーローだ…!!)』

 

『(なにが…ッ、百万を救うルミリオンだ…!!)』

 

『それに2人は事情を知らなかったとはいえ、その子を助けようとしたのです。今、この場で悔しいのはこの2人のはずです。』

 

『今度こそ必ずえりちゃんを保護する!』

 

『それが私達の目的になります!』

 

『ケッ、ガキが粋がるのもいいけどよ。推測通りだとしてその若頭にとっちゃ、その子は隠しておきたかった"核"なんだろ?それが何らかのトラブルで外に出ちまった。あまつさえ、ガキンチョヒーローに見られちまった。俺なら本拠地に置かない。攻め入るにしても「いなかった」じゃ話にならないぞ?』

 

言い方は悪いが、俺もその意見には同感だ。リューキュウさんも同じみたいでどうなの?と質問を投げかける。

 

『問題はそこです。何をどこまで計画しているのか不明確な以上、一度に確実に叩かねば反撃のチャンスを与えかねない!そこで八斎會と関係のある組織、グループ、土地、全てをリストアップしました!』

 

その言葉と同時に地図が表示され、関係のある場所に赤い印がつけられていた。

 

『…だから俺達のようなマイナーヒーローまで呼ばれたのか。』

『どういう事だ?』

『見ろ。ここにいるヒーローと活動地区がリンクしている。土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ。』

 

確かにサーナイトアイのいう通り、一発でケリをつけないととんでもない事になりそうだ。特に敵連合が関わっている以上、失敗したらステインの時のように社会情勢がまた狂わされる可能性だって出てくる。

 

周りを見る限り、みんなは納得してないのかサーナイトアイにもっと早く動くべきだと進言している中、俺達の先生がその場の空気を変えた。

 

『少し良いですか?どういう性能かは存じませんが、未来が見えるっていうなら俺たちの行く末を見れば良いじゃないですか。このまま、だと少々…合理性に欠ける。』

 

『……それはできない。』

 

『?』

 

『私の予知性能ですが発動したら24時間のインターバルを要する。つまり1日一時間1人しか見ることが出来ない。そしてフラッシュバックのようにーコマーコマが脳裏に映される。発動してから1時間の間、他人の生涯を記録したフィルムを見られる…・・と考えて頂きたい。ただし、そのフィルムは全編人物のすぐ近くからの視点。見えるのはあくまで個人の行動と僅かな周辺環境だ。』

 

 いや…だとしても有益な情報には変わりないんじゃ…0から全てを調べ上げるのと50からわかっている状態とじゃ圧倒的に後者の方がいいに決まってる。相澤先生も同じような事を問いかける。

 

『例えば、その人物に近い将来…死。無慈悲な死が待っているとしたらどうしますか?』

 

それを聞き、俺は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったような感じが胸の中を駆け回る。その言い方はまるで…誰かの未来を見た結果、とても後悔してしまったような…そんな感じがする。

 

結局、ロックロックがサーナイトアイのそんな言い分に納得ができずに、自分を見ろよ!と頼み込むが、それすらもダメだと一蹴され、会議室は静まり返ってしまう。

 

『とりあえずやりましょう。困っている子がいる。それが最も重要よ。』

 

『娘の居場所の特定・保護。可能な限り確度を高め、早期解決に動き出しましょう。

 

皆さんのご協力、宜しくお願いします』

 

その一言を機に会議は一旦終了し、雄英生達は別室で待機する事になった。俺と耳郎も動き出す為に席を立ち上がろうとすると

 

『おい、リュウ、イヤホンジャック。お前らは少しこっちに来い。話がある。』

 

珍しくレイが2人を呼び止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『悪いな、ここまで来てもらってよ。』

 

『いえ…』

 

『大丈夫です…』

 

俺達3人はビルの共有スペースに移動していた。耳郎は何話されるんだろうかとソワソワした様子だった。

 

するとレイは静かに話し出した。

 

『……どうせお前らの事だ。リューキュウさんあたりからミクバ・バリオ・サントのクソ野郎どもの事、聞いてんだろ?』

 

『………………そう…ですね。』

 

『なら、話は早い。忠告しとくぞ。お前らは…いや、お前らだけじゃねぇ。ウラビティもフロッピーもねじれの奴もこの件には関わるな。これは俺の問題だ。俺が殺る。』

 

そう強く圧をかけるレイ。

 

『で、でもさ!あんな話聞いて何もすんなって…出来ないですって!少しでも力に…』

 

『……弱ェお前らに何が出来る?』

 

『っ…!』

 

あまりにも冷たいその一言に耳郎は傷ついた表情で俯いてしまう。そんな中、破竜が2人の間に割って入る。

 

『レイ兄さん、()()()()()()のは認めます。だけど、何かの役に立ちたいっていう耳郎の優しさを無碍にして…傷つけるような言い方はやめて下さい。』

 

そいつは悪かったなと感情が見えない表情で白々しく謝ったレイはだけどな…と続ける。

 

『……優しさだけじゃヒーローはできねぇんだよ。世の中にはどんだけ煮ても焼いても食えない奴がいる。ミクバ・バリオ・サントみたいな奴らがな。ヒーローはお前らが思うよりも闇に塗れてる。時には殺人を犯さなきゃいけない時だってある。少なくても俺はそう考えてんだよ。だが、お前らがその闇を知る必要はねぇ。』

 

そう言うとレイ兄さんは俺達に背を向けた。

 

『闇に塗れるつもりはないですけど…そんな一方的に言われて、俺が納得するようなタイプに見えますか?』

 

そう言った次の瞬間、俺の首に腕を絡めたレイ兄さんは愛用のナイフを俺の首元に突きつけていた。

 

『な…っ、は、破竜!』

 

『…耳郎、大丈夫。』

 

俺を刺す気は…ないみたいだな。このナイフから殺気を感じない。ただの脅しってわけか。

 

『……何度でも言ってやる。お前らは関わるな。これは…俺が精算しなきゃいけない過去なんだよ。』

 

破竜からナイフを離したレイは一方的に話を打ち切り、その場から立ち去ると耳郎は焦った表情でこちらに向かってくる。

 

『アンタ大丈夫!?』

『うん、問題ないよ。あれはただの脅しみたいなもんだ。』

 

ほっと一息ついた耳郎はレイが消えていった方向を見つめる。その顔には困惑の表情が浮かんでいた。

 

『あのさ…ウチらがやろうとしてる事って…』

 

『あぁ、ただの自己満でしかねぇ。レイ兄さんの復讐に勝手に関わろうとしてんだからな。』

 

『だよね…』

 

『でも、迷惑だろうと何だろうと俺はこの件を見なかったことにはしないし、引く気もない…。()()()()()()()()()()()()()()()し、なにより…』

 

俺の脳裏に保須の事件が思い浮かぶ。復讐に走る飯田を緑谷、轟、俺の3人が体を張って何とか止めた。

 

その時、闇を歩く飯田を緑谷が引き戻した大切な言葉を俺と轟は教えてもらった。

 

『余計なお世話は……

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローの本質だ

 

 

 

 

 

 

 

 

ってね』

 

『超良い言葉じゃん。ロックだね。』

 

『緑谷の押し売りだけどな。』

 

ニヤリと笑った耳郎に俺もニヤリと笑って、軽く握った右手を差し出した。

 

『全員捕まえようぜ耳郎。』

『あたりまえじゃん!』

 

2人で軽くグータッチを交わして、みんなが待っているであろう待機室に向かおうとすると…

 

『…っていうか、アンタの首元少し血が出てる。さっきのナイフ少し当たってたみたい。ウチ、絆創膏持ってるから貼ってあげる。動かないで。』

 

『あ、う、うん…ありがと。』

 

ささっと耳郎は破竜の首元まで近づいて絆創膏を貼ると、これでよしと言ってみんなのところまでスタスタと歩いて行く。

 

『(…やっぱ優しいよなぁ。サラリと近くまでくるから結構ドキドキする…。でも、やっぱ俺って耳郎にあんま男として意識されてねぇのかな。って、それよりも今はこの件の事に集中しねぇとな。)』

 

ほんの少し熱を持った顔を誤魔化すように別の事に意識を向ける破竜。その前を歩く耳郎の顔もほんの少しだけ赤くなっていた事に破竜は全く気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人がその場からいなくなったのを確認して、柱の影からサーナイトアイと緑谷の2人目の師匠でもあるグラントリノが姿を現した。

 

『全くあのガキは…。あの小僧(緑谷)とタメ張れるレベルのお人好しのようじゃの。俊典はほんとに厄介なやつばっかり育ておる。』

 

やれやれと肩を竦めるグラントリノ。

 

『……彼の事は昔ですが、オールマイトから聞いた事があります。あのフォーマーとメタライズの息子さんだと…。』

 

『そうか、お前さんはメタライズと何度か仕事経験があったな。やはり似とると思うか?』

 

『えぇ…、誰かを助けるのに理由はいらない。久しぶりに聞きました…あの人の口癖でしたから。』

 

『そうじゃの…。ところでお前さんはあの小僧がワンフォーオールを継いだ事、今でも納得しとらんのか?』

 

『はい。私は今からでもワンフォーオールをミリオに継がせるべきだと考えていますから。』

『難儀なもんじゃな。』

 

そうかもしれませんね…と返したサーナイトアイはただ…と続けた。

 

『あれだけの過去を暴露され、世間に後ろ指を指されても目指すべきヒーローの姿に向かって努力し、邁進する。もし…もし、ミリオと出会う前に…私も彼と会っていたら……、彼もまたオールマイトの…ワンフォーオールの後継者に相応しかったように思います。元気とユーモアはてんで足りませんけどね。』

 

それまで求め出したらキリがないだろうと言いかけたグラントリノはその言葉を寸前で飲み込む。

 

 

 

 

彼が大切にする信念

 

 

 

 

 

 

元気とユーモアのない社会に

明るい未来はやってこない

 

 

 

 

 

 

オールマイトが現役を引退した、今の世の中は

実際にそうなっているのだから。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

破竜と耳郎の2人が待機室に戻ると相澤先生が全員に何かを話しているのが聞こえてきた。

 

『俺がみておく。するなら、正規の活躍をしろ。』

『はい!!!』

『かっけぇ!俺、イレイザーヘッドに一生ついてきます!』

『一生はやめてくれ。』

 

戻ってきた俺達が目にしたのはクラスメイト達(主に切島)がキラキラした目で相澤先生のことを見つめている現場。

 

この短時間に何があった?

 

『すみません、戻りました。』

 

『お、戻ってきたか。ちょうどいい、お前らにも言っておく事がある。』

 

『俺達に?』『ウチらに?』

 

『今回の件、緑谷や切島、麗日に蛙吹は自分なりに考えて最後まで付き合う事に決めた。お前らの意思を確認しておきたい。』

 

『聞かれるまでもないんスけど…。ウチは勿論、最後まで付き合います。ていうか、元々そのつもりだし、あんな話聞いて逃げるなんてロックじゃないんで。』

 

『…そうか。破竜、お前はどうだ?』

 

耳郎に向けれられていた相澤先生の鋭い目が今度は俺を射抜く。

 

『……俺も同じですよ。八斎會をはじめ、闇市を仕切っていたミクバ・バリオ・サントとかいう奴らに敵連合。そして、エリちゃんと呼ばれた女の子。この子があの時、緑谷に助けてと手を伸ばしていたのであれば…必ず助け出します。』

 

『わかった。そこまで言うなら何も言わん。今回はあくまでエリちゃんという子の保護が目的だ。それ以上は踏み込まない。一番の懸念である敵連合の影。警察やナイトアイらの見解では良好な協力関係にはないとして…今回のガサ入れで奴らも同じ場に居合わせる可能性は低いと見ている。だが、万が一、連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ。』

 

一旦話を区切った相澤先生は俺に対して視線を合わせる。

 

『特に破竜、お前に関しては敵連合と行動を共にし、お前に対して強い執着を持つロードがいる。もし、そいつの影が少しでも見えるようならお前だけでもインターンは中止させる。理由は…言わなくてもわかるな?』

 

 こればっかりはしょうがない…。アイツは強さだけなら、あのオールマイトに匹敵するかもしれない。神野事件から多少経っているとはいえ、今の俺でも相澤先生でも…下手したらあのエンデヴァーすら敵わない。

 もし、この場に現れようものなら俺1人のせいでどれだけの被害が生まれるか分かったもんじゃない。それに相澤先生は俺が自分の命を犠牲にすることも望んでいない。これは俺の命を守るための命令だな…。

 

『了…解です。』

 

『よし、わかったら今日はもう解散だ。』

 

その言葉を最後に相澤先生はその場を離れる。

 

 

 

俺達も解散し、エリちゃんと呼ばれた女の子を居場所を突き止めるプロヒーロー達の連絡を待つ事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがきです。


そうですグラントリノさん!ウチの子は意外と厄介な子なんです!
良くも悪くも破竜くんは色んな事に首を突っ込みがちですからね。←突っ込ませてるのはお前だ?


はい、ごめんなさい。


そして、プロヒーロー達と絡んでいくたびに判明していく破竜くんのご両親のヒーロー像と性格。


みんなの中ではフォーマーとメタライズってどんなイメージですか?良ければ教えてくれれば…


良ければ皆様のご感想、面白かったなーと思って頂けたらお気に入りやまだの方は評価など、お待ちしてます!


ではでは、次話もお楽しみに!




次回予告




『緑谷、お前なんか集中力切れてねぇか?』

『試したい技があるんだけど…』

『誰とは酷いな…』











『オーバーホール、一つ忠告しといてやる。』














次回!
半人半竜のヒーローアカデミア











『突撃!!死穢八斎會!!!』

















『お前らの相手は…俺達だ!!!!』













更に向こうへ!Plus ultra!!!
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