アドリビトゥム英雄譚〜嫌々ながらお人好し勇者のパーティのヘルプしてたら世界を救っていた件〜   作:ポメラニアンドロイド初号機くん

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幕間 買い物日和な友達以上恋人未満(アインとリゼル)

アイン&リゼルside

 

 

クロードとミユが起きて釣りに行く少し前、アインとリゼルは町へ買い物に出かけた。

旅の消耗品と食材、そして酒を求めて市場を巡る。特に食材は、毎日温かい料理を提供するのに欠かせない。

リゼルとアインからすれば野営地での温かい料理は当たり前だが、クロードとミユの2人旅における食事情はひどい物だった。

クロードとミユの2人は氷雪の国に着くまで、だんだん古くなっていく燻製肉と固いパンのみというもので、それを聞いた時リゼルは絶句した程だ。

温かい食事は空腹を満たすだけでなく、パーティの士気を保つ役割もある。

リゼルは単に魔法使いとしてだけではなく、食事の面でもパーティを支えようと人知れず奮闘していた。

 

「固形着火剤にマッチ、野菜と燻製肉に香辛料、研磨剤と……」

 

「あと酒!!」

 

「はいはいわかってます………まったくアインは………」

 

リゼルは呆れた様子で呟く。氷雪の国に辿り着いてからアインはそのお人好しさゆえに何度も騙されて、精神的な苦痛から逃げるように酒浸りになり、それ以来ずっとこの調子である。

クロードと再会した事により立ち直ったようではあるが、それでも酒量が減っただけで基本的には毎日酒を飲んでいる。

リゼルとしては健康の為にも酒を控えてほしいのだが、アインにはなかなか聞き入れてもらえない。

 

 

 

やがて買い物を終えた2人は大量に買い込んだ品物を、宿の前に止めた馬車の荷台に積み込む。

 

「ふっ…………!!重い………」

 

リゼルは野菜の入った木箱を持ち上げようとして、ふらつく。

 

「おっと、大丈夫?」

 

アインがリゼルの背中を抱きとめるように支えた。

 

「ありがとうアイン」

 

そこでリゼルは気付く、アインと密着状態である事に………

昨日ミユから聞いた、男風呂でのアインとクロードのY談の内容がリゼルの脳裏をよぎった。

 

「ッ〜〜〜〜!?」

 

動転したリゼルは箱をひっくり返して素早くアインから距離を取り、全力ダッシュでその場から逃走した。

 

「待ってくれリゼル!!どこ行くんだ!!」

 

アインの声は、瞬く間に走り去ったリゼルには届かなかった。

 

「もしかして……、嫌われた?家族同然とはいえ、流石に距離感間違えたかなぁ………?」

 

アインは一人、悶々と悩むのであった。

 

 

 

アイン&リゼルside 終

 

 

 

 

リゼルside

 

 

やってしまった………あんな風に突然避けられたらアインだって流石に傷付くよね…………

ミユさんから聞いた、男風呂でのアインとクロードさんの会話(Y談)

あれのせいで、今までアインを異性として意識してなかったけど否応なしに意識せざるをえなくなった。

アインはいつも紳士的で、優しくて、私から見てもかっこいいと思う。

だけど、ずっと家族同然に過ごしてきたから恋とかそういう気持ちは全く湧かない。それでも今までのように全く意識しないというのも難しく、自分でも本当はどう思っているのかよくわからない。

少なくとも、アインが嫌いというのは絶対にない。それだけは確実だけど、私は自分の気持ちを上手く表現する言葉を見つける事ができずにいた。

そうこう考えながら歩いているうちに、人通りの少ない場所まで

来ている事に気付いた。そういえば、大地の国の市場から外れた場所は、治安が悪いと聞いた事がある。

 

「嬢ちゃん、一人か?こんなところ一人でいると危ないぜ…………?」

 

強面で屈強な男がニヤニヤと笑いながら近付いてきた。

怖い…………本来なら魔法で簡単に倒せるはずだけど、身体が竦んで言う事を聞かない。

私は逃げようと後ずさるが、足がもつれて転んでしまった。

来ないで……………

 

「助けて…………アイン!!!」

 

私は無我夢中で叫んでいた。

 

 

リゼルside 終

 

 

 

 

 

アインside

 

 

 

リゼルを探している途中、彼女の叫び声を聞きつけて来てみれば、強面な男と怯えているリゼルがいた。

僕の頭の中が冷たく、同時に怒りで染まっていくのが手に取るようにわかる。

 

「リゼルに何をしたんですか………?事と次第によっては…………」

 

「待て待て待て!?俺は何もしてない!!こんな治安の悪い場所に女の子が一人でいたから声をかけただけだ!!」

 

「デタラメを…………」

 

腰の心剣に手をかける。

 

「待てって!?俺はこの辺りに住んでるただのパン屋だ!!配達帰りでここを通っただけだって!!」

 

男は木製の、小さな名刺代わりの板を取り出した。男の名前はケビンというようで、個人経営のベーカリーを営んでいるらしい。

 

「すみません………完全に頭に血が昇っていました」

 

「いいって事よ!!俺はこの通り悪人面だから、誤解されるのには慣れてる。それより、そこの嬢ちゃんには怖い思いさせて悪かったな」

 

「嬢ちゃん、いい彼氏さんじゃねえか。大事にしろよ」

 

ケビンさんは陽気に笑いながらそう言って、帰っていった。

 

「「……………」」

 

2人して黙り込む。そして互いに赤面。

 

 

 

 

 

その後、さっきのお詫びも兼ねてケビンさんのベーカリーでパンを買って宿に戻った。

 

 

アインside 終

 




用語解説
固形着火剤
錬金術によって生み出された簡易着火剤。マッチ一つで簡単に火が点く上に携帯も容易な為、アドリビトゥムでの野営の必需品。


人物紹介

ケビン
大地の国在住の、ベーカリーを個人経営する一般人。かなりの強面で、笑顔を作ろうとすればニヤニヤと何かを企むような表情になるくらいの悪人面。顔の割に善人。

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