頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 ようやく話を進めることができました。
 ここ最近、プライベートが忙しくなってはモチベーションが上がらない状況の中、やっと書き終えることができましたので、とりあえずご覧ください。


ACT.102 思い出の坂を駆け下りろ

 四年前

 

 

 「よぉ遥香、迎えに来たぞー!!」

 

 

 四年前のある朝、当時高校2年生の修が学ラン姿で玄関先に現れては遥香を迎えに来るや。セーラー服に身を包んだ遥香が慌ただしくした様子でドアを開ける。

 

 

 「ちょっと修君、大声を出さないでよ。恥ずかしいんだから…」

 

 「いいだろ、それくらい…。俺達は付き合ってる仲なんだからよ」

 

 

 遥香が恥ずかしそうにしながら玄関先の扉を開け、修に控えるように苦言するが、その後ろのリビングの方から一人の男の子が出てきた。

 

 

 「あれ?…もう出かけるの?いくらなんでも早すぎないか…」

 

 「ちょ…タケル、パンを口に咥えたまま話さないの!!お行儀悪いわよ!!」

 

 「えー、そんな怒らなくたって、いいじゃないか…」

 

 

 遥香に話しかけてきたのは、当時中学2年生だったタケルで、口にトーストを咥えたまま話しては説教され。

 それを見かけた修は興味深そうにタケルを見ていっては、ニヤリと笑う。

 

 

 「遥香…。もしかしてそいつは、お前の弟か?」

 

 「ええ、そうよ…名前はタケルって言って今年中学に上がったばかりなの…」

 

 「へぇ…。遥香にこんな可愛らしい弟がいたとはな。姉に似ず、生意気そうな目をしてるじゃねえか」

 

 

 タケルを一目見ては気に入ったか、修はタケルの頭をワシャワシャと掴みながら笑うが、当のタケルは会って間もない奴に馴れ馴れしくされたのが癪に障ったか、嫌そうにする。

 

 

 「ちょ…なんなんすか、いきなり頭を掴まないでくださいよ…!!」

 

 「ははっ、いいじゃねえか…。俺は修っていってお前の姉貴の彼氏だ。今後とも、よろしく頼むぜ…タケル」

 

 

 そんな最悪な出会いから、タケルと修の関係は意外な形で深まっていった。

 タケルが高校生に上がった頃、二輪の免許を取得すると、修は本格的に二輪の乗り方をタケルに教え、タケルは修とツーリングを重ねていく中で固い絆を深め、峠に目覚めては走り屋として目覚めていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 「(…今思えば、あの時、修君と出会ったからこそ、タケルは走りに目覚めたわね…。もし修君と会わなければ、タケルはどんな風になっていたのかしら…)」

 

 

 タケルと修がいろは坂でバトルをしている最中、遥香は二人が過去に初めて会った時の事を浮かべながら、思い出に馳せる。

 

 

 「なぁ遥香…。なんか顔色が悪いみたいだけど、大丈夫か…?」

 

 「ううん、平気よ…。別に何ともないわ…」

 

 「そうか…。お前と桐生の間に何があったかは知らねえが。ここにきて、タケルと桐生がバトルするのに、辛いと思う気持ちは、俺にも分かる気がするよ…」

 

 「やっぱお前もそう思うよな。あいつとは高校の時に仲よくしたんだ。住む場所が変われど、桐生も同じ群馬の走り屋であることに変わりはねえからな…」

 

 

 池谷達は遥香の心境を察しながら話しかけていくが、遥香は気にしていないように振る舞いながら、二人の気遣いに感謝し。

 いろは坂を静かに眺めては、バトルの行方を見るのだった。

 

 

 

 

 

 「(速い…!!同じ前輪駆動とはいえ、こんなにも差が出てくるとは…!!流石にタイプRというだけあってか、走りのキレが凄まじ過ぎる…!!)」

 

 

 勝負は中盤戦へと突入し、修のDC5に近づいていっては差を縮めようとするタケルは、アクセルを全開に踏み込んではスイスポを飛ばしていく。

 しかし、DC5はフロントに上手く荷重を落とし込み、低速コーナーを鮮やかに抜け切ると、直線に入ってすぐにパワーを発揮してはスイスポを突き放す。

 

 

 「(DC5はパワーとトルクに振っては実用性に振ったモデルなのに、それを感じさせない走りをするなんて、やっぱり修兄は凄いよ…。車の差で敵わないんじゃ、技術(テク)の差で決めたいところだけど、僕に走りを教えてくれた修兄に、どこまで食いついていけるか…。それが問題なんだよね…)」

 

 

 再びDC5との差を広げられ、悔しそうな顔をするタケルだが、馬力の差で敵わないなら、コーナーワークで差を縮めるしかないと判断する。

 しかし、DC5を駆るドライバーは自分に走りを教えた人物で、いろは坂を走り込んだ経験が多く、その差は縮まらずにいては、均衡状態が続くのだった。

 

 

 「(タケル…。お前はスイスポを乗りこなしているみたいだが、いろは坂の低速コーナーを曲がり切る術は完全に身に付いてないようだな…。いろは坂の下りは直線を抜けてすぐに次のヘアピンが差し掛かっては、再びコーナーワークに集中しないといけないんだが…。お前はそれを左足ブレーキと荷重移動でカバーしては上手く曲がり切ってる…。過去に俺とここを走ってからというものの、ここまで成長しているとは恐れ入るぜ…)」

 

 

 タケルのスイスポをバックミラー越しに見ていく修は、タケルと二人でいろは坂を攻め込んだ時のことを思い出したか、DC5を手慣れたステアリング操作と荷重移動を駆使しては軽快に走らせる。

 弟分のタケルとバトルしていることに、感慨深くなりつつも、真剣勝負をしている以上手を抜かないわけにいかなかった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「京一、下からの話によると、桐生のDC5が先行を取っては斎藤のスイスポがそのすぐ後ろのケツに張り付いてるそうだ」

 

 「そうか…。桐生は…斎藤の力量を推し量ろうと、敢えてスピードを抑えてるみたいだな。そうでなければ、パワーの劣るスイスポなど、あっという間に引き離すことができるからな」

 

 

 中継地点からの報告を受けた清次が、その場で京一に伝え。京一は静かに腕を組んだまま静かに頷くと、反対側にいる浩二に話を聞く。

 

 

 「浩二。前に奴とやったお前なら、どんな走りをするか、わかってるな?」

 

 「当然だろ。奴の走りを間近で見た俺からしても、桐生のドラテクは中々のもんだったからな…」

 

 

 そっから浩二が修の走りについて、語り出し。京一を含む全員が耳を傾けては話を聞く。

 

 

 「二輪上がりの桐生は、単車で培った荷重移動を四輪に持ち込んでは、コーナーワークがめちゃくちゃ上手いからな。DC5は旧型のDC2程シャープじゃないはずなのに…フロントにしっかり荷重を乗せ、イン側へ車体を食い込ませるような走りをする。…あの滑らかな曲がり方は、まさに二輪特有のバランス感覚の賜物だよ」

 

 「なるほどな。俺も昔、二輪に乗ってたからその感覚がどういったものか分かる気がするよ…。二輪は攻め込むのに、路面を読むシビアが四輪の比じゃねえから、それを掴むのに苦労するが…四輪に転向すれば、上達するのは速いからな」

 

 

 啓介も、二輪に乗っていた経験があったか。浩二の解説に相槌を打ち。

 その横で、涼介がノートパソコンに二台のデータを入力し、シュミレーションを映しながらバトルの行く末を見守る。

 

 

 「なぁ涼介…。このバトル、どっちが勝つと思ってるんだ?車の性能とここを走り込んだ経験で言えば、桐生に軍配が上がるはずだが、タケルに勝機はあるのか?」

 

 「どうだろうな…。車の速さでいえばスイスポはDC5に劣るかもしれんが、この流れが終盤まで長引けば、向こうが不利に働くのはほぼ間違いないとみていいかもしれない…」

 

 「ほぉ…それはどういうことか聞かせてもらおうか?」

 

 

 瀬名が興味深そうに乗り出すと、涼介は不敵な笑みを浮かべては話を続ける。

 

 

 「DC5の足回りは、先代のDC2よりも、安定性や洗練さを重視した作りになってるんだ。先代のDC2は前後ダブルウィッシュボーンと呼ばれる独立懸架式の足を用いては、ロールが少なく、フィーリングは勿論、軽快なハンドリングが持ち味の車になっている。だが、DC5はフロントをデュアルアクシス・ストラットに変えては、トルクステアを大幅に低減させ、高出力FF特有のアクセルで曲げる現象を抑え込んでは、安定したトラクションとコントロール性を確保した仕様になっているんだ」

 

 「確かにな…。FFは駆動軸が前輪にある関係で、どうしても高出力に上げるのは難しいが…。それを上手く抑え込んで高出力に耐える作りにするができるのも、FFに特化したホンダならではの技術だからな…。でもよ、それのどこに弱点があると言うんだ?」

 

 「考えても見ろ…DC5のフロントは実用性を重視した作りになっている。つまり、DC2よりもサスペンションが複雑で、結果的にフロント周りの重量が増えているだろ。ただでさえ、前荷重が強くなるダウンヒルで、そんな車で攻め続けたらどうなると思う?」

 

 「そういうことか…。コーナーワークは勿論、ブレーキングに置いても全ての仕事を前輪で熟すFFに、負荷を掛け続ければ、後半にはタイヤが限界を迎えるに違いない…。もしタケルに勝つ可能性があるとすれば、勾配の続く低中速コーナーを抜けた先の後半区間でどう勝負を決めにいくかが、鍵を握るといっても過言じゃないからな…」

 

 

 涼介の説明を聞いてはようやく理解したか、瀬名はうんと頷きながら納得しては、再び視線をいろは坂に向け、バトルに集中していく。

 

 

 

 

 

 

 いろは坂 33コーナー付近

 

 

 「(これ以上長引かせてもキリがない…。次の33コーナーのヘアピンで一気にぶち抜いてやる…!!)」

 

 

 二台のFF車によるダウンヒルバトルは、未だに修のDC5が先行を取り、タケルのスイスポが後方から食らいついては引き離さないでいたが、タケルは今の長ままでは、タイヤを消耗する他ないと判断し、アクセルを強く踏み込み、33コーナーのヘアピンへと突入する。

 DC5が33コーナーの低速区間に入っては、そのすぐ後ろについたスイスポが車体をアウトから一気に並びかけ、オーバーテイクしようとしたその時、

 

 

 「(なっ…!?)」

 

 

 DC5のブレーキランプが、鋭く点滅してはスイスポのノーズと接触仕掛け。

 タケルは咄嗟にアクセルを緩めては衝突を回避しようとDC5との距離を開ける。

 するとDC5は、スイスポがアクセルを緩めたのを見計らったかのように、K20Aの甲高いサウンドを響かせながら、一気に引き離す。

 

 

 「(く…!!さっきのブレーキングはフェイントか。やってくれるね…修兄!!)」

 

 

 タケルは修が仕掛けたフェイントにしてやられては、悔しそうに歯を食いしばるが、DCはスイスポから遠ざかっていく。

 

 

 「(悪く思うなよタケル…。お前とバトルするからには、多少ズルをしてでも、勝ちに行かせてもらうからな…!!…にしても、前にもてぎで走った時に教わったこいつがこんなところで役に立つとは思いもしなかったぜ…)」

 

 

 修は自分のしたフェイントのブレーキングはフェアでないと自覚するが、勝つ為には致し方ないと思いつつ。車を走らせていき。

 自分にこのことを教えてくれたある人物のニヤけ顔を思い浮かべながら、いろは坂を駆け下りていく。

 

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 「OK。了解した…。どうやら桐生のDC5が先行を取ってはスイスポが食いついてるみたいだが、スイスポの方な中々抜き返せない状況だそうだ」

 

 「やっぱ、そうなるよな。いくらスイスポが下りでは滅法に速いとはいえ、タイプRのインテグラに敵わねえのも無理はねえよ…」

 

 

 中継地点からの報告を受けたエンペラーのメンバーが、その場にいる仲間に報告し。

 他のメンバーも、スイスポに勝ち目はないのではと呟いていき。

 そのすぐ傍にいるイツキもまた、タケルの敗北が高まっていることに不安そうな顔をする。

 

 

 「あぁ…タケルの奴、折角拓海が掴み取った勝利を台無しにしたりするんじゃねえだろうなぁ〜」

 

 「そう決めつけるなよ。まだタケルが負けたと決まったわけじゃねえんだ…。あいつも自分なりに走っては、勝機を見出そうとしてるに違いねえよ…」

 

 「池谷の言う通りだな。桐生もここらじゃあ速え走り屋かもしれねえが…、タケルは一度ここのトップである須藤に一度勝ってるんだ。きっと、何かとんでもねえどんでん返しをしてくれるよ…」

 

 「でも…」

 

 「イツキ君…。もう何が起きようと結果は変わらないから、ひとまず落ち着いては結果を待ちましょう…。きっと、タケルなら何か秘策を思いついては勝つと信じてあげて…」

 

 

 池谷を筆頭に、健二と遥香はタケルが勝つことを祈っていくしかなく。

 バトルの結果がどうなっていくのかを待つのだった。

 

 

 

 

 

 「(やべぇ…。ヘアピンを曲がっていくのに多少無理をしたからか、もうタイヤが持たなくなってきたかもしれねえな…。この先の高速セクションに入れば、パワーの差でこっちに有利だが、タケルは何か奇策を打ってくるに違いねえから、油断も隙もねえ…)」

 

 

 バトルは終盤戦へと移り。

 スイスポとDC5は連続していくいろは坂の低速セクションを下り続けては接戦を繰り広げており。

 先行するDC5が低速コーナーの下り峠を抜けては、高速セクションに入っていくが、タケルはDC5の走行するラインを見ていっては疑問を浮かべる。

 

 

 「(おかしい…。低速セクションが続くいろは坂のヘアピンを下っていた時はスムーズに曲がり切っていたのに、終盤の高速セクションに入ってからは、走りが鈍くなっている…。一体どうして…はっ!!)」

 

 

 この時タケルは、ゴールに差し迫ろうとするDC5が、高速セクションに入った途中で走りが落ちたか。今になって気付く。

 

 

 「(そうか…。DC5は旧型よりもパワーとトルクが上がっている反面、フロントのサスが重くなっているんだった…。ただでさえ、勾配がきつくブレーキを駆け続けないといけない下りで、ブレーキングを繰り返し行えば、フロントタイヤが限界に達するのを…。修兄はわかりきってたからこそ、後半で差をつけられないよう、全開で飛ばしていたんだね…)」

 

 

 同じFF車とはいえ、足回りがスイスポと異なっているDC5は通常よりも早くタイヤを消耗してしまうことに気付いたか。走りが鈍くなっている今がチャンスだと判断したタケルは反撃に出ようとする。

 

 

 「(修兄…。もう少し長く修兄と走り続けたいところだけど、ここから一気に勝負を仕掛けては決着を付けさせてもらうよ…!!)」




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