頭文字D 峠の弾丸 《Project D》 作:ペンギン太郎
今回、新たにリクエストキャラも登場させましたので。よろしくお願いします。
スタート地点
「真希さん…。先程トオルさんにキツい言葉をかけてましたけど…。トオルさんの発言に何か思うところがあったのですか?」
ヒルクライムが行われている真っ只中。スタート地点には、トオルと話を終えたタケルが、トオルに厳しい言葉を投げかけた真希に問いただすと。真希はタケルに顔を向けてこう返す。
「どうってことはねえよ…。あいつが何かと理由をつけて走り屋を辞めようする、あの態度が気に入らなかっただけだ…」
「そうですか?一緒に聞いた僕からすると、トオルさんを説得してる時の真希さんは…ある人物を思い浮かべてるように見えたんですけど…」
「おっと、それ以上の詮索は禁物だ。走り屋なら負けた後、次こそ勝てるように努力すればいいのを…。あいつが中途半端な形で終わらせようとするのが癪に障ったんだよ…」
「……」
真希が峠の方に視線を移し、啓介達が走っている山々に目を向けるが。タケルは思い詰めた顔をする真希を見ては、何も言わずにいるしかなかった。
「斎藤…。少しいいか」
「はい、何でしょうか?」
峠を眺める真希を横目にするタケルに話しかけたのは、プロジェクトDのリーダーである涼介で。涼介は先程まで拓海とダウンヒルについて話終え、タケルにある提案をする。
「今やってるヒルクライムが終わり次第タイムアタックに入るんだが、藤原と啓介がここを攻める前に、お前が挑戦してみるってのはどうだ?」
「僕が、タイムアタックに挑戦…ですか?」
涼介は、拓海達よりも先にもみじラインのタイムアタックに挑戦してみてはどうかとタケルに持ちかけ。それを聞いて意外そうにするタケルだが。涼介はタケルに持ちかけた理由について説明する。
「お前は藤原と末次トオルの走りを後ろから見てるだろ。それを見て何を感じたか…自分なりに考え、自らの走りに繋げてみることだ。そうすれば、お前は二人に一歩近付けるかもしれないからな…」
「……」
涼介が、拓海と啓介のタイムアタックをする前にタケルを走らせ。タケルが先程のバトルで得た経験を活かしてみろとアドバイスする。
それを聞いて何を思い至ったか、タケルは涼介を見つめては口を開く。
「わかりました…。どこまでやれるか未知数ではありますけど、僕なりの走りを実践してみます!!」
「そうか。なら、ヒルクライムの決着がついた後で始めるとしよう…。松橋、ハチロク用のタイヤを載せてるワゴンに、スイスポ用のタイヤがワンセットあるだろ。それを斎藤のスイスポに取り付けてくれ」
「わかりました。すぐ作業に取り掛かりますので、しばらくお待ちください」
涼介がスイスポのタイヤを交換するよう指示を送ったのは、元自衛官という異色の経歴を持つ整備士の松橋七菜だ。
七菜はプロジェクトDが始動するにあたって、自ら協力したいと涼介に申し出るや、ハチロクのメカニックを担当する松本のサポートという役割を与えてもらい。時折、タケルのスイスポをみるなど、積極的に活動していた。
「あ、それでしたら僕もお手伝いしますよ。これでも一応整備士の見習いですので、車のタイヤ交換くらい自分でできなきゃ話になりませんからね」
「そう…じゃあ早速お言葉に甘えさせてもらおうかしら。私はジャッキでスイスポを上げておくから、タケル君は専用タイヤをバンから用意して、持ってきて頂戴」
涼介がメカニックを担当する松橋にスイスポのタイヤ交換をするよう指示を出し。松本がそれを了承する傍ら、タケルも自ら率先してタイヤ交換の作業を手伝うのだった。
ヒルクライムでは、淳郎のR34スカイラインを啓介のFDが後を追い続けていた。
R34はFDよりも重たいボディを擁しながらも、それを物ともしないコーナーワークでもみじラインのコーナーを曲がると。
それを追うFDはR34にパワーで劣るも、啓介は研ぎ澄まされたアクセルワークと、気を散らさないよう集中していきながら、スカイラインに狙いを定め食らいつく。
「(抜けるもんなら、抜いてみな二枚目のボーヤ!!)」
「(いい気になるな!!あんたの弱点、見切った!!)」
走り慣れてる地元でバトルしてるからか、淳郎は走りに余裕を見せるが。啓介は後ろから追っていく中で、淳郎の走りにスキがあると指摘する。
「(立ち上がりのパワーはこっちが勝ってる。ストレートは俺の方が伸びる。よし、行ける!!この1本目、必ず逃げ切れる!!)」
「(ふやけたコーナリングしやがって…。面白味のねえ走りだぜ…。
馬力の差で勝負が決まるヒルクライムにて、パワーで勝る自分の車が後ろのFDに追いつけまいと思い込む淳郎は、自信に満ちあふれるが。啓介はR34の走りを後ろからマジマジと見つめ、タイムアタックでタイムを詰めるだけの走りをするR34を酷評するのだった。
「(
プロジェクトDのヒルクライムを任されるにあたって、涼介から直々に指導を受けた自分が、パワーだけに特化した車に負けるにはいかないと啓介は言うと。目を見開かせ。R34に狙いを定める。
「(見せてやるぜ!!高橋涼介直伝の本物の最速理論を!!)」
スタート地点
「わかった…。現在地はC-13あたりか…」
スタート地点に待機してる史浩が、中継地点にいるメンバーから啓介達がどの区間を走っているか近況報告を受け。涼介に話す。
「苦戦してるのかな。いくら啓介でも、仕掛けるのは難しいかな…」
「意地でも仕掛けていくだろ…。あいつの性格を考えれば…」
史浩が啓介を心配するのを他所に、啓介なら心配ないように言う涼介は、その理由について教えるのだった。
「あいつには冬の間、勉強させてたからな…」
「啓介が勉強?」
「あいつは別に頭が悪いわけじゃないんだ。今はかなりのところまで理論を理解できているんだ…」
啓介がプロジェクトDの活動が行われる前に勉強していたと涼介から聞かされて、意外そうにする史浩だが。
涼介は真剣な顔を見せながらこう結論づける。
「格段に進歩してる…。あのR34は今の啓介が、手こずる程の相手じゃない!!」
啓介なら淳郎のR34に負ける要素は見当たらないとでも言っていく涼介の言葉を、ワゴンの近くで耳を傾けて聞いていたタケルは、クスクスと笑う。
「(へぇ〜。啓介さん…実技だけじゃなく、知識も身につけていたんだ…。見た目からして頭良さそうに見えなかったけど、ちゃんと頭は使える方だったんだね…)」
「ちょっとタケル君。何ひとりでに笑ってるのよ。手止める暇があるなら、ちゃっちゃと作業を済ませない」
「は〜い」
七菜に注意されて、止めていた手を再び動かしていくタケル。
そこからスイスポに新しいタイヤを嵌め、交換を済ませ。空気圧を調節してタイムアタック用に合わせて調整し、セッティングを整えていくのだった。
場所はもみじラインの峠へと戻り。
R34はマフラーから豪快に
「(
コーナーで差を突かれようが、
FDは車体を横にスライドさせ。アウトから一気に巻き込むようにR34をオーバーテイクする。
「(なんだそりゃあ!?)」
「言っただろ…甘えって。
序盤から拮抗した状態で走り続けたヒルクライムは、FDがR34を抜き去っては勝負が決まり。
FDは、更に突き進んで前に飛び出し。淳郎が気が付いた時には、完全に視界から消え去っていたのだった。
ヒルクライムが啓介の勝利で終わった後、タイムアタックが開始され。
ハチロクとFDのタイヤ交換が終えるまでの間、タケルのスイスポがもみじラインのタイムアタックに挑戦する。
「(うわぁ…こうして見る限りだと、こんな走りにくい場所であれだけの突っ込みをしたトオルさんと拓海がどれだけヤバかったか、よくわかる気がするなぁ…)」
もみじラインを走る際、拓海がトオルとバトルする前にラインを覚える為に一緒に走ってきたとはいえ、拓海の後ろについて走っていたからか、タケルは一人で走るこの道路を、ハチロクというガイドラインも無しで自ら走っていく。
「(拓海は、ハチロクの軽量ボディを活かしてこのコースを縦横無尽に攻め込んでいたけど…。僕には拓海みたいにハイスピードで慣性ドリフトして、攻め込むのはできないしなぁ…)」
タケルが乗っているスイスポもハチロクと同じ軽量ボディが特徴の車だが、駆動軸が前輪にあるため、旋回時の限界値が異なり。拓海と似た走りはできないと嘆くタケルだが。タイムアタックする直前に涼介から教わったアドバイスを思い出す。
「(そういえば…。どのコーナーも同じように攻めず、全体の繋がりを考えながら走ってみろって涼介さんは言ってたけど…。それって、立ち上がりを重視しながらコーナーを曲がれってことだよね…)」
涼介から、立ち上がり重視のコーナリングに重点を置いて攻め込むように言われたことを思い出すや。タケルはアクセルを早めに開け、インを取り過ぎないよう走行ラインを工夫して、もみじラインの下りを走っていく。
流石に拓海やトオルがやったような慣性ドリフトは模倣するに至らなかったが、FF特有の突っ込み重視で攻め込み、左足ブレーキで車体のアンダーを消していってはダウンヒルを突き進むのであった。
「おかえりタケル君…。ここを走ってみてどうだったか聞かせてくれる?」
「そうですね…。この峠はタイトな中高速コーナーが多く、曲がり切ってから立ち上がりで加速するのに手間取りましたけど…。立ち上がりを活かしたコーナリングの練習をするには、丁度いいかなと…」
もみじラインのダウンヒルを終えたタケルは、七菜に出迎えては労いの言葉をかけられ。もみじラインの下りを攻めた感想を言うのだった。
「確かに…。この峠は40箇所以上もあるコーナーが特徴で、走り切ろうとするにはかなり走り込まないといけないからね…」
「ええ。それを難なくクリアした拓海や啓介さんがどれほど凄いのか、改めて実感させられましたよ…」
タケルの感想を元に、もみじラインを攻め込むのがどれほどのものかと語っていく七菜だが。それを完璧に走り切るだけじゃなく、ここを地元とするセブンスターリーフのドライバーを相手に、苦戦もせず。勝てた拓海と啓介が凄すぎるとしか、タケルは言葉が出ないのだった。
「それはそうと…。僕が走った時にどれだけのタイムが出たか聞かせてくれます?」
「そうね…。結果的にいえば、完璧というものには程遠いけど…。タケル君のタイムは、末次トオルが出したコースレコードに並んでいるわ」
「本当ですか…!?地元のコースレコードを越せなかったのは残念ですけど…。それなりにタイムを出せたのなら満足する他ないっすよ…!!」
「ええ、私から見ても地元のコースレコードと並べただけでも上出来だと思うわ。後はあの二人がここを走る時にどれだけのタイムが出るかだけど…」
「まあ、拓海や啓介さんのことですから…いきなり地元の走り屋が出した記録を超すなんてことは、ないと思いますよ。僕でさえ、何回か走った後で出たんですから…きっと二人も何回か走り込むと思いますよ」
タケルがそう言っていられたのもほんの一瞬の間だけであった。
タケルが走り終えた後、今度は拓海と啓介が全開タイムトライアルを敢行するが。タケルがタイで並んだ記録を、拓海があっという間に更新させ、啓介も上りで圧倒的なタイムを叩き出し。
もみじラインには、新たなコースレコードが2本生み出される。
プロジェクトDはすぐさま撤収を始めては、もみじラインから消え去っていくのだった。
翌日 栃木県 某ファミレス
「えっ?走り屋辞めちゃうのォ!?」
「そういう約束だったじゃねえかよ。昨日のバトル負けたんだから…」
昨夜、拓海とバトルして完敗したトオルはテーブルの向かい側に座る奈保に走り屋を辞めると言っていくのだが。奈保はその場から立ち上がってトオルの額に手を当て、トオルが本気で言ってるのか疑う。
「どうしちゃったのトオル。昨日の事故で頭を打ったんじゃないの」
「何言ってんだよ。負けたら走り屋辞めてもらうって言い出したの、お前の方だぞ」
「そーだけどォ…。ちょっと意地悪言ってみただけだよー。悔しかったから…」
「いいんだって…。負けてスッキリしたのもそうだけど。プロジェクトDにいる奴から言われて、ようやく気付いたんだ…」
奈保が意地悪のつもりで言っただけだと耳にして、昨日の夜に真希が言っていたことは本当であったと内心驚くトオルだが。トオルは吹っ切れたような顔をして、奈保に思いを告げる。
「今まで地元じゃどんな奴が来ても負けないと思ってたし…。誰よりも走り込んでたし絶対の自信持ってたんだ。それが、他の峠から来て一晩練習した奴にあっさりと負け、俺が苦労して出したコースレコードを塗り替えられたんだろ?ショックといえばショックだけどあそこまで完膚なきまでに叩きのめされると逆に気持ちいいんだよな」
「トオル…」
「そんな顔すんなよ奈保…。二度と車に乗らないって言ってるわけじゃないんだから。限界の走りを追っかけるだけが走り屋じゃねーだろ…。今までとは違った形で好きな車と付き合っていくよ…」
「うん…」
「最高の夜だったな。あんなに興奮したことなかったよ。あいつらに出会えたことをつくづく良かったと思う…。どんな世界でもそうだけど…、頂点に立つ奴はほんの一握りしかいない…。あいつらは多分その一握りに含まれるんじゃないかな…。俺はそうじゃねーってわかってたけど…」
走り屋を別の形で続けていくと奈保に語っていくトオルは、遠くを見据えるかのように呟く。
「プロジェクトD。ホントにすげー奴らだったな」
今まで自分が会ってきた走り屋の中で、一番と言っても過言じゃないほどの奴らだったというトオル。
これからは、彼女と共に新たな走り屋人生を歩み出していくのであった…。
栃木県 那須塩原市 塩那
プロジェクトDがバトルをしたもみじラインからひときわ離れた場所に位置する塩那にて、二台の車が峠の下りを攻め込んでいた。
先頭を走るのは、タケルのスイスポと同じ黄色を基調としたハッチバックボディが特徴で。その後ろを、真っ赤なボディのハッチバックがぴったりと張り付くように追う。
二台は塩那の下りを激しく攻めていっては、甲高い快音を峠に響かせていた。
『プロジェクトD!?ああ…近頃話題になっている群馬のチームな…。来るのかよ、へ〜え…』
「トモさん、週末何やってます?今週はレースないですよね…」
『レースはないけどテストで忙しいよ。おい、俺を引っ張り出そうってつもりじゃないよな?』
「まさか、心配いらないっすよ…。絶対負けないっすよ俺!!
電話の向こうにいる相手に、自信をもって話すのは、塩那をホームコースとする走り屋集団『東堂塾』の二宮大輝だ。
大輝は、先程まで塩那の下りを駆けていた黄色のEK9型のシビック・タイプRのボンネットに腰を下ろしながら、プロジェクトDに負けないと口ずさむが。それを大輝のEK9の横に並べる赤いコルト・ラリーアートのドライバーの赤松雄治が割って入る。
「自信満々に言うのは良いけどよ、大輝。仮にも向こうは東堂塾のOBである須藤さんや浩二さんを負かすほどの奴らなんだぞ…。少しくらいは警戒したらどうだ?」
「知らねえよ…。いくらあの二人がトモさんと同期だといっても、同じ東堂塾でドラテクを教わっておきながら、4WDのランエボに乗り換えたあの二人なんざ、先輩でも何でもないよ…」
「…それはあれか。ホンダ車乗りが多い東堂塾において、三菱のコルトに乗る俺やミラージュに乗っていた浩二さんに対する嫌味と捉えていいんだな…」
ホンダ車以外の車に乗っている自分と浩二を異端者扱いする大輝に苦言を呈する雄治だが。大輝はそんな雄治からの苦言を物ともせず。自分達の元に来るであろうプロジェクトDに集中していくのだった。
新たにブンブク様から頂いたリクエストキャラ赤松 雄治を登場させました。
プロジェクトDでも新たなメカニックキャラも登場させようと思いましたが、既に出ているキャラを活かしたいと思い、拓海と同じハチロク乗りの松橋七菜を続投させてもらいます。
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