頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 やっとバトルを書き終えました。


ACT.103 限界の先で掴んだ勝利

 タケルと修のバトルは佳境を迎え。

 いろは坂の低速セクションを通り抜けた二台は、高速セクションが差し迫る区間へと突入する。

 先行ポジションを走るDC5はドライバーである修が荷重移動を使い熟しながら安定した走りを見せ、キレのあるコーナーリングでつづら折りが続く低速コーナーを抜けては快調に突き進む。

 それに続くスイスポもまた、タケルが車体の軽さとハンドリングを使っては軽快にコーナーを曲がっていき。新たに載せ替えたM19Aエンジンによる高出力のパワーと遠点式のスーチャーの特性を活かしたコーナー出口からの立ち上がり加速でDC5のテールに食いついていく。

 

 

 「(俺の走りに食いついてくるとは…あいつも必死だな…。こう食いついて来られると、フロントタイヤは持たねえし…。勝負の決着は高速セクションで片をつける他ないとみていいかもしれないな…)」

 

 「(……!!)」

 

 

 後ろから迫りくるスイスポに押され気味になる修は、フロントタイヤが限界に近づいては走りが鈍くなっていることに焦りを見せ。

 ギアを3速に保った状態のまま、一つ目のトンネルに差し掛かろうとする。

 

 

 「(…勝負を仕掛けるポイントがあるとするならば…。ゴール直前の三つ目の橋のインとアウトが入れ替わるその瞬間だけだ…。着く頃には、向こうのタイヤは減っているだろうから、そこで一気に畳み掛けては…このバトルに勝つ!!)」

 

 

 タケルはゴール直前の三つ目の橋が迫る区間で、勝負を仕掛けようとし。DC5のテールに食らいつきながら、その後に続けていく。

 

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「斎藤のスイスポは低速コーナーの坂をくDC5に食いついているようだ…。どうやらこのバトルはどうなるのか、益々分からなくなってきたみたいだぞ…」

 

 「へぇ〜、タケルの奴、思いの外やるじゃねえか…。京一とのバトルでここを走ったばっかだと云うのに、もうコースに慣れたというのかよ…」

 

 

 タケルが修と互角にやり合っていると話を聞いた浩二は、そっから先の展開に期待していく中、京一は静かに腕を組みながら、いろは坂を注視する。

 

 

 「京一…。さっきは枯れた落ち葉が勝負が喫すると言っていたけど、今回のスイスポとDC5のバトルはどっちに流れが傾くと思ってるんだ?」

 

 「…そんなもん、涼介が粗方言っていたように、タイヤが限界に近づいてるDC5に不利に働いているのは間違いないだろ。FFは落ち葉が絡んでも踏ん張りが利くから車がスピンする心配はねえが、下りを走り切るのにどこまでタイヤを温存できるかが勝負を握ると言ってもいいからな」

 

 「ああ、どっちとも前に駆動軸を載せたFFレイアウトの車だから、ダウンヒルを限界まで攻め込めば、途中タイヤが垂れては走りにくくなる…。その状況の中、どう攻め込むかで勝負が決まるかもしれんしな…」

 

 

 京一の考えを聞いた瀬那は、自分なりの解釈を告げては、京一の隣に立ち、タケルと修のバトルを注視していくのであった。

 

 

 

 

 

 「き、来たぞ!!二台纏めてこっちに突っ込んで来る!!」

 

 「や、ヤベえぞ…!!あんだけのスピードのまま、橋を渡ろとすれば、絶対に谷底へ落ちるかもしれねえ!!」

 

 

 三つ目の橋の手前で待機していたエンペラーのメンバーは、目前まで迫ってくる二台を観ていっては驚く。

 DC5とスイスポは、一つ目のトンネルを抜けては二つの橋を渡り。

 二つ目のトンネルを抜けたその瞬間、タケルは勝負に出る。

 

 

 「(…ここだ。三つの橋でインとアウトが入れ替わる瞬間。勝負を仕掛けるには、ここしかない!!)」

 

 

 序盤からDC5の後ろに張り付いていたスイスポは、DC5が三つの橋を渡ろうとした直前で、アウト側から一気に並びかけてはオーバーテイクを試みる。

 

 

 「(やはり、ここできたか…!!ゴール直前の場所であるここで、お前を行かせるわけにはいかねえよ!!)」

 

 

 修はこうなることをわかりきっていたか、スイスポを通り抜けさせまいと、車をアウト側に寄せてはラインを塞ごうとする。しかし、

 

 

 ズルッ

 

 

 「(くっ…!?こんな時にもうタイヤが効かなくなるってのかよ…!!)」

 

 

 DC5のフロントタイヤが限界に達したか、グリップを失ったDC5は車体を大きく膨らんではドアンダーを出してしまい。鉄橋の端の欄干ギリギリまで滑り出してしまった。

 その一瞬の隙を見逃さなかったタケルは、アクセルを底踏みしてエンジンを全開まで回し。DC5の横を鋭く抜け去っては前に出る。

 そこからスイスポは一直線に突き進んでいっては、先にゴール地点に辿り着き、勝ち星を掴み取るのだった。

 

 

 「(やった…!!初めて…修兄に勝つことができた…!!)」

 

 

 タケルは修に勝ったことが余っ程嬉しかったか、ハンドルを握りしめては感激し。今にも雄叫びを上げそうな勢いをしているのであった。

 

 

 「…ははっ、参ったぜ。まさか俺が、得意とする地元であいつに負けを喫してしまうとはな…」

 

 

 負けたにも関わらず、走り切ったことに満足したか。修の表情はやり切っては達成感に満たされ。弟分であるタケルのスイスポを後ろから見ていくのであった。

 

 

 

 

 

 いろは坂 頂上

 

 

 「それで、バトルの結果はどうなった…?…何だと!?」

 

 「どうしたんだ清次?あの二人の間に何があったのか?」

 

 

 ゴール地点付近で待機してたメンバーからの報告に驚きの声を出す清次は、そのまま連絡を聞き入れながら電話を切ると、この場にいる全員に結果を伝える。

 

 

 「スイスポが、最後の三つ目の橋でDC5を抜いてはバトルを決めたそうだ。DC5もそれを塞ごうとしたが、タイヤが限界に来てはドアンダーを出してしまったそうだ」

 

 「…つまり、このバトルはタケルが勝利したと言うことでいいんだな…」

 

 

 勝負の行方はタケルの勝利で幕を閉じたと清次が告げるや、浩二はニヤけるような感じで要約しては理解する。

 そして、それを聞き終えた涼介は、ノートパソコンの画面を閉じて口を開く。

 

 

 「…帰るとするか、啓介」

 

 「ああ…」

 

 「んじゃ、涼介達も帰るとするなら、俺も御暇するか…」

 

 

 涼介が啓介を連れてはいろは坂を後にしようと車に乗り込み、瀬名もそれに合わせては乗ってきたスープラへと戻っていく。

 そしていろは坂を後にする三台を見送っていく京一は心境を語る。

 

 

 「(…藤原拓海、そして斎藤丈瑠。奴らはデカくなる。群馬エリアだけで留まるスケールじゃない…。涼介があの二人を目掛けてる理由がよくわかる…。いずれ涼介を超えていくドライバーだ…)」

 

 

 拓海とタケルは、いずれ近い内に大物になることに期待する京一は、一人でに夜空を眺めては立ち尽くしていくのだった。

 

 

 

 

 いろは坂 下り スタート地点

 

 

 「そうか、わかった。こちらも撤収するよ」

 

 

 スタート地点で待機してたエンペラーのメンバーの元に連絡が入ると、一緒にいたメンバーに結果を話す。

 

 

 「終わったってよ。勝ったのはスイスポの方だ…」

 

 

 「「…!?」」

 

 「…や、やったー!!タケルが勝ったァ…!!」

 

 

 タケルが勝利したという報告に、池谷と健二が啞然とする中、イツキただ一人だけがその場ではしゃぎだしてはタケルの勝利を喜ぶ。

 

 

 「……」

 

 「遥香…。結果はどうあれ、タケルが勝ったんだ。修も最善を尽くした末で負けたんだし。あいつも納得してるに違いねえよ…」

 

 

 弟のタケルが勝ったとはいえ、恋人であった修が負けたという話に遥香は複雑な表情を見せる。そこに池谷がフォローを入れると、遥香はその胸の思いを打ち明かす。

 

 

 「…そうだね。二人はやりきったと思っているに違いないわ。今頃は麓で仲良く話しているかもしれないから、早く二人の元へ向かいましょう…」

 

 

 結果を受け入れたか、遥香は笑顔を見せつけては池谷達と共に下り始め。

 二人が待ってるであろう、麓の駐車場へと車を走らせる。

 

 

 

 

 

 

 いろは坂 分岐点

 

 

 バトルを終えたタケルと修は、いろは坂の上下線の分岐点前の駐車場に車を停め。

 向かい合わせに対峙してはバトルについて振り返るのだった。

 

 

 「やってくれたなタケル…。俺に勝ちを突きつけるとは、随分と偉くなったじゃねえか」

 

 「そんな…。僕はただ、無我夢中で車を走らせてただけだよ…。ゴール前の橋の上で決まったのも、偶々運が良かっただけ…」

 

 「はっ、そう謙遜するなよ。結果はどうあれ、俺の負けに変わりはねえんだし。今回は認めてやるよ…」

 

 

 自分を負かしておきながら遠慮がちに言うタケルに、修は苛立ちを見せるも。負けてしまったことを受け入れては、タケルを認め。タケルは照れ臭そうにしては目を逸らす。

 

 

 「それはそうと修兄、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

 「なんだ、言ってみろ」

 

 「33コーナーで僕がアウトから修兄のDC5を抜こうとした時、フェイントでブレーキングを仕掛けては揺さぶってきたよね。あの技はどう考えたって、レースをやってなきゃできない技なのに、修兄はどうやってあれだけの技術(テクニック)を身に着けたの?」

 

 「ああ…。あれは、俺がもてぎで行われた走行会に出た時に旧型のDC2に乗っていた奴がいて、そいつと軽くサーキットを周った後で色々と仲良くなっては教わったんだよ」

 

 「ふうん〜…。その話が本当なら、修兄に教えた人はかなり腕の立つドライバーと見ていいかもしれない気がするよ…」

 

 「ほほぉ〜その言い方だと俺の走りはレベルが低いみたいじゃねえか…」

 

 

 修がもてぎの走行会で会ったことを話し、意気投合してはその人物から教わったことを聞いたタケルは、修にドラテクを教えるくらいだから、只者ではないと実感する。

 

 

 「ま、積もる話はここまでとしてだ…。タケル、お前とはいずれ、またどこかで会うかもしれねえから、その時まで絶対に負けるんじゃねえぞ…!!」

 

 「うん…」

 

 「んじゃ、そういうことだから…。俺はここで御暇させてもらうよ。遥香にはまぁ…適当に伝えといてくれ」

 

 

 遥香に伝えるよう伝言を授けた修はDC5に乗り込むと。マフラーを咆哮させながら颯爽と走り去っていき。

 その数分後に、池谷達が乗るS13が降りてきては、タケルの元に遥香が駆け寄る。

 

 

 「タケル…。修君は?」

 

 「修兄ならさっき、車に乗っていっちゃったよ…。姉ちゃんによろしくって言ってたけど…」

 

 「行ったって…。また勝手なことして!!あのバカ、何も言わずにすぐさまいなくなる癖は昔と変わらないんだから!!」

 

 「ちょっ…姉ちゃん、怒らないでってば…。修兄だって、きっと何か事情があるに違いない…」

 

 「どこに彼女を放ったらかして一人で行く男がいるわけ!?本当にもう、あんたといい、修君といい、いい加減にも程があることぐらい自覚してよね!!」

 

 「…は、はい」

 

 

 「あの…池谷先輩、ひょっとしてタケルのお姉さんと桐生さんが別れたのって…」

 

 「見ての通りだよ…。あいつ、勝手にどっか行っちゃっては、気が付いたらズケズケ戻ってくるタイプだからな。真面目な遥香とは、どうしても合わなかったんだろうな…。俺としては、二人には寄りを戻して欲しかったんだが、あの様子じゃ、元に戻るのは当分先のことになるかもしれないな…」

 

 「ははっ…まぁ、あいつのことだから、またいつか群馬に舞い戻ってくるか、わかったもんじゃねえよ…」

 

 「ところで…拓海はどうしたんだ?」

 

 「拓海なら、明日早いからって先に群馬へ帰ったっすよ…。帰りは池谷先輩かタケルの車に乗っけてもらえって」

 

 

 ガチギレする遥香とそれを宥めるタケルを他所に、池谷と健二は顔を見合わせ。

 夜のいろは坂の山々で、遥香の絶叫が木霊するのだった。

 

 

 「もぉー! 修君のバカぁぁ!!」

 

 

 その声は、山々の間に長く尾を引いて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「浩二…。お前さんに呼ばれて来てみたが…、あの小僧、中々いい走りをするじゃねえか…」

 

 

 タケル達から少し離れた場所で、タケルと修の走りをギャラリーしていた赤いツナギを着た一人の中年が腕を組みながら、駐車場に留まるスイスポとタケルに目を向けていた。

 

 

 「東堂さん…。率直に聞かせてもらいますが、タケルの走りを間近で見て、どう思いましたか?」

 

 

 タケル達から少し離れた場所にいたのは、先程まで京一達とバトルをギャラリーしていたエンペラーの走り屋である浩二で、浩二は自分の隣に立つ東堂という男にタケルの走りについて訪ねると。東堂は腕を組みながら、駐車場に留まるスイスポとタケルを見ていってはこう語る。

 

 

 「そうだな…お前さんが言うようにスイスポの軽快さと機敏性を活かした走りは申し分ない。あいつの走りはFFに特化したいわば、FFのスペシリストだ。あの小僧に勝つには、そこらの走り屋じゃあ敵わないのは頷ける…」

 

 「そうですか。そう言ってくれると、俺としても鼻が高いですよ…。何せあいつのスイスポは、俺のエボⅥを負かすぐらいですからね…」

 

 「だが、スイスポに乗るのが上手いとはいえ、それだけに特化してるようじゃ。この先あいつは行き詰まるんじゃねえか…」

 

 「え?それは一体どういうことで…?」

 

 

 スイスポに乗り続けていく限りでは、タケルに次はないとでも言うような口振りをする東堂に、その意味について浩二が聞くと。東堂は真剣な顔付きをしていっては話す。

 

 

 「お前さんも知ってはいると思うが、レースの世界じゃFFは中排気量クラスが関の山で、それよりも上はFRか四駆しか走っていないからな。いくらFFを走らせるのが速いとはいえ、一部の駆動方式だけに特化してるようでは、プロの世界じゃ全然通用しねえよ」

 

 「…ごもっともであります」

 

 

 浩二が東堂の指摘したタケルの弱点に納得し、肯定していっては返事をする。

 しかし東堂は、顔を和らげ、再びタケルに視線を向けていってはこう結論づける。

 

 

 「ま、あいつの技術(テク)に関してはまだ未熟な点がいくつか目立つが、ここぞという勝負どころで攻め込む姿勢はお前さんが認めるだけのことはあるな…」

 

 「…本当ですか!?」

 

 「ああ、いつになるかは分からんが、あの小僧がうちの塾生とバトルするその時が楽しみだな…。んじゃ、そういうことだから…俺はここで帰らせてもらうぞ」

 

 「…ありがとうございます。東堂さん…」

 

 

 東堂はそう呟いては、自分が乗ってきた黄色いEK9型のシビック・タイプRに乗り込み。

 VTECの甲高いサウンドを響かせながら、いろは坂を後にし。

 浩二は深々と頭を下げてはそれを見送るのだった。




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