頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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ACT.48 スイスポVSプジョー 後編

 秋名山 麓 駐車場

 

 

 「懐かしいわね。昔はよくここ(秋名)へ走りに来ては文太や勝と競い合っていたあの頃を思いだすわ」

 

 「ほぅ〜結婚して子供を産んだとはいえ元走り屋としての血が騒ぐってえ口ぶりだな」

 

 「ええ、これでも昔は女だてら秋名で走り屋をしていたわけじゃないからね」

 

 「そうだったな。まあとりあえず、ここでタケルとお前の息子が走っては降りてくるのを待つとするか」

 

 

 『ママー』

 

 

 レッカー車を持ってきた政志は麓の駐車場の道路脇に置いては胸ポケットからタバコを1本取り出し一服していると、金髪が特徴の女の子が陽子に呼びかけ手を降っては自分達のいるところに駆け寄ってくる。

 

 

 「アンナ、あなたも秋名に来てたというの?」

 

 「そうだよ。今日レオと一緒に秋名へ遊びに来たんだけど、そこでタケルって男の子と会ってはバトルをしようなんて話になってね。レオったら私の意見も聞かずに勝手に話を進めては今夜ここでバトルするなんて言い出したのよ」

 

 

 陽子達の元に来たのは娘のアンナで、アンナは顔をムッと膨らませてはここにいた理由を説明するのだった。

 

 

 「まぁ、それはまた急に決まっちゃったみたいね。でも、どうしてレオがその子とバトルしようなんて言い出したの?」

 

 「それがね、レオったらタケルが乗っていたスイスポっていう車のマフラーから出た音を聞いてはタケル君がここで一番速い走り屋だと分かった瞬間、タケルにプジョーの最後に相応しいって言ってはバトルを申し込んだのよ」

 

 「スイスポ?タケル君はスイスポに乗ってるというの?」

 

 「そうだぜ陽子。あいつが乗ってるスイスポはFFとはいえ走り屋には人気の車だからな。そいつには俺と古関んとこの若大将が派手に弄ってはかなりの性能を発揮する車に仕上がっているんだぜ」

 

 「そう。スイスポは欧州ではよく見かけるし、ラリーの競技車両として使われているからタケル君がそれに乗るのも納得いくわ」

 

 

 政志が自慢気にタケルのスイスポを話していくと、アンナは急に顔を膨らませては話の話題を変える。

 

 

 「それよりも聞いてママ、レオは『タケル君とバトルしてはこっちに降りて来るからアンナはここで待ってて』って言ってあたしを置き去りにしたのよ。こんな可愛い妹を置き去りにするなんて酷いと思わない!!」

 

 「まぁ、妹をこんな暗がりの山ん中に置いておくなんてね。これは後でちゃんと叱っておかないといけないかしら」

 

 「まあ落ち着きなってお嬢ちゃん。走り屋がバトルしようもんなら横に人を乗せないのは常識なんだし。お前の兄貴は本気で走って事故らせては妹であるお前さんに怪我させないようここで待ってるよう言っただけかもしれねえからな」

 

 

 アンナは自分を麓に置いていった兄であるレオに怒りを見せるも、政志はレオがしたことは妹の為を思っての気遣いだと言ってはアンナを宥めるのであった。

 

 

 

 

 

 秋名山 5連続ヘアピン

 

 

 「(得意である地元でここまで追い込まれたのは始めてだ。相手はこっちよりも古い車だっていうのに、性能差が違いすぎる!!それに走りの腕の差が大きいからか引き離そうにも向こうは引き離せそうにない!!)」

 

 

 プジョーとの距離を広げられず追い込まれてしまったタケルは焦りを募らせ、動揺が響いてはコーナーを抜ける度にアンダーを出してしまう。

  

 

 「(溝落としを破られたのが大きかったか走りに乱れが生じてはコーナーを抜ける度にアンダーが出ているね。この先どうするのか知らないけど小手先の技術で僕との差を広げるなんてことは不可能だよ)」

 

 

 「(こっからどうしたらいいと言うんだ…。溝落としが効かないんじゃ他にどんな技術(テク)を使えと…待てよ、確かこの前、溝落としにはもう一つ走り方があるって拓海は言っていたよね…)」

 

 

 プジョー・205T16を相手に苦戦を強いられているタケルはステアリング操作をしながらどう攻めて行けばいいか考えくねていると、前に拓海から教わった溝落としのことを思い出す。

 

 

 

 

 

 それは一昨日の土曜の夜、拓海が高橋涼介とのバトルに勝利しては一人で道路の端に佇んでいた拓海の元にタケルが駆け寄ったところから始まる。

 

 

 「凄いじゃないか拓海!!あの涼介さんに勝つなんてお前本当に奇跡を起こしたんだぞ!!」

 

 「そうか?俺はただがむしゃらに突っ走っただけなんだけど…」

 

 「だとしてもだよ、群馬では負け無しだったあの人に勝った走り屋は拓海が初めてなんだから少しくらい誇りに思ってもいいんじゃないか」

 

 「お、おう…」

 

 「それでさ拓海、どうやって涼介さんに抜かれた後追いつくことができたか聞かせてくれる?」

 

 

 高橋涼介に勝ったことをベタ褒めしていくタケルにうんざりする拓海。そこからタケルはどうして勝つことができたのか聞くと拓海は面倒くさがりながらも頬を掻いてはタケルに話し始める。

 

 

 「どうって、俺はただ…先を走るRX-7を追いつこうと必死になっては前に親父が言ってた二つ目の溝走りってヤツを試しにやってみたら意外と上手く行ったんだ」

 

 「二つ目の溝走り?それって拓海がいつもやってる溝落としとどう違うっていうの?」

 

 「これは親父が言うに秋名の峠の溝の使い方は二つあって俺が秋名でよくやってるのはアンダーを出さない為の突っ込み重視の溝走りで。もう一つは立ち上がり重視の溝走りってヤツなんだけど、それは落とすタイミングも飛び出すタイミングも違うと教えてくれたんだ」

 

 「へぇ〜立ち上がり重視の溝走りか…。それってどういう風にやるもんなの?」

 

 「いや、それに関しては難しいから自分で考えてやれって言っては教えてくれなくてな。で、今日ぶっつけ本番でやってみたら思いの外上手く行ったってわけなんだよ」

 

 「えぇ〜それじゃあ全然参考にならないじゃないか…。まああの頑固親父がそう簡単に話してくれるわけないもんね」

 

 

 拓海から溝走りについて聞き出そうとしたが、得にこれといった情報が得られなかったため、徒労に終わるしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 「(立ち上がり重視の溝走り。それは要するにカウンターを当てずにドリフトをしてはコーナーを抜けるってことだよね。拓海はFRのハチロクに乗ってたからこそできた溝走りをFFのスイスポでどこまでやれるのか分からないけど。もう他に手がない今、拓海が言っていた立ち上がり重視の溝走りってヤツを使ってはこの局面を乗り切るしかない!!)」

 

 

 立ち上がり重視の溝走りをやってみようと決意したか。タケルは先程までアンダーを出していたのを左足ブレーキで修正しては姿勢を立て直し。秋名のコーナーを突っ込みで攻めては突き進む。

 

 

 「(Qu'est-ce que c'est?(なんだ)。さっきまで乱れていた走りが元通りになっては無駄な動作がなくなっている。もしかして何か秘策でも思いついたのか?)」

 

 

 後ろからスイスポの走りを見ていたレオはアンダー気味だったスイスポの走りが元に戻っては、タケルが何をするのか注視していくとスイスポはRの小さいコーナーの側溝に近づいては溝落としに入ろうとする。

 

 

 「(タケル君は懲りもせずまた同じ技をやろうと…いや、違う。あれは別のやり方で溝にタイヤを落としてはコーナーを抜けようとしてるみたいだが一体何をしようというんだ…?)」

 

 「(よしっ、さっきは簡単に模倣されては失敗に終わったけど。今度こそ上手く溝にハメてはこの危機を脱してやる!!)」

 

 

 右のインベタに入るとタックインでコーナーに突っ込んではイン側のタイヤを溝に落とし、そこからコーナリングフォースを得てはコーナーを抜けきってすぐに加速しだしては一気にプジョーを突き放しその差を広げるのに成功するのだった。

 

 

 「C'est incroyable…!!(信じられない…)。先程まで突っ込み重視で攻めてはそこから一転して立ち上がり重視の走りに変えてくるなんて…。追い込まれていながらも状況に応じて走らせ方を瞬時に変えるとはどうやらタケル君の持つ潜在能力(ポテンシャル)の高さは僕の想像を上回っているとしか考えられないね…」

 

 「(よっしゃあ!!ぶっつけ本番でやってみた立ち上がり重視の溝走り。このまま突き進んではゴールまで一直線だ!!)」

 

 

 プジョーとの距離を広げたスイスポは立ち上がり加速で得た勢いをそのままに、5連続ヘアピンを抜けては最後の区間へと突入する。

 

 

 

 

 

 秋名山 麓 ゴール地点

 

 

 「ママ…。レオは無事に降りてくるんだよね?」

 

 「大丈夫よ。あの子がそんなミスをしたりしないのはアンナも知っているでしょ。だから、余計な心配をせずに二人がこっちに降りて来るのを待ちましょう」

 

 「うん、きっとレオはいつものように余裕がある顔をしては帰ってきてくると私信じるわ…」

 

 「ええ、もう一人…タケル君も無事に降りてくるよね政志?」

 

 「ああ、あいつに関してもそんな気遣うことはねえぞ。何せあいつに車の走らせ方ってヤツを教えたのはこの俺だからな」

 

 

 ギャアアア

 

 

 「お、タイヤを滑らせる音がここまで近づいてるってことはもうそろそろこっちに向かって来てると見ていいみてえだな」

 

 

 スキール音が響いてきた方向に耳を傾けた政志は、バトルは終盤戦に入ったと予測し二台の車が降りてくるのを待つのであった。

 

 

 

 

 

 秋名山 複合コーナー

 

 

 スイスポが後続するプジョーと一定の距離を保ちながら駆け抜けゴール直前の複合コーナーに辿り着くや最後の勝負へと入っていく。

 

 

 「(ようやく秋名の複合コーナーに来たか…。アンダーを消しながら走るのに苦戦するここでブレーキング勝負を決めてやる!!)」

 

 「(いいとも。さっきは意外性を突かれては突き放されたけど、このポイントで決着を付けようというのならこの勝負、受けさせてもらうよ)」

 

 

 最後の大一番である秋名の三車線複合コーナーをスイスポはフルブレーキングからアウト・イン・アウトで外側から一気に攻めていき、プジョーもフルブレーキングからリアタイヤを滑らせてはラリーさながらのフルブレーキングドリフトでコーナーを抜けきってはコーナー出口からの立ち上がり加速でケリをつけに行く。

 

 

 「(こっから先は駆動方式の差が物をいうからね。ラリーで培ってきた4WD特有の駆け出しの良さを活かしては決めさせてもらうよ。この勝負に勝つのは…)」

 

 「(ここのイン側を先に抑えた方がこのバトルの勝者だ。FFとはいえトルクの太いスイスポで最後の大一番であるここを抜けきりバトルに勝つのは…)」

 

 

 「「僕だ!!」」

 

 

 スイスポとプジョーによる一騎打ちのダウンヒルバトル。コーナーを抜け先に頭に取ろうとする二台。プジョーは4WD特有のトラクションを利用するのに対し、スイスポは低速トルクの太さを使っては低速域からの駆け出しで決めに行こうとする。しかし、

 

 

 「くっ…ダメだ…!!コーナー出口の立ち上がり加速ではこっちが有利だけど、これ以上はもうパワーが上がらない!!」

 

 

 やはりタケルのスイスポでは限界があったか、スイスポはイン側を抑えつけることができず。プジョーが先に頭を取ろうとしたその時だ。

  

 

 ガクン

 

 

 「え?」

 

 

 イン側に入る直前でプジョーは勢いを落としては徐々にスイスポから離れていき、後から攻め入ったスイスポがイン側を抑えつけては勝負を決めるのだった。

 

 

 「何故だ。この勝負に勝てたかもしれないのに加速を止め道を譲るような真似を……まさか!?」

 

 

 タケルはスイスポを端に止めるや速攻で車から降りては後ろで停止していたプジョーへ駆け寄り、左側のドライブシートを見ると。レオはこうなることが分かりきっていたのか清々しい顔をしては満足気にしていた。

 

 

 「レオさん!!大丈夫ですか!?」

 

 「やあタケル君。中々いいバトルだったよ」

 

 「どうして…どうして大事な場面で勝負を捨てたのですか!?このバトル、あなたの勝ちが決まったかもしれなかったのに…」

 

 「いやね、僕ももう少しいけるかなと思っていたんだが。攻めていく途中で車が悲鳴を上げてるのに気付いてはすぐさまブレーキを踏んでしまってね…。ほら、後ろのエンジンからスモークが出ているだろ」

 

 「……!!」

 

 

 レオは車から降りるや後部に位置するXU8Tエンジンをタケルに見せ、プジョーはリアからシュ〜と出ている煙から焦げ臭い匂いが吹き出しては完全に静止しており。この瞬間プジョー・205T16はその走りに生涯を終えたと二人は確信するのだった

 

 

 「そんな…。この勝負はまだいけると思ったのこの結末はあんまりじゃないですか…」

 

 「確かにそうかもしれないけど走っていく途中でエンジンブローを起こしてしまった今、この勝負は君の勝ちで決まりだよ。エンジンが保たないのを分かっていながら走り続けた僕の見通しの甘さが原因だしね」

 

 「……」

 

 

 不甲斐ない形での勝利に喜びを見いだせなかったかタケルは歯痒い気持ちになるしかなく。レオもそれを察してはこれ以上は何も言わなった。

 

 

 ブォオオオン キィー

 

 

 「うわぁ…お前さんの予想通りとはいえ、プジョーがこうも完全に壊れちまうとはな…」

 

 「ええ、こいつはもうエンジンが完璧にイカれては手の施しようがありませんからね。寧ろここまで走ってこれた事自体信じられないすけど」

 

 

 二人がプジョーの前で立ち止まっている中、上の方から一台のセダンが降りてきてはタケル達の方に近付き。中からは祐一と勇が降りては完全に停止したプジョーを一目見ては派手にやったなと呟く。

 

 

 「あの…あなた達は一体?」

 

 「ん?そうか君は俺達のことを知らなかったな。俺は古関勇って言ってタケルのスイスポを整備した人間でな。今夜はそこにいる祐一さんと一緒にお前ら二人のバトルを観に来たんだ」

 

 「そうでしたか…」

 

 「ほぉ〜君が陽子の息子のレオか。確かに顔つきは陽子の旦那と瓜二つだな」

 

 「えっ、あなたは僕の母を知ってるのですか?」

 

 「ああ、俺は君のおふくろさんとは昔ながらの付き合いでな。あいつのことはよぉく知ってるぜ」

 

 「それよりも店長。ここで呑気に話している場合ではありませんよ。この車を一刻も早く下で待機してるっていう政志さんのところへ持っていかないと」

 

 「そうだったな。タケル、俺の車でこいつを牽引するからちょっくら手伝ってくれ」

 

 「わかりました」

 

 

 祐一がカムリのトランクから牽引用のロープを出してはそれをプジョーのフロントに取り付け、それを前に持ってきたカムリのリアにもう片方のロープを引っ掛ける。

 

 

 「おし、こいつは俺が下に持っていくとしてお前ら二人はスイスポで降りて来ることだな。レオ、下でおふくろさんと妹が待っているから君も車に乗りなさい」

 

 「はい、お気遣い感謝します」

 

 

 祐一が運転するカムリに乗せてもらっては一緒に麓へと降りていき、タケルと勇はスイスポに乗っては麓へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 「で、どうだったタケル?チューニングしたスイスポを全開で走らせてはどこかもの足りないところでもあったか?」

 

 

 秋名を降りては自宅へと帰り道、勇がドライブシートに座っては代行運転してくれることになり、タケルはナビシートに座ってはドッと疲れが出たのか気が抜けた表情になりながらもスイスポを走らせた感想を勇に話し始める。

 

 

 「そうですね。やはりパワーの大きい車を相手にするのにもう少し馬力があったら良かったかなぁと思うところがありましたね。最後のブレーキングからの立ち上がり加速も、出だしはよくてもそこからの駆け上がりは低かったですし」

 

 「だろうな。お前が乗ってるスイスポのエンジンには一切手を付け加えていないのもあるが。元々こいつはハイパワーで攻めるタイプの車じゃないから高回転域での直線(ストレート)勝負だとどうしても限界ってもんがあるから、これより上のパワーを求めるのならいっその事FRか4WDに乗り換える他ないからな」

 

 「やっぱりそうなりますよね。車体の構造上FFは高性能エンジンを積むなんてことは物理的に不可能なのは知ってますからこればっかしはどうしようも…」

 

 「ま、今度ばかりは相手が途中でエンジンブローをしてしまうアクシデントがあったおかけでお前は勝てたが、次に高橋涼介とやる時は同じことが起こらないからな」

 

 「ええ…肝に銘じておきます」

 

 

 タケルがスイスポの馬力の低さを指摘し、それを聞いた勇もタケルの言う事に肯定しては涼介とやり合うには二度はないと忠告する。

 

 

 「じゃあ勇さん。僕はちょっくら眠りますので着いたら起こして下さいね」

 

 「おう、今日はご苦労だったみてえだから存分にぐっすりしてもいいぞ…ってこの野郎、何も言わずにすぐさま眠りやがったよ」

 

 

 文句を言いながらスイスポを運転する勇は横で寝息を立ててはぐっすりと眠っているタケルを横見しては呟く。

 

 

 「(タケル、お前はスイスポのパワーには限界があると言っていたが、そのパワーを底上げするとっておきってヤツが一つだけあってな。そいつをするにはお前がもう一つ壁を乗り越えてからでないとそいつを載せることができないからな)」




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