龍が如く外伝 『龍の跡を継ぐ者』   作:シュウ名刀醜血桜

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自分のペースでのんびりやっていこうかなと思ってます。


1章『父の足跡』
某日神室町にて


 

2024年。某日。東京神室町。

 

ホストクラブやバー風俗店等を中心として栄えたアジア最大と言われる歓楽街神室町。

 

街中のネオンが常に光を失わないことから別名眠らない街とも言われている街で数年前までは東城会という関東最大の極道組織が街一帯を長らく牛耳っていたが、2019年に春日一番と仲間達そして渡瀬勝や荒川真澄や東城会のレジェンド達が起こした東城会と近江連合の同時解散によって東城会のヤクザというこれまで神室町にとって大きかった存在が神室町から消えたが、現在の神室街東城会の解散によってヤクザという『夢』を失くした元構成員や次に神室町を支配しようと息巻く半グレ達が街の至る所にひめいており、結果としてヤクザがいた頃と何も変わらない暴力と欲望の渦巻く街のままだった。

 

そんな街の天下一通りと呼ばてる華やかなアーケード街の出入り口に架けられた神室町を象徴する天下一通りのアーチ前に大道寺一派から指令を受け訪れた黒いスーツを着た一人の青年が降り立った。

 

(ここが神室町⋯!!)

 

青年の名は桐生(のぞむ)この神室町で今もなお語り継がれる数々の伝説を残してきた生ける伝説『堂島の龍』桐生一馬の実子である。

 

 

 

望が神室町に訪れることとなった切っ掛けは望が神室町に訪れる数日前横浜伊勢佐木異人町内に存在する大道寺のセーフハウスにて。

 

「ふぅ」(やっと一息つけるな⋯)

 

「望!!ちょっと良いか⋯?」

 

三日間に及ぶ大道寺にとっての重役である要人の娘の護衛の依頼が終わり大道寺のセーフルームへ帰ってきた望が一息つき休もうとするとレンチコートを着たエージェントに声を掛けられる。

 

「どうかしたんですか⋯?吉村さん?」

 

名前を言われたレンチコートを着た男こと吉村がバツの悪そうに「いやな⋯」と一言声を漏らしー

 

「まずはこちらの想定以上働きをしたことは褒めておこう」

 

「ありがとうございます」

 

「それでだ。話というのは⋯」

 

吉村はそこまで言うと懐から一人の男の写った写真を取り出し望に手渡す。

 

「この人は⋯?」

 

「コイツは元近江連合の吉野と言ってな。2日ほど前に異人町でのちょっとした任務中に突如コイツが俺の管理してるエージェントを襲撃し、エージェント達は全員軽症で済んだんが奴は襲撃後姿を消していてな⋯そいつが今⋯」

 

「そいつが今神室町に潜伏してると情報が入ったから神室町へ行って事実の有無の確認、そして神室町に居る場合は捕まえてくれば良いんですね?」

 

「お前は父親とは違って物分かりが早くて助かるな。俺の部下が全員こうでいてくれれば俺がわざわざ現場に出張ることも減るんだがな⋯」

 

「ははは⋯」

 

吉村が頼もうとした依頼内容を望が言葉を先読みすると吉村は頷きそれ以上は何も口にせずライターと煙草を取り出し火を付けて一服し始める。

 

「頼んだぞ⋯望」

 

「ええ⋯任せて下さい」

 

そして時は戻り現在神室町にて。

 

(取り敢えずこの街に詳しく情報を多く持ってる人が集まりやすい場所を探すかな。)「ん⋯?」

 

初めて神室町にきた望は人の集まる場所を歩いて探すことに決めて天下一通りアーチをくぐり天下一通りを歩いていると、横手に周りの建物と比べて一際煌びやかな外観が目立つ店が目に留まった。

 

(随分と煌びやかな店な店だな⋯)「あのすみません⋯!!此処ってどういうお店なんですか?」

 

望は店の情報を獲るべく近くを通ったサラリーマンに声を掛ける。

 

「あぁ。この店はスターダストっていうこの街№1のホストクラブだよ」

 

「そうなんですか⋯創業してから何年ぐらい経つお店なんですか?」

 

「大体2000年頃には創業してた筈だから20年位経ってると思うよ」

 

「そうなんですか!!わざわざ引き止めてごめんなさい!教えて下さりありがとうございました!!」

 

「良いの!良いの!!」

 

店について親切に教えてくれたサラリーマンに礼を言うとサラリーマンは軽く手を振り中道通りの方へと歩いて行った。

 

(此処ならこの街に詳しく遊びなれてる若い人が多く居そうだな。)「よし!」

 

店の情報を獲た望は店の入り口に近づき周囲を見渡してこの店がホストクラブだと分かると、情報収取するべく扉を開け店に入ろうと扉へ手をかけると-

 

「このくそホストが!!くたばれや!!」

 

「!?」

 

叫び声と共に扉が勢いよく開かれるのと同時に中から顔中が青痣だらけのホストが横切り地面を転がる。

 

「うっ⋯ううう⋯すみません⋯!!ユウヤさん⋯!一輝さん⋯!!」

 

「あ、あの~大丈夫ですか?」

 

「おう!!威勢が良いのは口だけか!!大した事ないな!!」

 

蹲り悔し涙を流すホストに声を掛けるが中からガラの悪い3人の男組が出て来てホストを睨みつける。

 

「俺の真知子に手出しておいてこの位の怪我で済むと思うんじゃねぇぞ!!」

 

3人のチンピラの中でも細身の男が店から持ってきたビール瓶で横に居る望に眼もくれず、蹲るホストの後頭部を殴ろうとするが横から望が割り込み右腕で男の腕を掴み止める。

 

「止めろ⋯!」

 

「あぁ?何だテメェ」

 

ホストを瓶で殴って気持ち良くなる予定だったチンピラは腕を掴み止めた望を睨みつける。

 

「あんた等さ⋯見た感じもう良い歳した大人でしょ?その大人達がどんなムカつく事があったにせよ無抵抗の人をここまで痛めつけるのはさ⋯ちょっとやりすぎじゃないの⋯?」

 

「テメェ!!うるせぇぞ!!」

 

「コイツはな!!よッちゃんのお気に入りの女の真知子さんに手出したんだ!!やられて当然だろうが!!」

 

「でも付き合ってないんでしょ?今の言い方だとさ?」

 

「うっ⋯」

 

「それは⋯」

 

チンピラと一緒に居た取り巻き2人が望とチンピラの会話に口を挟み自分達の行動は正しいことを主張をするが、望の言葉に取り巻き達は返す言葉も出ず動揺する。

 

「そもそもホストっていう仕事は基本店に来た女の人と飲むのが仕事なんだからさ。その真知子さんがホストクラブに来て飲むのは自由でしょ?だから本当に悪いのは貴方に黙ってホストクラブに来た真知子さんであって、このホストさんはただ店に来た客と飲んでいただけで何も悪くないと普通は思わないかな?」

 

「て、テメェ!!!ぶっ殺してやる!!」

 

(争い事は好きじゃないから喧嘩するのは避けたかったんだけどな⋯)「仕方ないか⋯!」

 

続く望の言葉に対して逆上したチンピラが望に掴まれている手を振り解きビール瓶を望の頭に振り下ろそうとするが振り下ろすよりも先にチンピラのみぞうちに望の右肘が打ち込まれていた。

 

「な、何、しやがったん⋯だ⋯」

 

「よ、よっちゃん!!テメェ!!うぉ!?」

 

「せいや!!」

 

みぞうちに肘討ちを打ち込まれ膝から崩れ落ちたチンピラを見て二人の取り巻き内の赤ジャージを着た方の男が望が立ち上がった所を狙い顔面に右ストレートを繰り出すが難なく避け、殴ってきた右手を掴むと男へと飛びついて男を地面へ組み伏せ腕十字固めで男の右腕の骨を折った。

 

「お、俺の腕が!!腕が~!!」

 

腕十字固めで右腕を折られた男は折れた右腕を抑えながら呻き声を上げ蹲る。

 

「バケモンめ!!これでも!!ってあれ?」

 

「君の投げようとしてたのってこれのこと?」

 

残された黒ジャージを着た小太りの男がポケットから薬品が入った瓶を取り出し男の拘束を解き立ち上がった望に向かって投げ付けようと腕を動かした瞬間、男が持っていた筈の瓶が突如消え訳が分からずに自身の手を二度見する男だったが望に声を掛けられ、男が恐る恐る望を見ると、望の左手にさっきまで自分が持っていた筈の薬品が握られていた。

 

「もう十分やって実力差ってやつが分かったよね。分かったらそこの二人連れて此処から消えてこの店には二度と近づかないで。分かった?」

 

「わ、分かりました!!マジで済みませんでした!!!」

 

望の言葉に何回も頷き二人を引きずって何処かへと去っていった。

 

「全く⋯!僕は争い事が好きではないのに⋯!!行く先々でこうも連続で絡まれてたら嫌になっちゃうよ!!もう~!!」

 

「あの~」

 

去っていく男達の後姿を見てため息を吐く望に助けられたホストが恐る恐る近寄り声を掛けた。

 

「ん?あぁさっきのホストさんか!!顔中痣だらけだけど大丈夫?」

 

「あぁ⋯君が助けてくれたお陰でなんとか」

 

「そっか!!怪我とかしてなくて本当に良かった!!それでさちょっと聞きたいことがあるんだけど⋯この写真の人を探してるんだけど心当たりない?」

 

望はスーツのポケットから吉村から預かった吉野の写った写真を取り出しホストに見せる。

 

「実は俺は最近福岡の方からユウヤさんに憧れてホストになる為に上京してきたばかりでさ。この街の事は詳しくないんだよ。でも店長のユウヤさんとオーナーの一輝さんならなんか知ってるかもな。」

 

「その人達は今は何処に?」

 

「今は店のオーナーの一輝さんが店長だった頃からウチにずっと通ってくれるウチのお得意さんに飲みの付き合いに誘われて飲みに行ってるよ。そろそろ帰ってくる頃だろうし、俺個人でもお礼がしたいから良かったらウチの店で飲んでいってよ!!って多分だけど君⋯未成年だよね?」

 

「まぁ未成年なんでお酒は飲めないんですけど其方のお店が良かったら喜んで飲んでいきます!!ありがとうございます!!」

 

助けたホストからは吉野の情報を獲られなかったがもうすぐ店に帰ってくるこの街に詳しい店長のユウヤとオーナーの一輝に話を聞く為に助けたホストの好意に甘え店で待たせてもらう事にした。

 

 

 

望が店に入ってから10分後

 

「はぁ⋯!!lはぁ⋯!!!な、何とか抜け出せた!!」

 

望が店に入ったまでは良かったが店に入ってきた望の顔を見た女性客達が望を新人ホストと勘違いし望へ我先にと言わんばかりに傾れ込んでいき店内がパニックとなり結果、ホストや女性客から情報を聞くことは出来なかった。

 

(店内中のホストの皆さんが上手く対応してくれたから助かったけどもしも助からなかったらと思うとゾッとするな⋯)

 

自分に押し寄せる女性客の顔を思い出しホストという仕事の凄さと恐怖を望が一編に感じてると――

 

「きゃあ~!!ユウヤ様~!!」

 

「一輝さんも一緒よ~!!」

 

(来た!!)

 

女性客の黄色い歓声が聞こえ首を向け見ると白のタキシードを着た細身の男と細身の男とは対照的な筋肉質の赤いタキシードを着た男が女性客に囲まれていた。

 

「あの!!すみません!!僕は桐生望というものですがお二人に聞きたいことがあるんです。お時間よろしいですか?」

 

「「桐生!?」」

 

「?」

 

人混みを搔い潜って2人の前にたどり着いた望は名乗るが2人共望の名字に驚き、マジマジと顔を見始めた。

 

「あの⋯?僕の顔になんか付いてますかね?」

 

「確かに輪郭は桐生さんに似てる気もするな⋯」

 

「見て下さい一輝さん!!目元の感じも似てます!!」

 

「望君!!すまないが髪をちょっと両手でかき上げてみてくれないかな?」

 

「確かにそれが一番分かるかもしれないですね!!」

 

(なんか分かんないけど髪をかき上げればいいんだよね⋯)「じゃあ行きますよ⋯」

 

2人に期待の眼で見られた望は望み通りやらないと話は聞くことは出来ないと思い両手で髪をかき上げオールバックにするとその状態の望を見た2人はお互いの顔を見て何度も頷いていた。

 

「これで満足しましたか?」

 

「ああ⋯すまないねつい年甲斐もなくはしゃいでしまった。君は吉野という男を神室町で探してるんだったね。ユウヤ!!」

 

「分かってますよ!!一輝さん!!今から神室町中の店という店に片っ端から電話掛けて吉野って奴の居場所を探します!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

望が両手を離して髪を戻すと一輝がユウヤに声を掛けるとユウヤは頷いてバックヤードに電話を掛けるべく走って行った。

 

 

 

 

「望!!知りたがっていた吉野の場所が分かったぞ!!」

 

ユウヤがバックヤードに行ってから5分位たった辺りでバックヤードのドアからユウヤが携帯電話を持ったままドアから顔だけを覗かせて望へと声を掛ける。

 

「何か分かったんですか?」

 

「ああ!!どうやら吉野って奴は何人かの男達を引き連れてホテル街の今は廃墟になっている建物に入り浸ってると情報があった!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「あ、ちょっと待った!!」

 

吉野の居場所が分かると望は椅子から立ち上がり、2人に礼を言い早速向かおうとすると一輝が引き止め望に紙を一枚手渡す。

 

「これは?」

 

「これはこの街の観光マップだよ。この街で用事があるなら持っておいて損は無い。」

 

「ホテル街はここから出て真っ直ぐ行った所にバッティングセンターがあってそこから少し行った先にあるな。」

 

ユウヤは手渡された紙を広げると指を差して望にホテル街への道なりを教える。

 

「ユウヤさんに一輝さん!!何から何までありがとうございます!!」

 

「此方こそ店のホストを守ってくれてありがとう!君さえ良ければ今度また改めてしっかり礼をさせてほしい」

 

「気を付けて行くんだぞ!!」

 

「はい!!今度はプライベートで来させてもらいます!!ありがとうございました!!」

 

望は世話になった2人に頭を下げ、観光マップを服のポケットに入れ店から出てホテル街へと向かった。

 

 

「此処が吉野がいる場所か⋯」

 

向かう途中何度か絡まれそうになったが無事躱し、望は吉野のアジトにしてるであろう廃墟にたどり着いた。

 

(ユウヤさんが廃墟って言ってたけどマジで見るからに廃墟って分かるな⋯)「よし!!行くか!!」

 

「テメェ!!何処のモンだ!!」

 

望が老境化が進み錆びているドアを蹴り破り中へ入るとガラの悪い男が望の胸倉を掴み怒鳴り散らすが――

 

「オラァァ!!」

 

「ぐへらぁ!!」

 

望の拳が男の顔面をぶち抜いた。

 

「何の音だ!?」

 

「っ!?あ、兄貴!!」

 

「テメェ!!何処のモンだ!!ゴラァ!!」

 

ぶっ飛んだ男が壁に激突し動かなくなると物音に気が付いた吉野の部下達が続々と入口に押し寄せてきた。

 

「全員纏めてかかって来い!!」

 

「くたばれや!!」

 

「遅い!!」

 

吉野の部下の男が体重を乗せた右脚の前蹴りを繰り出すが望は男の左脚にカウンターで水面蹴りを見舞い、バランスを崩し倒れた男に右足で顔面を踏み付ける。

 

「ふざけんじゃねえぞ!!」

 

「オラァ!!」

 

踏み付けられた男を助けるべく白スーツの男が殴りかかるが、望は拳を躱し男の脇の下に首を差し入れ、肩の上に男を持ち上げそのまま男を踏み付けた方の膝に向けて頸椎から投げ落とした。

 

「ふざけんなや!!クソガキが!!」

 

3人目の男が懐から取り出した匕首を構え、望の腹部目掛け走り出す。

 

「おっと!!危ないなっと!!」

 

「ぐぇ!!」

 

望は匕首を持った男の腹部目掛けての一突きを躱し匕首を持った手首を片手で掴むと、もう片腕の二の腕をクの字に折り曲げ匕首を持った脇の下に潜り込ませると男の匕首を持った手が開き地面に落ちる。その隙を突き、背刀で目を叩き、怯ませると匕首を持っていた手首を両手で捻りながら掴み、掴んだ手を引き出しつつ背中を向けながら背負って地面に投げ飛ばした。

 

「1人づつ行ってたらコイツを仕留められねえ!!2人同時に行くぞ!!」

 

「はい!!兄貴!!」

 

「!!」

 

望は言葉通りに1人ではなく2人同時に向かってくるのかと思っていたのだが兄貴と呼ばれた強面の男が姿勢を低くし望の前へ踏み込むとワンツーにフックやアッパーを組み合わせたコンビネーションを繰り出し襲い掛かるが望はその場から動かずに上体だけを動かしコンビネーションを躱していきアッパーに合わせてカウンターに左ストレートをくらわせようとするが-

 

「うぉぉぉ!!」

 

「!?」

 

右ストレートを放つ直前にいつの間にか後ろに居た強面の男を兄貴と慕っていた舎弟の男に羽交い絞めにされてしまった。

 

「離せ!!」

 

「よくやった!!このまま抑えてろ!!コイツをサンドバックにして嬲り殺してやる⋯!!」

 

「分かりました!!しっかり押さえてます!!」

 

「お前が何者だとかっていうのは個人的には気になってはいるがもうこれで気になくなるな⋯!!これからお前は弄り殺す予定だがしっかりと俺を満足させてから死んでくれよ!!」

 

羽交い絞めを振り解こうとする望の顔面に全力の右フックが振り抜かれる筈だった――

 

「あ、兄貴なんで⋯?」

 

「あぁ⋯?」

 

だが実際に右フックが振り抜いたのは男の舎弟だった。

 

 

「オラァ!!」

 

男の右フックをくらって膝から崩れて倒れる舎弟の男に羽交い絞めによる拘束が解かれ自由になった望は駄目押しと言わんばかりの左フックを顔面に叩き込み地面へ叩き伏せる。

 

(訳が分かんねぇ⋯!何で⋯!?)

 

「邪魔だ!!」

 

舎弟を振り抜いたことで動揺している男の方へ振り向き、男の顎に右のハイキックを振り抜いた。

 

「っあ」

 

顎を蹴り抜かれた男は意識が飛び膝から崩れ落ち地面にゆっくり倒れる。

 

(ふぅ⋯危なかった。)

 

何故右フックが当たったのが羽交い絞めにされて碌に動けない筈だった望で無く舎弟の男だったのか?――

 

 

あの時望は、右フックが当たるギリギリのタイミングで腰を落とし頭を下げ右フックを自分ではなく舎弟へと当てさせ、意識を失った舎弟の力が緩み拘束が解け自由となった瞬間確実に仕留めるべく駄目押しに左フックを繰り出し地面に叩き伏せ、動揺していた男を続け様に繰り出した右のハイキックで迎撃したというのが望がどうやって羽交い絞めから逃れ反撃出来たのかという謎の答えだった。

 

「これで全員倒したかな⋯?」

 

これは望本人も知ることの無いことだが、今から時を遡ること12年前の2012年に七代目近江連合会長黒澤翼の計画により5大都市を巻き込み勃発した『東西全面戦争』の際、彼の父親の桐生一馬が福岡の永洲街で『鈴木太一』という偽名で生きていた時期に、抗争に巻き込まれる形で出会った東城会系組員及び会長護衛役だった『森永悠』と同じく会長護衛役で事件を引き起こした黒幕黒澤翼の実子であった『相沢聖人』との戦いの中で相沢から羽交い絞めにされピンチに陥ったがその際に息子の望と同じ方法で拘束から逃れ窮地を脱出おり、その事実は正しく両者の間に確かな『血の繋がり』があることへの何よりの証明でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処か!!」

 

「誰や!?」

 

 

襲って来た吉野の部下を全員退け廃墟の中を進んでいた望は明かりが隙間から漏れ出てるドアを見付け蹴り破り中に入ると、近江連合の代紋が壁に飾られた部屋の中で椅子に踏ん反り返っている吉野が居た。

 

「取り敢えず聞くけど吉野さん。僕が此処に来た理由分かるかな⋯?」

 

「誰と勘違いしとるかは知らんが俺はお前みたいなガキンチョに襲撃される理由はないで」

 

吉野は望が大道寺一派の手の者だとは微塵も思ってはおらず襲撃してきた理由に身に覚えがない様子だった。

 

「じゃあこう言えば良いかな⋯?僕は貴方が数日前横浜で襲撃した『大道寺一派』の使いの者だ。」

 

「なんやて⋯?大道寺一派やって⋯?ふっ⋯! ワッハッハ!」

 

望が大道寺の手の者だと聞いた途端吉野は腹を抱えて笑い出す。

 

「何か面白い事でも言いましたか?」

 

「いや⋯!スマン!!スマン!!まさかあの大道寺一派ともあろう組織がまさかガキをエージェントとして使わんといけん位落ちぶれてるのに対してつい笑ってしもうたわ。」

 

吉野の大道寺一派を見下した言葉を聞いた望の拳から小さくポキッと、鋭い音が鳴る。

 

「⋯少し話が変わるんですが何故近江の代紋が壁に飾られてるんですか?」

 

「それはワシが元渡瀬組の組員やからや。」

 

元々吉野は、近江連合と東城会の大解散前は渡瀬組の構成員であり大解散前に出所した渡瀬を大阪市内の工事現場で出迎えた際、2大極道大解散計画自体に反対し大解散を潰そうと画策していた渡瀬組若頭補佐の獅子堂が仲間に引き入れた三代目西谷誉や、彼が会長を務める鬼仁会と共に解散計画を潰すべくその場で渡瀬達に対して、反旗を翻し起こった喧嘩に吉野も反対派として参加し、組長である渡瀬をその場で殺害しようとしたのだが、渡瀬や渡瀬組若頭だった鶴野、それに解散計画を確実に成功させるべく大道寺一派から用心棒として『日の当たる世界』へ一時的に呼び戻されていた望の実父『堂島の龍』桐生一馬ら僅か3人の手によって、叩きのめされた極道達の内の1人の極道であった。

 

「そうですか⋯それで貴方が大道寺のエージェントを襲撃したのは何でですか⋯?」

 

「坊主は理由が知りたいんか⋯?襲撃した理由はな、嘗て渡瀬の奴が東城近江大解散の時に実は生きてた桐生一馬を大金叩いて大道寺から引っ張り出した時のように大道寺一派(御宅ん所)に囚われとる『獅子堂さん』と『西谷誉』ちゅう男を開放する為や」

 

「⋯成程。もしも大道寺から解放出来たらその後はどうするんですか?」

 

獅子堂と西谷のことをある程度は知っている望は次に吉野がどう答えるのかをある程度察して拳を握り込んだ。

 

「獅子堂さんと西谷の奴を解放したらな。奴らを担ぎ上げてもう一度近江連合を立て直すんや!!」

 

「その為なら例え何人手にかけても良いんですか⋯?」

 

望は震えた声で吉村に問いかける。

 

「おう!!その為やったら何人でも殺したるわ!!」

 

「っっっ!!!」

 

笑顔で答える吉野を見た望の握り込んでる拳から血が流れだす。

 

「そういえばその話をしとって思い出したんやけど奴らを解放したらまず狙うんは――」

 

 

 

吉野がそこまで口にした瞬間――

 

「オラァッッ!!!!」

 

「アガッ!?」

 

吉野の顔面に怒りのままに繰り出された望の右の拳がめり込んだ。

 

 

「い、いきなり何すんねん!?頭――」

 

「うるせぇんだよ!!」

 

いきなり殴られ折れてしまった鼻を抑え困惑しながら吉野は言葉を投げかけるが望の怒声が遮る。

 

「もうこれ以上アンタの戯言は聞きたくねぇ!!さっさとかかって来い!!この腐れ外道が!!」

 

「おう⋯!!ゴラ!!クソガキ⋯!!今なんて言いおった⋯?」

 

今度は吉野が望の言葉に肩を震わす。

 

「聞こえなかったか⋯?じゃあもう一度だけ言ってやるよ!!アンタは近江連合を立て直す為なら人を殺すことも厭わないただの腐れ外道だ⋯!!」

 

「このクソガキが⋯!!ぶっ殺したるわ!!」

 

「行くぞ!!!」

 

望は怒りのままに右手を上に、左手を下に構え吉野に向かい走り出す。

 

「オラァ!!」

 

「甘いわ!!このボケが!!」

 

走る勢いを利用した右拳による振り下ろしを吉野はスウェイバックで避けると、近くにあった金属バットを拾い上げ望の頭部に何度も振り下ろす。

 

「ウォォォォ!!!」

 

「な、なんやと!?」

 

望の頭部から血が流れ始めるが望は怯むことは無く、叫び声を上げ吉野にジャブ、ショートアッパー、右脚によるハイキックを繰り出す。

 

(コイツ⋯!!バケモンか!?)

 

何度殴られても倒れる気配すらない望の耐久度に驚愕しつつジャブやショートアッパーを首をひねり躱し、スウェイバックで続けざまに繰り出された右脚のハイキックを避けたが――

 

「ハァァ!!」

 

「ガッ!?」

 

右脚のハイキックの勢いを使って身体を捻り繰り出された左後ろ蹴りが吉野の土手っ腹へと突き刺さる。

 

「はっ!!せい!!うりゃぁ!!」

 

左後ろ蹴りが土手っ腹へ突き刺ささり痛みで崩れ落ちていく吉野に望は顔面に左腕での肘討ち、顎に掌打をくらわせ、よろめいた所を望は見逃さず勢いを付けた横蹴りを放つ。

 

「ぐぉっ」

 

ぶっ飛んだ吉野は壁にぶつかって意識を失い、2人の戦いの決着が付いた。

 

 

 

 

 

 

2人の決着が付いてから約1時間後。

 

 

吉野を倒した望は吉野を引き摺り外に出ると、万が一に吉野が起きた場合を想定して腕時計に内蔵されてる『蜘蛛』のワイヤーで拘束し、引きずる前に事前に連絡したエージェント達をスマホを見ながら待っていると黒塗りの車が望の目の前へ止まり、車の中から数人のエージェントが出てきた。

 

「よくやったな望。あの花輪が手塩に掛けて育てた子供なだけはあるな」

 

「お褒め頂きありがとうございます。」

 

大道寺のエージェントの中でも『管理者』と呼ばれている立場の初老のエージェントがエージェント達を代表し依頼を完遂した望の功績を褒め称える。

 

「この中に居る吉野の部下を全員回収しろ!!」

 

「「はい!!」」

 

初老のエージェントが指揮を執り望が倒した吉野の部下を回収するべくエージェント達が廃墟の中へ突入する。

 

(吉村の身柄も抑えたしこれで帰れるな!!)

 

一仕事を終えた望が他のエージェントに現場を任せて帰ろうとすると――

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「ど、どうかしましたか?」

 

鬼の面を被ったエージェントが望の行く手を阻むかのように立ち塞がり、仮面越しに望の顔を覗き込みジッと見つめる。

 

 

「エージェント『鬼面』!!お前も早く運ぶの手伝え!!」

 

「⋯すんません。今行きますわ」

 

鬼の面を被った男―コードネーム鬼面(きめん)は暫く望の顔を見ていたが、望が倒した男を引き摺って廃墟から出てきた他のエージェントに声を掛けられると望から踵を返し、他のエージェントの方へと向かって行った。

 

(⋯あの人。人の顔をずっとジッと黙って見てなんだったんだろ⋯?)「ま、いっか!!」

 

深くは考えず望は自身の部屋がある大道寺の拠点へ帰ろうとすると――

 

(ん⋯?)

 

望はスマホに着信があった事に気が付いた。

 

(非通知からか⋯)「こういう時は大体⋯」

 

電話を非通知で掛けてくる相手に心当たりのある望は素早くスマホの通話アプリを起動し、電話番号を打ち込み非通知から掛けてきた相手に電話を折り返し掛けるとワンコールで相手と繋がった。

 

「もしもし⋯『花輪』さんですか?」

 

「⋯ええ。私です」

 

非通知で望へ電話を掛けてきた相手は望の予想通り彼の育ての親でもあり、彼の父桐生一馬の管理者でもある『花輪喜平』であった。

 

「⋯まずは横浜そして続く神室町での任務お疲れさまでした」

 

電話が繋がって早々花輪は望に労いの言葉を掛ける。

 

「こういう状況には慣れっこで全然疲れては無いんだけどね。⋯そんなことよりわざわざ花輪さんが直接電話を掛けてくるってことは何かあったんだよね?」

 

「次の貴方の任務が決まりました。上層部直々の任務です」

 

花輪が望へ電話を掛けてきた理由は大道寺の上層部から望へ任務が命じられたことを伝える為だった。

 

「どんな任務ですか?」

 

「今回の内容に限っては他のエージェントにも出来るだけ聞かれたくはない内容なので、今回は貴方に直接お会いしてからお伝えます」

 

望はいつも通り早急に任務を片付けるべく任務内容を聞いたが、花輪はいつもとは違い直接望と会って話したいと言う。

 

「何処に行けばいいですか?」

 

普段と違い他のエージェントには任務の内容を明かせないという重要な任務だと理解した望は花輪と落ち合う場所を聞く。

 

「貴方の部屋のある大道寺のアジトへと先に行って待ってますよ」

 

花輪はそれだけ言うと通話を斬った。

 

(直接会わないと内容を話せない程の任務って何なんだろ⋯?)「考えてもしょうがないし取り敢えず花輪さんの元へ行くか!!」

 

望は携帯でタクシー会社へ電話を掛けタクシーを現在地に呼ぶと到着したタクシーに乗車し、タクシーの運転手に大道寺のアジトの近くへの行き先を伝えて花輪の待つ自身が拠点としている大道寺のアジトへと向かった。





次回もお楽しみに!!
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