頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 少し上げるスピードは落ちましたが、できる範囲で書き続けていきます。


ACT.101 修とタケル、運命のバトル

 「(めちゃめちゃ上手い…!!抜かれて後ろから見てみると、それがよくわかる!!直線の速さは大体同じくらいだけど…、恐ろしくコーナーが速い(・・)!!)」

 

 

 絶体絶命の窮地に追い込まれた拓海は、後ろからSW20の走りを追っていきながらその走りを見ていくが、そこで小柏が如何に速い奴なのかを思い知る。

 重いエンジンをリアアスクル上に載せ、トラクションに優れているミッドシップは、限界領域でリアが滑り始めた時の挙動はFRよりもナーバスであるが。カート上がりの小柏からすれば、スローモーションのように余裕を持って感じることができる。

 レーシングカートは基本ミッドシップで、小柏にとってミッドシップレイアウトのSW20はまさに、打って付けの車であり、小柏が操るSW20が速いことは、極当たり前のことであるのだ。

 

 

 「(ついていくだけでも目一杯なのに…。抜き返すチャンスなんて…!!親父が言ってた通り負けるなこりゃあ…。あっ!!)」

 

 

 諦める寸前まで追い込まれていく拓海は、ハチロクを走らせて行ってる中で、自宅を出る寸前に父親から言われたことを、今になって思い出す…。

 

 

 「(そう言えばあの時…、なんて言ってたんだっけ親父…)」

 

 

 

 

 

 話は拓海がタケル達と合流する数時間前へ遡り。

 実家の藤原とうふ店を出ようと拓海がハチロクに乗り込み、店を後にしようとした矢先に、文太が小柏とバトルする上で作戦を伝える。

 

 

 「仕掛けるポイントはラストの橋の区間だ。その時相手は絶対にお前の()にいるからな…。」

 

 「そんなことわかんねえだろ?」

 

 「わかるんだよそれが…。こっからが重要だ、黙って聞いてろ」

 

 

 文太は拓海が走っていく途中で抜かれては後ろにいると確信してるように言っては、作戦を淡々と伝え始める。

 

 

 「この時期のいろは坂は道路脇の茂みが、枯れ始め…。それがお前のチャンスだ」

 

 「えっ!?」

 

 「一個目の橋で鼻面をねじ込んでしまえば、二つ目の入り口は狭いけどギリギリを通す、お前の技術なら並んで行ける」

 

 「……」

 

 「もつれて三つ目に飛び込めれば、後は運だ。精々頑張ってこい」

 

 

 そう伝えては店の中へと入っていく文太だが、この時拓海は、どういう意図で作戦を伝えか、理解できずにいては困惑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 「(親父は、小柏があのジャンプ技で来ることまで読んでいたわけか…!?だけど、肝心なその先がわかんねえ…。茂みが枯れ始める頃だって…?どうしろってんだよォ!!)」

 

 

 場面は再びハチロクとSW20のバトルへと戻り、拓海は父親のアドバイスについて、頭で考えながら車を走らせていくが、その答えが何なのかわからないでいた。

 

 

 「(後一つ…。次が最後のヘアピンカーブ。その先の中高速セクションに入れば、もう手も足も出ねえだろ)」

 

 

 ハチロクをヘアピンで抜いて先頭を突っ走る小柏は、余裕が出てきては調子づいたか、勢いを見せつけながら車を走らせる。

 

 「(いい気分だぜ親父…。何もかも作戦通りだ…)」

 

 

 後ろを走るハチロクに勝ったと確信する小柏であったが、拓海はSW20のケツに食いついていきながらコース上の端に散らばる枯葉の吹き溜まりから僅かに露出するアスファルトを見ては、あることに気付く。

 

 

 「(道路脇の茂みが枯れてアスファルトの段差が見える…!!わかった…あれをやれって言うのか!?)」

 

 

 ここに来て、文太の言ったことが把握できたか。拓海はハチロクを全開で飛ばしては、左コーナーへと入る直前のインベタを見つけては行動を移す。

 

 

 「(ここしかないっ!!ラストチャンス!!)」

 

 

 拓海はハチロクをインベタへと寄せ付け、アスファルトの段差に左側のフロントタイヤを落とし込み。一気に加速力を得ては、アウトいっぱいに立ち上がるSW20の左側にノーズを滑り込ませていく。

 

 

 「な、なんだこの加速はっ!?」

 

 

 小柏は、拓海が咄嗟の機転で繰り出した溝落としの応用技で自分の車と並ばれたことに驚きを見せ。二台の車は二つのトンネルに入って横並びしながら加速する。

 

 

 「(一体何が起こったというんだァ…!?クソッたれがァ!!)」

 

 

 最早ブロックしながらラインを塞ぐ術はなく、アクセルを床まで踏みつけ、馬力に物をいう加速勝負へ持ち込んでいくしかなかったが、二台の加速性能はまったくの互角であり、トンネル内の直線を突っ込み。

 その直後に、小柏がSW20を2速から3速へとギアチェンジする一方で、拓海は2速を維持したままタコメーターを一万回転のゾーンへと放り込み。

 二台は、横一線に並びながら、甲高い咆哮音をトンネル内に響き渡らせる。

 

 

 

 

 

 「来るぞ!!どっちがアタマだ!?」

 

 「うわっ、二台並んできた!!」

 

 「ちっとでもラインを外せば、両方共コンクリートの壁に突っ込むぞォ!!」

 

 

 二つ目のトンネルを出たすぐ先にある橋の横で待機してたエンペラーのメンバーが携帯越しに実況すると、トンネル内から二台の車がヘッドライトを灯し並走していきながら、ギャラリーしていたメンバーの横を通過。

 二つ目の橋を並んだまま突っ込んでいく両車は、橋の出口にあるジャンピングスポットを飛び越え、ラリーのワンシーンを彷彿させるようなジャンプをするが。

 着地したその先が、運命の決め手となる。

 

 

 「(しまったァ…!!)」

 

 

 小柏がフロントガラス越しに空中から見たのは、着地した先の路面に降り積もった枯葉の山だった。

 SW20は枯葉の山の頭上に降り立ったと同時に、路面の枯葉がタイヤに絡まり、制御が効かなくなっては滑り出してしまった。スピンしてしまってSW20は横並びするハチロクと接触寸前になるが、ハチロクはそれを紙一重の差で避けきってはガードレール擦れ擦れのコーナリングで抜け切り、その場を颯爽と走り去っていった。

 

 

 「(負けた…。地元の俺が、落ち葉にやられるとはな…。しかし、凄い奴だ…藤原拓海…)」

 

 

 勝敗の決め手が道路に降り積もった落ち葉であったとはいえ、得意とする地元で、拓海に負けてしまったことに落ち込む小柏であったが、密着して逃げ場がない状況で並走するSW20がスピンしても、一点の曇りもなく、車を安定させながらガードレール擦れ擦れに逃げていく拓海のコントロールの凄さに圧巻されるのだった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「ハチロクが勝った…!!小柏の奴、ゴール寸前でスピンしたそうだ…!!」

 

 

 頂上で待機していた清次の携帯に、拓海が勝ったという一報が入り。この場にいる全員に伝えるや、各々が反応する。

 

 

 「そうか…。土壇場で勝敗を左右する気まぐれなジョーカーは…。俺の予告通りこの葉っぱだったな…」

 

 

 京一は拓海が勝ったことに、然程反応しておらず、ひと言だけ呟きながら、地面に落ちている枯葉を見ていく。

 

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 「もしもし。そうか、それは残念だったな…。結果はどうであれお前はよくやったんだ、そう落ち込む必要はねえよ…。んじゃ、俺も今からバトルに入らないといけねえから、ここで切らせてもらうぜ」

 

 

 スタート地点で待機している修に、小柏が携帯越しに負けたことを伝えていき。修は負けてしまったであろう小柏を労うように言っては携帯を切る。

 

 

 「どうやらカイの奴はハチロクに負けちまったそうだ…。後一歩の所で、路面に振り積もった枯葉に足元をすくわれてはスピンしたとのことだ」

 

 「本当!?じゃあ…拓海が、バトルに勝ったんだね…」

 

 「バンザーイ!!拓海が勝ったァ!!」

 

 

 拓海が勝ったと聞かされては嬉しそうにするタケル。

 それを近くで聞いたイツキも感激のあまり、池谷と抱き合い、健二も嬉しそうに泣いては拓海の勝利を喜ぶ。

 

 

 

 

 

 いろは坂 分岐点

 

 

 「上手く避けてくれて礼を言うぜ…。お陰でどこもぶつけずに済んだ…」

 

 

 タケルが修とバトルを開始しようとしている中、最初のバトルを終えた拓海と小柏の二人は、いろは坂の上下線の分岐点近くの駐車場に車を停め。先程のバトルについて話をする。

 

 

 「これは親父の車だから…どこもへこまさずに返したかったんだ…」

 

 「俺も同じですよ…」

 

 「前に一度、この車に秋名ですれ違ったことがある。俺、その瞬間に思ったんだ。これは敵わない相手かもしれないって…。お前の親父さんと、勝負するわけでもないのにな…」

 

 「……」

 

 「それぐらい強烈な印象だったよ…。ま、結果的に負けたわけだから…予感が正しかったってことだ。地元で負けたのはショックだけど…、いい体験させてもらった…。凄いよ…お前と、お前の親父は…」

 

 

 バトルに負けはしたが、満足したような顔をする小柏はSW20に乗り込もうとする直前で、拓海に顔を向けては言う。

 

 

 「またどっかで会おう…。腕磨いとくわ…じゃあな」

 

 

 いつかまた、拓海にリベンジを果たすかのように言い残しては拓海の元を走り去っていき。

 爽快に走り去るSW20を見送った拓海は、いずれ何処かで小柏とまた会うのではないかと感じてゆくのであった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 拓海と小柏のバトルが終わっては第二戦へと移り。

 両者はスタートラインに並んでいる車の前に立ち、対峙しているように向き合っては話す。

 

 

 「カイが負けたのは予想外だったが…、おかげで地元の面子を気にせずに行けるからな。俺とやるからには一切手加減はしねえからな…」

 

 「元からそのつもりだよ…。走り屋として導いてくれた人を相手に、気が抜けないことぐらい、僕自身がよく分かっているからね」

 

 

 修とのバトルを目前に控え、タケルは臆することなく修と真っ向から向き合い対峙していく中、それを間近で見る遥香は心配そうに近づいてきた。

 

 

 「タケル…それに修君も、本当にやる気なの?」

 

 「勿論。ここまで来て逃げるなんて真似はみっともないからね。全力を尽くす他ないよ」

 

 「同感だ。タケルがどれだけのポテンシャルを持っているか、確かめるいい機会だ。俺とタケルのどっちが上か、はっきりさせる他ないんだよ」

 

 「…分かったわ。二人がそうまでしてバトルするのなら、あたしは止めないけど…。二人共、事故だけは起こさないでね」

 

 

 タケルと修の覚悟を聞いては納得するしかなかったか、遥香はその場から離れ。二人はそれぞれの車に乗っていき。

 スイスポのマフラーが軽快なエキゾーストを響かせ、DC5もVTEC特有の甲高いサウンドを上げてエンジンを唸らせる。

 

 

 「タケル…。あいつに勝つ為の策はあるか?」

 

 「いや、これといった案はないけど…やれるだけのことをやって、勝つしかないないかな…」

 

 「おいおい…拓海と同じようなことを言って大丈夫なのか?相手はお前に走りを教えた先輩なんだぞ、油断も隙もないんじゃねえのか?」

 

 「それは何とも言えませんけど、とりあえず…やれるだけのことはやりますし、後は運と実力で勝つしかないですね」

 

 

 特に考えもなく、ノープランで行こうとするタケルに、池谷が心配するが、タケルはなんとかしてみせると言い切る始末だ。

 

 

 「池谷さん…。申し訳ありませんけど、もう一度カウントをお願いしてもいいですか?」

 

 「ああ、全然構わんぞ。とにかく、お前が勝つことを祈ってるよ」

 

 

 池谷はタケルからカウントを数えるよう頼まれるが、それを承諾してはスタートラインの真ん中に立ち、カウントを開始する。

 

 

 「カウント行くぞォ!!5、4、3、2、1…GO!!」

 

 

 ゴァアアアア

 

 

 池谷が腕を振り下ろした瞬間に、二台はスタートダッシュを開始しては、池谷の横を走り去り、いろは坂の下りを攻め始める。

 

 

 「おおっ、凄え!!タケルの野郎、相手のDC5にも引けを取らねえ加速じゃねえか…!!」

 

 「行っけぇー!!タケル!!拓海に続けて勝ちに行けよ!!」

 

 「(速い!!FFクラスじゃあ無類の速さを誇るDC5に、スイスポでついて行けるなんざ尋常じゃねえ…!!拓海の時もそうだったが、タケルのスイスポに載せられているエンジンも普通じゃないってことだけは確かだ…)」

 

 「…タケル、修君…無事に戻ってきてよね」

 

 

 スタート地点から走り去っていく二台。

 健二とイツキがタケルを応援する横で、タケルのスイスポが修のDC5に食いつきながら走っていくのを見送った池谷は、スイスポに載せられているコンプリートエンジンが自分の予想以上の性能を発揮していることに驚くしかなく。

 遥香もまた、バトルをするタケルと修を観ていくしかなかった。

 

 

 

 

 

 「(ほぅ…車体が軽くてパワーの低いスイスポで、俺のDC5にここまでついてくるなんざ尋常じゃねえな…!!タイプRはFFの中でもトップクラスのバランスと加速を誇るはずなのに、あのスイスポはまるで引けを取っていない…!!)」

 

 

 先行ポジションを取った修は、バックミラー越しに迫るスイスポを睨みつけ。

 序盤からDC5のケツにピッタリと張り付いたスイスポは、一切の隙も見せずに、食らいつく。

 

 

 「(だが、いくらパワーの差が然程開いていないとはいえ、いろは坂の低速コーナーで、どれだけのコーナーワークを見せてくれるのか、この目で確かめさせてもらうぜ!!)」

 

 

 そう言った修は、一つ目の低速コーナーに進入するや、二輪時代に培った荷重移動を活かし。フロントにしっかり荷重を乗せて車体をイン側に食い込ませながら滑らかに曲げていく。

 

 

 「(……!!)」

 

 

 それに負けじと、タケルは左足ブレーキで瞬時にアンダーを消し、リアを素早く振り出しては慣れた手捌きでステアリングを操作。立ち上がりで一気に加速し、再びDC5のリアに食らいつき。

 再び低速コーナーに突入すると、修は荷重移動を駆使して車体を滑らかに曲げ。そのすぐ後ろで、タケルも同じ様な感覚で車体を曲げてはコーナーを抜けきる。

 

 

 「(やるな…。荷重移動の技術もさることながら、左足ブレーキを上手く使いこなしてアンダーを消している…。二輪に乗っていた頃は、コーナリングが下手くそあいつが、見ていない間にここまで上達しているとは…。かなり腕を磨き上げてきたみたいだな…)」

 

 

 スイスポのコーナーワークを見た修は、タケルが自分の予想を上回る程の高さを持っていることに深く関心する。

 

 

 「(だが、低速コーナーが続くいろは坂でその勢いがどこまで持つかだ…。前に須藤京一とバトルした時に味わったお前は気付いてるとは思うが、低速コーナーを抜けた先の高速サイドでどう決めに行くかが重要だ…。)」

 

 

 いろは坂を走る上で、一番重要なポイントは低速コーナーが続く勾配を抜けた先の三つの橋を渡る区間にあると修は言い切り、二台はそれを頭に入れながら、いろは坂の低速区間を走り続けていくのだった。




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