頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 いよいよスイスポとプジョーのバトルに突入します。
 前編後編と分けては掛かるかもしれませんが、何卒お付き合いお願いしますね。


ACT.47 スイスポVSプジョー 前編

 鈴木自動車工場

 

 

 「久しぶり政志、あなたから勝の息子のタケル君について聞きたいんだけどいいかしら」

 

 「おぅ陽子か、久々の再会のところ申しわけないが、今からそのタケルに呼ばれてはちょっくら出かけるから後にしてくれないか」

 

 「出かけるって、こんな時間にどこへ行くっていうのよ?」

 

 

 タケルについて政志から聞こうとした陽子は政志がいるであろう鈴木自動車工場の前に着いては中へと入るや、そこでは政志がレッカー車を用意しては工場を出ようとしていたところであった。

 

 

 「それがよぉ、ついさっきプジョー・205T16っていう古い車と秋名でバトルするから念の為レッカーを麓の駐車場まで持ってきてくれと頼まれてな。それでこいつに乗って今から行こうしてたところなんだよ」

 

 「プジョー・205T16ですって!?まさか、勝の息子がうちのレオとバトルをするっていうの!?」

 

 「なんだ、タケルが勝負する相手っていうのはお前んとこのガキだったのか。あいつとお前の息子の間に何があったか知らねえが頼まれたからには行ってやらねえとな。なんならお前も一緒に来るか?」

 

 「勿論同行させてもらうわ。レオのプジョーは主人がラリーで乗っていたのをそのまま使っているんだから今の状態(まま)だとどうなるか分からないからね」

 

 

 政志の運転するレッカー車に相乗りした陽子はタケル達がバトルしてるであろう秋名山へと政志と共に向かうことにするのだった。

 

 

 

 

 

 秋名山

 

 

 「(バトルする前に池谷さんからレオのキャリアについて粗方聞いたけど、フランスでラリーをやっていただけあってか、走りに無駄が一切無い。これがモータースポーツの聖地であるフランスで走ってきた走り屋の実力だというのか!!)」

 

 

 タケルのスイスポとレオのプジョー・205T16に先行後追い形式のダウンヒルバトルが開始され、先行を取ったスイスポは秋名のダウンヒルをガンガン突き進むが、後続するプジョー・205T16に食いつかれては引き離せないでいた。

 

 レオが乗っているプジョー・205T16はコクピットの後ろに1.8リッター直列4気筒DOHC16バルブのXU8T型エンジンを搭載。ラリーなどで使われるワークスマシンとは異なり公道(ストリート)仕様となっているためラリーなどで走るハイパワーには及ばないが、ドイツのKKK製のターボチャージャーにボッシュ製のKジェトロニック(機械燃料噴射装置)を載せては200馬力もの出力を出し。

 シャシーは通常はFFの205GTIとは異なりミッドシップマウントされフルタイム4WDにしては、ビスカスカップリングを組み合わせたセンターデフによって駆動配分が33︰67となっており。

 対してタケルが駆るZC31S型スイフトスポーツは専用設計した1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブのM16型(VVTバルブ機構)エンジンを載せノーマルだと最高出力125馬力とパワーは低めではあるが、ボディ剛性が強化された車体に欧州にてテストを重ねては作り上げたシャシーを施し、ハンドリング性能に優れては欧州車にも匹敵する出来で。

 そんな高性能ホットハッチである二台が今、秋名の峠を下ってはラリーさながらの壮絶なバトルを繰り広げるのだった。

 

 

 「(後ろから僕の走りを見てみたいと言っていたけどその目的はライン取りを模写(トレース)しては自分のものにすることだ。いくら腕が立つとはいえここでの走り込みの差ではこっちが有利だから走り慣れてる僕の後ろについてはそっからなぞるように走れば秋名を攻略しやすくなるしね)」

 

 

 レオが自身のライン取りを真似する為に後追いを選んだと推測してはどう攻めていこうか考えるも、そのすぐ先には次のコーナーが立ちはだかり。

 タケルは外側からコーナーに突入し、入る手前で減速してはシフトを3速から2速に落としテールスライドを起こしてはリアを浮かせ、荷重移動を使ってはコーナーを抜けきり。そこからイン側については次の直線(ストレート)区間へと入る。

 

 

 「(ほぅ…。どこでそんな技術(テクニック)を覚えたかはわからないけど、彼の腕が下手でないことは確かだ。アンダーステアが出やすいFF車を荷重移動を使っては車を上手くコントロールし、クリッピングポイントをキッチリと掴んでは加速もしっかりしてる。どうやら彼が秋名で最速の走り屋だという話はハッタリではなさそうだね)」

 

 

 後ろからタケルの走りを見ているレオはタケルの腕の高さを評価しつつ、その動きに合わせてはブレーキングからのシフトダウン、滑らかにコーナーを抜けては立ち上がり加速で距離を縮めてはスイスポの後ろに付く。

 

 

 「(さて、彼の腕がどれほどのものなのか把握できたし、こっちもそろそろ本気を出させて貰うとするか)」

 

 

 タケルの走りを見終えレオは実力を発揮しては、先程までセーブしていた走りのリミッターを解除し全開でアクセルを踏み込んではその差を縮めようと攻め込む。

 

 

 「!!(後ろからビリビリとくるこの感じっ、レオが本気を出してきたと見ていいかもね。昨日すれ違った時に感じたこのプレッシャー…。まるでジャングルで猛獣に睨まれるようだ…)」

 

 

 後ろからひしひしと伝わって来るプレッシャーにタケルは一瞬怯むも、冷静さを取り戻してはステアリング操作に専念してバトルに臨むのだった。

 

 

 

 

 

 秋名山 頂上 旧料金所跡

 

 

 『こちら中継地点、今スイスポとプジョーが通り過ぎていったぞ。二台の差は然程広がっていないぞ』

 

 「よしわかった。引き続き監視を続けてくれ、こっちも結果が分かり次第すぐに知らせるからな」

 

 

 頂上で無線越しに状況を聞いた池谷は中継地点にいるメンバーにその場で待機するよう指示を出し、タケルとレオのダウンヒルバトルの結果を待つ。

 

 

 

 「どうやらタケルはプジョーに食いつかれては引き離せないでいるみたいだな」

 

 「いくらタケルが地元では速いとはいえ相手は世界ラリーで活躍した車が相手じゃあな、まともにやり合えないのも無理はないか…」

 

 「池谷先輩。プジョーって車は世界ラリーで活躍したと言ってましたよね?具体的にどう凄かったと言うんすか?」

 

 「それなだなイツキ。あのプジョー・205T16っていう車自体グループBに参戦する為に作られた車だっていうのは以前お前に話したのは覚えてるよな」

 

 「えぇ、そもそもグループBっていうものが何なのか全然なんすけど」

 

 「グループBっていうのは1982年にFISA(国際自動車スポーツ連盟)が規定したレギュレーションの一つなんだが、当時低迷期を迎えていたWRC(世界ラリー選手権)に自動車メーカーの参戦を促そうと改造範囲を広くしては、1年間の間に生産した車が200台に達すれば公認される程規定を緩くしたんだ」

 

 「ふむふむ、それで?」

 

 「グループBがトップカテゴリーだった時に参戦してた自動車メーカーは俗にいうモンスターマシンを競技車両として出してはいたんだが、性能に振る反面安全性に欠けては走行中のドライバーが事故を起こしては亡くなるのは勿論、観戦していたギャラリーの列に突っ込んでは観客が死亡するなど当時は頻繫に事故が起きていたんだ」

 

 「げぇっ…。そんなヤバい時代があったのですか…」

 

 「今じゃWRCはグループAやらWRカー規定だのレギュレーションが変わってはルールがマシになったんだが、その狂ったグループB時代に作られたのがあのプジョー・205T16って車なんだよ。元々ベースとなった205は今でいうホットハッチモデルの元祖とも言われては、プジョーの名を世界に知らしめた一台として有名な車で。その205をベースにホモロゲーションモデルとして誕生し、当時4WD車としては最速だったアウディ・クワトロやランチア・デルタといった強豪を相手に激戦を繰り広げたとラリーファンの間では語り継がれるくらい有名なんだよ」

 

 「へぇ〜そうでしたか…。そんなモンスターマシンを相手にタケルは戦ってると…。ちょ、ちょっと待って下さい!?そんなヤバい車を相手にタケルはバトルをしてるんですよね!?じゃあ、もしかしたらこのバトル、タケルは負けてしまうのでは…」

 

 「その可能性も考えた方がいいかもしれないな。いくらスイスポが下りでは速いとはいえ、世界ラリーに勝つために作られた車が相手じゃあまともにやりあえるかどうか怪しいからな」

 

 

 ひょっとしたらタケルはプジョーに負けてしまうのではないかと思ったかイツキは勿論池谷も不安になるしかなかった。

 

 

 

 

 

 「(ダメだ。全力で攻めても一向に差が広がらない!!あのプジョーは限界に近いって言ってた割にはまだまだ走れてるじゃないか!!)」

 

 

 秋名のダウンヒルにてタケルはプジョーとの距離を詰められては苦戦を強いられては追い込まれていた。

 タケルのスイスポは駆動方式こそFFではあるが、下りでは前方の駆動力に荷重が増してはトラクションが掛かりやすくなる為、秋名のようなタイトなヘアピンが続くコースではスイスポの方が有利に働くも、プジョー・205T16は徹底的に軽量化が施されては車体が980キロとスイスポよりも僅かに軽く、パワーにおいてもプジョーが上回っているため。タケルが追い込まれるのも無理は無いのであった。

 

 

 「(こうなったら仕方ない。このタイミングで出すにはまだ早いかもしれないけど次のヘアピンで溝落としをしてはプジョーを引き離してやるしかない!!)」

 

 

 しかしここで諦めるわけにはいかないと思ったかタケルはある策を思い付いてはそれを実行に移す。

 次のヘアピンで溝落としをしてはプジョーとの差を広げようと画策してはコーナーに差し掛かるや、タケルはスイスポをイン側に寄せてはタイヤを側溝に落とし込もうとする。

 

 

 「(ん?タケル君は車をイン側ギリギリに寄せつけては何をしようと…ああ、そういうことか。あれ(・・)を使っては僕を引き離そうとしているんだね)」

 

 

 スイスポの走りを見たレオはタケルがやろうとしていることがわかったのかタケルの走行ラインを辿っては後に続く。

 

 

 「(掛け値無しの一発勝負。ここで上手くタイヤをはめては一気に引き離す!!)」

 

 

 インベタに着いたスイスポはそのままヘアピンへと突入するや側溝にタイヤを落としてはコーナーをくぐり抜けるようとする。

 

 

 グシャァ

 

 

 「(決まった!!このままプジョーとの距離を広げては勝負を決めてやる!!)」

 

 

 タイヤを上手く溝にハメては勝負を決めに行こうとするタケル。これでバトルに勝つのでは確信したタケルであったが、

 

 

 ガシャ

 

 

 「なっ、なんだと…!?」

 

 

 なんとプジョーはスイスポの動きに合わせるように、溝落としを模倣してはすんなりとコーナーを抜けきってはスイスポの後ろに付き。その走りをバックミラー越しに見たタケルは動揺する他ないのであった。

 

 

 「(そんな…あの拓海でさえここをかなり走り込んでは習得した溝落としをあいつはいとも簡単に模倣したというの!?)」

 

 

 「悪いねタケル君。その技(溝落とし)はラリーでは専ら使われていてね、僕にとっては然程難しくないんだ」

 

 

 いとも簡単に溝落としをやってのけたレオは然程難しくないように語るが、落とすタイミングが間違えれば足回りに深刻なダメージを負うこの技を容易にクリアするところからしてレオのドラテクのレベルが高いのは言うまでもないだろう。

 

 

 「(くっ!!溝落としが通用しないんじゃまともに広げようがない。どうやらこのバトル…涼介さんとやる前に負けてしまいそうな気がするよ…)」

 

 

 奥の手である溝落としまで模倣されてはますます勝ち目が無くなったか、この先どう巻き返してはプジョーに勝てばいいかタケルは精神的に追い込まれてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 「もうそろそろだな」

 

 

 秋名のとある中継地点にはタケルの先輩でありスイスポをチューニングした古関勇がギャラリーに来ており、左腕に付けた時計を見てはタケル達が来るのではと呟く。

 

 

 「にしても、タケルから今日プジョー相手にバトルするからその様子を見に来てくれって連絡が聞た時はびっくりしたよ。あいつの走りは群サイで指導したこっちはもう把握してるってのにさ」

 

 「まあいいじゃねえか。何しろ今バトルしてる相手はプジョー・205T16っていう今じゃ滅多に見かけねえ車なんだし、そいつの走行シーンを生で観れるんだからよォ」

 

 「ま、それは言えてますね。俺もグループBで活躍したあのプジョー・205T16を間近で観れるのは楽しみですから」

 

 

 勇と一緒にバトルを観に来ていた祐一は愚痴を言う勇を窘め、バトルを観てやるように言う。

 

 

 「っとそうだった。店長は確かプジョーに乗ってるドライバーの母親とは知り合いだと言ってましたよね。その人とは一体どういう関係で?」

 

 「ん?陽子についてか。陽子は俺や文太とは昔ながらの付き合いでお前と同じ秋名の走り屋だったんだが。当時のあいつは女だてら文太や勝とは激しいバトルを繰り広げてたんだよ」

 

 「へぇ〜その陽子って人は今でいう真子ちゃんや沙雪さんみたいな人だったんですね…。で、そんな人がどうしてフランスに?」

 

 「それはだな。昔大学生だった頃の陽子がここを走ってた時にある一人のフランス人の走り屋から勝ったら自分と結婚してくれないかと勝負を挑まれてな。陽子は走り屋としてだけでなく一人の女として負けるわけにはいかないとバトルを引き受けたんだが、結果は思いの外陽子が負けちまったんだ。そのフランス人の走り屋ってのが後に陽子の旦那になる男ってわけなんだよ」

 

 「そうですか、俗にいう運命の出会いって奴じゃあないですかね…」

 

 「そうだな。陽子はその後フランス人の走り屋との約束通り国際結婚をしては渡仏してすぐに子供を産んでな。その息子って奴が今タケルがバトルしてるドライバーのレオって奴なんだよ」

 

 「レオ?それってもしやレオ・アルベールのことを言ってるのですか?」

 

 「ほぉ…お前さん、陽子の息子について知ってたのか」

 

 「ええ、俺も噂には聞いたことがあるのですが、レオはフランスのラリー屋の間では知らない奴はいない程有名なラリードライバーでして。元々父親がメーカーのワークスチームでラリードライバーをしてただけあってか、息子であるレオもその遺伝子を受け継いでは父親に負けず劣らずの腕を持っていると」

 

 「そうか。まさか陽子の息子がそこまでの実力を持っていたとはな。だとするとタケルが相手じゃ勝負にならないんじゃ?」

 

 「う〜んどうですかねぇ…。確かにタケルはまだ未熟な箇所はありますけど、あいつが未完成(・・・)なスイスポを完璧に使いこなすことができるのなら、もしかしたらこのバトルに勝つ可能性があると俺は思いますね」

 

 「ん?未完成ってのは一体どういうことだ?タケルのスイスポはお前と政志がチューニングしては完璧に仕上げたんじゃなかったのか?」

 

 「実を言うとですね、タケルの乗ってるあのスイスポには一つだけ手を付け加えていないところがありまして。それをするにはまだ一つ、タケルがある経験をしてからでないと意味がないと拓海の親父さんからアドバイスを頂いてはそのままにしてあるのですよ」

 

 「ある経験だぁ?文太の奴、一体タケルには何が足りてないと言うんだ?」

 

 「それはですね店長。拓海の親父さん曰くタケルにはまだ…」

 

 

 ブォオオオン

 

 

 「おっと、その話の前にタケルとレオが来たみたいですし、その話は後にしましょうか」

 

 

 勇がタケルについて話そうとするも、上からスイスポとプジョーが降りてきたのでその走りを見ようと話を打ち切ることに。

 

 

 「おおっ、来るぞ!!一体どっちが先に頭を取ってるんだ!!」

 

 「店長。このバトルは先行後追い方式でやってるんですからどっちが先かなんて重要じゃないんですよ。大事なのは二台の差がどれだけ開いてるかが勝負の鍵を握ってるのですから」

 

 「へ?あ、そうだったな…あはは…」

 

 

 そう無駄話をしている間もなく、二台の車がますます近づいてきてはまるで神風特攻の如く二人の目の前を瞬時に過ぎ去っては麓へと降りて行くのだった。

 

 

 「見たか今の…。あの二台あっという間に走り去っていったぞ」

 

 「ええ、見たところ然程先頭を行くスイスポとの差が開いていませんでしたからこのまま行くと後追いのプジョーが勝つのかもしれませんね」

 

 「そうかい。やはりタケルにはまだ現役のラリードライバーを相手にするにはまだ早かったか…」

 

 「でも、さっきのプジョーから出ていた排気音(エキゾースト)を聴いた限りじゃあ限界が近づいてはそろそろ危ないかもしれないですよ。何せ、僅かながら異音が混じっていましたからね」

 

 「えっ?異音って一体どういうことだ勇。この勝負はプジョーが有利なのじゃ?」

 

 「これは今の段階での俺の予測なんですけど…。この勝負、勝つとするならば…」

 

 勇からプジョーは限界が近いと聞かされた祐一は勝負がどうなるのかと頭を困惑するも、今の状況を踏まえては勇がこう結論付けてはどっちが勝つのか祐一に説明する。

 果たしてこのバトル、どちらが勝負を決めるのだろうか。

 

 




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