「タケルーいるかー!?いるなら返事をしてくれ!!」
イツキが秋名の下りで事故を起こした翌日。仕事を終えた池谷がタケルの家の前に来ては扉を叩いては中から姉の遥香が出てきては応対する。
「どうしたのよ池谷君?慌ただしくして…」
「遥香、すまねえがタケルは今家にいるか?」
「タケルなら朝早くからどっかへ行っては帰ってきてないけどあの子に何かあったの?」
「あいつ、昨日ガムテープデスマッチをやるなんて言い出してはどっかへ飛び出して行きやがったんだ」
「えぇ!?それってハンドルを回す範囲が限られてるっていうバトルのことよね?どうしてタケルがガムテープデスマッチなんて危ないことをすることになったの!?」
「昨日の夜タケルの友達であるイツキがナイトキッズの走り屋にヤラれちまってな。よっぽど腹に据えかねたかイツキの敵を打とうと躍起になってやがるんだ。いくらFFのスイスポに乗ってるとはいえ今のあいつにはガムテープデスマッチは危険過ぎるからな」
「そうだったんだ。とりあえずこのことは政志さんに知らせないと…。きっと政志さんなら何か知っているかもしれないし…」
二人は政志の整備工場へ行ってはタケルについて何か聞いていないか確かめに行くも、政志からは知らないと返されては徒労に終わる。
「もう〜タケルは一体どこへ行ったって言うのよ…。こんな時にいなくなるなんて、お姉ちゃんに心配かけさせないでよぉ…」
「あのバカが。遥香、もしタケルが家に帰ってきたら今夜は絶対秋名の頂上には行かないよう伝えといてくれないか」
「任せて。タケルにはなんとしてでも秋名には向かわせないよう努力するわ」
「すまねえ、俺は今から拓海ん家へ行っては今夜のガムテープデスマッチをやらないよう説得してくる」
池谷はタケルを説得するよう遥香に頼んでは車に乗り、拓海がいるであろう藤原とうふ店へと向かって行く。
「タケル、こんな時にあんたは一体どこに行ったっていうのよ…」
遥香は池谷を見送るやタケルが何処へ行ったか心配しては空を見るのであった。
秋名湖 周辺
ブオオオオン
池谷達がタケルを探しているその頃、タケルは遥香が心配しているのを他所にスイスポに乗っては秋名湖周辺の道路を駆け抜けていた。
「(くそっ、未だにむしゃくしゃする!!あの野郎に一発ぶん殴りたいくらいだ!!)」
イツキがヤラれたのが許せないのか、タケルは怒りを胸の内にしまっては車体を振り回すかのような走りをし。途中、休憩をしようと近くの駐車場にスイスポを停めては自販機で飲み物を購入しては一息つく。
『最低よ…。走り屋なんて…いなくなってしまえばいいのに…』
未だに結衣から言われた言葉がまだ頭の中を過っていたのか。飲み干した缶を握りしめては近くのゴミ箱へ入れ、再び走り込もうとしたその時、
「君、待ちなさい。その状態で車を走らせようとするのは関心できないよ」
スイスポに乗ろうとした矢先に自分を呼び止める人がいたので声のする方に振り向くと、そこには坊主頭の中年が立っていた。
「なんですか?僕は今から走り込もうとしてるのに何故呼び止めたのですか?」
「なに、少しばかし君に話しておきたいことがあってね。見たところ君は荒れているみたいで、そんな状態で車を走られたら危ないと思ったから呼び止めたんだ」
「(この人、さっきまでの走りを見ただけでドライバーの
タケルは坊主頭の中年を只者ではないかのような目で見るや話を聞くことに。
「あなたは一体何者なんですか?走りを一目見ただけで乗っている奴が走り屋だと見抜くなんてどう考えたって普通じゃありませんからね」
「別に大したことじゃないさ、なにせ僕は仕事柄数多くの走り屋というものを相手にしているからね。そうでしょ『秋名の弾丸』君?」
「!? ひょっとしてあなたは僕が秋名の弾丸だと知ってて呼び止めたのですか!?だとしたらあなたは一体…」
「僕かい、僕は只の車好きのおじさんさ。それはそうと君は一体何のために車を走らせているんだい?一歩間違えれば凶器にもなり兼ねないものをさっきからずっと振り回していたよね?いくら走り屋とはいえそればっかしは流石にマズイんじゃないか?」
「くっ…!」
益々疑問を浮かべては不審に思うタケルであったが、闇雲に車を走らせてたのを非難され、中年の男にどう返したらいいのか答えに息詰まる。
「いいかい。車っていうのは使い方一つで自分は勿論、相手の命を奪う凶器でもあるんだ。走り屋として車を走らせるということはそれなりの責任を負わなければならないのを君はどこまで背負うことができるのかな?」
「……」
「僕が言いたいことはただ一つ、何の覚悟も背負わずただ闇雲に車を走らせ、相手をぶち抜いては自分が最速だと誇張したいだけだというのなら、君には車に乗る資格はないよ」
中年の男から言われた強烈な言葉に黙っては聞き入れるしかなかった。
「ま、そういうことだからもし今夜車を走らせるというのならそれなりの覚悟を背負ってはやることだね」
中年の男はそう言い残しては自分が乗ってきたであろう車に乗り込んでは秋名湖を走り去ってゆくのだった。
「(覚悟か…。今まで何も考えず只々車を走らせることしか頭になかった僕には重たい言葉だよ…)」
秋名山 頂上
秋名山ではナイトキッズが呼びかけたか、今夜のガムテープデスマッチを観ようと大勢のギャラリーが集まっていた。
「結構集まってるなァ…」
「あんまりギャラリーが多いと困るぜ。俺達は拓海達に止めるよう説得に来てるからな」
池谷は何が何でもガムテープデスマッチをやらせないようと考えてはいたが、あまりにものギャラリーの多さに焦ってはいた。
『来たぞォ、ナイトキッズだ!!』
ギャラリーの一人が声高に叫ぶや、麓からEG6を先頭にナイトキッズの車が上がってきてはスタート地点前でサイドターンし、池谷達の前で車を停める。
「なぁんだノロマのS13の兄ちゃんじゃねえか、ハチロクはどうした?」
EG6からは慎吾が出てきては開口一番に池谷を馬鹿にするような発言をしては挑発する。
「くっ…!!」
「構うな」
健二が侮辱をしてきた慎吾に反抗するが、相手にしないよう池谷に制され。池谷は麓を見ては慎吾に言う。
「拓海はまだかな」
「チッ…」
「もうそろそろ時間だ…。来てもいい頃だけど…」
健二が慌ただしく見るや、麓からヘッドライトを灯しては上ってくる車がいた。
『来たぞォ!!秋名の弾丸だ!!』
ギャラリーの一人がまた叫んでは麓からM16Aの
スタート地点に着いたスイスポはEG6の横に車を並べ、中からタケルが降りては池谷達のいる方へ足を運ぶ。
「タケル!来て早々聞いておくが、お前本当にあいつとやる気なのか?」
「えぇ勿論。そうじゃなきゃ最初からここに来たりはしませんよ」
タケルはナイトキッズがいる方向へ視線を移しては慎吾を忌々しげに睨みつけ、すぐさま視線を池谷達の方へ戻す。
「なぁ、拓海はまだここに着てないんだが何か聞いてないのか?」
「拓海ですか?あいつなら今頃…僕ん家でおねんねしてますよ」
「「はぁ?」」
池谷達はタケルの返答に何が何だかわからないと言った顔をするが、タケルは拓海が来ない理由を二人に説明をするのだった。
「どうしたんだ遥香、急に呼び出してはこんなとこに連れてきてよ?」
「すみません政志さん。実は…さっきからずっと物置の方から変な音がしましたのでちょっと見てもらおうと」
タケルが秋名山に着いたその頃、タケルの自宅では遥香が政志を呼んでは家の裏にある物置に連れてっては頼み事をしていた。
「変な音だぁ?まさか物置に泥棒が隠れてるなんて言うんじゃ…」
ガタガタ(物置からする音)
政志は遥香の言う事をにわかに信じ難いような顔を見せるが、家の裏にある物置から不審な音が響いては表情を変える。
「お、おい…。あん中に一体何を入れたかわかるか?」
「し、知りませんよ!そもそもあの物置には箒やバケツなどの小道具しか入れてないんですからあんな音がすること自体信じられないですよ…」
「そうか。おしっ、俺がちょっくら中を見てくるからお前は後ろに下がってな」
政志が物置の前に来ては恐る恐る戸を開けようとしたその時だ。
ガララ(物置の戸を開ける音)
ドサッ
「んー!!んー!!」
「うおっ!?中からなんか出てきたぞ!!あれ?こいつは確か…」
「た、拓海君!?どうして拓海君がうちの物置に入っていたの!?」
政志が物置の戸を開けると同時に中から出てきたのはなんと今夜のガムテープデスマッチに挑もうとした藤原拓海であった。
拓海は両手足をロープで縛られては猿轡をされており。遥香が拓海の縄を解いては事情を聞く。
「ぷはぁ、助かったァ…あの野郎、よくも俺をこんなとこに押し込んでくれたな…!!」
「ねぇ拓海君。どうしてあなたがうちの物置に入っていたか聞かせてくれる?」
「それはこっちが聞きたいくらいですよ!俺、さっきタケルと会った際あいつに後ろから殴られて、気が付いたらこん中に居たんですから…」
「タケルが!?どうしてうちの弟がそんなことを…」
「ん?なぁ遥香、こいつの後ろにビラが貼ってあるぞ。それもお前宛にだ」
政志に言われては拓海の背中を見てると一枚のビラが貼ってあり。それを手にとっては書いてあるメッセージを読み上げる。
「えーっと何々、『お姉ちゃんへ、拓海は任せたから後は頼む BYタケル』って。まさか…拓海君の代わりにガムテープデスマッチを挑む為にここに監禁してたの…。も〜う、それならそうと早めに言ってよぉ!!お姉ちゃん本当にドキドキしたんだからぁ!!」
遥香は弟のタケルが拓海をガムテープデスマッチに行かせないよう物置に監禁したとわかるや、タケルが向かって行ったであろう秋名山の方角へと声を高々に叫んでは弟に文句を言うのであった。
「なんだってぇ!?拓海は自宅の物置に監禁してあるから秋名には来ないって!?」
「さっき拓海と会った際、秋名へ行こうとしてたのを止めたんですが聞く耳を持たずでしたので強硬手段を取らせてもらったわけなんです」
「お前なァ…。いくら拓海を行かせない為とはいえそればっかしはやり過ぎだろうが」
「でもまぁお陰で拓海がガムテープデスマッチを受けずに済んだからいいけどよォ」
池谷達は拓海を家の物置に押し込んでは監禁し、秋名へ行かせないようにしたと聞いてはホッとする反面無茶苦茶なやり方をしたタケルに呆れるしかなかった。
「おいそこのガキ。秋名のハチロクはどうした?まさかバトルするのにビビってここに来ないって言うんじゃないだろうなァ?」
「まさか、ハチロクは別に逃げたじゃわけじゃありませんよ。お前如きの相手するのに来る必要は無いから僕に任せたって言ってましたからね」
「なんだと?」
ナイトキッズの慎吾がハチロクが来ないのかと嫌らし気に聞いてきた為タケルは慎吾の前に立っては返す。
「だってそうじゃないですか。ハチロクが今まで相手をしてきたレッドサンズの高橋啓介やお宅のリーダーの中里毅は正々堂々とバトルしてはハチロクに負けたんですよ。それなのにお前はハチロクと真っ向から挑まず自分だけが有利になるようなバトルを仕組んでは勝負を仕掛けに来たんですからね」
「けっ、なんだよぉ。結局は俺に負けるのが怖くて逃げただけじゃねぇか。肩透かししやがって…」
「あ、そうそうハチロクはこうも言ってましたよ。『卑怯な手を使わないと俺には勝てない奴に負けても別に悔しくない』ってね。それってナイトキッズはハチロクからすれば雑魚としか見られてないってことじゃないですか?ぷぷっ、ダサいですねぇホント…」
「クッ…!この野郎が…舐めた口を利きやがって…!!」
慎吾はタケルに煽られ顔を真っ赤にしては怒り寸前になっており。後方に控えているナイトキッズもタケルから自分達がバカにされてるような言い方をされては暴動寸前にまで達していた。
因みに拓海はそんなことは一言も言っておらずタケルの言ったことは真っ赤な嘘で、それに引っかかる慎吾を見ては小馬鹿にする。
「いいだろう。秋名のハチロクがここに来てねぇの残念だが、先にテメェをぶっ潰しては大見栄切ってはテメェを送り込んだ秋名のハチロクに恥かかせてやるぜ!!」
「(お〜お見事に引っ掛かりやがってやんの。こっちの誘導に引っかかてくれたのはいいが相手はEG6。FFでそれなりに速い車であるのに変わりはないから用心はしておかないとね)」
そんなわけで節折もあってか。バトルの内容は変更され、スイスポ対EG6によるガムテープデスマッチが行われることになった。
『なぁ聞いたか。今夜のバトル…ハチロクに代わって秋名の弾丸が走るみたいだぞ』
『ってことはスイスポとEG6によるFFの下り最速を決めるってか。それはそれで面白そうじゃねぇか!』
『でもよぉ、聞いた話じゃ二台は今日ガムテープデスマッチをやると言ってたみたいだぞ。ステアリングを固定した状態でバトルするなんて危なっかしいしな』
観戦に来ていたギャラリーは秋名のハチロクか来てないのにガッカリするも、ハチロクに次いでは下り最速を誇るタケルのスイスポのバトルに期待を寄せるのだった。
「お前、本当にわかっててやる気なのか?ステアリングの舵角が大きく制限されるこのルールはFFが有利とはいえ、相手は練習をしてきてるんだ。一つのワンミスで一気に谷底に落ちちまうかもしれないんだぞ」
「大丈夫ですよ池谷さん。僕はあんなカスに負ける気は更々ありませんからご心配なく」
「タケル…」
池谷は準備を終え、右手とステアリングがガムテープで縛られているタケルにやらないよう止めに入るがタケルは一向に引かずにいた。
「おい弾丸、まさかここまで来ておきながら逃げるって言うんじゃねぇだろうな?あぁん…?」
慎吾は何がなんでもタケルを秋名の下りで潰そうと躍起になっているが、それを物ともせず面と向かっては慎吾に言う。
「そんなつもりはハナからありませんよ。今にもお前をぶち負かしてはイツキの前で謝らせたいと思ってますからね」
「けっ、その気でいられるのも今のうちだぜ。所詮スズキの作るスイスポなんざシビックの敵じゃねぇからな」
「(カチン!)言ってくれますね。お前から見ればスイスポはちゃちに見えるかもしれないけど、こいつを作るまでにどれだけの苦労を重ねたか、このバトルで見せつけてやるからね!!」
両者は互いに罵倒しながらも準備を終えるや、スターターが前に立っては。今にも出れるようエンジンを蒸していく。
「カウント行くぞォッ!!5!!4!!3!!2!!1!!GO!!」
カウントが切られると同時にスイスポとEG6はスタートダッシュをしてはガムテープデスマッチを開始した。
駆動方式が同じFFであったからか両者は互角に走り出しては秋名の峠を駆け抜ける。
「本当にスタートしちまいやがった…ァ」
「どうする池谷、ここで待っているか?」
「いや、待っていても嫌な予感がする、いくらタケルの車がFFとはいえ無理にでも止めるべきだったんじゃねぇか…。俺らも後を追ってみよう」
「でもよぉ池谷、追ったって追いつけっこないぞ」
「別に追いつこうとは思っちゃういないけどさ…。万が一タケルが事故ってイツキみたいに怪我をするようなことになったら少しでも早く助けてやんなきゃな…」
池谷達はタケルがもし事故を起こしたら救出しようと遅れては車を出し、二台の後を追っていくのだった。
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