今回から碓氷峠へ舞台は変わりますが何卒宜しくお願いしますね。
「「「えぇぇー!?」」」
「そんなァ…初対面の女の子がいきなり電話番号を教えてくれたって!?」
池谷が真子から電話番号を貰ったと聞いては驚く拓海達であったが、その話が余程信じられなかったのか池谷を疑う。
「そんな信じられっかよォ。なんかオチがついてんだオチがさ」
「そうっすよ池谷先輩!!世の中ねそんな甘いモンじゃないっすよ!!俺なんかさぁ…俺なんか…くぅ…走り屋に女なんか要らないっすよォ…」
イツキは先日沙織に振られたのをまだ引きずっており涙目になっては拓海に寄り添う。
「第一オチがなくちゃさ、池谷らしくねえよ」
「俺らしくねえってどういう意味だよ健二。そんなに俺をコケにしたいのか?」
「いやそういうわけじゃねえけど、話がうますぎるだろ?」
「ヤダねえ幸せを妬むようなその発想は」
池谷の話が余程信じられないのか嫌らしげに言う健二だが、池谷はフンと鼻を鳴らしては真子と出会った時のことを思い出しては言う。
「あの風に靡く栗色の長い髪、俺の方を振り向いた時の濡れた瞳。きっと彼女は、真面目に働く俺のために神様が地上に遣わしてた天使じゃないかと思ってるんだ」
「「「だぁぁ」」」
池谷の口から似合わない台詞がでるや拓海達はズッコケる。
「明日の日曜日は、真子ちゃんに会いに軽井沢へ…。くーっ!! さ、お仕事お仕事」
池谷は真子とデートできることにトリップ状態になっては似合わないスキップを踏みながら仕事に励むのだった。
「あのさ、その子がどんな子か俺達もこっそりついて行ってみようぜ?」
「行きましょう、行きましょう。どんな子かこの目で確かめて見ましょう!」
「でも、池谷先輩にバレたらどうするんですか?」
「心配すんな、今の池谷にそんな余裕あるわけないだろ。どんな顔してるかじっくりと拝ませてもらおうぜ。噂の真子ちゃんってやらを…」
健二とイツキが後をつけようと考えてる中拓海一人だけが池谷の尾行をするのき乗り気ではなかったが、健二はバレなければ問題ないと大丈夫そうに言っては二人についてくるように施す。
「おいおい、池谷の邪魔をするんじゃないぞ」
「邪魔なんかしませんよ。先輩が振られた時に一緒に泣いてあげるんです。熱い友情っすよ」
年長者である祐一は池谷に迷惑をかけないよう注意するも、イツキは池谷がまだ振られたと決まってないにも関わらずフォローをすると言ってはついてこうとするのだった。
上信越自動車道
「ごめんねタケル君、軽井沢へ行くのに車の運転をしてもらって」
「平気平気。車を走らせるのは好きだからこれくらいどうってことないよ」
日曜日の朝、タケルは彼女である結衣を横に乗せてはスイスポを走らせ軽井沢へとデートに向かっている真っ最中で。結衣は車を運転するタケルを微笑ましい顔で見つめては言う。
「ふふっ、普段のタケル君もそうだけどやっぱり車を走らせてる時の姿が一番似合っているね。もし私が運転免許を取ったら車の走らせ方を教えてくれる?」
「全然構わないよ。いやぁ~結衣さんから運転の練習を頼まれるとは、でもそういうのって普通は親が横に乗っては教えるんじゃないの?」
「うん、私のお父さん仕事の都合で中々休みが取れなくてね。お母さんも車の運転はあまり得意じゃないって言ってたわ」
「なるほどね、まぁ僕自身免許を取ってまだ数ヶ月だから結衣さんとは然程変わらないけど」
「でもタケル君、走り屋をしているから車の運転は得意なんでしょ。それに車に関してはとても詳しいって拓海君やイツキ君が言ってたんだから頼りにさせてもらうわね」
「そこまで言われちゃあますます断れないなぁ、ははっ…ん?」
結衣から頼られてることに満更でもなさそうにしては車を運転し高速道路を走っていくタケルであったが、自分達の目の前を走る車を見ては顔付きを変える。
「どうしたのタケル君?」
「いや、目の前を走っている車が一個先を行く車を尾行しているから少し気になったんだ」
「え?本当だ。なんかやってることがストーカーみたいで怖いわ」
「あれ?あの180は確か健二さんが乗ってるヤツじゃなかったか。それに前を走ってるのは池谷さんのS13だし。どうして健二さんが池谷さんの後を追っているんだ…?」
自分達の前を走ってる180は先を行くS13を追っては尾行をしており、その様子を見たタケルは何故健二が池谷の後を追うような走りをするのか疑問を浮かべるのだった。
「へへっ、どうせ本人が言うほど可愛い筈ねえけど。あいつ大袈裟なことがあっからなァ思い込みが激しいしさァ」
タケル達の前を走る180は健二が運転しており。拓海とイツキを乗せては池谷の後を追っている真っ最中であった。
「中学の時だったと思うけどさァ、あいつと秋名湖に釣りに行ったことがあったんだ。二人ともちっとも釣れなくて帰ろうとした時やっと俺が小さいの釣れたんだ。そしたら池谷の奴興奮して『うわーっでけえーっ』と大騒ぎ。確かこれくらいのサイズだったかな。知らない親父とかも態々見に来るしさ~あの時はホント恥ずかしかったぜ」
健二がどれくらいの大きさの魚を釣ったかを拓海達に教えては当時の思い出を懐かしそうに語る。
大体人差し指と中指の間に収まるくらいであった。
「本当大袈裟な奴なんだよ池谷ってよぉ…」
「あ…健二先輩、ヨコヨコ」
「へ?」
拓海に言われた健二が横を見てみるや、気付かない内に前に出てしまっては池谷の横に立ち並んでしまい。池谷からはジト目で見られては後をつけていたのがバレてしまうのだった。
「げぇしまったァ!!走るんに夢中になってたら足に力が入って尾行するのに追いついちまった…」
「…結衣さん、悪いけど途中寄り道してもいい?」
「いいわよ。私もどうして後をつけていたのか知りたいしね」
後をつけていたのがバレてしまった健二達は途中のS.Aに寄っては尾行した理由を説明することになり。タケルはその後を追っては話を聞こうとした。
横川S.A
「すまん池谷!!真子ちゃんがどんな子か見たかっただけだから勘弁してくれよ」
「ホントそれだけっす。デートの邪魔するつもりは全然ないっすから」
「なぁ怒るなよ。俺達、次のインターでUターンするからさ」
池谷の前で手を合わせ頭を下げては尾行したのを謝る健二だが、池谷は後をつけてきたのがまだ許せかったか頭にきている。
「ふぅ〜ん、三人は池谷さんが会う予定の真子さんがどんな人か知りたくてついてきたんだね」
「タケル、どうしてお前がここに?まさかお前も俺の跡をついてきたのか?」
「違いますよ。僕は結衣さんと一緒に軽井沢に行こうとしたのを偶々池谷さん達が走ってるのを見かけては後を追ってきただけです」
「そうだったのか」
「まあそれはいいとして。そこの御三方、いくら池谷さんがデートする相手が知りたいとはいえ跡をつけるなんて真似はあんまりじゃないっすか?」
池谷の後をついてきた拓海達に目をやるタケルだが、その眼差しは完全に軽蔑するように見て取れる。
「そうは言うけどさタケル、今まで女性とは縁がなかったあの池谷先輩が電話番号を貰えるなんて話にわかに信じられないだろ?それに池谷先輩がいう真子さんっていう人がお前は気にならないのか?」
「あのさぁイツキ、僕はその時池谷さんと一緒にいたんだから真子さんと会ったことがあるけどめちゃくちゃ綺麗な人だったよ」
「そうよ。池谷さんが親切だからってそれはいくらなんでも言い過ぎよイツキ君」
タケルと結衣は池谷の味方になってはイツキに注意するも、池谷はここで怒っても無駄だと分かったのか観念してはついてきた拓海達に言う。
「しょうがねえな、いいよ帰らなくても紹介するだけなら別に構わねーけどさ」
「いいのか!?」
「ただし、そっから先はついてくるなよ。本気で怒るからな」
念の為、尾行しないよう健二達に釘を指す池谷だが健二とイツキは真子を紹介してもらえると知ってはガッツポーズする。
「タケル君ちょっといい」
「ん、なんだい結衣さん?」
「真子さんと会ったことがあるって言ってたけどその人とはどう知り合ったの?」
「一昨日池谷さんと一緒に横川の釜めしを食べに安中市に行った帰りに軽自動車が故障しては立ち往生していた真子さんを見かけては二人で車を直してね。そのお礼に電話番号を教えてもらったってわけなんだ」
「そうだったの。困っている人を助けてあげるなんてタケル君、優しいんだね」
「そうか?僕はただ助けたいと思って助けただけなんだけど…」
「(いいよなタケルの奴は、あんな可愛い彼女と楽しそうに話しててよ)」
「(そうっすね。あいつ、ここのところ調子に乗ってるのか走り屋として自覚が足らないっすよ。拓海もそう思わないか?)」
「(俺は別にどっちでもいい気がするけどな…)」
結衣とイチャイチャするタケルを見た健二とイツキは羨ましいと思ったか楽しそうな顔をしているタケルを妬むのだった。
「ってなわけで…こいつら俺の友達なんです」
池谷が健二達に真子と会わせては紹介していくと真子の整った顔を見た拓海達は真子がとてつもない美人と遭遇したような顔をしては呆然とする。
「はじめまして佐藤真子です」
「ど…どうも…」
「こ…こんにちはっす…」
「わぁ…とても綺麗な人だわ…」
結衣も真子を見てはあまりにもの美人故に見惚れてしまい。真子から挨拶された三人は冷や汗をかいては頭を下げた。
「やぁ真子さん。今日も相変わらず素敵ですね」
「久しぶりねタケル君、この間はタケル君と池谷さんのおかげで本当助かったわ」
「いやぁ…あの時は別に大したことをしたわけじゃありませんから」
タケルは前に一度真子と会っている為、初対面である拓海達とは打って変わっては親しげに話していく。
「それはそうと隣にいる人はタケル君のお知り合い?」
「はじめまして真子さん。私タケル君のお友達で結衣といいます。今後ともよろしくお願いしますね」
「よろしくね結衣さん。まさかタケル君にこんな可愛いらしいガールフレンドがいたなんてね」
「そんな…可愛いだなんて…私なんか真子さん程綺麗じゃありませんから」
真子から褒められた結衣は顔を赤らめては照れるも内心嬉しそうにしていた。
「それじゃあ真子ちゃん、自己紹介も済ましたからそろそろ行こうか」
「えぇ、またねタケル君、結衣さん」
「はい、池谷さんとのデート楽しんできてくださいね」
ちょっとした自己紹介を済ましては池谷が真子をエスコートしては車に乗せてはタケル達の前を走り去っていき。二人を見送った後で拓海達は互いに顔をつねっては夢じゃないか確かめ合うが紛れもない現実に変わりはなかったのであった。
「信じられねーすげえショック…。なんで池谷にあんな可愛い子が…」
「走り屋に女は要らないっすよ健二先輩。一緒に泣きましょう」
「なんだそれは?俺には彼女ができないってことか!?」
「いやぁジョークですよジョーク!!」
「折角真子さんを紹介してもらったっていうのに何やってんだか…」
健二はイツキからのフォローを嫌味だと思ったか、イツキの首を絞め始め。それを見ては呆れるのであった。
「タケル君、池谷さん達も行ったことだしこの後どうする?」
「う〜ん…折角軽井沢に来たんだから適当に散策しては観光でもしてみるか」
「それなら私、軽井沢で行ってみたいところがあるんだけどついてきてくれる?」
「いいよ。それじゃ早速結衣さんが行きたいとこへ行ってみようか。じゃあ御三方、僕らはここで失礼させてもらいますね」
タケルは結衣と共に軽井沢を観光することにしてはその場を離れていき、残されたのは拓海をはじめとする男三人だけとなった。
「健二先輩。タケル達も行っちゃいましたしこれからどうします?」
「はぁ、そうだなぁ。男三人だけでウロチョロするとこじゃねえしな、この時期の軽井沢なんか…碓氷峠でも行ってみっか」
周りはカップルでひしめいては居心地が悪いと感じたか、健二は拓海達を連れては軽井沢から然程遠くない碓氷峠へ行こうと決めるのだった。
その頃、池谷は真子を隣に乗せては颯爽と走らせてはどう話したらいいのか息詰まるも話を振る。
「真子ちゃんってどういう車が好きなの?」
「好きっていうか憧れてたのは一個前のRX-7なんですよ」
「FCかぁ、へぇ~渋い趣味だよそりゃあ」
真子が憧れていた車FC型のRX-7はハチロクと同じ旧車だが、一部の走り屋からは絶大な人気を誇る一台で今でも現役で乗っている走り屋がいる程でもある。
「池谷さんって走り屋でしょ?」
「い、いやぁ…。やっぱわかっちゃう?普段は一般のドライバーと同じにしてるつもりなんだけどさ」
「だって池谷さんは地元ではよく車を走り回しているとタケル君も言ってましたから」
「あ、そうなの、タケルから聞いてたのですかははっ(あいつ、余計なことを…!!)」
池谷はこの場にいないタケルに対し恨み節を呟く。
「真子ちゃんはその、走り屋の男をどう思ってるの?」
「いいと思いますよ。私も車好きだから」
「えっ、そう!?」
「やっぱり走り屋やってる人って普通の人よりも運転が上手いじゃないですか。いい車はお金持ってれば買えるけどテクニックはお金持ってても買えないもの。私は高い外車とか乗り回してる人よりいざという時にテクニックを持ってる人の方がずっと素敵だと思います」
「(ええ子や、理想の女の子だ…)」
褒めの言葉が出てきては嬉しかったのか、池谷はじーんと涙を流しては真子に感動するのだった。
池谷が真子とドライブデートをしているその頃、拓海達と別れたタケルは結衣と共に軽井沢周辺にある教会に訪れては楽しいひと時を過ごしていた。
「わぁ〜軽井沢にある教会は趣があって素敵だね。タケル君もそう思わない?」
「まぁ確かにこの辺にはこういった古い建築物がいっぱいあるからか歴史を感じるけど、どうしてこんなにも教会があるんだろうなぁ〜」
「それはね、イギリスから来た宣教師が避暑地として軽井沢に訪れたのが始まりらしくてね、そこで別荘を建てては結婚式も挙げようとして造ったのがきっかけで、軽井沢には教会が沢山できたんだって高橋先生から教わったわ」
「高橋先生?」
「高橋先生っていうのは今私の家庭教師をしてくれている人でね。高校の友達の従兄弟にあたるんだけど群馬大学の医学部に在籍してるからかとても頭がいいの。それに高橋先生のお家に何度か招待されたことがあるんだけど、お父さんが高崎にある病院の医院長をしてるからかとても大きい家に住んでいて将来はお父さんの跡取りとしてお医者さんになるって言ってたわ」
「うひゃぁ…。結衣さんの話を聞く限りじゃ高橋先生って人は凄い金持ちだってことが手に取るようにわかるなぁ…。まぁその手の奴に限ってベンツやらフェラーリに乗ってる姿が目に浮かぶよ」
結衣から聞いた高橋先生の人物像を想像するが、病院の跡取り息子という立場だからか高級車を乗り回すイメージしか思い浮かべなかった。
「そうでもないわ。前に高橋先生が乗ってる車を見たことがあるんだけど高橋先生は結構古い国産車に乗っていたわよ」
「国産の旧車に乗ってる?その車の車種はなんなのかわかる?」
「う〜ん車の種類はわからないけど確か高橋先生は乗ってる車をFCって呼んでたよ」
「FC?ひょっとしてマツダのRX-7のことを言ってるのか?確かにFCは古い車だけど今でも走ってるのはたまに見かけるしね。ん?この組み合わせ…前にどっかで聞いたような…」
結衣から聞いた高橋先生という人物に心当たりがあったのか、タケルは考えていくも結衣が何か思いついたかタケルに話しかけてきた。
「タケル君、ここまで付き合ってくれたお礼と言ってはなんだけど次はタケル君が行きたい場所について行ってあげるわ」
「僕が行きたいとこ?う〜ん僕が軽井沢に来て一番行きたい場所といったら碓氷峠しかないんだけどなぁ…」
「碓氷峠?そこって秋名山と同じように走り屋がよく走りに来る場所なの?」
「そうだよ。碓氷峠は走り屋御用達の走りスポットってのもあるんだけどなんといってもあのドリキンが走り屋時代に走っていた峠として一躍有名なんだ。ドリキンっていうのは日本にドリフトブームを広めたレーシングドライバー土屋圭市さんの愛称でね、その人は僕達走り屋にとって憧れの存在なんだ」
「ふぅ〜んそんな凄い人が走ってたっていうのならタケル君が行きたくなるのも当然ね。じゃあ早速その碓氷峠ってとこへ行きましょう」
「あ、ちょっと待って。行く前にスイスポは軽井沢まで来るのに結構走っては残りのガソリンが半分以下しかないから碓氷峠へ行く前にスタンドに寄ってからにしようか」
二人は次の行き先を碓氷峠へと決めるや乗ってきたスイスポに給油しようとスタンドに寄ろうとすることにした。
「あの、池谷さんは…」
「あ、はい」
「男の人から見て、峠が好きで走り屋みたいな真似事をする女の子がいたらどう思います?」
場面は再び池谷へと戻り、池谷は真子からの質問に一間空けては言う。
「女の走り屋かァ、いいんじゃない…そんなの全然オッケー!?最高だよ女の走り屋なんてかえって話せるって感じ?」
「そうですかァ!!」
「(そうか…わかったぞ…。真子ちゃんは走り屋になりたいと思ってるんだな。それで憧れる車がFCってわけか)」
真子が将来は走り屋になるのではと勘繰る池谷だったが、それが後に大きな引き金となるのに気付かないでいた。
「よォタケル、お前もガソリンを入れに来たのか」
「あれ、健二さん達もここにいるってことは碓氷峠に行ってたんですよね?」
碓氷峠へ行く前にスイスポにガソリンを入れようとスタンドに寄ってみると、そこには健二を筆頭に拓海とイツキもいてはいつものメンバーが揃い踏みする。
「ああ、俺達もつい先ほどまで走ってたんだが思ってた以上にハードなワインディングロードだったぜ。何しろ直線と言える程の直線なんてなかったしそのほとんどがコーナーばっかりで道幅も狭かったからな」
「ですよねぇ、碓氷峠は秋名とは似ても似つかない感じがしたっすよ」
「そうか、二人の話から察するに碓氷峠は高いドラテクが要求される程テクニカルなコースってわけなんですね。これは少し骨が折れそうな気がするなぁ」
「ところでよタケル、お前碓氷峠最速の走り屋が誰なのか知ってっか」
「いえ、まったく持ってご存知ありませんけど、健二さんは碓氷峠で速い走り屋を知っているのですか?」
「いやな、俺もつい先ほど知ったんだがどうやら碓氷峠最速の走り屋はブルーのシルエイティみたいだぜ」
「シルエイティ?つまり健二さんの180と同じ2リッターのターボ車ってわけですね」
「そういうことだ。しかも驚くなよタケル、ここのスタンドの店員から聞いた話だとその走り屋は女の子だって言ってたぜ」
「えぇぇぇ!?碓氷峠最速の走り屋が女の子だって言うのですか!?」
健二から碓氷峠最速の走り屋が女だと聞いては意表を突かれたのかタケルは驚きを隠せずにいた。
「タケル君、シルエイティってどういう車なの?」
「シルエイティっていうのは日産の180にシルビアのフロントをくっつけた車のことを言うんだ。元々シルビアと180は兄弟車で180のリトラクタブルヘッドライトのフロントパーツの費用を浮かせるためにシルビアのフロントパーツを合わせて作ったのがシルエイティって車なんだ」
「ふう~ん。じゃあその逆のパターンもあるってことよね」
「そうだよ。シルビアに180のフロントをくっつけたワンビアって車があるんだけど、ただでさえ費用が高いリトラクタブルのフロントパーツをくっつけたはいいけど重さが増しては扱いにくく、峠を攻めるのにはあまり向いてないと評判が良くないんだなぁこれが」
「そのシルエイティのドライバーが碓氷峠最速の走り屋でしかも女の子ってんだからやっぱし見てみたいよな、お前もちょっくら見てみたいと思わねえか」
「勿論興味はありますよ!で、そのシルエイティはいつになったら見れるかわかります?」
「さっき聞いた話じゃ夜まで待てば碓氷峠で見られるかもしれねえと聞いてるぜ、でもよ、そのシルエイティは地元じゃ誰も勝てない程めちゃくちゃ速いって噂だぜ」
「なんですと!?地元じゃ負けなしでそれでもって乗っている車がシルエイティでドライバーは女の子。こんなに凄い組み合わせの走り屋が碓氷峠にいたとは…」
「ねぇ、女性の走り屋ってそんなに珍しいことなの?」
「凄いも何も、女性は男性と比べたら肉体的に劣るからね、あまり数が少ないけど女性の走り屋で腕の立つ凄い走り屋もいるにはいるんだ」
「そうなんだ、私も少しばかし女性の走り屋が乗るシルエイティって車に興味が湧いてきたから一度観に行きましょう」
「いいのか?あまり夜遅くまでいたら家族が心配したりするんじゃ」
「全然平気よ。私のお父さん今日は仕事が遅くて家にはいないし、お母さんも事情を説明したら納得してくれるから問題ないわ」
「よし、じゃあ今晩は碓氷峠最速のシルエイティとやらを観に行くとするか。このことは後で池谷にも教えてやらねえとな」
そんなわけでタケル達は碓氷峠最速の走り屋であるシルエイティを一目観ようと夜遅くまで軽井沢に残ろうと決めるのであった。
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