頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 更新しました。
 ここ最近、調子が悪く。書き続けていこうか迷っていますが、自分が納得のいくような形で進めていこうと思いますので、何卒宜しくお願い致します。


ACT.99 ミッドシップの本領

 金精道路

 

 

 群馬と栃木を結ぶ金精道路を、三台の車が夜の闇を切り裂くように駆け上がり。拓海のハチロクを先頭に、タケルのスイスポと池谷のS13が後を追随する。

 

 

 「……」

 

 「姉ちゃん…。無理について来なくても良かったんだよ。嫌なら、途中引き返しても構わないしさ…」

 

 「大丈夫…。タケルが修君とバトルするところを、見届けないわけにいかないもの…。それに…今、引き返したら他の皆に迷惑を掛けるし…、最後まで付き合うわ」

 

 

 タケルのスイスポには、姉の遥香が相乗りしていた。

 タケルが今夜、修とバトルすることを伝えると、遥香は自分も連れていくようタケルに頼み込み、姉弟揃っていろは坂へ行くことになったのだ。

 

 

 「そう…。じゃあ、向こうに着いたら、池谷さん達と一緒に待っといてね」

 

 「ええ、わかったわ。タケルが無事に戻ってくるのを、あたしはちゃんと待っているわ…」

 

 

 金精道路を駆け上がりながら、タケルはハンドルを握る手に少し力を込め。遥香がシートベルトを握りしめ、フロントガラスの先を見つめながら。夜のいろは坂へと一直線に走り続けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 明智平パノラマハウス前のスペースに、エンペラーの面々が集まっている中、二台の車が低いエキゾースト音を響かせながら駆け上がってくる。

 

 

 「ちっ、またお前らか…」

 

 「いや、今夜はあなた達に絡む気はないよ…。ひと言、挨拶を入れようと思ってね」

 

 「挨拶?」

 

 「とりあえず、用件だけでも聞かせてもらおうか」

 

 

 自分達のホームであるいろは坂に、何の用があって来たか浩二が問い詰めると、小柏に変わって、修が京一達の前に出ては話し出す。

 

 

 「そんな大したことじゃありませんよ、浩二さん。俺達は今夜秋名のハチロクと弾丸を相手に、ここでバトルする為に来ただけですから…」

 

 「何だと?」

 

 

 二人は、拓海とタケルを相手にバトルしに来たと話していくと、清次達の表情が一瞬で変わるが。京一だけは表情を変えず、二人の話しに興味を抱く。

 

 

 「別にあんたらに迷惑を掛けませんよ。ここは一方通行ですから、上には干渉しませんし。俺達が走ろうがあんたらには関係ないですからね…」

 

 「ふっ、この前俺に勝ったとはいえ、生意気なことを言ってくれるじゃねえか…」

 

 

 浩二が苛立ちを隠さずに言い放つと、小柏がにやりと笑った。

 

 

 「他所から来る奴に負け続けるわけにはいかない…。俺と修が止めるよ、須藤さん(・・)

 

 「てめえ…!!」

 

 

 偉そうな口を叩く小柏に清次が飛び出そうとするが、京一がその肩を強く掴み。口の端を上げては二人に言う。

 

 

 「面白そうな取り合わせじゃないか…。秋名のハチロク対カート上がりの小柏に、弾丸と二輪上がりの桐生か…。どういう対決になるか興味津々だぜ!!」

 

 

 京一は、小柏と修の二人がハチロクとスイスポを相手にどんなバトルをしてくれるかを期待するように言っていくが、その行方はどちらに軍配が上がるのだろうか…。

 

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 午後11時を回った頃、まず最初に拓海と小柏によるダウンヒルバトルが始まることとなった。

 スタート地点であるスタンド前には、拓海のハチロクと小柏のSW20が並んでは、小柏が拓海の前に立つ。

 

 

 「よく来たな。コースの下見はしなくていいのか?」

 

 「もうやってきた…。早めに着いたから一回りしてきたんだ…」

 

 「だったらルール説明だ。スタートは同時。ゴールは三つの橋を渡り切ったところ…。先にぶっちぎった方の勝ちだ…!!…それでいいな?」

 

 「……(こくり)」

 

 「じゃ、始めるか」

 

 

 小柏がバトルの内容について説明していっては、拓海がそれを了承し。二人は車に戻っては早速にバトルに取り掛かろうとする。

 

 

 「(間違いないこのハチロク…、この前秋名ですれ違ったパンダトレノだ…!!ということはあの時ステアリングを握っていたのは、親父を負かした男、藤原文太…!!そしてこいつがその息子…)」

 

 

 拓海のハチロクを見ていっては、過去に秋名で遭遇したのと同じであると確信する小柏。その時ハチロクを走らせていたのは、拓海の父である文太だと小柏は気付き。その視線を拓海を向ける。

 

 

 「(スタンドで会った時はハッキリわからなかったが…。今は感じる…こいつは速い!!痺れてきたぜ、やるっきゃない…)」

 

 

 拓海が文太の息子であることに深い疑念を抱く小柏だったが、拓海がジャンバーを脱ぎ、ハチロクに乗り込もうとする姿を見て、小柏は拓海の実力が軒並み外れていると勘づく。

 

 

 「(ほぉ…。タケルから粗方聞いてはいたが、藤原は如何にも走れそうな気迫を放っていやがる…。どうやらこのバトル、かなりの接戦になりそうな気がするな…)」

 

 

 SW20の近くにいた修も、小柏と同じように感じながら拓海を眺めていた。拓海が予想以上の潜在能力を隠し持っていると感じたのか、修は今からやるバトルが面白くなると期待を寄せるのであった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「そうか、了解した…」

 

 

 明智平パノラマハウス前で、京一は腕を組んだまま静かに佇み。浩二が携帯を耳に当てては、スタート地点からの連絡を京一に伝える。

 

 

 「いよいよ始まるらしいぜ、藤原と小柏のバトルが先だそうだ…」

 

 

 その言葉が終わらない内に、下の方から三台の車がヘッドライトを灯しながら上がってくるや、京一達の前で近づいては車を停める。

 

 

 「涼介、瀬那…」

 

 

 車から降りてきたのは赤城レッドサンズのリーダー・高橋涼介と弟の啓介。そして、同じ赤城の走り屋の風間瀬那で。

 涼介達は京一の前に来ては挨拶を交わす。

 

 

 「久しぶりだな、京一。ここに来たのはお前とバトルして以来だな…」

 

 「面白いバトルが観られると情報が入ってきたので、やってきた…」

 

 「ふっ、勝手にしろ…」

 

 

 瀬名と涼介が言葉を交わすと京一は素っ気なく返し。そのすぐ後で強い風が吹いては荒れ模様を見せる。

 

 

 「風が強いな。今夜は…」

 

 「ヤバいかもしれないな…」

 

 

 強風が吹き荒れるいろは坂にて、京一は地面に落ちていた落ち葉を一枚拾い上げ、指先で弄びながら言う。

 

 

 「きっと、枯れて落ちた落ち葉が路肩に大量に降り積もっている…。土壇場での一発勝負を左右する気まぐれの切り札になるのは…、案外この葉っぱかもしれない…」

 

 「そうだな、4WDに乗るお前らには大して影響ないだろうが、後輪駆動のあいつらからすれば、恐ろしい程にとっちらかるからな…」

 

 「気まぐれな落ち葉か…」

 

 

 路肩に降り積もる落ち葉が勝負のカギを握るかのように話す京一に、瀬那が皮肉めいては相槌を打つ。

 涼介は二人の会話を聞きながら拓海と小柏のバトルが始まるのを待つのだった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 スタートラインに並んでいたハチロクとSW20は、リトラクタブルヘッドライトを上げては光を灯し。エンジンを唸らせ、マフラーを吹き上がらせてはアクセルを煽っていく。

 

 

 「拓海。どうなんだ…?」

 

 

 ドライブシートに腰を下ろす拓海に、池谷が近づいては話しかけては心境を尋ねる。

 

 

 「あまり期待しないでくださいね…」

 

 「えぇ!?作戦はないのか…!?親父さん、何か言ってなかったのか?」

 

 「ああ、言ってたことは言ってたんだけど…、チンプンカンプンで…」

 

 「えぇ…」

 

 「おいおい、勘弁してくれよ…」

 

 

 拓海が負けるかもしれないような口ぶりをしては、不安気な顔を見せる池谷と健二だが。タケルは拓海と目を合わせては交わす。

 

 

 「ま、拓海がこんな調子なのは今に始まったことじゃないけど…。必ず勝つと信じてるから、絶対に負けるなよ」

 

 「頑張れよ拓海…!!俺、お前がぶっちぎるって信じてるからな…!!」

 

 「うん…」

 

 

 タケルとイツキが激励をしては、拓海がそれに頷き。

 池谷がスタートラインの中央に立ち、大きく息を吸ってはカウントを開始する。

 

 

 「じゃあ行くぞォ!!5、4、3、2、1…GO!!」

 

 

 ゴァアアアア

 

 

 池谷が勢いよく腕を振り下ろしたその瞬間、二台の車は猛烈なスタートダッシュを決め。池谷の横を颯爽と抜け、いろは坂の下りを掛け始めた。

 

 

 「おおっ、すげえ…!!ハチロクが飛び出したァ!!」

 

 「速いぞ拓海!!」

 

 

 スタート直後の爆発的な加速を見た健二とイツキが興奮して声を上げていき。少し離れたところで、タケルのバトル相手となる修が、タケルに近づいてきては声を掛ける。

 

 

 「中々やるじゃねえか…。スタートの立ち上がりじゃ、リアの重いミッドシップが有利な筈が、それを物ともせずに飛び出すとはな…」

 

 「そりゃあ当然だよ。拓海のハチロクにはレース用のエンジンが積んであるから。ああやって互角以上に渡り合えるんだ…」

 

 「そういうことか…。ハチロクにそんなヤバいモン載っけるなんざ、お前の友達は一体どんな奴なんだよ…」

 

 「ははっ、どうって言われても。ただの豆腐屋の息子だよ…」

 

 「……」

 

 

 二人が親しげに会話を交わす様子を、遥香が少し離れた場所から静かに見つめ。穏やかな表情でいながら、その瞳の奥には複雑な感情が揺れていた。

 

 

 

 

 

 スタート直後、ハチロクとSW20は勢いを見せつけながらいろは坂を駆け下り始めた。

 拓海は最初のコーナー手前で素早く2速度に落とし、リアを滑らせながら鮮やかにブレーキングドリフトを決め。その後ろに、SW20が食いつくように張り付いていく。

 

 

 「(速い…!!確かにこいつはまともなハチロクじゃない!!2リッターの3Sよりもパワーがある!?)」

 

 

 後ろから追う小柏はステアリングを握り締めながら、ハチロクを見ていきながら、ノーマルの4A-Gからは想像が付かない走りをしていることに気付く。

 

 

 「(相手を先行させてから追い抜くことはK.O勝ちだと親父は言っていた…。上等だ!!俺にしたって望むところだ!!この速いハチロクを後ろからぶち抜いて見せる!!)」

 

 

 小柏は拓海を相手に本気で行こうと決意したすぐに、拓海は次のコーナー手前でヒールアンドトウを決め、シフトを落とし。ブレーキングと同時にリアを滑らせ、ブレーキングドリフトでコーナーを曲がり切る。

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「よしっ、わかった」

 

 

 明智平でバトルを観戦していた涼介達の元に、中継地点からの連絡が入っては、その内容を伝える。

 

 

 「京一、中継地点からの話によれば、スタートからハチロクが先行してるそうだ…」

 

 「へっ…小柏の奴、口ほどじゃねえな…。京一でさえ、捉えきれなかったハチロクなんだ…。先行させたらノンターボのSWじゃどうにもならねえ…」

 

 「そういうお前こそ、その口ほどにもない奴に、あっさり負けてといてよくそんなデカい口が叩けるな」

 

 「ちっ、こんな時に水を差すんじゃねえよ!!」

 

 

 清次が苛立っては声を上げるが、浩二は軽く肩をすくめて聞き流し。そこから京一と同じように腕を組んでは話を聞く。

 

 

 「なぁ京一、この前、聞きそびれたんだが、タケル達とバトルした時、どんな心境だったんだ?」

 

 「…あの時の俺は、ゴール直前のカウンターに絶対的な自信を持っていたからな…。そこに油断がなかったとは言い切れない…。敢えてえげつないやり方を避け、ガラにもなくクリーンな走りで行こうと考えたが、そのプライドが墓穴を掘った…」

 

 「そうかい…。俺からすれば、負けたとはいえ、あのバトルはここ最近の中でも指折りの名勝負だったんだし。少しくらい誇りに思ってもいいんじゃねえか」

 

 

 京一から話を聞いていった浩二は、先日のバトルはいい物であったとフォローし、話を切り替えるや、今行われているバトルについて京一に聞こうとする。

 

 

 「それよりも、小柏の件に関してだが…あいつは、どんな手を使って藤原に勝とうとしてるかお前にはわかるか京一?」

 

 「そうだな…。俺の見立てが正しいとするなら、さっき俺が言った、とことんえげつない走りをすれば小柏にも勝機がある…」

 

 「ん?どういうことだ…?」

 

 

 啓介が京一のいうえげつない走りについて聞くと、京一は拓海達が走っている方向を眺めてはこう語りだす。

 

 

 「ひと言で言えばライン(・・・)だ…。先行する車をぶち抜く為の地元スペシャルのライン取りがこのいろは坂にある…」

 

 「……」

 

 

 京一の話を聞ききながら、涼介は涼介は手元にあるノートパソコンに素早くデータを打ち込んでいた。画面にはいろは坂の詳細なシミュレーターが表示され、二台の車が現在走っていると思われるポイントが白いラインでリアルタイムに示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、いろは坂の下りでは、拓海と小柏によるバトルが白熱したバトルを繰り広げていた。

 拓海のハチロクが先行し、急勾配の続く中低速コーナーを次々とドリフトで切り抜け。リアタイヤを路面に擦り付けながら鋭くラインを取る。

 小柏のSW20もアクセル全開の排気音を響かせ、時折テールランプをパッパッと激しく点滅しながら、ハチロクのテールに食らいつく。

 

 

 

 

 

 下りのスタート地点。

 

 タケルはスイスポをスタートラインに並べては、その隣に修のDC5が横付けされ。二人は前方を見つめながら拓海達のバトルの行方を待っていた。

 

 

 「そう言えば、修兄は小柏って人と同じ地元を走ってるんだよね?あの人がどんな走りをするか分かる?」

 

 「ああ、カイはカート上がりの走り屋で、お前と同じ左足ブレーキを使う奴だ。右足はアクセルを踏んだまま、左足でブレーキを踏んでフロントに荷重を移し、アンダーステアを消す。そうすれば、アクセル全開で突っ込むことができるんだよ…」

 

 「そうなんだ…。だとすると、ますますヤバいかもしれないよ…。ミッドシップのMR2は、前のめりになるダウンヒルでもリアタイヤに荷重がかかりやすく、ハチロクみたいなフロントエンジンよりコーナーでのバランスがいいからね。同じスピードでコーナーをクリアしても、いち早くアクセルを開けることもできるから、コーナー出口からの立ち上がりにおいても、有利になるよ」

 

 「大方お前の言う通りだ…。強力なトラクションを生かしたコーナー出口の立ち上がりの速さがミッドシップの強みだが、当然、フロントからエンジンを外すことによって弊害も生じる…。重たいエンジンを後ろに載せることでフロントの荷重が不足してアンダーステアが出やすくなってしまうんだが、前よりに荷重の掛かるダウンヒルじゃあ、その欠点は現れにくくなるからな」

 

 「うん…。そこにカート上がり特有の左足ブレーキが加われば、アンダーが消え、突っ込みも鋭くなっては最強のレーシングカーみたいな走りができるからね…。多分、拓海は地元の走り込みの差で、小柏にかなり苦戦するに違いないよ…」

 

 「それだけじゃねえぞ…。俺の予想が正しけりゃ、カイの奴は…。藤原を相手に、いろは坂であれ(・・)を使ってくる筈だ…」

 

 「あれって?」

 

 「ああ、お前にはまだ想像が付かねえだろうが…。いろは坂という個性的な下りだからこそできる走り方。インベタの、さらにインを突いてくる……。普通じゃ絶対に無理なラインを、強引に抉ってくるに違いねえよ」

 

 「インベタの…更にインに突っ込むって、どういうこと…?」

 

 

 修の言うインベタの更にインを突くという技が何なのか疑問を浮かべるタケルだが、それ判明することになるのは、少し先のことであった…。




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