生徒達がひたすら可愛いのを見ていたかった   作:ミステイク

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第三話・とある科学のエンジニア部

 私は人に物を売るのは得意だが、何かを作ったり0から1を生み出す才能は無い。

 もっともそんな者達のことを天才と呼ぶのだろうが。

 このミレニアムではその0から1を作る者と、1を100に発展させる科学者達が多く在籍している。私の位置はどちらかと言えば後者だろう。

 

 もとよりこの学園の創立は、千年難題と呼ばれる難問を解くことを目的としている。

 生憎私には一生掛かっても無理だろうし取り組もうという気持ちも無い。

 

 科学技術を追求するミレニアムであるが、私の関心はサイエンスとは逆方向に位置するものだ。

 それでも最低限テストや勉強についていく程度には知識を得ている。

 しかし専門家には及びはしない。

 

「──ぐあああっ!」

「……」

 

 エンジニア部の部室を通りがかると、偶に爆発音が聞こえて来る時がある。

 通りがからなくても聞こえて来る時はあるが、今日はかなり派手な音が鳴り響いたように思える。

 

「くっ! うぅ……22、5回目の失敗……がくっ」

 

 エンジニア部。

 常識では考えられない発明品をいくつも発明しているミレニアムきっての部活。

 ミレニアムの科学者達とはで、真っ先に思い浮かぶ伝統ある部活だ。

 ブルーアーカイブでは二次創作のなんでも設定でお世話になることが多いご都合主義的集団。

 

 その部長である白石ウタハが瀕死の状態で倒れている。

 黒焦げで髪もぼさぼさで爆発しているような状態で気を失っている。

 

「……」

 

 この爆発音だ、放っておいても不審に思った誰かが来るだろうが。

 目の前の子供を見捨てるほど人間は止めていない。

 

 とりあえずウタハ、一応学年と年齢は上なので先輩は付けるべきか。

 大きな怪我はなく、擦り傷程度しか見えないのでウタハ先輩を近くの台まで運んで寝かせ、救急箱を探して応急処置をする。

 他の部員もいないか探したが、何処かに出かけているのか姿は見えない。

 

「ううん? う、お?」

「起きましたか?」

 

 呻き声を上げながら黒焦げのウタハ先輩が目を覚ます。

 

「うん、全身が痛いんだが……何があった?」

「私は爆発音がして、あなたが倒れていたところしか見ていません」

「うーん、ああ! なるほど……開発中の事故で私は吹き飛んだらしいね。全身が痛くて動けないよ! ははは!」

 

 衝撃で記憶が飛んだのか、ウタハ先輩は周囲を見渡し爆発で吹き飛んだ部室の中を見て状況を理解する。

 

「笑って言う事ではないのでは?」

「なに、研究や実験に失敗は付き物さ。こんなこと日常茶飯事だよ」

「……ええ、良く存じています」

 

 ほぼ毎日の爆発音。

 キヴォトスで爆音なんて日常同然だが。

 

「でもそれで怪我をしたり、死んでしまえば元も子もありませんよ。気をつけてください」

「う……それは済まなかった」

「それで? 何を開発していれば部室が半壊するほどの爆発が?」

 

 まあ大体予想できるが。

 

「ふふふ! 聞いて驚かないで欲しい……エンジニア部始まって以来、私達の憧れを実現する夢の船! 宇ちゅ───」

「うわー! なんですかこれは!?」

 

 ウタハ先輩が自信満々な顔をして言う前に、叫ぶような小高い声が轟く。

 声の方を見れば、二人の生徒が壊れた部室を見て驚いていた。

 

「ウタハ先輩、一体なにが……ってすごいボロボロ!」

「何があったんですかウタハ先輩! 襲撃ですか!?」

 

 部員のヒビキとコトリが慌てた様子で倒れるウタハへと駆け寄る。

 

「二人とも……エンジニア部を……頼んだよ……」

「ウタハ先輩!」

「うぅ……ウタハ先輩、なんてお姿に……」

 

 感動的なシーンを演出するエンジニア部。

 再び気を失ったウタハに二人は哀し気な顔を浮かべて騒いだ。

 小一時間ほど。

 

「…………いえ、擦り傷だけですけど」

 

 ノリが良いな、この部活。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 保健室に運ばれて行くウタハ先輩。

 気を失った部長と、半壊した現場だけが残された場所に取り残されるように佇む部員二人と目が合い詰め寄られる。

 かわいい、顔が近い。

 

「それで原因はなんだったの? あなたは知ってるんでしょう?」

 

 訳も分からず部長が倒れていた理由を知って居そうなのは私だけなので聞きに来るのは当然だろう。

 私は何も知らず、爆発音と倒れていたウタハ先輩のことだけを話した。

 

「ああ、でも最後に原因を聞くと宇ちゅと言っていましたね」

「……ああ、なるほどね」

「宇宙船のことですね!」

「ほう、宇宙船」

 

 そういえばそんな話を聞いた。

 エンジニア部の予算の半分以上を使って開発していた宇宙戦艦だったか、宇宙船だったかを。

 

「エンジニア部はついに宇宙船の開発に進みまして。宇宙船とは、大気圏外での人工物は宇宙機と呼ばれるのですが、人が乗ることを想定されたものを宇宙船と呼びます。宇宙船に使用される燃料は二種類ありまして固体燃料と液体燃料に分けられています。固体燃料とは───」

 

 抑揚なく息継ぎする間もなく説明し始めたコトリ。

 

 生の説明しましょうを聞くことが出来たブルアカユーザーはこの世で私一人だろう。

 この感動を誰かと分かち合いたい。

 

「そして液体燃料とは───」

「つまり宇宙船の開発実験の失敗で、ウタハ先輩が吹き飛んだと言う事ですか」

「今の説明で何が分かったのか分からないけど、多分そうだと思う」

 

 まあそんな所だとはわかっていたが。

 

「ただ作ってたのは宇宙船じゃなく、その宇宙船に搭載する」

「レールガンです!」

 

 顔を輝かせるエンジニア部二人。

 かわいい。

 

 レールガン、今のところまだ居ないがアリスちゃんの専用武器だったはず。

 レールガンというより描写的にビーム兵器のようだった気もするそれは、火薬を使わない超大火力の兵器。

 作っていたのは宇宙船だったはずなのに、殆どの予算をつぎ込んで完成したとか。

 未来の知識とも言えるので言わないが。

 

「そのレールガンがなぜ爆発を?」

「多分点検中の事故だと思う。出力調整部分を弄った跡があるからウタハ先輩がうっかり引き金を触って、出力最大で発射しちゃった。でもレールガン本体がその出力に耐え切れずに爆発した……って所かな」

 

 それでウタハ先輩は丸焦げで倒れていたというわけか。

 恐ろしい話である。

 

「最大出力はシミュレーションでは生徒でもまともに受けたらしばらく動けなくなるくらいの威力なので、爆発して失敗したのはある意味運が良かったです……」

「多分だけど銃身の耐久性に問題があったんだと思う、銃身が頑強なら爆発せず発射されてウタハ先輩が巻き込まれることはなかったから……やっぱり耐久性から見直した方がいいかな、戦車に使ってる装甲を使うのはどう?」

 

 その場合、発射される方向に居る者達が大変なことになる可能性もあるが。

 まあ大事に至らなくてよかった。

 

 そろそろ早く撤退させてもらう。

 正直、これ以上原作キャラと同じ空気を吸ってはいけない気がする! というか落ち着いて話せているのが奇跡だ。

 私は原作キャラと交流したいのではない、遠くから見つめてただ幸せな空間を見届けていたいだけなのだ。

 

 綺麗で透き通る青春の中に私と言う汚物が割って入るなんて言語道断であろう。

 マキちゃんは私を友達と呼んでくれたが、彼女にとっては私は友達その五くらいの認識だからまだマシなのだ。

 これが親友とか姉妹だとかに生まれていたら私はこの世に生まれた瞬間、あまりの歓喜と罪悪感に消滅していたかもしれない。

 私は彼女達の活躍を遠くで見ていたいだけなのだ、なので早く此処を去ろう。

 

「そ、それじゃあ私は帰りますね」

「あ、待って」

「っ!」

 

 足早に去ろうとしてヒビキに手を掴まれる。

 柔らかい! 綺麗! 顔も綺麗! 可愛い──────。

 

「ウタハ先輩のこと、助けてくれてありがとう。あなたが治療してくれたんだよね?」

 

 何が起った? 何も見えない、何も感じない。

 違う、何もかも見える、全て感じる! いつまでも情報が完結しない! 故に何もできない。

 

「あの?」

「はっ! ……偶々通りがかっただけなのでお気になさらず私はこれで失礼しますさようなら」

「ああ……行っちゃった」

「急いでいたのでしょうか?」

 

 私が綺麗好きでなければ、二度と手を洗わなかったかもしれない。

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