頭文字D 峠の弾丸 《Project D》   作:ペンギン太郎

127 / 135
 更新しました。
 この話の最後にある車が登場しますので、最後までご覧ください。


ACT.125 秋名最速バトル

 

 「ホントにここで良かったのですか?二人のバトルを観るのなら、もう少し上に行って見たほうがいいのでは…」

 

 「いや、スタート地点から二台の発進するとこを見るよりも、ここで勝負の行方を見守った方が確実だからな…。何よりあの二人が勝負を決めに行くとするなら、ここ以外考えられない…」

 

 

 タケルと拓海のバトルが開始されようとするその頃、ゴール手前のある場所で、そこに涼介が結衣を連れて一緒に来ていた。

 二人がいる場所は、過去に自分がタケルや拓海と秋名でバトルした時に、勝負の決め手となった場所で、3つの車線が重なったゴール地点の手前にある複合コーナーの手前で。涼介は、タケル達が来るのを待つと結衣に言っていくのである。

 

 

 「つまり…先生は、タケル君と拓海君が車を走らせるのを見るとするなら、ここがベストポジションだと、言いたいのですね」

 

 「そうだ。今はまだ、バトルが開始されていないから、ハチロクとスイスポが下りてくるのを待つとしよう…」

 

 

 「あ〜ら…随分とタケル君とハチロクを高く評価しているわね…。直接バトルしただけのことはあるかしら…」

 

 「ん?お前は…」

 

 「クリスさん…。それに…玲さんも」

 

 

 涼介達に話しかけてきたのは、神奈川の走り屋であるクリスと藤咲玲だった。玲は久々に再会した結衣に手を振っていく傍ら、クリスが軽くウインクする。

 

 

 「お久しぶりね、結衣ちゃん。群サイでタケル君と陸ちゃんがバトルして以来かしら…」

 

 「お、お久しぶりです…。お二人はどうしてここに?」

 

 「へへっ…。今夜、タケル君と秋名のハチロクがバトルするって話を風間さんから聞いてね。それをひと目観ようと神奈川から秋名山へ駆けつけて来たんだ」

 

 「そうなんだ…。今日のバトルは、県外の人からも注目されているんだね…」

 

 

 タケルと拓海のバトルが、群馬エリアだけにとどまらず。県外である神奈川エリアの走り屋からも注目されていることに、意外そうにするが。クリスは涼介に視線を移し、声を掛けていく。

 

 

 「始めまして、高橋涼介さん。それとも…赤城の白い彗星と言った方がよくて?」

 

 「ふっ…光栄だな。神奈川エリアでは三強とも呼ばれてるサイドワインダーの下りのエースが、俺のことを知っていたとは…」

 

 「あら、あなたはプロの世界でも名の知れた存在だから知ってて当然よ。寧ろ知らない人がいる方が逆におかしいわ…」

 

 

 クリスが涼介を評価しながら言って横で、玲は目の前のコースを眺めながら、結衣に話す。

 

 

 「ボク達がここでギャラリーすると決めたのも、そこにいる涼介さんが言っていたのと同じ理由さ。ここは勝負の分け目を決める一番重要なポイントだからね…。ここをどう走るかで、勝敗が決まると言っても過言じゃないんだ…」

 

 「そうだったの…。流石に高橋先生と同じ走り屋なだけに、そういった見分けがつくなんて凄いわ…」

 

 「まあね。っと言っても、タケル君達のバトルをここで観るように勧めたのは…陸なんだけどね」

 

 「えっ…、中嶋さんがそう言っていたの?」

 

 

 玲とクリスが涼介達と同じ場所でギャラリーすると決めたのが、陸からの差し金だと聞いた結衣は意外そうにするも、涼介はそれを耳にしてすぐさま、クリスに尋ねる。

 

 

 「クリスと言ったな…。お前達にここでバトルを見届けるよう勧めた中嶋はどうしてる?」

 

 「陸ちゃんなら、別の場所でタケル君とハチロクのバトルをギャラリーすると言っていたわ。まあ、陸ちゃんの性格からして、どこで観るかは見当が付くけどね…」

 

 

 陸が自分達とは違う箇所で、タケル達のバトルを観ると言うクリスだが。クリスは陸がどの辺りで観るのかわかりきったように呟いていくのだった。

 

 

 

 

 

 秋名山 旧料金所跡

 

 

 場所は再び秋名の頂上へと移り変わり。

 スタートラインに並び立つスイスポとハチロクは、いつでも出られるよう、走る体勢を整える。

 

 

 「いよいよ拓海とタケルのバトルが始まりますかね…」

 

 「ああ。共に歩んできた二人が、走り慣れている秋名で。どんな走りを見せてくれるのか…。瞬きすら、できない程だからな…」

 

 「くぅ〜興奮してきますね…!!あぁ〜俺も拓海達と一緒に秋名の下りを攻めてみたいっすよォ…!!」

 

 「いや、お前が混ざったところで。すぐに置いてけぼりになる気がするのがオチなんだが…」

 

 

 イツキが調子の良いひと言を発し、健二がそれに突っ込んでいくと。スタートラインの中央に立つ啓介が、二台の前で腕を上まで上げて、声を出す。

 

 

 「それじゃあ始めるぞォ!!」

 

 

 啓介がカウントを数え始めると、スイスポはヘッドライトの灯を点灯させ。ハチロクはリトラクタブルを上げて光を灯す。二台はシフトを1速に入れ、サイドを下ろし、万全を期す。

 

 

 「GO!!」

 

 

 ギャアアア

 

 

 啓介がカウントを切って、腕を振り下ろすと同時に、二台はほぼ同じタイミングでスタートダッシュを開始すると。啓介の横を通り抜け、秋名の下りを攻め始めるのだった。

 

 

 「す、すげぇ…。駆け出しはほぼ互角だったぞ…」

 

 「だが、わずかにハチロクが前に出てリードしてるみたいだな…」

 

 「そっから先は、二人の走りによるってことか…」

 

 「(ハチロクとスイスポの走りを見るのはいろは坂以来だが、あの二人は確実に進化していやがる…。スタート直後のタイミングは勿論、瞬時にシフトの繋ぎもほぼ同じだった…。FRのハチロクが一歩前に出たのは当然だが、スイスポもFFであるにも関わらず、あそこまで食いついていくなんざ、半端ねえぜ…)」

 

 

 スピードスターズの面々が、そう言っていく中。スターターを務めた啓介は麓へと駆け出した二台のテールを見送り。バトルの行く末を見守っていく。

 

 

 

 

 

 

 秋名の最初のコーナー付近で見ていたギャラリーは、上から下りてくるハチロクとスイスポの走りに釘付けになり。ここをどう攻め込むのか、見ていく。

 

 

 「来た、ハチロクが前を行ってるぞ!!」

 

 「スイスポもハチロクと殆ど離れていねえ!!こっからどう攻め込む気なんだ!!」

 

 

 ギャラリーしていた人が言ってすぐに、拓海は最初のコーナーへと突入していくと、ヒール&トウでシフトダウンしながら減速し、リアが流れ始めた瞬間にカウンターを当て。ブレーキングドリフトでコーナーを切り抜けていく。

 

 

 「おおっ!!やっぱりハチロクのドリフトは堪んねえぜ!!」

 

 「スイスポはコーナーをどう切り抜ける気なんだ?」

 

 

 タケルは1つ目のコーナーをドリフトで抜けていったハチロクを意識したか。コーナー進入時にステアリングを切り込んで角度を付け。曲がろうとする直前でサイドを短く引き、リアタイヤをロックさせた。わずかに軽くなったリアを荷重移動でスライドさせて、Fドリで強引に向きを変えてコーナーを切り抜け、ハチロクの後を追っていく。

 

 

 「え、Fドリでコーナーを曲がっただとォ…!?」

 

 「信じられねぇ…FFのスイスポが、ハチロクと並べてツインドリフトするだなんて…初めてみたぞ…」

 

 

 似ているようで異なるドリフトを目の当たりにしたギャラリーは、タケル達の技術の高さに圧倒され。二台はすぐに次のコーナーへと突入し、再びそれぞれの駆動方式を活かしたドリフトで、コーナーをクリアしていく。

 

 

 「見たか京一。ハチロクとスイスポがツインドリフトするとはな…」

 

 「見事なもんだな…。自分達が乗る車をあそこまでコントロールして、初っ端からドリフトでコーナーを抜けるなんざ、余程腕に自信がなければできたりはしない…」

 

 「ああ、あそこまで完璧にやられたら、タケルのFドリはほぼ完璧に近いと言っても過言じゃねえ」

 

 

 ハチロクとスイスポのツインドリフトを目の当たりにして呟くのは、京一を始めとするエンペラーの走り屋達で。京一は以前バトルした時よりも二人が成長していると肌で感じ。

 浩二も京一の言うことに同意して、タケルがドリフトでハチロクに挑もうとする姿勢を評価するのだった。

 

 

 

 

 「(拓海…。お前はやっぱり凄いよ、これまで幾度となくお前の走りを見てきたつもりだけど、ここまで限界に挑もうとするお前を見るのは初めてだ…)」

 

 

 後ろからハチロクを追うタケルは、拓海の走りが今まで見てきた中で、一番の走りをしていると内心呟き。

 ハチロクのテールに食らいつき、引き離されまいと、必死になる。

 

 

 「(拓海の走りは、僕よりも遥か先を行っている…!!だからこそ、僕はお前に勝たないといけないんだ…!!いつまでも、拓海の傍にいるだけじゃ、これから先、新たなる場所で走り続けるなんてことはできないからね…!!)」

 

 

 自分自身の殻を破る為にも、拓海に勝つと言い続けていくタケル。先を行くハチロクを見据えながら、その後ろに食いついていく。

 

 

 

 

 秋名山 高峰展望台付近

 

 

 「凄い…!!拓海君とタケル君があんなに走れるだなんて…」

 

 「痺れちゃう…スッゴイよォ…!!」

 

 

 展望台付近で二台の走りを観ていた真子と沙雪は、ハチロクとスイスポがドリフトでせめぎ合う走りに声を上げ。その傍らには、ナイトキッズの中里と慎吾の姿もあった。

 

 

 「おおっ、ハチロクも凄えが…。それに食いつくスイスポも凄え…!!」

 

 「あの二人の走りには…オーラを感じるぜ」

 

 「お、おい…毅、あんま近づくなよ…。知らねえ奴が見たら、俺達仲がいいみてえじゃねえかよ…」

 

 「お、おう…」

 

 

 真子達とは対照的に、すぐに距離をとる中里と慎吾だが。二人がそう呟いている間に、ハチロクとスイスポは次のコーナーへと先を進んでいき。

 序盤からドリフトでせめぎ合う二台は両者共に一歩も譲らず、観に来ていたギャラリーを興奮させながら、激しい攻防を繰り広げていくのだった。

 

 

 

 

 

 秋名山 頂上

 

 

 「池谷先輩…。どうしてタケルは、拓海の挑戦を引き受けたか、わかります?」

 

 

 秋名の頂上で、拓海とタケルのバトルの結果を待つイツキは、池谷にある質問をぶつけるが。池谷は頭を悩ませながら、こう答える。

 

 

 「う〜ん…。それはタケル本人に聞かねえとわからねえが…拓海に対して何か思うところがあったから、バトルしたんじゃねえか」

 

 「やっぱ池谷先輩もそう思います?でも、これでどっちかが負けたら…」

 

 「秋名最速の称号は、拓海かタケルのどっちかに決まるってことになるな。なんか複雑だよなァ…。どっちが負けても、嬉しさ半分悔しさ半分だからよォ…」

 

 「ですよね。それを思うと、このバトル…やらなければ良かったのではと思いますね…」

 

 「そういう単純なもんじゃねえよ…」

 

 「えっ…?」

 

 

 イツキ達が拓海とタケルのどちらかが負けてしまうという事実に、複雑な気分に駆られるが。そこに啓介がイツキ達の元に歩み寄り、このバトルに思うところがあったのか、啓介は自分なりの解釈をイツキ達に話す。

 

 

 「あいつらにとっちゃこのバトルの勝ち負けなんて関係ねえ。どっちも本気で走れば、それでいいんだよ…」

 

 「はぁ…」

 

 「俺からしたら、羨ましいぜ。あんな本気で走れる二人が…ここまで白熱したバトルをしてるってことがな…」

 

 

 同じ走り屋として血が騒がずにいられなかったか、啓介は勝敗に関係なく、全力でぶつかり合える二人に対し。バトルを楽しむ二人を羨ましそうに見送るのである。

 

 

 

 

 

 

 勝負は中盤戦へと入り。ハチロクとスイスポは秋名の5連続ヘアピンへと差し掛かろうとする。

 

 

 「(この先は拓海の本領が発揮される5連続ヘアピン。こっちはドリフトを重ねたから、タイヤのグリップが心配だけど。拓海がヘアピンで溝落としを決める前に、頭をとって、勝負を決めてやる!!)」

 

 

 ハチロクが先行ポジションを取っている今、5連続ヘアピンへ入る前に、頭を取ろうとタケルは行動に移る。

 ハチロクが5連続ヘアピンに突入する直前で減速して、姿勢を作ろうとしたその瞬間、タケルは拓海の隙を突こうと、バックミラーの死角へ滑り込み。ハチロクのバックミラーから姿を消す。

 

 

 「(えっ!?スイスポが、消えただと…!!)」

 

 

 拓海はバックミラーからスイスポが消えたことに驚いたか、足下が緩んでは隙を見せ。

 タケルは、ハチロクが空けたイン側のスペースにスイスポを滑り込ませ。そこから一気にハチロクの横をすり抜け、オーバテイクして前に飛び出す。

 

 

 「(しまった…!!秋名の下りで俺を抜き返すなんて、タケルの奴、やってくれたな…!!)」

 

 「(よしっ、ハチロクよりも前に出た…。こっから一気に、勝負に出るぞ…!!)」

 

 

 タケルのスイスポは消えるラインを使ってハチロクよりも前に出ると、5連続ヘアピンで畳み掛けようとする。

 だが拓海は、抜かれたことに衝撃を受けつつ、自分よりも前を突き進むスイスポを見据え、ステアリングを強く握りしめては、こう呟く。

 

 

 「(でも…車を速く走らせることだけが、俺の特技なんだ…!!だから…お前には負けたくない…!!俺は決めたんだ!!涼介さんの作る新チームに入って…、頂点に立つドライバーになると…!!)」

 

 

 拓海はここにきて本気を出したか、目つきを変え、アクセルをベタ踏みし、シフトを上げて一気に加速していくと、スイスポのテールに食らいつき。その差を益々縮めていくのだった。

 

 

 「(ようやく本気を出してきたか…。でも、そんなお前とバトルすることが、僕の望みでもあったんだ…。こっから先は掛け値なしのぶっつけ本番だから、拓海に抜かれないよう全力を尽くす…!!)」

 

 

 後ろから追うハチロクから伝わってくる気迫に、タケルは拓海が本気を出してきたと感じ取り。ここからが本番だとでも言うように呟くと、目の前に集中し。二台は勢いを付けながら5連続ヘアピンへと突入するのである。

 

 

 

 

 

  「ふんっ。クリス達と一緒に来たはいいが、思いのほか盛り上がってるみたいだな…」

 

 

 秋名の5連続ヘアピンを見下ろす位置で、腕を組みながらタケル達がここを通るのを待っているのは、クリスや玲と同じ神奈川の走り屋であり、タケルとは因縁のライバルである中嶋陸だ。

 陸は、目前に広がるコース上を眺めながら、こう呟く。

 

 

 「斎藤の走りは前に群サイで観てきたからわかっているが。どうしてあいつとハチロクのバトルに、こんなにも人が集まるのか、俺には理解できねえな…」

 

 

 自分がいる5連続ヘアピンには、大勢のギャラリーが集まっているにも関わらず。スイスポとハチロクというパワーで言えば特別でもない車同士の勝負に、何故これだけの人が注目するのか、陸は理由を飲み込めずにいた。

 

 

 「ま、どっちかが俺を満足させてくれるかどうか、見極めさせてもらうとするか。そうでなければ、こいつ(・・・)に乗って…ここまで来た意味がないからな…」

 

 

 そう呟いて、陸は後ろに停めてある車に目を向けていく。

 この日、陸が乗ってきた車は、いつも乗っているFD2に似たシルエットをしているが、車体は鮮やかな真紅に塗られ、フロントグリルの左端にはこう刻まれていた。

 

 

 

 

 

 『無限MUGEN RR』

 




 評価・感想をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。