『N.A.R.A.K.U』。内閣府が誇る界異研究機関、正式名称は国立界異研究・知識活用センターで、英訳であるNational Anomaly Research And Knowledge Utilization centerの頭文字をとって『N.A.R.A.K.U』と呼称される。多くの省庁から有力な人材を引き抜き、研究などに従事させているため政府から界異存在の解明と幽世への侵入経路の確立を期待されている。
「というのが…今回の攻撃目標だ、隊長諸君」
大和撫子を彷彿とさせる黒髪黒目の女性が卓上に広げられた地図を指差している。身長が足らないためか、体を少し伸ばし、その過程で陸軍将校服によって圧迫された胸部分が際立っているが…慣れている他の隊長は口を閉ざし、慣れていない隊長はしれっと目をそらした。大佐であると示す階級章はこの場の誰よりも偉いことを示唆するためではなく、己が過去に、かの大日本帝国の者であると縛るためにある。
「当施設はAIシステムによって管理下におかれ、警備を勤める祓魔師の配置も、防衛装備もすべて乱数配置されていることが判明している。幸い…人目を避けるために宮城県の森林部に隠されている」
「…困るとすれば援軍が来ることだが…そこは私の結界でなんとかしておこう」
「烏有大佐、それは第六隊に任せてくれませんか?」
陸軍の制服をきっちりとシワ無く着ている好青年が口を開く。冷静沈着な声色であったが、その中に含まれている驚きを先程烏有大佐と呼ばれた大和撫子が聞き逃さず、ニヤリと嗤った。
「伝波良隊長、君たちには別の大仕事をして貰う。…サーバールームにはすでに第三隊が忍ばせたバックドアがある。聡明な君なら、分かるだろう?」
「サイバー呪殺ですね」
サイバー呪殺とはミワシ部隊において実用化している電子戦の手法である。三回見たら死ぬ画像等をコンピューター演算を活用して一秒あたり300回以上表示したり、電波ジャックによって聞いたら発狂する音声などを用いて相手の電子機器のみならず、その人員ごと殺傷する戦争倫理上は効率的で望ましい戦法である。
「嗚呼、その通り。サーバールームを管轄する人、AIごとまとめて処分する。それが今回の攻撃作戦の第一段階だ」
「拝命致しました、烏有大佐」
「第二段階は施設の破壊。目標物は地下に位置するため、表の建造物は邪魔でしかない。第八隊による砲撃によって完全に破壊せよ」
「その上でだ、嘉数曹長。今日は銃剣突撃の必要はない。砲撃後は周辺地域に駐屯し、万が一の介入者に備えて警邏にあたれ」
「そんなに強調しなくてもええですのに、分かりましたよ」
「第三段階は施設への突入。第四隊、第七隊によって実行する。今回の作戦に召集されなかった隊は引き続き潜伏せよ。裏切り者の第十二隊は環境庁へ任せ、我々はさらに勢力を拡大する」
「よぅし、
先程から卓上を突っついてた全身黒ずくめの男が立ち上がり
「分かりました、先生」
それを第四隊長が座れと言っている最中
部隊長である烏有先生が手を上げる。
瞬間、周囲を静寂が包み…緊張が増していく
「では、巫号作戦の発動を宣言する」
「総員、了解したな?」
静寂を利用し、烏有先生は確認に覚悟を問うた。無論、隊長達がこれにしっかりと答えてくれると…期待して。
「「「「「了解!」」」」」
この作戦はただ実行して成功した…とだけ書かれるべきであっただろう。しかし、実行日に丁度良く休暇中の第六班長と第四班長が居たことによってーーー変わることになる。
次回の『ミワシ部隊、
戦闘を開始する。
お久しぶりです。林野庁の人です。
今回はミワシ部隊という旧日本陸軍の部隊が内閣府の施設を襲う際の前日談みたいなものです。本格な戦闘は次話にて行います。どうか、お楽しみ頂ければ幸いです。