アドリビトゥム英雄譚〜嫌々ながらお人好し勇者のパーティのヘルプしてたら世界を救っていた件〜   作:ポメラニアンドロイド初号機くん

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第三十三話 泣いて笑ってよ一等星

連合軍side

 

クロード達勇者パーティが邪神と戦っているのと時を同じくして、連合軍はほぼ無限ともいえる物量の眷属の群れと交戦していた。

 

「防衛兵装、超魔導砲………()ェ!!!」

 

アトランティスから放たれる、莫大な魔力を秘めた光線が戦場に降り注ぐ。その光景はさながら、ドラゴンのブレスのようだ。

その合間を縫うように連合軍の兵が進軍する。連合軍の兵はヴァーユの天与の神風(ウインド·ギフト)とクロツキの禍津彼岸花殺生石の重ね掛けされたバフ効果により、圧倒的な力で邪神の眷属を蹂躙する。

しかし、邪神樹から無限に湧き出る眷属の群れを完全に駆逐する事はできず、歪な拮抗状態に陥る。

 

「このままでは埒が明かんな…………どれ、神話時代以来だが、本気を出すか………」

 

そう呟くと、クロツキは全魔力を解放した。

 

「三千世界 常夜の闇に 嘆く歌声 遠く消えゆく 私が与え 私が奪い 私が生かし 私が殺す 錬成 錬創 幻想の果て 終わらぬ夢に 終止符を打つ………古代魔法 神器創造(クリエイト·アーティファクト)

 

詠唱の終了と同時に天より無数の武具が降り注ぎ、一瞬にして邪神の眷属を殲滅した。

再び湧き出た眷属も第二波第三波の武具による飽和攻撃により一瞬で消し飛ぶ。

これらの武具の一つ一つが全て神器であり、かつて神々(天使)が用いたとされる神器を創造する古代魔法による創造物。それこそがクロツキの切り札だった。

とはいえ、いかに神々であろうとも無数に創造した神器を湯水のごとく使い捨てて攻撃に転用するなどという馬鹿げた使い方をする者はどこにもいない。

これこそが単独で天界(エアルス)の天使に比肩する、アドリビトゥム唯一の神話級魔法使いにして神殺しの妖狐クロツキの本領である。

その時、クロツキは邪神樹の上から飛び降りてきたクロード達に気付く。

 

「ほう、邪神の本体を見つけたか…………」

 

ヴァーユの権能による風でクロード達は安全に着地。

 

「クロツキ女王、邪神の本体は邪神樹そのものだ!!!」

 

「灯台もと暗し………、とはまさにこの事だな………眷属どもの相手は任せた、私は邪神を仕留める!!!」

 

「久しぶりにデートとしようか………リタ!!!」

 

「今デートって言った!?」

 

すかさず、リタが瞬間移動と誤認する程の速度で現れる。

 

「ああ。まずはあの邪魔者を片付けてからな」

 

クロツキはおもむろに邪神樹を指差す。

 

「OKOK〜……という事で、ここからいなくなれェェェェェェェェェ!!!!」

 

暴風狂嵐の蒼翼(ゲイルストリーム·オーバードライブ)の暴風を纏いながら剣槍『ストームブリンガー』を構えて蒼き俊星のごとく邪神樹に突進するリタ。そして、少し遅れながらクロツキが後を追う。

リタは加速度のままにストームブリンガーを邪神樹に突き立てて、クロツキにトドメを譲る。

 

「これはニュクスの分だ、受け取れ!!!奥義、狐染拳打(コンソメパンチ)…………!!!」

 

クロツキの渾身の一撃は邪神樹に突き立てられたストームブリンガーを、地面に杭を打つがごとく更に深く撃ち込む。

そしてここからがクロツキの奥義、『狐染拳打(コンソメパンチ)』の本領。打撃と同時に透過、浸透した魔力が内部炸裂して、邪神樹を跡形も無く爆散させた。

 

今ここに邪神は討伐され、連合軍が勝利した。

 

 

連合軍side 終

 

 

▷▷▷

 

 

「あとはミユ、お前の力で邪神の残滓を呪いごと取り込むだけだ」

 

連合軍全体が勝利に浮かれる中、クロツキ女王だけは冷静に最後の役割を告げる。

 

「わかったよ…………」

 

ミユが邪神の残滓を取り込む。それで全て解決…………したかのように見えた。

 

「うッ!?グァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「ミユ!?大丈夫か!!!」

 

突然のミユの異変に、その場にいた誰もが固唾を飲んで見守る。

やがて、ミユは落ち着きを取り戻した。

 

 

「ミユ、本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫だよクロード………だって、()()()()()()()()()()()()()()…………」

 

「!?」

 

突如、ミユが斬りかかってきた。俺は自身の固有時間を加速してすかさず回避する。

 

『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!実に馴染む!!!この娘の心の闇は実に馴染むなぁ!!!!』

 

「邪神が…………復活した……………??」

 

クロツキ女王ですら事態を呑み込めていない。どういう事だ?闇夜の神子の力なら邪神の残滓を問題なく取り込む事ができるはずなのに…………

 

『我も予想していなかった事だが、この娘こそが我の最大の天敵であり、同時に我の器でもあるとは………実に数奇な運命だなぁ!!!そうは思わぬか?クロードよ………』

 

「ミユから…………、離れろ!!!!」

 

こうなれば出し惜しみは無しだ。俺は刻の魔剣と月影を同時に抜き放ち、最速で斬りかかる。

 

『止まって見えるぞ?』

 

ミユ(邪神)は片手の指だけで刻の魔剣と月影を受け止めて、平然としている。

さっき呪いを取り込んでパワーアップした分据え置きかよ………!!

 

「クロード!?」

 

「クロードさん!?」

 

「リゼル、アイン、手を出すな!!!」

 

二人を巻き込む訳にはいかない。これは俺の戦いだ。

 

『ふむ、一つ余興を思いついた。貴様のその刻の魔剣とやら、我に試してみるがよい。その力で我をわずかでも縛る事ができればひょっとしたら、貴様の得意な断ち切る者(スラッシャー)の魔法で我をこの娘から引き剥がせるかもしれぬな?』

 

「何だと…………?上等だこの野郎!!!」

 

刻の魔剣の力でミユ(邪神)の固有時間を停止させる。

その後、即座に俺は断ち切る者(スラッシャー)の構えに移る。

 

『この程度か…………ぬるい』

 

ミユ(邪神)は、信じられない事に自前の魔力だけで刻の魔剣の力をレジストした。そのまま斬りかかってくるが、この間合いなら俺の方がわずかに速い………!!!俺は魔力を込めた月影を振り抜く。

 

断ち切る者(スラッシャー)……………」

 

対魔法剣技∶術式破壊(マジックキャンセル)…………』

 

ミユ(邪神)大野狐(おおのこ)で月影をへし折った。それも、断ち切る者(スラッシャー)の術式ごと断ち切りながら。

 

 

「あ……………………、あ…………」

 

もはや言葉すら出てこない。まるで、月影とともに俺の心まで折れてしまったかのように。これが、本当の絶望というものなのか………俺にはミユを救う事も、ミユを止める事もできない。

 

『なかなか楽しかったぞ?では、さらばだ』

 

ミユ(邪神)がゆったりとした様子で近付いてくる。直後、ミユ(邪神)に異変が起こる。

 

『馬鹿な…………身体が………動かん…………』

 

「ねぇ、今、ボクのクロードに何しようとしたの…………?」

 

背筋が凍りつく程に冷たいミユの声。いったい、何が起こっている?

 

「というかさぁ、さっきから、ボクの頭の中でゴチャゴチャうるさいよ…………呪いは呪いらしく…………ボクに喰われてろ…………!!!!」

 

『馬鹿な…………そんな馬鹿なァァァァァァァァァ!?』

 

先程までミユが纏っていた瘴気は完全に消え去り、外見上はいつものミユに見える。

 

「ミユ………なのか?」

 

「うん♪心配かけちゃったね、クロード………」

 

「…………………………ッ……………!?」

 

気付くと、俺は泣いていた。いつものミユが戻ってきた安堵なのか、それとも情けない自分自身に対しての悔しさだったのか、理由はよくわからない。

そんな俺とは対称的にミユはとても幸せそうに笑っていた。

 

 

 

▷▷▷

 

 

 

エピローグ 永遠の明日

 

 

邪神との戦いは終了して、勇者パーティは解散。

常夜の国で平和な日々を過ごす中、俺は修理の為にカムイさんに預けた月影を受け取りに向かった。

 

「クロードの坊主か、頼まれたモンはもうできてる。受け取りな」

 

「カムイさん、俺はこれでも20代なんで『坊主』呼びはやめてくれねェッスか?」

 

「知るか。オレからすればまだまだ坊主だ。それと、これはおまけだ」

 

「指輪?」

 

そう、どう見ても指輪である。ウェディングリング的な何かである。つまり、はよ結婚しろってか?

 

「最近、宝石細工にハマってな、使い道は坊主に任せる。最悪、売っても構わん」

 

まァ、いずれウェディングリングは買う予定だったしありがたく受け取っておくか………

 

「ありがとうございます」

 

さて、予定どおりミユに会いに行こう。

 

 

▷▷▷

 

 

 

あれからミユは、常夜の国の魔法病院で検査を受けている。

一時的にせよ邪神と融合していたのだから、仕方ない事だ。

俺は真っ直ぐミユのいる病室へと向かう。

 

「クロード、来てくれたんだ…………」

 

「当然だろ。で?検査結果はどうだった?」

 

「簡単にいうと…………、半分神で半分人の状態になったらしいよ?」

 

はい?

詳しく説明を聞くと、邪神の権能はミユの心の闇に深く同調して結びついている為に取り除く事はほぼ不可能。だけどもこれといって害がある訳でもなく、半分神で半分人の状態で今後も生きる事になるらしい。

 

「なんだ………ならよかったじゃアないか」

 

「うん………でも一つだけ問題があって、神の権能を宿した事によって、寿命の方もそちら側に引きずられちゃって………つまり、もうクロードと一緒の時間を生きられなくなったんだよ………」

 

なんだ、そんな事か………()()()()()()()()()()()()

 

「刻の魔剣、聞いてるか?」

 

「何用だ?主殿」

 

「俺の肉体と魂の固有時間を、この世の時間軸から切り離してくれ」

 

「承知した」

 

刻の魔剣がひときわ強く輝いて、俺の要求を忠実に実行する。

 

「これで俺も不老不死!!!HAHAHAHA!!!」

 

「………………」

 

ミユが呆然としている。何故だ?寿命の問題が解決して一緒の時間を生きられるんだからもっと喜んでもいいンじゃアないか?

解せぬ………

 

「どした?」

 

「えっ…………と、いいの…………?そんな簡単に人間やめて…………」

 

「この先ミユを一人にするくらいなら、人間やめる方がよっぽどマシだ」

 

「…………………ありがとう」

 

珍しくミユが赤面している。なかなか貴重な瞬間だな…………

 

「さて、ここからが本題なんだが………ミユ、俺と結婚してくれ」

 

 

「……………〜〜〜〜〜…………このタイミングで言うの、ずるくない?」

 

ミユに非難するような視線を向けられる。正直、確かに自分でも少しずるいとは思った。

 

「ボクの全てはクロードのものなんだから、今更断ると思う?」

 

おもむろに左手を差し出すミユ。あァ、指輪な。了解………

俺はミユの左手の薬指に、カムイさんからもらった指輪をはめた。

 

「それともう一つ、これを受け取ってくれないか?」

 

マジックバッグにしまっていた月影を取り出す。

 

「これ、師匠の形見なんじゃ………」

 

「あの後、カムイさんに打ち直してもらったンだ。ついでに、こいつに新しい銘も頼む」

 

ミユは少し考え込む。そして、

 

狐空切月影(こくうきりつきかげ)………とかどう?」

 

「いい銘だ………」

 

突如、『狐空切月影(こくうきりつきかげ)』が光り輝く。

その後、光の中から現れたのは、俺にとってとても馴染み深い人物だった。

 

「クロード……………」

 

「師匠……………」

 

嘘、だろ…………?何故師匠がここに…………?

 

「クロード………儂はお前にずっと言いたい事があった………………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!!儂は本物の剣神ロゥウェルじゃァァァァァァァァ!!!」

 

久しぶりに師匠にシバかれた。しかも刀の鞘で………解せぬ………

詳しく話を聞くと、死後も俺の事が心配で、ずっと月影を依代にして宿ってたらしい。

 

「流石に邪神化した嬢ちゃんに折られた時は二度目の死を覚悟したがの…………だが、カムイ殿に打ち直してもらってこの通り完全復活、しかも付喪神にまでランクアップじゃ………」

 

師匠、死んでからもずっと、俺を見守ってくれてたンだな………

 

「ありがとう……………ありがとう師匠…………」

 

ありがとう………それしか言葉が見当たらない。

 

「まぁ、儂は儂で第三の人生を楽しむつもりじゃよ。それに………、若くて可愛らしいマスターもいる事じゃしの………♪」

 

そう言って、師匠はミユに目をやる。

は?

 

「ふざけンなエロジジイ!!!ミユは俺のヨメじゃボケがァァァァァァ!!!」

 

「師匠に向かってエロジジイとはなんじゃァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

エピローグ 終

 

 

 

 

 




用語解説

邪神

分類上は神となっているが実際は、実体化する程に強力な呪いを帯びた思念集合体。
その特性故に、物理的な手段で倒してもある程度呪いが世界に残っていれば時間はかかるが必ず復活する。
完全に滅するには、一度倒した後に呪詛喰らいの力で呪いを除去する以外の手段はない。
おそらくクロードとミユは今後アドリビトゥム中を巡り、残された呪いの除去に奔走する事になるはず………


ミユ(邪神化)

真のラスボス。本来ならばミユの呪詛喰らいの力により取り込まれて消えるはずだった邪神の残滓が、ミユの心の闇と深く同調して結びついた為に融合した。だが、ミユの心の闇が邪神の想像よりも深すぎたが故に、結局権能をミユに奪われた。
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