頭文字D 峠の弾丸 《Project D》 作:ペンギン太郎
どこまで続けられるのか、わかりませんが。期待に添えるようにしていきたいと思います。
ACT.125 プロジェクトD
春を迎え。桜が散り木々が緑一色となった今、群馬エリアの走り屋の間であるチームが話題を呼んでいた。
とある喫茶店で、走り屋達が集い。メンバーの一人が持ってきたノートパソコンに画面にあるチームの情報が載ったURLを入れると、サイトが映し出され。そこには、走り屋達をあっと驚かせる情報が載っていた。
「おおっ、出たぞプロジェクトD。また勝ったみたいだぞォ…」
「コースレコードも更新してるじゃんか…」
「信じらんねえよァ…敵地で連戦連勝なんて…」
「ねえ、プロジェクトDって何なの?」
走り屋達と一緒にプロジェクトDのサイトを見ていた女性がプロジェクトDについて質問し。その内の一人が説明をしていく。
「群馬エリアに高橋涼介って走り屋がいたろ?」
「ああ、弟の啓介と並んでカッコイイ人の…」
「そう。その高橋涼介って人が作った県外遠征用のスペシャルチームだよ…。パソコンのネット上で大々的に挑戦者を募って。で、その結果を載せてるっていうんだよ」
「で、それに載ってる情報によると、プロジェクトDのエースは二人いるらしくてな…。上りは高橋啓介のFDがしているそうだが、下りの方はハチロクが走っているとのことだ」
「ハチロク?マジで言ってるのか?」
「ああ、プロジェクトDのバトルを現地で観戦した奴が言ってるくらいだから本当に違いない。次バトルする時がきたら、どんな走りをするか、楽しみだな」
走り屋達がプロジェクトDのバトルを、生で観たいと言って盛り上がっていく中。走り屋達と一緒にいた女性は、プロジェクトDのサイトに載っているある項目を指を指す。
「ちょっと待って…。この場所に、ハチロクとは別の車がバトルしたって載ってるけど…」
「ん?…ホントだ、ここだけハチロクとは別に、スイスポがバトルしたと載ってるぞ。おまけに、その峠のコースレコードを更新していやがる…」
「噓だろ。FDが更新したっていうならともかく、なんでスイスポが走った記録がプロジェクトDに載っているというんだ…」
走り屋達は、スイスポが何故、プロジェクトDに入っているのと疑問視するが。その実態について、未だ謎に包まれていたのだった。
栃木県 日光市(旧藤原町)
「すげえなプロジェクトDって奴らは、対戦相手の名前だけじゃなく、ちゃんと道路まで載ってるんだぜ…」
栃木県の北部に位置する日光市にて、県道19号藤原塩原線にある『もみじライン』を地元とする走り屋チーム『セブンスターリーフ』のメンバー達が、立ち話をしてプロジェクトDの実力の高さに驚きを見せ。
そこへ、一台の赤い車が近づいてくると、メンバー達の前で停止し。車から一人の男が下りては、リーダー格である人物に話しかける。
「本当に来るのか?」
「どうやら本当らしいぜ、トオル。この前朝霧有料にも出たらしいんだ」
トオルと親しげに呼ぶのは、セブンスターリーフのヒルクライムを担当する川井淳郎で。自分の前に立つ末次トオルにプロジェクトDが近隣の峠に現れたと伝え。トオルはプロジェクトDに興味を示したか、淳郎に返す。
「面白れーじゃん。下りは俺がやるからさ…。上りはお前の34に任せるよ」
「ああ…俺もそのつもりだった…」
「群馬エリアがどれ程のもんか知らねーけど…。俺達を舐めてかかると痛い目にあうってことを教えてやろうぜ…」
トオルは自分が乗ってきたNA型ロードスターの横に停めてあるR34スカイラインを見据え、淳郎を含むチームメンバー達に自分達の実力を見せつけようと強気に言うのだった。
翌日 もみじライン 富士見台駐車場
プロジェクトDが来るであろうこの日。
もみじラインの富士見台駐車場にセブンスターリーフが集い、リーダーである淳郎はトオルのロードスターのタイヤが新品のハイグリップタイヤに変わってることに気付き。どうしてそんな高いタイヤを手に入れたか尋ねる。
「なぁ、トオル。車のタイヤ、いいヤツに替えたみたいだが、どうやって手に入れたんだ?」
「ああ…今度のバトルで負けたなら、走り屋を引退してって条件付きで奈保から金借りたんだ…。もしそれを守らないのなら本気で別れるって…」
「借りたって…。お前、そんな約束をしたのかよォ」
トオルが付き合っている彼女から、金を借りてタイヤを買ったと聞かされた淳郎は呆れ果てるしかなかったか。こう続けて言う。
「お前、もっと奈保ちゃんのこと大事にしてやらないとマズいぞ。そんな約束させられること自体問題だってのに…」
「それはわかってるけど、そういう話は後にしてくれよ。
彼女と別れる覚悟で来たからには、何がなんでもバトルに勝つと自分に言い聞かせるトオル。そこへ富士見台の展望デッキから道路上を見ていたメンバーの一人が、トオル達に叫んでは言う。
「トオルさん。来ますよ!!」
プロジェクトDらしき車がこっちに近づいてくると耳にしたトオルと敦郎は道路の奥を見据え。ヘッドライトの光を灯し近づいてくる車が現れるの待っていると。奥からプロジェクトDと思わしき車が、ぞろぞろと近づいてくるのだった。
「FDに…なんだあれは…ハチロク!?」
淳郎はFDを筆頭にハチロクが続き、その後ろには日産 バネットが三台続けて来た。
バネットのサイドボディに『Project D』とロゴが入っていた為、この集団が噂になっているプロジェクトDであると証明する。
「(こいつら…すげぇ…やるかもしれねえ…!!)」
トオルは、プロジェクトDがそこらの走り屋チームとは質が異なることに気付いたか。バトルすることが、どれ程のものなのかを実感する。
そして、ハチロクとFDからドライバーが降り、セブンスターリーフがいる方向を見ていき。バネットから史浩が降りてきては、助手席で鎮座するように寝ている男を呼び起こす。
「(おい、涼介。起きろ)」
助手席で寝ていたのは、プロジェクトDのリーダーを務める高橋涼介で。史浩からの呼びかけに応じた涼介は、遠征先に着いたと知り。ゆっくりと目を開ける。
「何やるにしても凄い集中力だよな涼介って…。高崎出てからここまで一回も目を覚まさなかったんだぜ」
「何が一番効率がいいか。分かってるさ、兄貴は…」
涼介がまるで機械のような動きをすると史浩と啓介が話ていく中、涼介は助手席の窓を開け。啓介達の傍にいた松本に水を持ってくるようお願いする。
松本は、涼介に言われるがまま車内の後部座席に積んでいる冷蔵庫から水を一本取り出し、それを涼介に手渡す。
「…始めるか」
受け取った水を一飲みして目が覚めたか、先ほど寝ていた涼介の目つきが真剣そのものになるのだった。
「どうも…群馬エリアから来たプロジェクトDです」
史浩がセブンスターリーフの陣地に出向いて礼儀正しく挨拶し。
セブンスターリーフからは淳郎が史浩からの返事にこう返す。
「俺達セブンスターリーフっていうんだけど。一応ここのコースを走ってるチームなんで、俺達が相手させてもらうよ…」
「よろしくお願いします。事前に連絡言ってると思うけど、今夜一晩練習させてもらって、本番は明日ってことで了承して貰えますか」
「ああ、それでいいよ…」
史浩からコースを走って下見した後で、バトルしていいかと史浩が尋ね。淳郎がふたつ返事で承諾するが。淳郎は、史浩の後ろに停めてあるFDとハチロクを見ながら、質問を投げる。
「そっちは見たところ、FDとハチロクの2台しかいないけど…。2台だけなのか始めから…」
「いえ、後ろに停めてある2台の他にもう1台、車がありしまして。後から遅れてくると言ってましたので、ここで待ち合わせする予定なんですよ」
「そうか…」
史浩がそう話した矢先、プロジェクトDが現れた方向から、ヘッドライトの灯りを灯して近づく1台の車がいた。
その車は、プロジェクトDとセブンスターリーフがいる広場へと入って来ると。プロジェクトD側の陣地に停めてあるハチロクの横に停め。中からドライバーが出てくる。
「すみません…。急な仕事が入ってしまい、終わらせるのに時間が掛かりました…」
「遅えぞ斎藤。俺達は数分前に着いたばっかなんだぞ…」
「そう怒らなくてもいいじゃありませんか。今日はここを走り込むだけだと聞いてますし…」
「ったく。その調子じゃ、お前はいつまで経っても控えのままだぞ。藤原を越えられないんじゃ、プロジェクトDのダウンヒルエースは務まらねえからな」
啓介から拓海の代わりが務まらないと言われムッときたか。タケルは皮肉を込めながらこう返す。
「…そういう啓介さんだって、下りで僕や拓海に負けてるくせに、パワーが物をいう上りでエースを任せられておきながら、調子いいこと言えますね…」
「(カチン)…なんだてめえ、その発言は俺に対する嫌味か?」
「うわっ、冗談ですよ…冗談!!いくら僕の言ったことが本当とはいえ、真に受けなくても…」
「その物言いが気に入らねえって言ってんだよ俺は!!」
「ちょっ…啓介さん、落ち着いて…」
啓介がタケルの胸ぐらを掴みながら、反論するが。拓海に抑えつけられ。相手チームを前にしておきながら、いざこざを起こすのだった。
「一応聞いておくが、あのスイスポもプロジェクトDのメンバーなのか?」
「ええ、スイスポは控えのドライバーでありますが、腕はかなりのものなんです」
「なるほどな…」
「うちは遠出専門ですからね、無駄がないように台数を絞ってるんですよ。メインはハチロクが下り担当、FDが上り担当…。そして、あそこにいるスイスポの3人でやってるんです」
史浩は後ろにいるハチロクのドライバーである藤原拓海とFDのドライバーの高橋啓介。そして、スイスポの斎藤丈瑠の3人でやっていくと伝え、セブンスターリーフに軽く一礼してから自分達の陣地に戻っていくのだった。
「案外、行儀がいいと言うか…。フレンドリーな奴等で拍子抜けだな…。走る車が3台なのは意外だけどワンボックスが3台も来てるのはどういうんだ?サポート部隊なのか?」
プロジェクトDの史浩と話を済ませた淳郎が、あまりにもの行儀良さに驚くも、セブンスターリーフの走り屋達にプロジェクトDが普通の走り屋とは違うことについて語り始める。
「あいつら、やっぱ普通のチームじゃないな。走り屋のチームっていったら、普通全員で走るもんだろ…。それなのに、たった2台にサポートが付くなんて…。チームはチームでも…まるでサーキットを転戦とするレーシングチームだぜ…」
「そんな体裁に…俺は騙されねえぜ…!!」
プロジェクトDがハチロクとFD、スイスポを中心としたレーシングチーム並みの体制で来ていると語るが、それを聞いたトオルは気にいらなかったか、淳郎に食いかかる。
「たった一晩で何ができるってんだよ。俺達はチームを結成して2年なんだぜ、少なく見積もっても、ここを千本は走り込んでる」
トオルは、走った経験数では自分達が上だと主張し。プロジェクトD側でセッティングをしているハチロクを見て、更にこう続けて言う。
「サービス隊がいようがいまいが関係ねえよ。勝負するのはドライバーとドライバーだろ。同じテンロク勝負なら俺はどんな奴にも負けねえ、ハチロクやスイスポなんかに負けてたまっか!!」
地元を走る走り屋として、ハチロクに負けるわけにはいかないとトオルは強気に出るが。そのハチロクとスイスポがそこらの走り屋とは質が違うことに気づかないでいた…。
「わかった、これでいい…。今回は藤原に走らせるが、なるべく感想を言わせて自分で考えさせるようにしてくれ」
ハチロクのメカニックを担当しているから、ハチロクのセッティング内容が書かれたメモを見た涼介は、拓海に自ら考えてやるように松本へ指示を出す。
「まだ大したことは言えないと思うけど。今はとにかく考えさせることが大切だからな…」
「わかりました」
松本はそう返事を返して、再び作業へと戻り。
涼介は、タケルと話をしている拓海の元に向かい、確認をとる。
「DVD見たか」
「はい…40回ぐらい」
「なら、コースは頭の中に入っているな…。始めの5本は7割くらいで流せ…。映像で見るイメージと実際に走るのとでは、微妙にズレがあるからな。まずそのズレを修正するのが最初の仕事だ…」
「はい」
涼介は拓海に具体的な指示を送った後、隣に立つタケルに続けて話す。
「斎藤…。お前はスイスポに搭載したカメラでハチロクを後ろから撮影し…。走り終えた後にそれを藤原に見せてやってくれ。もし何か気づいたことがあれば、遠慮なく藤原に言ってやることだ」
「わかりました」
「啓介もわかっているな。ペースを上げていくのはそれが終わってからだ」
「ああ、心配はいらねえよ」
「よしっ、行け」
そこから三人は自分達の車に乗り込み。FDが先に出ると、ハチロクとスイスポがそれに追随するような形で走り出し。
プロジェクトDの三台の走りを見て、闘志に火がついたか。セブンスターリーフからトオルがロードスターに乗って淳郎の前に出てくる。
「俺も出るぞ。タイヤさえ仕上げりゃこっちは万全なんだ」
トオルはそう言い残して道路上へ出ると、プロジェクトDの三台にも引けを取らない加速で飛び出していく。
「(トオルの言う通りかもしれねえな。色々考えたところで結局コースに飛び出してしまえば…。信じられるものは自分のドラテクと車だけだ!!)」
トオルのロードスターを見送った淳郎は勝負を決するのは、ドライバーの腕と車で決まると内心呟き。
プロジェクトDとのバトルに、自分達が負けるはずがないように言い切っていくのであった。
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