生徒達がひたすら可愛いのを見ていたかった   作:ミステイク

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Aoharu


第四話・マイスター達の日常

 夢の宇宙戦艦、それに搭載する予定だった兵器レールガン製作。

 その為に使うパーツを購入する為にヒビキとコトリは部室を出ていた。

 

 市販でも購入可能なパーツだった為、ウタハ一人だけ部室に留まり開発を進められる範囲で行おうとして盛大に自爆。

 

「全治……一日だそうだ……」

「うぅ……ウタハ先輩……」

「なにこの茶番……じゃあ大きな怪我は無いんですね? ウタハ先輩?」

 

 爆発したウタハが連れ込まれた保健室。

 ベッドで横になるウタハと同じ部員のヒビキとコトリ、それからセミナーの会計であるユウカが居た。

 

「ああ、爆発直後に治療されたお陰で大事には至っていない、明日には歩けるそうだ。それまで車椅子生活だと、まあ根を詰め過ぎるのも良くないし休む機会を貰えたと思うよ」

「怪我しないと休まないのもどうかと思いますが……その治療してくれた子には感謝してくださいね」

 

 そう言ってユウカは保健室から出て行く。

 それを見送ったウタハは先程助けてもらった生徒のことを思い出して溜息を吐く、程ではないが唸る。

 

「……後輩に心配されてばかりだね、中々堪えるよ。反省……」

「私達も心配したよ、今度会ったらお礼を言わないとね」

 

 一応ヒビキは感謝だけはしたが彼女は早々に去って行ってしまった。

 危うく開発中の事故に巻き込んでしまう所でもあった為、その件でもお詫びに行く必要があるとウタハは天井を見つめながら思う。

 

「そうだ、二人はパーツは買って来てくれたのかい?」

「ううん、色々なお店を見て回ったんだけど売って無かった」

「工務店だけじゃなくてショッピングモールや100円ショップ、近くでやっていたフリーマーケットにも寄ってみたんですけど見つからなくて……」

「そうなのかい? 私が前にお店の前を通った時は見つけたんだが……」

 

 パーツそのものは珍しい物でもないが、レールガン制作に必要なものであるため少し困った。

 もっともウタハは最低でもあと一日は動けないので、今すぐに必要な訳でもないのだが。

 危険な作業はウタハ自身が身をもって実証した為、ヒビキとコトリだけで進めさせるのには不安がある。

 

「うーん、半導体不足に陥ったのを思い出す……ネットショッピングに頼るしかないかも」

「探してみましたけど、届くのに日数が掛かりますね。それに凄く高くなってます!」

 

 思っていた以上に人気のパーツなのか、価格が異様なまでに沸騰している。

 他の店舗でも買い占められているのは些か気になるが、自分達以外にもエンジニアはいるのでその者達の仕業だろう。

 他学園か企業かは分からないが。

 

「どうしましょう? これじゃあレールガンの開発は進められません。私達の夢が!」

「安心してコトリ、この程度の障害、私達はいつだってぶつかってきた。想定外の事態による予算削減もそう」

「修理を頼まれた武器に自爆機能を付けて教室を吹き飛ばした時の修理請求のことですね!」

「C&Cが部室に飛び込んできた時も」

「自爆機能を付けていた件を知らなかった黒焦げのネル先輩がやってきた時のことですね!」

「ネル先輩が大暴れした所為で破壊された部室も……」

「怒ったネル先輩を宥めようとしてうっかり身長のことに触れた所為ですね! ……」

 

 ヒビキとコトリは折れた。

 保健室の隅っこで膝を抱えて落ち込む部員二人。

 全て自業自得であることを自覚したのだろう。

 

「そう落ち込むことはないよ二人共、誰にだって失敗する時はある。マイスターを名乗るなら、失敗から学ぶことをしないとね。それに見方を変えれば失敗ではなく、良い事もあったじゃないか」

「良い事?」

「最近は宇宙船やレールガンのことに掛かりっぱなしで碌に休んでいなかっただろう? 今日一日くらいは骨を休めるのも悪くないんじゃないかい?」

 

 先程ユウカにも呆れの返事を貰いはしたが、休む時間を確保できたと思えば悪い気はしない。

 納期に間に合わないなんてマイスターとしてウタハは許せないがまだ焦る時間には遠い。

 

「予算も時間もまだまだ余裕はあるんだ、そう焦る事は無いだろう?」

「……それもそうだね」

「ウタハ先輩の言う通りですね! 働き続けると疲労が溜まってしまいますから。ちなみに疲労は過度のストレスによって自律神経が───」

 

 コトリの説明が始まったところで、思い付いたようにヒビキはスマホを取り出す。

 

「自律神経を整える、と言うかストレスを解消するなら音楽なんてどう?」

「音楽か、カラオケとか?」

「それも良いけど今は無理でしょ、今日は聞く方向だけ。二人は何が聞きたい? ウタハ先輩は演歌?」

「あ! それならミレニアムのピアニストさんの曲がいいです!」

 

 挙手して提案したコトリ。

 ミレニアムのピアニスト、なる人物を知らないウタハは首を傾げる。

 

 そもそも大なり小なり科学、真理を追究するミレニアムで音楽に関心を示すのは珍しい。

 もちろん音楽に科学的側面はないとは言わないが、ミレニアムでは決して王道的ではない。どちらかと言えば芸術学院の領域だ。

 

「音楽部が学園にあったのか?」

 

 そんな部活があった事さえウタハは知らなかったが、ヒビキは心当たりがあるのかスマホで調べている。

 

「ううん、音楽部じゃなくてピアニストっていう二つ名。部活じゃなくて個人で有名なの、それに都市伝説みたいな感じなんだ」

「ほう、気になることを言うね? 何者だいそのミレニアムのピアニストさんは?」

 

 都市伝説と出てきたウタハは話を聞こうと前のめりになる。

 

「SNSで今話題になってるんですよ。ミレニアムの使われていない部室にピアノが放置されてるらしくて、そこで偶にピアノを弾いている生徒が居るらしいんです。偶々聞いた子がSNSに流したんですがそれが大バズりしたんですよ! その曲はもう美しくて……」

「これ?」

「これです! この曲!」

 

 ヒビキがスマホから話題の音楽を流す、エンジニア部は静かに演奏を聞く。

 ピアノから流れる美しい旋律に浸る三人。

 

 時間は二分弱に詰められたその曲を聞き終わるとウタハは感動からか無意識に拍手していた。

 

「良い曲じゃないか! この曲を作ったのは誰だ!?」

 

 エンジニアが設計図を作成して部品を組み合わせるように、音楽家は音を重ねて楽譜を形にする。

 音楽を扱うこと、機械を扱うことは本質的に同じ。

 将来的にエンジニア部のテーマ曲を作りたいと考えていたウタハにとっては、そういう意味でもそのピアニストは尊敬に値する人物。

 是非会ってみたい、だがコトリとヒビキは困った顔をする。

 

「分かりません」

「?」

「分からないです、この人がミレニアムの制服を着ていて、学園の生徒であるのは分かっているんですが。顔は全然わからなくて……」

「うん? ホラーな話?」

「ここら辺が都市伝説っぽいところ。その子に会おうとしたらピアニストさんは逃げちゃって、事件の有ったピアノのある教室に通ってるんだけど全然会えないらしい。もしかしたら成仏できない幽霊が弾いてるのかもって話もあったくらい」

 

 死者の魂が弾いているにしては随分と美しく感動できるピアノだった。

 例え幽霊だったとしても称賛を送るに値する一曲だ、生きているなら会ってみたい。

 

「あ、でもその子のアカウントはありますよ! 自分は作曲家じゃなくて知り合いの作った曲を弾かせてもらっただけだとか!」

「生きてるじゃないか!」

 

 スマホの画面にはその演奏者のアカウントがあり、弾いている曲なども流されている。

 色々と証拠も揃っているので恐らく本人とのことだが、それにしても凄まじい数のフォロワーだ。

 

「でも逃げたりするってことは、会いたいとは思っていないということだろうね」

「恥ずかしがり屋なんでしょうか?」

「まあ、名前が広まることを嫌がる子も居るってことだろうね。その子の為にも無理に会おうとするのは止めておこう」

「私は一度で良いから握手してもらいたいです! 出来る事なら生演奏を聞いてみたいんですが」

 

 それから三人はミレニアムのピアニストの話で盛り上がり、保健室では小さな音楽会が開かれた。

 その後帰ってきたユウカから、保健室で流される音楽の騒音で注意されるのだったが。

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