龍が如く外伝 『龍の跡を継ぐ者』   作:シュウ名刀醜血桜

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龍が如く2(極2)のその後の龍司については独自の解釈(というよりも完全に妄想に近い形)で書いております



遅れましたが今年もよろしくお願いします!!



黄龍を背負いし男

 

 

望が蒼天掘に訪れてから3日後の蒼天掘招福町のビル。

 

 

 

「なんや⋯立ってるのが疲れたわ⋯⋯」

 

「組長が立ってろ言うんやからしゃあないやろが!!我慢せい!!」

 

2人の男が組長と呼び慕う男から命令で、数時間事務者のビルへの出入り口の前へと立ち、入り口を何者であっても通さないように守っていた。

 

「中でゴロゴロしとる連中がおったのになんで俺らだけこんな目に⋯⋯!」

 

「賭け事に負けたんやからしゃないやろ⋯⋯でもそろそろ交代してくれてもええと思うんやけどな⋯」

 

男達が互いの顔を見ながらため息交じりに話をしてると-

 

「ちょっとええか⋯?」

 

金髪をオールバックで固めた大男が2人へ近寄り話しかけてくる。

 

「なんや?オッサン。ここはオッサンが来る所やないで」

 

「そ、そうや⋯⋯!此処はオッサンの来る所やないわ!!」

 

2人の男は筋肉質で大柄な体格の男に怯えつつも刃物を取り出し刃先を男に向けて構える。

 

「穏便にことを終えようと思ったんやが⋯しゃあないな⋯⋯」

 

「なんやと!!」

 

「舐めんなや!!クソ親父!!」

 

 

口から僅かにため息をついた金髪の男へと、2人の男達は刃物を振り回しながら勢いよく襲い掛かった。

 

 

 

 

 

数分後。

 

「差し入れ持ってきたで~!!ってなんや!?」

 

「お、兄貴。来ましたわ!!」

 

「今度は話が出来る奴やとありがたいんやがな」

 

ビルの前で門番をしている2人組が文句を言うのを見越して、差し入れにと近くのポッポ《コンビニ》で買った飲み物や食べ物が入った袋を持った2人組の兄貴分の男が出入り口に着くと、見張りの2人組男達は居らず、代わりに金髪の男がパンチパーマの男と煙草を吸いながら喋っていた。

 

「こ、此処で見張ってた奴らは何処に行ったんや⋯⋯」

 

「あ?ああ⋯アイツ等ならあそこや」

 

金髪の男に出入り口を守っていた筈の男達の居場所を聞くと、金髪の男は煙草の火を消し、携帯灰皿に煙草の吸殻を入れながら首を軽く右へ傾ける。

 

 

「っ!?お、お前ら!?」

 

 

金髪の男が首を傾けた方向を男が見ると、ゴミ捨て場に倒れている男達が目に入る。

 

 

「生きとるんか⋯?」

 

「ああ。生きとるわ」

 

ゴミ捨て場へ居る男達の生死を金髪の男に確認し自身の舎弟である男達が生きていることが分かると、男は安堵し軽く息を吐く。

 

「兄貴!そんな事よりも本題に入りましょう」

 

「ああ。そうやな」

 

「おう!!お前!!此処にあの『郷田龍司』が居るっちゅうのはホンマか!!」

 

「ひっ!!」

 

パンチパーマの男が安堵する男の胸倉を掴み力任せに壁に押し付け、自分達が探している『郷田龍司』の所在を確認する。

 

「た、確かに『郷田龍司』なら此処におる!!せ、せやけどお前達が『郷田龍司』に勝つのは絶対に無理や!!」

 

「なんやと⋯⋯?」

 

『郷田龍司』に勝つのは無理だと言い切る男に対して、パンチパーマの男の胸倉を掴んでる力が強くなる。

 

「テツ⋯⋯少し強く握り過ぎや。少し緩めたれ」

 

「兄貴⋯⋯ええ。分かりましたわ」

 

金髪の男はパンチパーマの男に胸倉を掴んでる力を緩めるように言うと、パンチパーマの男は言う通りに力を緩めた。

 

「さぁ⋯話の続きや。何でワシ等がその郷田龍司に勝てんのか⋯理由を説明してもらおうか」

 

「そ、それはな!!郷田龍司だけでなくあの『桐生一馬』もウチに居るんや!!あの『関西の龍』だけやなくあの『堂島の龍』もやぞ!!お前達が幾ら強いと言ってもあんなバケモン達には絶対に勝てんわ!!」

 

「なんやと⋯?」

 

ずっと黙って話を聞いていた金髪の男だったが桐生一馬の名前を聞いた瞬間、強面とも思える顔を更に顰める。

 

「ビビるんのも無理無いわ!!まぁ、此処で回れ右すんなら見逃してやっても――」

 

「うっさいわ!!このボケが!!!」

 

「ぐわっぱぁ!!」

 

顔を深く顰めた金髪の男を見て、男は金髪の男が桐生一馬の名を聞きビビったと思い込み恐る恐る上着の内ポケットへ手を突っ込み刃物を取り出そうとするが、それよりも早く金髪の男の拳が男の顔面に深々とめり込む。

 

「兄貴⋯情報通りやはり奴は此処に⋯⋯」

 

「あぁ⋯!間違いなく居るわ。テツよ⋯せっかく来てもらって悪いんやが此処はワシ1人でやらせてもらうで」

 

「元よりそのつもりでしたわ⋯⋯それと兄貴⋯これを」

 

 

パンチパーマの男は近くに止めていた車の中から白い蛇柄のエナメルのロングコートを取ると金髪の男へ手渡した。

 

「これは⋯⋯?」

 

「やっぱ兄貴はこうじゃないといけないと思ったんで、勝手ながら用意させてもらいました」

 

「テツ⋯ありがとな。ほな、ちょっくら行ってくるわ」

 

「ええ。気いつけて下さい。兄貴」

 

パンチパーマの男-『二階堂哲雄』は頭を下げロングコートを羽織り建物の中へと入っていく

金髪の男-『郷田龍司』を見送るのであった。

 

 

郷田龍司が建物の中へと入ったのとほぼ同時刻-赤目のアジト。

 

 

(赤目ネットワークからの情報はまだ無しか⋯⋯)

 

望が蒼天掘りへ来てから3日経ったが、郷田龍司関係の情報が一向に入ってこずにいた。

 

 

「動こうにもこうも情報が無いんじゃ動きようもないし、今日も赤目さんからの依頼をこなそうかな」

 

 

いつも通りに赤目ネットワークの依頼をやろうと思い、赤目ネットワークの依頼を確認しようと立ち上がった望だったが-

 

 

「望~!!郷田龍司の目撃情報があったで~!!」

 

 

私用で外に出かけていた筈の赤目が1枚の写真を持って、ドアを勢いよく開けアジトへ顔を出す。

 

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、マジや!!とにかくこれ見て!!」

 

赤目が手に持った1枚の写真を覗き込み見ると、そこには金髪の男が2人組を相手にしている所がバッチリと映っていた。

 

「⋯⋯⋯」(この人が龍司さんか⋯⋯どことなく父さんに似てる気がするな)

 

初めて龍司の顔を見た望は龍司同様背に"龍"を背負う父と重ね合わせて見てしまう。

 

 

「今この場所に行けば郷田龍司に会えるかもしれないってことですね!!赤目さん!!ありがとうございます!!」

 

「場所は招福町のビルや!!気を付けて行くんやで!!」

 

「はい!!」

 

赤目に礼を言い望はアジトの扉を開け外に飛び出し龍司の居る招福町のビルへと向かって走り出した。

 

 

 

 

数分後。

 

 

(此処に龍司さんが居るのか⋯⋯最悪龍司さんと戦うことになるかもしれない⋯⋯)「ん?あれは⋯?」

 

 

招福町のビルに着いた望だったが、パンチパーマの男がビルの入り口に寄り掛かり煙草を吸ってるのが見え、咄嗟に近くの電柱に身を隠す。

 

(これじゃあ正面の入り口からは入れない⋯!どうしようか?)

 

望がどうにかして男を掻い潜りビルに忍び込む方法を考えている時だった。

 

(ん?あれは⋯?)

 

「坊主。こっちや!」

 

1人の初老のホームレスが望に向け手招きをしているのが見えた望は、パンチパーマの男に見つからないよう姿勢を低くし、望が初老のホームレスの元へと向かう。

 

「どうしたんですか?」

 

「君が赤目ちゃんの言ってた望君やな」

 

「ええ。」

 

「このビルの正面入り口は見ての通りあの男を避けては入れん。せやけどなあのビルには一部の人間しか知らん裏口があるんや。それが此処や!!」

 

初老のホームレスが隣のビルの錆びれたドアを開けると指を差す。

 

 

「ちょっと埃っぽいかもしれんけど此処を真っ直ぐ行った先にある扉をこじ開ければ望君の行きたかったビルの中に入れるで!!」

 

 

「本当に何から何までありがとうございます!!じゃ!!行ってきます!!」

 

 

道を教えてくれた初老のホームレスへ礼を言うと、望は隣のビルへと行く為に錆びれたドアを通り暗闇の中を進んで行った。

 

 

 

 

(もうそろそろ着いても良いと思うんだけどな⋯⋯)「ん?」

 

暗闇の中をただひたすら真っ直ぐと走っていた望の眼に微かに開いてるドアが見えてくる。

 

 

「此処か!!」

 

「な、なんやねん!?」

 

「なんや!?」

 

望は微かな光に向かって走りドアを開けると目的の招福町のビル内部へと辿り着いた。

 

 

(さてと⋯⋯龍司さんは何処に居るのかな⋯?)

 

目的地に着いた望は突如現れた望に動揺する組員達を無視して龍司を探そうとするが-

 

「事務所にカチコミかけてただで済むと思うなや!!このボケが!!」

 

「おおっと!」

 

自身を無視する望に腹を立てた組員が近くに立て掛けてあるバットを手に取り頭部目掛けバットを振り下ろすが、望は難なく躱し、近くに飾ってあった日本刀を手に取り鞘から刀を抜くと、躊躇いなくバットを持った組員のすぐ横の壁へと目掛け投擲する。

 

「出来ればこのまま郷田龍司さんの元へと案内してもらいませんか?そうすれば⋯⋯」

 

望は白刃の切っ先が壁に刺さった日本刀を見つつ組員達に降参するように言う。が、

 

「誰が降参なんぞするかい!!このボケぇ!!」

 

「組長の大事な名刀を投げ付けおって!!餓鬼やろうとゆるさんわ!!」

 

逆に組員達の火に油を注いでしまう結果になってしまう。

 

(本当に争い事は好きじゃないんだけどな⋯)「まぁ⋯仕事だから我慢するけど⋯さ!!」

 

争い事を好まない望は心の中で仕事の為だと自分に言い聞かせつつ掴みかかろうとする組員の脇腹へと肘を捻じり込む。

 

肘を脇腹へ捻じ込まれた組員は痛みに耐えつつ望に一矢報いろうと掴もうとするが、望が横へ軽く体を逸らすと倒れ込んで動かなくなってしまった。

 

 

「鉛玉でもくらえや!!」

 

倒れた組員を見下ろす望に向け二人目の組員は拳銃を懐から取り出し発砲しようとするが、窓際に飾ってあった筈の花瓶が組員の手元目掛けて飛来する。組員は自身目掛け飛んでくる花瓶を躱そうとするが手元に当たってしまい拳銃を落としてしまう。

 

「取り敢えずこれ(拳銃)は危ないから壊しとくね」

 

望は床へ落ちた拳銃を蜘蛛で回収すると、拳銃を天井に向け引き金に指を掛け構えると1発、2発、3発と次々発砲していき弾が切れたのを確認し、手慣れた様子で弾倉、スライド、の順に取り外していき拳銃を解体すると、拳銃だったモノの一式を全て近場の棚の上に置いた。

 

 

「な!?」

 

拳銃を奪われるどころかまさか解体されるとは微塵にも思ってはいなかった組員の頭部へ望の右脚のハイキックが命中し組員は膝から崩れ落ちて地面へと倒れる。

 

「さぁこれで⋯⋯あれ?」

 

組員を倒した望は振り返るがさっきまで其処に居た筈の組員達の姿は消えていた。

 

 

(逃げたか⋯組長を呼びに行ったか⋯⋯取り敢えず龍司さんを探さないとな⋯)

 

組長や組員の事は一先ず置いて目的の龍司を探す為部屋を出ようとしたがー

 

 

『血が!!止まらないよ!!先生!!』

 

『親が親なら子も子だな!!』

 

『アンタの所為よ⋯!アンタの所為で!!』

 

『早く死ね!!』

 

『『死~ね!死~ね!!死~ね!!』』

 

 

「ッ!!」

 

激しい幻聴が聴こえ、床に倒れ込みそうになる。

 

(胸が苦しい⋯!!)「今は自分の事なんかより龍司さんを探さないと⋯!」

 

頭の中でひたすらに繰り返される幻聴に、息が詰まり吐きそうになるが胸を押さえながら気合で耐え、千鳥足で部屋を出ると、龍司を探しに向かった。

 

 

数分後。

 

 

(やっと幻聴が聴こえなくなったな⋯)「龍司さんの居場所組員に聞けば良かったかな?」

 

「いい加減組長を離さんかい!!このボケが!!」

 

「っ!?」(怒鳴り声⋯!もしかしたら龍司さんが居るかも!!)

 

ある程度体調を持ち直し龍司を探していた望の耳に怒鳴り声が聞こえる。

 

 

「此処か!!」

 

怒鳴り声が聞こえた部屋の扉を蹴り破るとー

 

「は、離してくれや!!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

そこには組長と呼ばれていた男の首元を掴み持ち上げている龍司と、日本刀や機銃を手に持ち龍司に向けている数人の組員達が居た。

 

「お、おい!坊主!!」

 

「郷田龍司⋯さんですよね?」

 

「確かにそうやが⋯」

 

突如現れた望へ組長らしき男は声を掛けるが、望は無視し、龍司に本人かどうか念の為確認する。

 

 

「龍司さんはこんな所で何を?」

 

「あぁ?何で関係ない奴に教えなきゃアカンねん!そんなことよりも⋯おどれは何の為に部下にワシや桐生のフリさせとったんや?」

 

望は龍司が何故此処に居るのかを聞こうとするが、龍司からは完全な部外者でしかない望に龍司は理由を答えることはせず組長に物陰に倒れてるグレーのスーツとベージュのロングランチコートを羽織っている男達を指差し、何故部下に自身と桐生の偽物をさせていたのか問い質す。

 

「それはな⋯俺が郷龍会の4代目になる為や!!」

 

「おどれ如きが⋯?はっ!冗談にしては笑えんわ!!」

 

組長の野望を聞いた龍司は鼻で笑い飛ばす。

 

「郷龍会どころかそもそも近江連合そのもんが既に無いのにどうやって4代目になるんや?」

 

(確かに龍司さんの言う通りもう近江連合は無いのにどうやって!?)

 

龍司の言う通り郷龍会どころか近江連合が存在しないのにどうやって郷龍会の4代目になるのかを問い質そうとするがー

 

「そこまでは話す義理無いわ!!ガキ諸共で構わへん!!お前達いてもうたれや!!」

 

組長が掴まれたまま組員達に命令すると命令通りに望と龍司目掛け発砲し始める。

 

「ちっ!!おい!!坊主!!こっちや!!」

 

「!!」

 

組長など知ったこっちゃないと言わんばかりに2人に発砲してくる組員達に目掛け龍司は軽く舌打ちし組長を投擲、望の腕を掴み近くのソファーの背面へと走ると、そのままソファーの背面へ身を隠す。

 

 

「坊主 撃たれたりはしてへんな?」

 

「あ、ありがとうございます。龍司さん」

 

「礼なら後にせえ⋯今はこないな状況をなんとかせんとな」

 

(確かに龍司さんの言う通りこの状況をなんとかしないと-)「ん⋯?」

 

龍司に助けられた望は礼を言い周りを見渡しこの状況を打開する策を考えてると、遠くの椅子の脚元に拳銃が落ちているのに気が付く。

 

(距離的に蜘蛛じゃ引き寄せることは出来ないな⋯なら⋯!!)「龍司さん!!ちょっと行ってきます!!」

 

「お、おい!!」

 

蜘蛛で拳銃を引き寄せ取ろうと右手を突き出し構えるが、蜘蛛で取れる距離にないと判断、拳銃を取るべく望は龍司に軽く断りを入れるとソファーから飛び出る。

 

「餓鬼の方が出て来たで!!蜂の巣にしたれ!!」

 

ソファーから飛び出て来た望に組長が指示すると機銃を持った2人の組員が望を蜂の巣にするべく機銃を乱射するが、望は前方へとローリングを連続でし続け機銃の射撃を躱しつつ標準をずらす為に地面へ倒れ込む。

 

 

「しゃらくさいわ!!」

 

「こん餓鬼が!!」

 

(今だ!!)

 

2人の組員が倒れ込んだ望へ標準を合わせ引き金を引いた瞬間、望は機銃を持った組員の頭部へと椅子を投げると同時に立ち上がりもう一人の組員を左フックで殴り飛ばす。椅子と左フックをそれぞれ頭部にくらった2人の組員は向き合う形となり、お互いの機銃から放たれた弾丸が互いの身体に機銃の残弾が尽きるまで次々と放たれていく。

 

「これで⋯⋯終わりだ!!」

 

互いの持つ機銃に撃たれた組員達は何とか踏ん張り意識を保とうとするが、機銃が命中し出来た隙を付き拳銃を拾っていた望が放った2発の銃弾が踏ん張ろうとする組員の腹部に命中し床へ仰向けで倒れる。

 

 

「こんな誰に当たるか分からない室内で機銃を躊躇いなく乱射できるってことは-」

 

室内に組長や他の組員が居る中で躊躇いなく機銃を乱射していた機銃持ちの組員のスーツを強引に引き千切りスーツを剝ぐと防弾チョッキが見える。

 

「あんなに銃弾を腹部に喰らった筈なのに2人共全く()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()⋯おそらく組長さん⋯いや、この場に居る組員も全員が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()⋯でしょ?組長さん⋯?」

 

「うっ!!」

 

「図星か⋯ならもう遠慮する必要はないよね⋯」

 

 

望の指摘に対し分かりやすく狼狽える組長を見て望は軽く息を吐き、機銃を拾ながら組員の懐に入っていた替えのマガジンを取り出すと、機銃に差し込まれてる空のマガジンを抜き、替えのマガジンを差し込む。

 

「お、俺のことを撃てるんか?撃ったらお前は刑務所行きになるんやで!!」

 

「じゃあ撃たない代わりに教えて下さい。何故貴方はそこに居る龍司さんや桐生さんの名を部下に騙らせて悪事をしたんですか?」

 

「い、言えば撃たんか?」

 

「ええ。撃ちませんよ」

 

淡々と機銃を構えようとする望へと声を震わせ本当に自身を撃たないか確認をする組長に、望は先程の話の続きをするのなら絶対に撃たないということを笑顔を浮かべ約束する。

 

「組長!!」

 

「来るんやない!!」

 

組長は身体を震わしながら助ける為に動こうとした組員達に手を向けて何もしないように伝えるとゆっくりと口を開き話を始める。

 

「じ、じゃあ話すで」

 

 

 

組長は唇を震わせ近江連合が解散した所為で自身を含めた極道達が食い扶持を繋ぐのが難しくなった事。自身がそういった境遇の元極道を集めてどうにかして近江連合に変わる新たな極道組織を立て直そうとした事。そしてその後に近江連合を解散した渡瀬勝へ復讐するという自身の目的を語る。

 

「大体の経緯は分かりました⋯でも何で桐生さんや龍司さんの名を騙ることをしたんですか?」

 

「そ、それは⋯看板に使う為や」

 

「そんなくだらないモノの為に桐生さんや龍司さんの名を騙ったんですか⋯!」

 

「コイツの言う通りや 極道の看板っちゅうのは自分で作るモンやないやろ。」

 

極道の箔とも言える看板を自身で作ろうとした組長に望と望と組長と話してる間に望の近くに来ていた龍司は呆れてしまう。

 

 

 

「も、もう全部話したで!!命だけはた、助けてくれや」

 

 

組長は望と龍司に土下座し許しを請う振りをし背に隠した拳銃にゆっくりと手を伸ばす。

 

 

「くたばれや!!」

 

拳銃を望目掛け発砲しようとするがー

 

「オラァ!!」

 

それよりも早く組長の顔面に望の右拳が叩き込まれる。

 

 

 

「調子にのんなや!!このクソ餓鬼が⋯!!」

 

「腸抉り出したるわ⋯!!」

 

日本刀を持った2人の組員が怒りを露わにし挟み込む形で望を襲い掛かるが、

 

「このボケが⋯!!」

 

「「がっ!!」」

 

龍司が望と組員達の間に割り込み持つ日本刀を両腕でそれぞれ掴み止めると、日本刀を掴んだまま2人を持ち上げると2人とも壁へと投げ飛ばす。

 

(日本刀を掴んだまま2人を投げ飛ばした!?)「龍司さん!!」

 

望は壁に叩きつけられ気絶した二人の組員を見つつ二振の日本刀を持った組員を難なく片腕で投げ飛ばした龍司の規格外とも言える剛腕に驚つつ龍司へ駆け寄る。

 

「これで全員やな⋯!」

 

「龍司さん!!ありがとうざいます!!本当に助かりました!!」

 

「坊主が機銃を持った奴らを何とかしたからや⋯おおきにな⋯」

 

「兄貴!!」

 

全員倒したことを確認し望と龍司が互いに礼を言い合いつつ外に出ると、指示通りに外で待っていた二階堂が頭を下げ龍司を出迎える。

 

「おう!テツ!!遅くなってすまんのう」

 

「この人は⋯?」

 

「コイツは二階堂哲雄。ワシが近江連合に居た頃から付き合いがある奴や」

 

「いえ⋯処で兄貴⋯そいつは-?」

 

「そういえば名前聞いとらんかったな⋯坊主名前は何て言うんや?」

 

「僕の名前は⋯桐生、桐生望です。」

 

 

父と龍司の事をある程度だが知っている望は名を名乗ることをほんの一瞬躊躇うが、自身の名そして桐生一馬の子であることを正直に明かすことに決め、自身の名を名乗った。

 

 

「望⋯お前の親父はまさか⋯?」

 

「ええ⋯僕は桐生一馬の息子なんです⋯母親はその⋯⋯」

 

「そうか⋯薫は結ばれられへんかったんか⋯⋯」

 

驚く二階堂を他所に自身の異父妹の狭山薫の抱く桐生への想いが実ることなく結ばれなかったのを目を伏せ母親の名を言い淀む望から察し、義兄として陰ながら義妹の幸せをずっと願っていた龍司は心の底から義妹の恋心が結ばれなかったことを残念がる。

 

「兄貴 立ち話はこの辺にしてそろそろこの場を離れましょう」

 

「そうやな⋯坊主はどうするんや?」

 

「そうですね⋯お腹空いたんで其処らの飯屋でなんか食べてから帰ります」

 

「ワシ等この後行き付けの居酒屋に行くんやけど⋯良かったら一緒に行かんか?」

 

「良いんですか?」

 

「別に構わんわ!!のうテツ!!」

 

「兄貴がそう言うんならワシは何も言えませんわ⋯警察に見つかりでもしたら後々厄介やし行くんならとっとと行きましょう」

 

望は龍司の言葉に甘え、二階堂の車へと龍司に続き乗ると、車の運転席に座った二階堂は全員車に乗ったことを確認し、車を龍司達の行き付けの店へと走らせた。

 

 

「龍司さんにどうしても聞きたい事があるんですけど良いですか⋯?」

 

店に向かってる車内ただ黙っているのも気が重くなると思い、望は龍司本人の口からどうしても聞きたかったことを聞くことにした。

 

「何や?」

 

「龍司さんはこれまで何処で何をやってたんですか?」

 

「ワシか⋯?ワシは⋯」

 

数年前桐生一馬と死闘を繰り広げた後、突如として表舞台から姿を消した自分が何故今大阪に居るのか龍司はその経緯を語り出す。

 

 

 

 

今から遡ること18年前2006年12月某日神室町ヒルズ内部。

 

 

「なぁ⋯やっぱり親父の命令無視して此処来るんのはアカンやないか?」

 

桐生一馬と狭山薫が神室町ヒルズを去ってから数時間後-龍司と共に神室町へ来ていた郷龍会の組員達は龍司の帰りが遅いのを心配し、龍司の待機命令を無視し独断で龍司を捜索していた。

 

「五月蠅いわ!!これで親父に何かあったらどないするんや!!二階堂さんもそう思いますやろ!!」

 

「そうやな⋯あん人が絶対に負ける訳が無い⋯」

 

郷龍会のヤクザ達の中で誰よりも龍司の事を妄信とも言える程に慕っている二階堂は龍司の勝利を信じて疑わなかった。

 

「だったら!!」

 

「そんなに帰りたかったら自分一人で帰れや!!」

 

「親父!!」

 

「親父がおったで!!」

 

帰りたがる組員の胸倉を組員の一人が掴み殴ろうとすると別れて探していた別動隊が焦りながらも報告へと来る。

 

 

(兄貴⋯!!)「ッッッ!!」

 

その報告を聞くや否や二階堂は報告に来た別動隊が来た道を辿り龍司の元へと駆けて行く。

 

 

「り、龍司さん――――――」

 

骨組みで作られた足場や階段を走って上って行き龍司の居る屋上へ着いた二階堂は息も絶え絶えに桐生に勝った龍司を労おうと顔を上げるがー

 

「――――――ぇ?」

 

血溜まりの上に倒れている龍司が眼に映る。

 

 

 

(兄貴が負けた⋯?誰に⋯?ダレ二⋯?)

 

 

遅れて龍司の元へ駆け付けた組員達が様子がおかしい二階堂を心配し声を掛けるが、二階堂は龍司のことを虚ろな目で見ていた。

 

 

(俺の知ってる兄貴は絶対に負けたりせえへん⋯⋯ならこの人は⋯兄貴のフリした()()()()()()()()()()

 

「おい!二階堂!!しっかりせい!!二階堂!!」

 

「そうや⋯俺の知っとる郷田龍司はこんな人やない⋯」

 

「に、二階堂⋯?」

 

「本物のあん人を探しに行かな⋯⋯」

 

自身の胸倉を掴んでる組員の手を二階堂は力が籠っていない手で軽く払うと、身体をふらつかせながらナニカをぼそぼそと呟きながらゆったりと歩き、何処かへと去って行ってしまった。

 

 

 

それから約一か月後2007年1月某日とある病院。

 

「ん⋯?」

 

「お、親父!!」

 

「おい!!医者を急いで呼びに行くで!!」

 

 

 

神室町ヒルズ屋上で桐生一馬と"伝説の龍"の名を賭けた死闘に敗れ意識を失った龍司がベットの上で目を覚ますと、付き添っていた舎弟の一人が気が付き急ぎ足で医者を呼びに病室を飛び出した。

 

 

(ワシは⋯確か桐生と⋯)「そうか⋯ワシはアイツに勝たれへんかったちゅうことか⋯」

 

龍司は睡魔にも似ただるさを全身に感じながらもゆっくりと肩から腕まで一本線の様に切創が刻まれた右手を天井に伸ばすとまだ上手くは回らない頭で気を失うまでの記憶をゆっくりと辿っていき、自身が桐生に敗北し気を失ったという事。その後、神室町ヒルズから降りてこないことを心配し龍司の命令通り近くで待機していた舎弟達が桐生達が去った後の神室町ヒルズへ突入し自分を発見、どうにか病院へと担ぎ込み助けたというのを理解する。

 

龍司が目を覚まして1か月後。

 

「おお!!起きたんやな!!」

 

龍司の病室の扉が開き近江連合の組員が書状を持ち現れた。

 

「大体の見当は付いとるが一応聞くわ⋯何の用や⋯?」

 

「何となく察してはいるようやな」

 

そこまで言うと組員は手に持っている書状を龍司のベットへと投げる。

 

「破門状か⋯まぁ検討付いてた通りやな」

龍司は軽く上体だけを起こしベットに投げられた書状を手に取ると、破門状の文字が綴られていた。

 

「東城会との全面戦争や本家に対してのクーデターに郷田仁会長の死、それにお前ん所の組員のことを考えたら破門するのも手緩いけどな。破門ですんだだけでもありがたく思えや」

 

「ちょっと待てや⋯他は兎も角として組員のことって何の事やねん!!」

 

「そうか⋯アレはお前が寝てる最中か⋯」

 

龍司を見て組員は軽く息を吐きため息をつく。

 

「お前ん所の二階堂のガキがな⋯何を思ったんか知らんが自分から破門状を叩き付けたや」

 

「何やと⋯?」

 

二階堂の事をよく知る龍司は二階堂が自分から破門状を叩き付けたという事を信じられず声を微かに漏らす。

 

「自分から破門を望んどる様子やったから二階堂のヤツもお前と同じで望み通りに破門にするだけで済ませた。探したいんなら自分で探すんやな⋯それと今回の抗争の手打ちの件で東城会会長代行の堂島弥生との話し合った結果手打ちとしてお前の破門それに、近江高島会、千石組、そして郷龍会を解散することになったわ⋯まぁお前も極道の世界に居たんや⋯こん位の事は想像できたやろ?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

二代目郷龍会会長の龍司が破門されたこの日を持って郷龍会も東城近江の全面戦争の責任を取らさせるという形で解散される事となった。

 

それから更に2か月後。

 

「ようやくやな⋯」

 

傷も塞がり病院の退院日となり病院を出た龍司だったが複数の男に囲まれてしまう。

 

 

「何や⋯?お前らは⋯?」

 

「う、動くな!!黙って俺達に付いてこいや」

 

龍司の後ろに立つ男が龍司の背に服越しに鋭利なモノを突き立てる。

 

「今思い出したわ⋯お前らはワシに喧嘩を吹っ掛けた奴らやな⋯」

 

龍司は襲撃してきた男達が嘗て自分が痛め付けた男達とだというのを思い出した。

 

「そうだ!!郷田龍司!!俺達は昔お前が痛め付けた奴らの集まりや!!」

 

「テメェの所為で女に逃げられたんや!!絶対に許さんわ!!このクソボケが!!」

 

「もう郷龍会もねえ!!後ろ盾がねぇお前なんてぶっ殺したるわ!!」

 

「御託はもうええわ⋯掛かって来るんやったらさっさと掛かって来いや!!」

 

龍司の挑発に男達は怒りを露わにし、龍司を仕留めるべく飛び掛かる。

 

 

数か月後名古屋錦栄町。

 

 

「もう二度と絡んで来るなや!!このボケが!!」

 

襲い掛かってきた男達を全員難なく返り討ちにした龍司はそれからというもの失踪した二階堂を探す為全国各地を旅をしては、自身を怨んでいる者や絡んできたチンピラを撃退するという荒んだ生活をしていた。

 

「「親父!!」」

 

そんな龍司に男達が声を掛ける。

 

「お前らは⋯!」

 

また自分を恨んだ奴だと思い、撃退べく血に塗れた拳を構える龍司だったが声を掛けてきた男達全員が元郷龍会の組員達だと気が付く。

 

「親父!!俺達も連れてって下さい!!」

 

「絶対に足手纏いにはならないんでお願いします!!」

 

「親父!!お願いします!!」

 

子分達は揃って自身も連れて行ってほしいと龍司に深く頭を下げる。

 

「はぁ⋯?何を言うとるんや?お前らは?ワシは破門されてもう極道やないんや⋯お前らも冗談言うとらんではよ自分の組に戻れや」

 

「ワシ等全員組を抜けて来ました!!」

 

「俺達の親は親父だけです!!」

 

「だからお願いです!!親父!!連れて行って下さい!!」

 

(コイツ等⋯)「⋯本当に何処へでも付いて来るんやな?」

 

子分達の小指に包帯が巻かれていることに気が付いた龍司は子分達に本当に今後自身と行動を共にするのかという最終確認をする。

 

 

「勿論ですよ!!」

 

「親父が行きたい場所なら例え地獄だって行きますよ!!」

 

「全員パスポートを含めた最低限の旅支度はして来たんで世界中何処へだって行けますよ!!」

 

「だから連れて行って下さい!!親父!!」

 

(世界中か⋯)「オカン⋯」

 

1人の子分の発した世界中という言葉で、龍司はふと自身と狭山の母親の鄭秀淵(ジョン・スヨン)の事を思い出し呟く。

 

(そうや!!)「お前ら今から海外へ行くで!!」

 

龍司は血塗れの拳にペットボトルの水を掛けて血を拭うと海外に向かうことを決め空港へと向かって歩き始める。

 

「えっ?今からですか!?」

 

「そうや!今からや!!着いて来れない奴は置いてくで!!」

 

「ま、待ってくださいよ!!親父!!」

 

「待てや⋯⋯!!」

 

「「!?」」

 

大阪国際空港へ向おうとする龍司達だったが血塗れのスーツを着た一人の男が立ち塞がる。

 

 

「お、お前⋯!二階堂か⋯?」

 

「どうしたんや⋯?お前?」

 

「ボロボロやんか!!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

男が神室町ヒルズで消息を絶った二階堂だと気が付き動揺する舎弟とは対照的に龍司は静かに二階堂の事を見つめる。

 

 

「やっと見付けたわ⋯!!」

 

「お、おい!二階堂⋯?何を言っとるんや⋯?お前⋯?」

 

1人の舎弟が二階堂を心配し近づくが眼中にも無いと言わんばかりの憎しみを宿した眼で龍司をただただ睨みつける。

 

 

『つまり⋯ワシはオカンに捨てられたっちゅうことか』

 

『私にとってお前は、本当の子供以上に⋯⋯』

 

『うっさいわ!!』

 

(そうか⋯お前は⋯)

 

自身に対しての憎しみを瞳に宿す二階堂の姿を見た龍司は父郷田仁と神室町ヒルズ交わした最期の会話が脳裏に思い起こされ、あの日の自分と二階堂が重なって見えた。

 

「お前なんか兄貴やないわ⋯!!そのツラ剥いでズタズタにしてぶっ殺したるわ⋯!!その次は桐生のクソボケや!!」

 

「なんやと!?」

 

「二階堂⋯!テメェ⋯!誰に向かって口聞いてんのか分かっとるんか!!」

 

「ええ⋯」

 

「「親父!?」」

 

龍司はいきり立ち今にも二階堂目掛け飛び掛かろうとする子分達を手で静止すると前に出る。

 

「言いたいことがあるんなら直接ワシに言えばええ⋯ぶん殴りたいんやったら掛かってくればええ⋯お前の気持ちをワシが全部受け止めたるわ!!」

 

「郷田ァァァ!!!」

 

二階堂は他には目もくれず龍司目掛け一直線に走り腹部目掛け拳を叩き付ける。拳を避けることなく腹筋で受け止めた龍司を見て怒りを爆発させ腹部を両の拳で殴る。殴る。殴る。息もすることを忘れただひたすらに殴る。

 

「テツ⋯」

 

「そん名でワシを呼ぶなや!!」

 

息が切れ拳を止めた二階堂の手を掴みどうにか話をしようとする龍司だったが、二階堂は手を振り払い上段と下段蹴りを続け様に顔と左脚に当て、龍司から距離を取る。

 

 

「くたばれや!!郷田!!」

 

「ぐっ⋯⋯!」

 

龍司は獣に似た叫び声を上げながら自身目掛け駆ける二階堂の顔面目掛け拳を繰り出すが、鞭のようにしならせ振るわれた二階堂の右腕が先に龍司の顔面を捉え龍司は僅かに声を漏らす。

 

「す、凄え⋯!親父と殴り合ってる⋯!」

 

「二階堂のヤツこんな強かったんか!?」

 

 

龍司の攻撃を避けず防がずに、文字通り真正面から龍司と殴り合う二階堂を見て子分達は声を上げる。

 

 

(テツ⋯今のお前が何で強いんか⋯ワシには分かるわ)「だからこそ今のお前に負ける訳にはいかんのや!!」

 

「ッッ!!」

 

二階堂の右拳が届くよりも先に龍司のありったけの力を込めた剛腕から放たれた右ストレートが二階堂の右頬を捉え二階堂は静かに膝から崩れ落ち倒れると気を失った。

 

「こ、ここは⋯—?」

 

「やっと目ぇ覚したんか⋯」

 

「あ、兄貴⋯!」

 

二階堂が気を失い数時間後。二階堂が目を覚ますと龍司が煙草を口に咥えたまま隣に座っていた。

 

「テツ⋯ワシが桐生の奴に勝てなかったんは、アイツが汚い手を使ったとかやない⋯ただワシよりもアイツの方が強かった⋯それだけなんや⋯」

 

「ーーーーーー!!!!」

 

龍司は落ち着きを取り戻した二階堂に桐生に先程の二階堂と同様卑怯な手を使わず真っ向から挑み力及ばず負けたという事実を告げる。

 

「だから⋯アイツやアイツが大事にしとるお嬢ちゃんに手を出すのは止めてくれんか⋯?」

 

「もう⋯それ以上言わんで下さい⋯!」

 

謝罪しようとする龍司を二階堂は止める。

 

「テツ⋯」

 

「本当は全部分かっとったんです⋯!でも兄貴が負けたのが認められなくって⋯!桐生の奴が許せへんくって⋯!!でも⋯何かに当たらへんと今よりももっとおかしくなりそうで⋯!」

 

「もうええ⋯!」

 

「あ、兄貴⋯!」

 

自身の心情を吐露する二階堂を龍司は止める。

 

「これからワシ等海外に行くんやけどな⋯テツ⋯お前はどうする?」

 

「勿論⋯!兄貴の行きたい所なら何処へだって行きますわ⋯!!」

 

「ふっ⋯!」

 

龍司は自身と海外へと共に行くのかどうかを聞くと、二階堂は頷き答えた。

 

それから数時間後大阪国際空港。

 

「兄貴!!こっちは全員準備出来ましたわ!!」

 

「よっしゃーお前ら!!行くで!!」

 

二階堂の報告を聞いた龍司は笑みを浮かべ二階堂達と共に飛行機に乗り込み日本を発った。

 

 

龍司達が日本を離れ時が流れ2024年韓国。

 

(オカン⋯⋯)

 

「あ、兄貴!!大変ですわ!!兄貴!!」

 

数年前に建てた母の墓へ墓参りに来ていた龍司の元へ二階堂が息を切らしながら走ってくる。

 

「おう!テツか!どないした?」

 

「兄貴!!日本からこんな手紙が⋯!!」

 

「手紙やと⋯?」

 

息も絶え絶えの二階堂から日本に一時帰国している1人の子分から届いた手紙を受け取り手紙の内容を読むと龍司の顔色が変わる。

 

「ワシと桐生の奴の偽物が悪さしとる⋯テツよ⋯この情報はホンマか?」

 

「えぇ⋯兄貴の名を騙ってるっちゅう奴を探らせた結果大阪の蒼天掘のビルにヤサ構えてるみたいですわ」

 

「テツ⋯今から日本へ行くで」

 

「ええ!!」

 

龍司と二階堂は日本に向かうべく墓地を後にした。

 

 

 

「で、此処まで来たって訳や」

 

(今まで海外に居たから龍司さんに関する情報が入らず生死不明が不明のままだったのか⋯ 大道寺のエージェントの中にも身元特定専門のエージェントも何人か居るには居るけど、仮に対象が海外に潜伏していたなら危険を承知で直接現地に赴いて裏社会を徹底的に調査でもしない限りは特定の個人を絞って特定するのは困難だろうしな⋯大道寺のエージェントで難しいのなら一般人ならまず発見は不可能ということ⋯⋯だから今まで見付からなかったのかな⋯?)「成程⋯そういう経緯で龍司さんと二階堂さんは日本に戻ってきたんですね」

 

 

龍司のこれまでの経緯を聞いた望は何故龍司の生死が不明のままなのかという理由をなんとなくだが察する。

 

「話を聞いてて少し気になったんですけど⋯お二人や子分の方々は今までどうやって生活してたんですか?」

 

龍司の話の中で収入や仕事については一切触れられてないのを気になった望が龍司に聞くと今まで無言だった二階堂が望を睨み付けつつ口を開く。

 

「韓国に行ってからワシや兄貴はまず小さい食品会社を立ち上げてその稼ぎで細々と生活してたんや。けど⋯」

 

「けど?」

 

何故か話を途中で止める二階堂を見て望は首を傾げる。

 

「テツ。コイツなら大丈夫や」

 

「良いんですか?」

 

「?」

 

続きを話すかどうか悩む二階堂だったが龍司が頷くと口を開き話の続きを話し始めた。

 

「立ち上げた会社が韓国のメディアに特集されたことが原因で本国の真拳派(ジングォン派)の連中に郷田龍司が韓国に居るっちゅうことがバレてしまったんや」

 

「名前を出しちゃったんですか?」

 

「いや、ウチは一切名前出しとらん⋯だが奴ら独自のネットワークとやらで存在嗅ぎ付けて来たんや」

 

「あん時はホンマ焦ったわ⋯まぁ会社に襲撃してきた構成員全員返り討ちにしたんやけどな」

 

「ワシ等は真拳派よりも寧ろその後に兄貴が散らした書類やらディスクやら諸々を片付ける方が大変でしたわ⋯」

 

真拳派による襲撃後深夜まで従業員総出で行われた後片付けの様子を思い出し二階堂は頭を抱える。

 

「そういった襲撃が度々起こっていたんやが⋯2016年に真拳派から『お前達日本人に関わると碌な事にならない』と一言だけ書かれた手紙がウチに届いたのを境に襲撃されんようになったんや」

 

「きっと奴ら兄貴に関わると組織を潰されると思ったんですよ」

 

(2016年⋯真拳派⋯そうか⋯!そういう事か⋯!!)

 

2016年という年代、そして真拳派という組織の名前で望は何故龍司達の食品会社が襲われなくなったのか見当が付いた。

 

2016年。尾道で起こった抗争の中、当時真拳派日本支部の統領だったハン・ジュンギが『尾道の秘密』に関する情報を桐生に伝えようとするが、桐生を密かにつけていた『尾道の秘密』に近づく者を排除し秘密を守っていた『秘密の番人』の手により射殺。1980年代の堂島組の襲撃から始まり、2006年東西全面戦争での襲撃事件の生き残りの全滅で真拳派日本支部の勢力が縮小していた所に追い討ちかの様にハンの死という出来事によって本国の真拳派はまるで蜥蜴の尻尾切りかの様に日本支部を完全に見限り、一部の真拳派の残党勢力は、はぐれ真拳派と呼ばれやがて横浜・伊勢佐木異人町に流れ着き後に『ハマの英雄』と呼ばれることになる春日一番とその仲間達と関わる事となるコミジュルという新たな組織を、当時の民自党幹事長更には大道寺一派の権力者の一人でもあった荻久保豊の提案により結成することとなる。

 

(多分だけど本国の人達は父さんや真島さんそれに龍司さんみたいな東城会と近江連合に関わっていた元極道とはこれ以上関わりたくないんだろうな。日本に居るソンヒさんを始めとするコミジュルに報復を行わないのも仮に今コミジュルを襲ったら最悪ソンヒさんと繋がりのある父さんが本国に行って組織そのものを潰しかねないからと判断されたからか⋯)

 

花輪や青鬼に真拳派閥と父の因縁そして関連するコミジュルという組織の成り立ちを教わっていた望は本国の真拳派が元極道達の報復を恐れ手を引いたと考察した。そして改めて自身の父親が敵対した組織そのものを単身で潰せる常識離れした戦闘力を持っているという事実を理解する。

 

「真拳派が襲ってこんようになってからウチの会社はみるみる大きくなっていって今や韓国の中でも有名な大企業になったっちゅう訳や!!」

 

「この間なんて兄貴。たこ焼き焼いて社会科見学に来ていた子供相手に振舞ってましたもんね」

 

「たこ焼きを自分の手で作るんは久し振りやったな。失敗しなくてホンマに良かったわ」

 

「こっちは焦がさんかどうかハラハラして見てましたわ」

 

今から一か月前に会社に社会科見学に着た子供達の前に法被を羽織り、頭にねじり鉢巻きを巻き、両手に手袋を付けた姿で現れた龍司を見て社員達は怪我をする前にと必死に止めたが龍司の勢いに押されてしまい、最初は止めていた社員達も最終的に全員が子供達の座る椅子の隣に座り子供達の質問に答えたりしながら龍司が作るたこ焼きを共に堪能したのであった。(その時二階堂はというと社内の商品の宣伝CMの打ち合わせで社内に不在しており社内に帰った後にこの件を知るやいなや社員達を集めて説教したのであった。)

 

「兄貴。着きました」

 

「おう」

 

そうこう話をしてるうちに目的の居酒屋へ到着する。

 

「二階堂さん!ありがとうございます」

 

「フン⋯!!」

 

ドアを開き車から降り礼を言う望に二階堂はそっぽを向き鼻を鳴らす。

 

「あの龍司さん⋯気の所為だったらあれなんですけど⋯なんか二階堂さん⋯僕にだけ妙に当たり強くありませんか?」

 

「アイツはお前のオトンのことをワシが近江連合を破門された原因の一つとして思っていて今でも好かんのや⋯アイツの所為やないと何度も言ってるんやけどな」

 

 

「そうなんですか⋯」

 

望は自身が桐生一馬の息子と言うことを打ち明けた後に二階堂が龍司が話をしてる最中常に自身のことを睨んでいた理由が分かり何とも言えない気持ちを抱いてしまう。

 

「まぁ取り敢えず飯食おうや!!話があるんならそれからでもええやろ!!」

 

 

龍司は望の肩を軽く叩くと望を連れ店の中へと先に入った二階堂の元へと向かった。

 

 

 

「そういえばお前のオトン――――桐生の奴、今も元気にしとんのか?」

 

 

居酒屋に入り先に入った二階堂が取ったテーブル席へ腰を掛けると龍司は店のメニューを開き見て、適当に次々と注文していき一通りの注文をすると水を飲む望に父親の桐生の近況を訪ねる。

 

「父さんは龍司との一件以降も色々ありましたけど今も元気にやってますよ。多分今頃は横浜の行きつけの店でカラオケでもしてると思いますよ」

 

「アイツ歌とか歌うんか?」

 

「ええ。最近は春日さんとデュエットしたりどっちが高得点を取れるか競い合ったりして楽しくやってみたいですよ」

 

 

「春日やと⋯?」

 

「?」

 

望の口から出た春日という名前に龍司は心当たりがあるのか暫し考える素振りを見せる。

 

「その春日いう男の名前は一番っちゅう名前やないか?」

 

「え⋯えぇ。もしかして龍司さんは春日さんとも知り合いなんですか?」

 

「昔、親父に破門された時に出た旅で会ったことがあるんや⋯アイツが桐生の奴とも⋯そうか⋯!」

 

かつて放浪の旅に出た際に訪れた福岡の地で出会い拳を交えたこともある春日と望の話に出て来た春日が同一人物だと分かると龍司は軽く笑みを浮かべる。

 

 

「兄貴が会長に破門されたいうの自分初めて聞きましたわ」

 

「あの一件は明るみに出ると色々と不味い事件やからのう。事件そのもんが秘匿されたんや」

 

驚く二階堂に龍司は近江連合や東城会更には北海道最大の歓楽街月見野を治める北方組に、韓国系マフィア真拳派、陽銘連合会といった数ある裏社会の大組織が関わり最終的に全てが闇に葬られた事件があったことを事件の内容には一切触れず上手く伝えた。

 

 

(陽銘連合会が関わってるのなら恐らく大道寺一派もその事件に関わってる可能性が極めて高いな⋯)

 

龍司の話をお茶を啜りながら聞いていた望は陽銘連合会と繋がりのある大道寺一派も当時来栖猛だった陽銘連合会会長巌見兵三と繋がりがあった大道寺稔の命により大なり小なり事件に関与していたのではないかと推測する。

 

「お前は何で大阪に来たんや?」

 

「え?」

 

大道寺一派が事件に関わっていたかどうかを考えてる望に龍司が今度は望へ大阪へ来た理由を聞く。

 

 

(僕が大道寺の人間であることは絶対に悟られないようにしないとな⋯)「僕が大阪に来たのは概ね龍司さん達と同じ理由です」

 

「オトンの名を騙る連中を懲らしめる為っちゅう訳か⋯」

 

「それも大阪に理由の一つです。それと⋯」

 

「ワシの事やな」

 

「はい⋯」

 

望は頷く。

 

「何で兄貴が理由なんですか?」

 

「テツ⋯スマンがワシのグラスに酒注いできてくれへんか?」

 

「え⋯?え、ええ。分かりましたわ」

 

龍司が空のジョッキを二階堂に手渡すと言われた通り席を立ち酒を注ぎに向かって行った。

 

 

「これでワシと二人っきりや⋯」

 

「まさか龍司さん⋯!?」

 

「望⋯お前は裏の⋯⋯いや、大道寺の人間なんやろ?」

 

「な⋯!?」

 

自身が裏の人間という事だけでなく大道寺の人間であるということを言い当てた龍司に望は驚く。

 

 

「やっぱり大道寺の人間やったんか⋯」

 

「僕が大道寺の人間だとどこで気が付いたんです⋯?」

 

「ワシがまず怪しい思ったんは組長のことを持ち上げてる時、他に組員達が居たのにも関わらず真っ先にワシに本物の郷田龍司かどうか聞いた時や。アレはワシの顔を予め知ってないと出来んことや」

 

「そういうことですか⋯⋯」

 

「それに関しては桐生の奴が自分の父親やと打ち明けた時に桐生に直接会って聞いたという線も少し考えたんやが、望⋯⋯お前そもそも父親に直接会った事が無いやろ?」

 

「何でその事まで!?」

 

龍司は更には望が産まれてから一度として父の桐生と会った事が無いというのも言い当てる。

 

「アイツの性格的に自分と血の繋がりのある息子が裏社会にそれも大道寺一派に所属しとるというのを黙って見てるだけな訳は絶対にないしな。そう考えると父親の桐生は息子であるお前の存在自体を知らんのやないか⋯そう思ったんや。それと⋯」

 

「父さんの事を余所余所しく話していたからですよね⋯」

 

「そうや。普通父親の事を話す時はあんな余所余所しい言い方は基本的にせんしな⋯更に言うと銃器の扱いや。素人はあんな上手くは銃器を扱う事なんか出来ん⋯そこで裏に関わる人間なんやと確信して試しに裏で一番有名な大道寺の名を出してカマかけたって訳や」

 

 

「因みに大道寺の事は誰から聴いたんですか⋯?」

 

「昔、近江連合に居た時オトンから聞いたことがあったんや。その時は都市伝説やと思ってたんやけどな⋯」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「一つ聞きたいんやが⋯何で桐生の所に行かずに大道寺に居るんや?裏社会で『堂島の龍』の名を受け継ぎたいとか思ってたりするんか?」

 

「『堂島の龍』になりたいのかどうか以前に僕じゃどう頑張っても『堂島の龍』にはなれませんよ」

 

「何でそう思うんや?」

 

「だって『堂島の龍』っていうのは父さんが様々な功績を積み上げていった結果、周囲からそう言われるようになったってだけで父さん自身が自ら名乗ったって訳じゃないですか。だから『堂島の龍』は後にも先にも父さんだけの名であって誰かが父さんの跡を継いで名乗るようなモノではないと僕は思ってます」

 

 

望が「まぁ⋯父さんみたいな人になりたいっていうのは今でも思ってるんですけどね」と言葉を付け加えると龍司は「フッ」と軽く笑う。

 

「そろそろ頼んだ飯も来る頃合いやろうし話はここで終いや!!」

 

(龍司さん⋯!)「そうですね!!」

 

桐生の事や大道寺の任務について深くは事情を聞かず話を切り替えて終わらせてくれた龍司に望は心の中で感謝し頼んだ料理が来るのを龍司と共に待つのであった。

 

 

 

(久し振りにこんなに食べたな⋯⋯)

 

「望!!」

 

龍司や戻ってきた二階堂と共に運ばれてきた料理を堪能し会計を済ませ大道寺のアジトへ帰ろうとする望に龍司が声を掛けた。

 

「何ですか⋯?」

 

「もしこの先何処かで薫の奴に出会う事があったら『兄ちゃんは元気でやっとる』って伝えてくれんか?」

 

「分かりました⋯!必ず伝えます!!」

 

 

龍司からの伝言を受け取った望は必ず伝えることを約束しその場を後にした。





内容の捕捉

・龍司の話に出て来た大事件ついて 龍が如くONLINEでの龍司が主人公のストーリーである黄龍放浪記のような出来事がこの世界線の過去にもあったという感じになります(春日が出て来た時に少しだけこの事件の内容に触れるかも⋯?)この後にその存在自体が闇に葬られた大事件に大きく関わった人物の1人のヒントは『錦鯉』です

・何故桐生や狭山が倒れていた龍司を放置したのか? これについては大事件の内容に比べて大したことでは無いのですがおいおい狭山と望が出会った時に触れる予定です!!
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