頭文字D 峠の弾丸 《Project D》   作:ペンギン太郎

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 オリキャラの立ち位置は、まだ明確に決まっておりませんが。上手く溶け込むようにしていきますので、応援よろしくお願いします。


ACT.129 群馬エリアからの挑戦者!!

 鈴木自動車

 

 

 「おはようございます〜」

 

 「おう、おはようさん…。昨日色々と忙しかっただろ」

 

 

 遠征先から帰ってきた翌日の朝。

 タケルは欠伸をしながらもツナギを着こなし、仕事場である鈴木自動車の整備工場へ入る。

 ガレージでは整備工場の経営者である政志が作業をしており、タケルは元気よく政志に挨拶するのだった。

 

 

 「ええ、昨日行ったところはタイトなヘアピンが至るところにあって、攻略するには難しい峠でしたよ。あそこを走ろうとする拓海が、どう攻め込んでいくかが見物ですね」

 

 「そうか…。昨日の夜、走ってきて疲れてるかもしれんが。今整備してるこいつが仕上がり次第、客先へ持っていてくれないか。住所は請求書に載ってるから、それを頼りに向かうことだ」

 

 「了解しました…」

 

 

 政志から車を客先に持っていくよう頼まれたタケルは、それをやるように返事をし。朝早くから、仕事に取り掛かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 ガソリンスタンド

 

 

 「「ありがとうございました」」

 

 

 その頃、拓海が高校を卒業するまでアルバイトしていたスタンドにて。

 アルバイトから正社員となったイツキが、先輩の池谷と共に給油していった客に一礼した後。スタンドの中へと戻っていく。

 

 

 「~♪」

 

 「随分とご機嫌じゃないか。イツキ」

 

 

 イツキは、ウキウキと鼻歌を歌いながら給油機を吹いていき。その様子を肩にホースを抱えた池谷がイツキに声を掛ける。

 

 

 「そりゃそうですよ、池谷先輩。もうすぐ給料日じゃないすか…!!」

 

 「あ、そうか…。お前、バイトから正社員になって…初めての給料か」

 

 「やっぱ気持ちが違いますからね、バイトの時とは…。大人になったって感じっすよォ…」

 

 「で、何に使うんだ?給料貰ったら…」

 

 

 スタンドの正社員になってから、大幅に増えた給料が貰えることに、イツキは腕を組みながら嬉しそうにし。ニンマリとした顔付きをしながら給料で得た金の使い道を池谷に話し出す。

 

 

 「そりゃ決まってますよ…。俺のハチゴーにターボ付けるんです!!」

 

 「あのハチゴーにか…」

 

 「今に、池谷先輩のS13なんか…楽勝で追い抜いてやりますからね!!」

 

 

 ハチゴーにターボを付けて馬力アップを図っていると聞かされた池谷は、ハチロクよりもパワーが遅いハチゴーにターボを付けることに顔を引きつらせるが。イツキは池谷の表情も気にしないまま話を続け。池谷が乗るS13を抜いてやると豪語する。

 

 

 「もうローンの見積もりも出してもらってるんです…」

 

 「へぇ~」

 

 「着々と野望に近づいてるんすよォ…!!秋名のハチゴーが、伝説の走り屋として噂になるのも…もうすぐですよ…!!」

 

 「よく言うよ…。拓海やタケルの足元にすら及ばないお前が、伝説になるなんざ…」

 

 「いや俺だって、あの二人みたく…カッコよく峠を攻めてみたいっすよォ…」

 

 「そうだな。そういや拓海とタケルは、今頃何してるかな…」

 

 

 池谷はそう言って拓海やタケルがどうしてるか気にしながら、仕事を再開し。いつも通りの日常へと戻るのだった。

 

 

 

 

 渋川駅付近

 

 

 「う〜ん…。ひと仕事終えたし、少しだけ寄り道しよっと…」

 

 

 政志からの頼みで、客先に整備を済ませた車を持っていく用事を終えたタケルは、背筋をうんと伸ばしながら駅周辺の路上を歩いていた。工場へ戻る前に、適当な場所で息抜きしようかと考えながら歩いてた矢先、タケルはある人物を目にする。

 

 

 「ん?あれって、拓海じゃないか…。あいつ…仕事中なのに、何ボーッとしてんだ?」

 

 

 タケルが向ける視線の先にいたのは、運送会社の制服を身に包んだ藤原拓海であり。拓海は駅周辺の路上にある桜並木を眺めながら茫然としていた。

 

 

 「……」

 

 

 当の拓海は、仕事中であるにも関わらず、独りでに黄昏れ。静かに桜並木を眺めていたが、タケルはボーっとしている拓海に近づき。声を掛けていく。

 

 

 「おい拓海。仕事中なのにボーっとしてんじゃないよ」

 

 「…タケル」

 

 「お前が何を考えているかはわからないけど、もう僕達は学生じゃないから…少しくらい、集中したらどう…」

 

 「そうだな…。ってか、なんでお前がここにいるんだよ?」

 

 「なんでって、整備し終えた車を客先に届けて、工場へ帰るところだったのを、拓海がボーっとしてるのを見かけたから声を掛けたんだよ…。僕はまだ、本格的に車を触らせてもらえないから、こういった雑用しかやらせてもらえないしね…」

 

 「そうか…」

 

 

 タケルが自分に気を利かせてくれたと知ったか、拓海は軽く頷き。トラックの荷台に乗っていた職場の先輩が、拓海に声を掛ける。

 

 

 「藤原君。友達に呼びかけられるまでボーっとしてるなんて相変わらずだな…。今日はもうこれで上がりなんだろ?」

 

 「はい。早番なんで…」

 

 「デートでもするのか?」

 

 「え?…いえ、別に…」

 

 「なんだ違うのか。若いのに情けねえな…」

 

 

 拓海は、先輩にからかわれるが。台車に載せられている荷物を肩に載せて再び作業へと戻り。その様子を端から見ていたタケルは、拓海が何を考えていたか察する。

 

 

 「…拓海。まだなつきちゃんのことを引きずっていたのか。まあ、あんな別れ方をしたんじゃあ…引きずってしまうのも無理はないか…」

 

 

 なつきと別れたのを拓海が気にしてると察したタケルは、自分がガールフレンドの結衣と会える距離にいられるのをありがたく噛み締め。拓海の傍を静かに離れようとするが、

 

 

 ピリリリリ

 

 

 「…げ、おじさんからだ。早く戻らないと…」

 

 

 着信が鳴り響く携帯をポケットから出すと。通知先は政志からで。

 その内容は電話に出るまでもなく、タケルが客先に車を届けてから戻ってくるのが遅いことにしびれを切らした政志が自分の携帯に掛けてきたと察したタケルは、すぐに電話に出て政志に平謝りし。駆け足気味で工場へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 栃木県 日光市(旧藤原町)

 

 

 時刻は夕方となり。

 プロジェクトDとのバトルを夜に控えたトオルは、隣にいるチームメンバーの慎一にロードスターに積んでいるB6型エンジンを見せながら、そのスペックを語りだす。

 

 

 「本来、1600のB6を1800にボアアップ。ハイコンプピストンも入れて圧縮比を上げ。レスポンスを良くする為、フライホイールを軽量化。仕上げは4連のインジェクション。渋すぎるぜ…」

 

 「プラス、トオルさんのドラテクが加わればダウンヒル最強のB6ってとこですかね」

 

 「これなら、負けるわけがねえ…。絶対にな!!」

 

 

 徹底的に仕上げたB6型のエンジンと自身のドラテクがあれば、プロジェクトDに勝てると豪語するトオルに対し、慎一もトオルが負けるはずがないと言っていき。決着を、今夜のもみじラインでつけようとするのであった。

 

 

 

 

 もみじライン 

 

 

 一方、プロジェクトDとセブンスターリーフの両チームが走ろうとするもみじラインでは、拓海が、タケルや史浩と共に現地入りして、もみじラインのCの7番付近にある道路沿いの側溝を見ていた。

 

 

 「怖え。側溝に蓋がねえぞ…」

 

 「そうですね。これだと、拓海の十八番である溝落としは使えないですし…。どう攻め込んで行けばいいか悩みますね…」

 

 

 タケルと史浩が、側溝を見ながら迂闊にイン側へ寄せることができないと言っていく中、拓海はいつものような顔をしては口を開く。

 

 

 「涼介さんに聞いてはいたけど…。俺、こんなに深いの初めてですよ…」

 

 「群馬エリアの道路には、大概コンクリートの蓋がしてあるからな…」

 

 「昨日の夜、試しにここを走ってた時は気付かなかったですけど。スピードが乗ったままタイヤを落としていたら、足回りやタイロッドがダメになりましたからね…。今のうちに見といて正解でしたよ…」

 

 

 三人は、蓋のない側溝から離れ。山間を歩きながら話をしていくが。拓海はあることを思い出したか、二人に話すのである。

 

 

 「そういえば昨日涼介さん、こんなこと言ってたな。この側溝をどう攻略するかが、勝負を分けるポイントになるって…」

 

 「んなこと言ったって、ひたすら落ちないように気を付けるしか…」

 

 「でも、あの人の考えてることって僕らが思ってる以上に深い意味がありますし、涼介さんの言うことを信じてみる他ないんじゃないですか?」

 

 「それもそうだな。涼介が考えてることは最後まで俺達には分かんねえけどな…。だが…いつも最後は涼介の言った通りの結果が出る…。あいつと付き合うようになると、とにかくびっくりするようなことばかりなんだ。二人もその内わかるよ…」

 

 

 史浩は、涼介の言葉には何かしら意味があると確信したか。二人を見据えては涼介を信じるように言っていくのだった。

 

 

 

 

 

 もみじライン 夜

 

 

 「いよいよ始まるね。ドキドキしてきたよ…」

 

 「どんだけすげえのかなァ…。プロジェクトDって」

 

 

 夕日が沈み、暗がりが広まったもみじラインにて、コースの至る所でプロジェクトDとセブンスターリーフのバトルを観ようとギャラリーが集まり。今話題となっているプロジェクトDがどんなものかを期待する。

 

 

 「どっちにしたって、下りはセブンスターリーフのものだよ。末次トオルが他所から来た奴に負けるなんて…考えられねえだろ」

 

 「相手はハチロクか、スイスポのどっちかだろ?噂によるとその二台は結構有名らしいぜ」

 

 「そうか?信じらねえな。FDなら手強いけど、ハチロクなんて古いし。スイスポは所詮、パワーがねえからな」

 

 

 ギャラリーの内の一人が、トオルのロードスターにハチロクやスイスポが敵うはずがないと当たり前のように言っていき。他の人もそれに頷きを見せながら、バトルが開始されるを待つのだった。

 

 

 

 

 

 もみじライン スタート地点

 

 

 下りのスタート地点にいたプロジェクトDのメンバー達は、セブンスターリーフ側と話を済ませた史浩から説明を聞いていた。

 

 

 「向こうからの希望で、まず下り(ダウンヒル)からってことになった。それとヨーイドンバトルじゃなくて先行後追い形式となる…。1本目は向こうが先行で…わかってるだろうが、2本目でちぎられたら終わりだ」

 

 

 最初のバトルはセブンスターリーフのリクエストに従い。末次トオルが先行を走って、拓海が後追いにつくという形で開始することが決まり。

 バトルを目前に控えた拓海は、目つきが真剣そのものになるが、史浩はセブンスターリーフからもう一つ、要求を受けたことを話す。

 

 

 「それからもう一つ、向こうがハチロクの他にスイスポもバトルで走らせてくれと言ってきたんだが、どうする?」

 

 「…どうするって、そんな要求、受ける必要ねえだろ。バトルは藤原と末次トオルって奴のタイマンだってのに、斎藤を出す理由がどこにあるんだよ」

 

 「いや、その要求は甘んじて受けようじゃないか」

 

 「え…」

 

 

 啓介がスイスポを出すのを反対する傍で、涼介がそれを受ける理由をこの場にいる全員に話す。

 

 

 「啓介が言うように、今回のバトルはハチロクとロードスターの一騎打ちだが、それを敢えて、後ろから斎藤に追わせ。その映像を録画するメリットがこちらにはある…。斎藤はあくまで二人のバトルを見届ける謂わば第三者の立場として、バトルに参加させるべきだと、俺は思う…」

 

 「…ちっ、兄貴がそう言わんじゃ、斎藤を走らせる他ねえか…」

 

 

 タケルを第三者の立場から、バトルに立ち会わせるべきだと涼介が言っていくと。こちら側にメリットがあると知った啓介は、兄の言うことに従う他ないのであった。

 

 

 「斎藤…。急遽決まったことだが、お前もバトルに参戦しろ。わかっていると思うが、二人のバトルには介入しないことだ」

 

 「わかってますよ。僕としても、あのロードスターがどんな走りをするか気になりますし。後ろからきっちり見届けてきますよ…」

 

 

 涼介からハチロクとロードスターのバトルを、第三者視点から見てくるよう達しを受けたタケルは、その役目を引き受ける。

 

 

 「OKです。いつでもスタートできます」

 

 

 ハチロクのメカニックを担当する松本が、サービスクリーパーに体を寝かせたままセッテイングを済ませたと涼介に伝え。報告を受けた涼介は、首を縦に動かし頷くのだった。

 

 

 

 

 

 セブンスターリーフの陣地では、ダウンヒルを走るであろう末次トオルが愛車のロードスターに載せられているB6エンジンを静かに見つめ、ボンネットを閉じる。

 

 

 「トオル。お前の要望通り、プロジェクトDからスイスポも出してくれるそうだ…」

 

 「……」

 

 「けど…どういうつもりだ?下りを走るのに、ハチロクが相手じゃ…物足りないとでも?」

 

 「いや、そんなんじゃねえよ…。あのスイスポがどんな走りをするか気になってな。ハチロクとバトルするのに、スイスポにも付き合ってもらいたかっただけだ…」

 

 

 トオルはスイスポを同行させるのに、ただ一緒に走りたかっただけだと言い。淳郎はトオルに向かい忠告する。

 

 

 「トオル。相手がハチロクだからって油断するなよ。絶対普通のハチロクじゃないぜ」

 

 「わかってるって…相手の車がなんだろうと俺には関係ねえ…。俺は今、自分にできる最高の走りをする」

 

 「トオルさん…」

 

 「慎一。手ぇ貸してみ…」

 

 

 トオルに言われるがまま、慎一は手を差し伸べ。トオルは慎一の手を掴むや、その手は震えていた。

 

 

 「な…わかるだろ?俺震えてんだ…怖えんだよ…。本当はビビって逃げ出したくなるくれえ怖えんだ…」

 

 「……」

 

 「だけど…同時に嬉しいんだよ。嬉しくてたまんねえ…」

 

 

 トオルは手を震わせながらも慎一の手をゆっくりと離し。心境を淳郎と慎一にぶちまける。

 

 

 「俺…プロジェクトDに感謝してんだ。長い間走り屋やってても…こんなすげえテンションで走れるなんて滅多にねえ…。今日のバトルは俺にとって、一世一代の檜舞台だと思ってる。セブンスターリーフの代表として…悔いの残るみっともねえ走りは絶対しねえからな…!!」

 

 

 トオルはチームの名を背負うからには、情けない走りをするわけにはいかないと強く言い放ち。それを聞いた淳郎は感極まったか、トオルに言葉を掛ける。

 

 

 「その意気だぜ、トオル!!」

 

 「さあて…。ぼちぼちおっぱじめるとするか!!」 

 

 

 意を決したか、トオルはバトルを開始しようと言っては、車を出し。

 いよいよ、拓海とトオルの下りのバトルが始まろうとするのだった。

 

 

 

 

 

 富士見展望台のすぐ端にある出口手前にて、トオルのロードスターが先頭に置かれると。後ろに拓海のハチロクとタケルのスイスポが最後尾に付き。

 トオルは、目の前にいる拓海に手を差し伸べ。自己紹介をする。

 

 

 「末次トオルだ。よろしく」

 

 「…藤原拓海です。で、横にいるこいつが…」

 

 「斎藤丈瑠です。今回はお二人のバトルを後ろから追わせてもらいますが、いいバトルが観れると期待してますよ」

 

 

 拓海がトオルと握手している傍で、タケルがバトルを期待する言葉を口にする。タケルの気さくな挨拶とは裏腹に、トオルは二人から放たれる雰囲気から何を感じとったか。内心呟く。

 

 

 「(な…なんだ、この感じは…。今までこんな風に感じたことはなかった…。この二人…俺が思ってるよりもやるかもしれねえ…)」

 

 

 まるで、拓海とタケルがそこらの走り屋とは一線を画していると感じたのか。トオルはロードスターのタイヤに手をやると、祈るように呟いていく。

 

 

 「(俺を守ってくれよな…奈保)」

 

 

 ここにいない自分の彼女から借りたお金で買ったタイヤとはいえ、トオルは今から行われるバトルで何事も起きないことを静かに祈っていくのだった。




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総合評価:22966/評価:8.46/未完:117話/更新日時:2026年06月19日(金) 18:00 小説情報


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