頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 今回の話の最後に好きな軽自動車についてアンケートを載せましたので、もし宜しければアンケートにご協力ください。


ACT.111 Kカー対決 前編

 群サイで因縁の再会をしたタケルと陸。

 両者は鋭い目線を交わしながら、睨み合うのだった。

 

 

 「まさか、お前とこんな形で再会するとはな。去年、赤城でコテンパンにやられておきながら、まだ峠を攻めてるのか、斎藤…」

 

 「そういうお前こそ、どうしてここにいるんだよ…」

 

 

 二人が火花を散らし、今にも喧嘩を勃発しそうな勢いを見せるが。そこにクリスが間に割って入り、二人を落ち着かせる。

 

 

 「はいはい、そこまでにしておきなさい…。今日は喧嘩をしに来たんじゃないでしょ…」

 

 「…ちっ」

 

 

 クリスに抑えられながら陸が引き下がると、クリスはタケル達の方に視線を向け、再会の挨拶をする。

 

 

 「久しぶり、タケル君…。あなたがこの場にいるってことは…、軽自動車を走らせに来たのね?」

 

 「ええ、僕は瀬名さんからお借りしたカプチーノを練習しに群サイに来たんですよ…。最も、涼介さんからカプチーノに乗るよう言われて乗ってるだけなんですけどね」

 

 「まあ、そうだったの…。あの高橋涼介があなたにFRを勧めるだなんて…、見るところはちゃんと見てるわね」

 

 

 タケルから、涼介の指示でカプチーノに乗ってると聞いたクリスは、手を口元にやって納得し。涼介の考えを分かりきったかのように呟く。

 

 

 「タケル君…この人達とは知り合いなの?」

 

 「うん。今、僕が話しているのがクリスさんって言ってね。そこにいる中嶋と同じ箱根の走り屋で、玲さんとも知り合いなんだ…」

 

 「えっ、玲さんのお知り合い?前に玲さんから、オネエの走り屋がいるって聞いたことがあるけど…もしかしてこの人がそうなの?」

 

 「ええ、そうよ。あたし、クリスって言うの。よろしくね、お嬢さん」

 

 「よ、よろしくお願いします…」

 

 

 結衣が戸惑いながら頭を下げると、クリスは優しく微笑んで返してた。

 その様子を横目に、陸がタケルへ突っかかるように口を出す。

 

 

 「それはそうと斎藤…。お前、あの高橋涼介が作ってる県外遠征チームに加わるそうだな…」

 

 「えっ?そうだけど、どうしてお前がそのことを知ってるんだ。このことは、まだ公になってすらいないのに…」

 

 「それはね、あたしが陸ちゃんに教えてあげたの。高橋涼介は群馬エリアだけじゃなく、県外の走り屋の間でもそれなりに名が通ってる男だからね」

 

 「そうなんだ…」

 

 

 涼介が進めている県外遠征チームについて、陸が知ってたことにタケルは意外そうにするも、クリスが自分から話したのを伝えるや、納得する。

 

 

 「だがな、お前があの高橋涼介と組もうが大して変わりはしねえよ…。群馬の走り屋なんざ、俺やクリスは愚か、神奈川という激戦区を知りつくしている奴からすれば、そこらの走り屋と大差ないからな」

 

 「なんだとっ!?」

 

 

 陸が涼介は愚か、県外遠征チームを作ったとしても無意味であると小馬鹿にするように言うが。タケルはその発言に頭がきたか、陸に怒りの眼差しを向けていく。

 

 

 「ちょっと、さっきからなんなんですか!?走る場所が違うだけで、どうしてそこまで見下すんですか…!!」

 

 「結衣ちゃん。陸ちゃんの言い方は棘があるかもしれないけど、言っていることは強ち間違ってないのよ…」

 

 「えっ…」

 

 

 結衣がタケルと同じように反発すると、クリスが結衣を宥めながら、陸が言っていることについて理由を話す。

 

 

 「あたし達がホームにしている神奈川は、箱根という走り屋の聖地があるだけじゃなく、近くには富士スピードウェイという、関東で一番レベルが高いサーキットがあるの。そこで本格的に走ってきたあたし達から見ると、群馬や栃木で走ってる走り屋は…正直、甘過ぎるわけなのよ…」

 

 「そんな…」

 

 

 クリスが陸の言っていることを肯定していくのに、結衣が不満気な顔をするが。陸はタケルに対し、更に言うのだった。

 

 

 「そういうわけだから…。今度高橋涼介に会ったとしたら、こう伝えとくことだな…。お前らが進めているのは、所詮、バカがやろうとしていることの延長線だってな」

 

 「…この野郎!!」

 

 

 「そこの君達。さっきから何をしているんだ!!これ以上問題を起こすと言うのなら、出て行ってもらうぞ!!」

 

 

 陸の発言に頭がきたか、タケルが思わず胸倉を掴みかけるが、その場面を目撃した係員から注意され。渋々引き下がる。

 

 

 「タケル君…落ち着いて…。ここには他の人達もいるんだから…」

 

 「陸ちゃんもよ…。今の発言はあたしでも見過ごせないわ…。群馬の走り屋が徒党を組んで、関東各地を攻め込むのは…褒められたことじゃないけど、その威勢だけは認めるものがあってよ」

 

 

 タケルと陸はそれぞれ結衣とクリスに宥められ、落ち着くが。これ以上言い争っても意味がないと判断したか、タケルは踵を返し、結衣に促すように言葉を返す。

 

 

 「わかったよ…。ここで言い争っても仕方ないし、もう一度カプチーノを走らせてみるよ」

 

 「タケル君…」

 

 「それより、どうして結衣さんが中嶋と言い争っていたの?」

 

 「うん…実はね。軽自動車のことであの人が酷いことを言うから、つい言い返してしまったの」

 

 「なるほどね。中嶋が軽自動車を侮辱したから、それを言い返したんだ」

 

 「私からしたら、ここにある車はどれも可愛らしくて面白そうなのに…。それを酷く言われるのが耐えられなくて…」

 

 「まあ、中嶋の暴言は今に始まったことじゃないからあれだけど、結衣さんの言うこともわかるよ…。軽自動車は、パワーこそ抑えられてるけど、その分コントロールしやすくて、誰にでも扱い易いのが唯一の強みだからね」

 

 

 タケルは結衣に対し、軽自動車の良さを語りながらフォローしていくと。そこから陸に対し、趣旨返しとでも言うように嫌味を言う。

 

 

 「それにさ、あいつは軽自動車がダサいって言ってるけど…今、日本で一番売れてる軽自動車がなんなのかわかる?」

 

 「え…?それって…N-BOXじゃなかったかしら」

 

 「そっ。今一番人気の軽自動車はホンダが作ったN-BOXなんだ。走りに特化した車を作るのが得意な筈のホンダの人気商品が、まさかの軽自動車っていうのが、なんとも皮肉だよね〜」

 

 「なんだと…っ!!」

 

 「ふふっ。タケル君にしては、中々痛いところを突くわね…」

 

 

 タケルが言ったことが癪に障ったか、陸は無言ながらも青筋を立て、クリスは陸を言い負かしたタケルを褒めちぎる。

 

 

 「じゃあ…そういうことだから、僕達はそろそろ行くよ。行こう、結衣さん」

 

 「うん」

 

 

 二人が並んで離れようとするが、中嶋はタケルを人睨みし、声を低く吐き捨てる。

 

 

 「待て…斎藤」

 

 「ん?」

 

 「今の言葉は聞き捨てならねえな…。お前が今バカにしたN-BOXは、F1の元エンジニアが開発に携わった一台なんだ。それを知らずに侮辱するとは、どうやらホンダの真髄を分からせる必要があるみたいだな」

 

 「…じゃあ、どうするって言うんだよ」

 

 「…俺とここでバトルしろ」

 

 「なっ!?」

 

 

 なんと陸は、タケルに対し自分と群サイでバトルするよう言っていくと、そこから更に話し続ける。

 

 

 「お前は今日、カプチーノに乗って走りに来たと抜かしていたな…。FFしか乗ったことないお前が、FRを乗りこなすなんざ、絶対にできねえよ」

 

 「何を…っ!!」

 

 「丁度、ここには他の軽自動車も置いてあることだし、そいつを借りてお前が如何に未熟か、力尽くでわからせてやるよ…」

 

 

 陸が軽自動車によるバトルで、実力の違いを見せてやると言っていき。挑戦を突き付けられたタケルは真っ向と立ち向かって言う。

 

 

 「…いいよ。こっちもお前にやり返したいと思ったとこだから、その挑戦…受けて立つよ」

 

 「なら、決まりだな…。クリス、俺と斎藤がバトルできるよう、運営に話をつけといてくれ」

 

 「はぁ〜わかったわ。そっちの方はあたしがやっておくから、くれぐれも問題を起こさないでよね…」

 

 

 そこから、タケルと陸による軽自動車でのバトルが行われることが決まり。

 想いもよらぬ形で再戦するのであった。

 

 

 

 

 

 「陸ちゃん…。運営の方にはあたしが話を付けておいたわ。本コースは空いてなかったけど、多目的広場が空いてるから、そっちを使って構わないってね」

 

 「そうか。それをしてくれただけで十分だ。ご苦労だったな」

 

 

 クリスが二人を見ながら説明を終えると、陸がタケルに視線を向けた。

 

 

 「今回は急に決まったバトルだから、すぐに済むが、それで構わねえよな?」

 

 「別に構わないよ…。元はといえば、僕達が勝手に決めたことだし、スペースを空けてくれただけでもありがたいからね」

 

 「ふんっ。その余裕が命取りにならなければいいがな…。じゃあ、バトルの内容を説明するぞ」

 

 

 そこから陸がタケルに対し、バトルの内容について、話す。

 

 

 「ルールは至って単純だ。あそこにパイロンが置いてあるのが見えるだろ?スタート地点から加速して、パイロンを旋回した後、スタート地点に戻ってくる。ジムカーナ形式のバトルだ」

 

 「つまり…先にパイロンを回ってこっちに戻ってきた方が勝ちっ、ってことだね」

 

 「そういうことだ。お前はそのカプチーノで俺に挑むんだろ?」

 

 「当然…。その為にここに来たんだからね。お前は何に乗るつもりなんだ?」

 

 「…俺は、あれに乗ってお前とやるつもりだ」

 

 

 陸が親指で車の置いてある方向を示すと。その視線の先を追ったタケルは、思わず目を見開く。

 そこには、赤いボディが印象的なコンパクトな軽自動車が止まっていた。

 

 

 「えっ…、あれって…ホンダのビートじゃないか。あの車で僕とバトルをするの…」

 

 「あら、意外ね。陸ちゃんが、あれ程否定してたビートに乗るなんて、どういう風の吹き回しなのかしら」

 

 「勘違いするな。俺は相手と同じ駆動方式で挑むのがポリシーなんだが、ここにはカプチーノ以外にFRの軽自動車がなかったから、仕方なく、MR(ミッドシップ)のこいつを選んだんだよ」

 

 「そういうことね。まあ、FRの軽自動車なんてカプチーノを除けば、殆どが軽トラか箱バンしかないから…無理もないわ」

 

 

 陸がビートに乗ってタケルのカプチーノに挑む意志を示すと、二人は互いに向き合い、鋭い視線を交わす。

 

 

 「じゃあ早速、バトル開始といくか。わかってると思うが、俺は相手と勝負するのに一切手は抜かねえからな」

 

 「言われなくても承知してるよ。赤城ではいいようにやられたけど…今度ばかりは負けるわけにはいかないからね」

 

 

 そう言いながら、バトルに突入しようとする二人はそれぞれがカプチーノとビートに乗り込んでいき。

 車をスタート地点に持っていって、並べていく。

 

 

 「おいおい、面白そうなことになってきたぞ…」

 

 「なんだなんだ。さっきまで喧嘩してた奴らが、軽自動車でバトルするのかよ…」

 

 

 タケルと陸のバトルが群サイにいる走り屋達に知れ渡り、ギャラリーがざわめきながら集まってくる。その中で、タケルと一緒にいた結衣がクリスの横に歩み寄る。

 

 

 「あの…クリスさん」

 

 「ん?何かしら、結衣さん」

 

 

 クリスが優しく微笑みながら振り返ると、結衣が今から行われようとするバトルについて、遠慮がちに聞く。

 

 

 「急遽決まったバトルですけど、…クリスさんはどっちが勝つと、思ってますか?」

 

 「そうね…。タケル君はまだカプチーノに乗り始めたばかりで、FRに慣れていないでしょ…。それに比べて陸ちゃんはS2000やNSXといった扱いにくい後輪駆動の車に乗り続けてきたんだもの。だとすると、このバトルは陸ちゃんが有利とみていいと思うわ」

 

 「そんな…」

 

 「でも、それがこのバトルの見どころよ。後輪駆動の操作に長けた陸ちゃんを相手に、タケル君がどこまで張り合えるか…そこに注目してみるのも面白いかもしれないしね」

 

 

 後輪駆動に乗った経験の差で、タケルが陸に敵わないと言うクリス。結衣は祈るように腕を交差させながら、タケルが勝つことを信じるのだった。

 

 

 

 

 

 「すんません。向こうでバトルが始まるみたいですけど、一体どうなってるんすか?」

 

 「なんだ坂本、知らねえのか。今からカプチーノとビートで一騎討ちするそうだ」

 

 「…へぇ〜、なんか…面白そうな組み合わせですね」

 

 

 ギャラリーの中に、顎髭を蓄え、十字のネックレスを下げた男がいた。坂本と呼ばれた男は、ギャラリーに混ざって、二人のバトルをひと目見ようとしており。坂本は知り合いの走り屋から状況を聞く。

 

 

 「先輩、あそこにいる二人について何か聞いてます?」

 

 「さあな。俺の聞いた話じゃ、ビートに乗ってる奴はサーキット上がりだそうだ。さっきまで軽自動車をバカにしてたのが気に食わねえが、腕に関していや、申し分ないそうだ」

 

 「じゃあ、カプチーノに乗ってる方はどうなんです?」

 

 「ああ、あの若者か。どうも、自分で持ってきたカプチーノを走らせに来たらしいが、本コースでいきなりスピンしちまったそうだ…」

 

 「そうですか…」

 

 

 先輩から話を聞いた坂本はタケルの姿をじっと見つめ。

 タケルが乗るカプチーノが、サーキット上がりの陸が駆るビートに挑む光景を、坂本は意味深そうに見守っていくのだった。




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