活動報告にthirdstage今後の展開について、書きましたのでご覧ください。
年が明けてから1ヶ月が過ぎ、2月になったばかりの今日。
タケル達は制服を着て学校に登校し。廊下を歩きながらイツキが二人にある話をする。
「なぁお前ら…。今月の14日さー、その日登校日じゃないんだけど、俺学校来てみようかなー…」
「なんで?」
「まさかイツキ…、その日はバレンタインだからチョコが貰えるのを期待して言ってるんじゃないよね」
「ああ、そのまさかだよ。密かに憧れてた先輩が卒業してしまう前に勇気を出して告白しようと思って悩んでる女の子がいるかもしれないだろ」
「はぁ…」
「だからさ…そういう子の為に、一応学校に来てみようかなと思って…」
ぶーっ
イツキの言葉と同時に、拓海が吹き出し。タケルも笑いを必死に堪えながら問いかける。
「あのさイツキ…毎朝、ちゃんと鏡を見てるか?」
「なっ、何だよそれっ!?…俺にチョコレートを渡す女子がいないとでも言いたいのか!?んでもって拓海、お前も笑ってんじゃねえよ!!」
イツキは二人に散々弄られた後、悔しそうに、そして羨ましそうに言った。
「二人はいいよなー。どうせ、なつきちゃんと結衣ちゃんから確実にチョコ来るだろうし…」
「そうか?まあ当日にならないと何も言えないけど、僕は来ることを期待するよ。拓海の方はどうなんだ?」
「わかんねーよ、そんなの…」
「へ?どうして…?」
自分には結衣がいるからチョコレートは来るだろうと高を括るタケルに対し、拓海はなつきがいるにも関わらず、なつきから貰う筈がないと言うのだった。
「だって…俺は別にあいつとそんな仲じゃねえから、来る筈がねえよ。きっと…」
「それはちょっと…卑屈過ぎるんじゃないかなぁ。拓海は気付いていないと思うけど、茂木さんはお前にチョコを渡すに違いないよ」
「タケルの言う通りかもしれねえぞ。どうせ貰えるお前らなんかに俺の気持ちはわかんねえって」
「いや…まだそうと決まったわけじゃ…」
「とにかく、俺は一個のチョコもなく3年間の高校生活を終えてしまうかどうかの瀬戸際だから必死なんだよ。だから、その日は絶対に学校に来るからな」
イツキはそう言い切り、二人を睨むようにして先を急いだ。
果たして、彼の願いは叶うのだろうか——。
「ん〜やっとうちに帰ってきたし、少し昼寝してからバイトに行こうっと…あれ?」
その日の夕方。
学校から戻ったタケルが玄関の扉を開けようとした瞬間、玄関の隣の駐車場に見覚えのある車が停めてあることに気付く。
「これって…前に赤城で乗ったエボⅨだよね?なんでうちの車庫に置いてあるんだ?」
普段スイスポが停めてある場所に置いてあったのは、以前瀬名に誘われて赤城に行った時に乗った赤のエボⅨで。エボⅨはまるでスイスポとポジションを入れ替えたように鎮座するのだった。
すると、玄関先の扉が開き。中からは姉の遥香が出迎える。
「あ、今帰ってきたところね。おかえり、タケル」
「ただいま…。姉ちゃん…どうしてスイスポを停めてるところにエボⅨが置いてあるの?」
「それなんだけどね…。瀬名さんが持ってきてくれたの」
「瀬名さんが?」
「うん…。瀬名さんが言うに、この時期の雪はかなり振り積もるとFFのスイスポじゃ危険だから、代わりにランエボを乗せてやれって言って置いてってくれたの。勿論スイスポは政志さんの工場に預けてあるから安心して」
「そうだったのか…。態々気を利かせて持ってきてくれるなんて、マジでありがたいよ…。じゃあ早速、こいつを使わせてもらおうっと」
瀬名の気遣いもあってか、タケルは冬の間だけ借りることになったエボⅨで、雪の秋名を攻め込もうとするのであった。
ガソリンスタンド
「いらっしゃいませー」
エボⅨに乗ったタケルはガソリンを満タンにしようと、拓海達がバイトするスタンドへと走らせ。池谷に出迎えられては、お願いをする。
「すみません池谷さん…ハイオク満タン、お願いしますね」
「ああ、全然構わねえぞ…それよりもお前、ランエボに乗ってくるなんざ、一体何があったんだ…?」
「それはですね。スイスポで振り積もった雪道を走るのは危険過ぎると、瀬名さんが言ってまして、雪が落ち着くまでの間だけ貸してくれたんですよ」
「そういうことか…。それなら納得するが、お前…かなり車を乗り換えてねえか?」
「ははっ、言われてみるとそうですね。最初にスイスポに乗って、コペン、ランエボ、ヴィッツと、結構乗り換えてますね…」
「どう考えたって、乗り過ぎだろ…。ったく、そんな頻繁に乗れるお前が逆に羨ましいぞ」
池谷が呆れざまに乗り換えてるタケルにため息をつくと、すぐ近くにいたイツキが拓海と話をする。
「拓海。結構振ってきたよなー」
「そうだな」
「この調子だと夜はドリフトの練習やるチャンスかな!!」
「イツキ、今夜は止めといた方がいいかもしれんぞ」
「え?」
イツキはステアリングを回してるような仕草をして、今日も走り込みをしていこうかと張り切っていくが。イツキの話を聞いた池谷がいかないよう注意する。
「何しろ、雪に一番弱いのがFRっていう駆動方式だからな…。積もっちゃうとドリフトの練習どころじゃなくなるんだ…。雪にハマれば陸に上がった亀みたいに動けなくなるからな」
「そうですね。僕もつい最近、スイスポに乗って雪道を走ってきましたけど…。これ以上振り積もると、危ないですし、今夜ばっかしは、行かないほうが身の為ですからね」
「そっかぁー。二人してそう言うのなら、今日はやめておくよ…」
タケルが池谷に合わせるように、振り積もる雪道をFRで行くのは危険だとイツキに言い。イツキは二人の話を聞いて今夜は諦めることにするのだった。
「なつきちゃん、電話だよ」
「はーい」
拓海達と一緒にバイトしていたなつきが、祐一に呼ばれて店の中へ入って電話に出た。
しかし、その相手が誰なのかは分からないが、戻ってきたなつきの顔色は、明らかに優れておらず。なつきの様子がおかしいことに気付いたタケルが、なつきを心配して声を掛ける。
「…どうしたの茂木さん?顔色が悪そうに見えるんだけど、無理してない…?」
「え、…ううん、なんでもないわ」
「…そっか」
なつきは無理に笑顔を作って答えたが、その笑顔はどこか引きつっていた。なつきからの返事に、タケルは「そっか」としか言えなかったが、胸の内で小さな引っかかりを覚えた。
秋名湖近辺 ホテル
「じゃあ…僕は家に戻るけど、迎えに来てほしかったら連絡して」
「わかったわ。こうも雪が振り積もっていく中、送ってくれてありがとね、タケル…」
「それくらい別に構わないよ…。姉ちゃんには色々世話になってるし、これくらいどうってことないから」
その日の夜。
遥香を秋名湖のホテルに送り届けたタケルは、雪が深く積もった道をエボⅨで始めた。
普段ならスイスポで通る道を、今日は四駆のエボⅨで進み。雪をしっかりと掴むタイヤの感触を確かめながら、タケルは家路を急いだ。
「…にしても、ここまで振り積もるとは思わなかったなぁ…。あらかじめ、こいつに乗って正解だったよ」
予想以上に振り積もる雪を眺めながら、タケルは秋名湖の前を通り過ぎようとしたが、視界の端に見知った姿が映り、それを見ようと車を急停止させる。
「あれって…茂木さん?」
タケルが目撃したのは、昼間にスタンドで会った茂木なつきだった。なつきはガングロの男に腕を掴まれ、無理矢理といった様子で車に乗せられ。二人が乗っている車を見た瞬間、あることに気付く。
「あれは…御木のST205じゃないか。…まさか!?」
バイト先のスタンドで電話の後の引きつった笑顔。こんな雪が振り積もる時に、人通りの少ない秋名湖へ来ていたか。それらが一つに繋がった。
「もし、あいつが茂木さんを襲うつもりで来てるのだとしたら…マズいことになりかねない。早く茂木さんを助けてやらないと…!!」
タケルがなつきを助けようと判断した直後、ST205は急発進をして秋名湖を去っていった。
このまま放っておくわけにはいかないと思ったか、タケルはアクセルを踏み込み、ST205の後を追い始めた。
タケルが追い始めてから数分が経ち。なつきはST205のハンドルを握る御木に恐れながら聞く。
「どこ行くの…?」
「ここにいたんじゃ万が一、邪魔が入ることもありえるからな…。山を降りて場所を変える…。覚悟しとけよ…、俺の気が済むまではぜってー返さねえからな」
御木は完全に切れかかって暴走寸前になっており、なつきを連れ込んでは、弄ぶ気でいた。
そうなったのも、なつきが拓海のことを好きでいると聞かされて躍起になってるからで。御木はその事が気に入らなかったか、なつきをめちゃくちゃにしようと本気でいた。
だが、対向車のヘッドライトが迫っているのに気付くと、運転に集中し直す。
「(対向車…?こんな時間に雪の山道を上ってくるなんて、酔狂な奴だな…)」
そう思う中ですれ違ったのは、白黒のツートンカラーが特徴の車で、それを見たなつきは声を出す。
「拓海君!!」
なつきがそう叫ぶや、御木は目の前に現れたのが拓海の乗る車だと知ると、恐れるように顔付きが変わる。
拓海は、すれ違った車になつきが乗っていると判断するや、その場でスピンして車体の向きを変え、下り方向へと突き進んでいく。
「なつき…。残念だったな、あんな車じゃこの車についてくるのは無理だ。なんたってこっちは…4WDだからな」
「拓海君ならついてこれるもん…。上手いもん…」
「へっ、話になんねーや…。そんなんでよくガソリンスタンドのバイトなんて、やってられるなっ!!上手い下手の問題じゃねーんだよ。雪道でFRが4WDに敵わないのは、世界の常識なんだよ!!」
自分が乗るST205は4WDである為、FRのハチロクが追い付けるはずがないと、高を括る御木だったが。
その慢心が大きく覆ることに気付かないのだった。
「(拓海!?お前も来てたのか…)」
「(タケル…。どうしてここに…?)」
「(話は後だ…。僕が先行してラインを作る。それに合わせろ!!)」
なつきを助けようとエボⅨを走らせるタケルは、急いで駆け付けてきたハチロクに気付くと。目線で拓海に合図を送り、ハチロクの前に出て、雪道を切り開くように走った。
エボⅨが通った後には、はっきりとした轍が残り、それを拓海のハチロクがそれをなぞるかのように続いていく。
「(まさかお前とこんな形で走ることになるとはね…。でも、今は茂木さんを助けるのに集中しないと…)」
タケルはアクセルを踏み込み、エボⅨで雪道を切り開きながら駆け下りる。
前方には、逃げ切ろうと必死になるST205のテールランプが揺れるのだった。
「雪道のカーブはどんな車でも鈍いけど…。その中でも一番鈍いのはFRなんだ。後カーブ3つも曲がりゃ、藤原の車は見えないぐらい、遠くなるぜ…」
慢心しながらST205を走らせる御木は、ハチロクが自分のペースに追いつけまいと言うが、そう言ってる間に後ろから照り出されるヘッドライトに気付き、バックミラー越しに見ていくと、そこにはタケルのエボⅨが先行して、拓海のハチロクが後に続いていく姿が映し出されるのだった。
「なっ…!!ぐえっ…」
御木は思わず咳き込んでしまい、慌てた様子で声を荒げる。
「な、なんなんだよあの赤い車は…!!俺のセリカについて来るだけじゃなく、藤原まで連れてきやがった!!」
「タケル君よ…。あたし達を追ってるあの赤い車には、タケル君が乗っているの…」
「なっ、藤原だけじゃなく斎藤もか!?あの野郎…この前といい、どこまで俺の邪魔をしやがるんだ!!」
御木は拓海だけに飽き足らず、タケルも加わったことに苛立ちを募らせていくと、ますます躍起になりながらアクセルを踏み込み、車を飛ばす。
そこからコーナーに差しかかって、曲がろうとハンドルを回すも、ST205は急なコーナリングに対応しきれず、ガードレールに差しかかろうとする。
「(なんだぁ!?曲がらねえ)」
「(バカだな、あいつは…。あんなに焦って突っ込めば、重いST205が曲がり切れるわけないじゃないか)」
タケルがそう言ったすぐ傍で、ST205は外側に膨らませてガードレールに接触させ、車体が大きく揺れた。
その横をエボⅨが素早くすり抜け、続いてきたハチロクは衝突寸前まで迫っていた。
「たのむーっ。突っ込むなー!!」
涙ながら御木は悲鳴を上げるが、拓海は素早くステアリングを切り、紙一重で避けるのだった。
「拓海…。お前はどうしてここに?」
「…帰ってきた直後に、家の電話が鳴ってたから出たんだけど…。そしたら、茂木が湖にいるって助けを呼んでたから、急いで駆け付けたんだ…」
「なるほど、そういうことだったのか…」
「それより…あっちの方はどうなんだ?前が凹んだくらいで…、大したダメージはないと思うけど」
「まっ、気にしなくていいんじゃないか。調子に乗って、乗り回した結果がこれとは、ドライバーより車の方が可哀想に思ってしまうよ…」
タケルがフロントを潰したST205を憐れみながら近づくと、助手席の方からなつきが降りてきた。
「拓海君!!」
「茂木…」
「茂木さん、大丈夫だった?」
「うん、タケル君も助けてありがとう…」
なつきが助けてくれた礼を言うと、拓海がなつきに話しかける。
「一体何があったんだよ?わけわかんねーからとにかくふっとんで来たんだ…。その車なんだ?知ってる奴なんだろ?」
「拓海…。あのセリカに乗ってるのは御木だよ…。どういうわけか、こっちに戻ってきていたみたいなんだ…」
「えっ!?御木先輩…!?」
タケルからST205に乗ってたのが御木だと聞かされた拓海は、思いもしなかった偶然の再開に驚くが。タケルは拓海達を見ていきながら、静かに言った。
「とりあえず…こいつの後始末は僕がやっておくから、拓海は茂木さんを送ってくれる。こいつには…それなりのケジメをつけてやらないと、僕の気が済まないしね」
「わ、わかった…。後はお前に任せるよ…」
タケルは、ドライブシートで突っ伏せして肩を震わせる御木を、呆れたように見ていくが、拓海はそれ以上は何も言わずに、なつきをハチロクに乗せてその場を離れていくのだった。
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