頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 一週間振りの投稿です。


ACT.4 秋名のハチロク

 

 「しかしまぁお前さんも派手にやってくれたなぁ。ブレーキパッドの摩耗の仕方からしてブレーキングする際負荷を掛け過ぎたのが手に取るようにわかるくらいアライメントがイカれちまってるぞ」

 

 「だって仕方なかったんだもん。下りでガンガン攻めていかないとあの高橋涼介に追いつけなかったんだしさ」

 

 「ったく、本気で走るのはいいが少しくらいは車を直す側の気にもなれってんだよ」

 

 

 高橋涼介との勝負から翌日が経過し、タケルは貰ったばかりのスイスポを持ってきては直してもらうよう政志に頼んでおり。スイスポの足回りを見た政志はタケルが昨夜無理な運転をしては走り込んだなと呆れては言う。

 

 

 「とりあえずだ。こいつは直してやってもいいがここまでイカれちゃあ今日ばっかしは走らせるのはお預けだな」

 

 「えぇ!!そんなに掛かるもんなの!?」

 

 「当たり前だろ。ブレーキパッドの交換は勿論、LSDの付け替えなどやることが多いんだ。直るまでの間大人しくすることだな」

 

 「そこまで言うんじゃ仕方ないか…ってそうだった。ねえおじさん、昨日コンビニに寄った際たまたま会った祐一さんが言ってたんだけど、拓海の親父さんが秋名の下り最速の走り屋だっていう話は本当なの?」

 

 

 政志からスイスポは修理が終わるまでの間走ることができないと聞いてはガッカリするやタケルは昨日のことを思い出しては政志に聞く。

 

 

 「拓海の親父…?誰だそいつは…」

 

 「知らないのおじさん。昔はおじさんや亡くなった父さんと同じ走り屋で、今は地元で豆腐屋をしてるって聞いたんだけど」

 

 「豆腐屋…?あぁ文太のことか。祐一が言ってることは本当だぜ。何せ文太のハチロクはいつも俺が弄っているからな」

 

 「ハチロク?ハチロクって確か20年以上も昔の車のことでしょ?そんな古い奴に乗っていながらどうしてそんな速く走れるのさ?」

 

 

 タケルが言うようにハチロクは80年代に出た当初は数多くの走り屋が乗っては一躍有名になった車で、ラリーやサーキットにて大活躍したが。10年以上経った今ではRX-7やGT-Rといったハイパワーエンジンを搭載した高性能マシンが台頭しハチロクはポンコツ扱いをされている。

 

 

 「そりゃあ文太は足回りに関しちゃ徹底的に仕上げるのもそうだがあいつは秋名の峠をあらゆる箇所を知り尽くしては頻繁に走り込んでいたからな。今じゃ秋名で文太に敵う奴は俺が知る限りじゃ一人もいねぇよ」

 

 「ふぅん…そうなんだ」

 

 

 政志も昨日祐一が言っていた話と同じようなことを言い。タケルは拓海の父である文太に興味を示したのかある考えを思いつく。

 

 

 「それならいっそのことスイスポが直るまでの間拓海の親父さんから走りの指導を受けてみようかなぁ。一人で走り込むよりプロから教わった方が確実に腕が上がるし」

 

 「残念だがそいつは無理な話だ。何せあいつは普段はボッとしているように見えるが頑固な性格をしていてな、そう簡単に走りを教えたりしねえよ」

 

 「ちぇっ、それもダメか…じゃあ修理が終わるまでの間僕は家で大人しくしときますよ」

 

 「まあそう不貞腐れるなって。交流戦が行われる日までには走れるように間に合わせてやるから安心しろ」

 

 「ホントに!?その約束絶対に守ってよね!!」

 

 

 スイスポを政志の元に預けては整備工場を後にしては自宅へと戻っていくことにした。

 

 

 

 

 

 「ただいまー」

 

 「おかえりなさい。丁度良かったわ、タケル帰ってきて早々悪いけど味噌汁に入れるお豆腐買ってきてくれるかしら?」

 

 

 エプロン姿の遥香が自宅に帰ってきたタケルを出迎え、帰ってきた弟に豆腐を買ってくるようお願いをする。

 

 

 「えぇ~ついさっきおじさんに車の修理を頼んでは腹透かして帰ってきたばっかりなのにあんまりだよ」

 

 「ごめんね。お姉ちゃんがさっき買い物に行った際お豆腐を買って来るのを忘れてたの。だからお願い今すぐお豆腐を買ってきてー」

 

 「ったくしょうがないなぁ…そうだ。拓海ん家は確か豆腐屋をやってるって言ってたんだし、この際拓海のとこで買ってこようっと」

 

 

 遥香からのおつかいに嫌そうな顔をするタケルであったが。姉の遥香が手を合わせてはお願いをしてきたため、仕方ないなと観念しては拓海の実家でもある『藤原とうふ店』へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 「あった。ここが拓海ん家の豆腐屋だね」

 

 

 タケルはバイクを飛ばしては地元の商店街の中に入り、拓海の家である『藤原とうふ店』の店の前に着く。そしてバイクから降りては店の横に停めてある一台の車を見ては深々と見つめる。

 

 

 「(AE86 スプリンタートレノ 初期型のGT APEX。タイヤはワタナベ製のホイールを履いてはCIBIE製フォグランプを付けてるところからしてこれがおじさんの言ってたハチロクだね…。一見見るからに普通のハチロクみたいだけどこれがどう速いのか少し気になるなぁ)」

 

 「おいタケル。こんなところで何してんだ?」

 

 「ん?池谷さんじゃないすか昨日以来すね」

 

 

 タケルに声を掛けてきた人物がいたので振り向くとそこにはTシャツを着た池谷が乗ってきた車から降りてはタケルに話しかけてきたのだった。

 

 

 「珍しいじゃねえか。お前がここに来るなんざ一体何の用があってここに来たんだ?」

 

 「僕は姉ちゃんに頼まれては豆腐を買いに来ただけですよ。それでもって店の横にハチロクが停まっていましたのでちょっと見てたとこです」

 

 「そうか。俺も昨日店長が言っていたハチロクがここらへんにあると聞いてはちょっと探ってたところだ。見たところそいつはとても速く走れそうには見えないしな」

 

 「ですよね。どっからどう見ても普通のハチロクですしね」

 

 「あれ、池谷先輩?それにタケルも…何してんすかァ?そんなとこで…」

 

 「拓海…?」

 

 「やぁ拓海。お邪魔しに来たよ」

 

 「まさかお前ん家ってそこかぁ!?」

 

 

 池谷もハチロクを見てはにわかに信じ難いと言うがその隣を拓海が自宅である店に入る寸前で二人に呼びかけてきたのだ。拓海はいつものようにボケっとした顔をしては立つ。

 

 

 「拓海。昨日姉ちゃんから拓海が豆腐を卸してるって聞いたんだけどさ。ひょっとしてこのハチロクで毎晩豆腐を配達してるの?」

 

 

 タケルはハチロクを指さしては尋ねるも拓海はわけわからないといった顔をしては返す。

 

 

 「はぁ?あれはトレノって後ろに書いてあるからタケルの言うハチロクとは違う気が…」

 

 「だからトレノがハチロクなんだよ。AE86っていう型式のレビン・トレノを引っくるめてそう呼んでるんだよ」

 

 「はぁー?」

 

 

 池谷が拓海が言うトレノがハチロクだと説明するも拓海は全くわかっておらず適当に聞いてはボケっとするのだった。

 

 

 「あ、そうだ拓海。来て早々すまないけど豆腐を一丁くれないか?昼飯の味噌汁作るのに豆腐が必要なんだ」

 

 「いいよ。今用意するからちょっと待ってろ…」

 

 

 拓海は豆腐を取りに行っては店の中へと入っていき。その場で待っているタケルは池谷と顔を合わせては話を続ける。

 

 

 「まさか拓海がこの店の息子だったとはな…。世間は狭いぜ全く」

 

 「僕は以前拓海から実家が豆腐屋をやってると聞いてましたので知ってましたよ」

 

 「なるほどな。そうだ、お前確かスイスポに乗ってたんだよな。もし良かったら今晩一緒に走り込みでもしねえか?」

 

 「申し訳ありません池谷さん。生憎スイスポは昨日走らせた際無茶をしてはアライメントに異常が生じてはダメになってしまいまして、今知り合いの整備工場で直してるとこなんです」

 

 「そうか。それは残念だったな。でもタケルがスイスポを選ぶとはいい線いってるじゃねえか。FFとはいえ昔のハチロクみたいに比較的安く手に入るし初めて乗るにはうってつけの車だからな」

 

 「でしょう池谷さん。何せスイフトはスズキが世界戦略を掲げてはヨーロッパでテストを繰り返しては完成させた車ですからね」

 

 「だよな。スイフトが出る前までスズキといやアルトやワゴンRといった軽自動車のイメージしかなかったが。スイフトを出したのをきっかけに今じゃ安くていい小型車を売る自動車メーカーだと云うからな」

 

 「タケルー豆腐持ってきたぞ」

 

 「お、サンキュー拓海。はい100円」

 

 「毎度あり」

 

 「それと拓海ちょっとこっち来てくれるか」

 

 「なんだ?」

 

 

 拓海から豆腐が入った袋を貰っては代金を支払い、タケルは拓海の肩を組むや池谷に聞こえないよう耳を済ませてはあることを尋ねる。

 

 

 「(拓海、お前実は中1の時から車に乗っては秋名山を走ってるんだろ?)」

 

 「(え?そうだけどいつから俺が走ってるのに気が付いたんだ?)」

 

 「(昨日からだ。学校からの帰り際に拓海は峠を攻めるのは飽きてるって言ってただろ?それって免許を取る前から車に乗っては峠を走り込んでるって言ってるようなもんじゃないか。僕の言ってるとこどっか間違ってる?)」

 

 「(まぁ間違ってはないな。でもこの事はあまり周りには言いふらすなよ。後のことが面倒だし)」

 

 「(わかってるって。イツキや池谷さんには内緒にしておくから安心しろ)」

 

 「おいお前ら何こそこそと話してるんだ?」

 

 「いえ別に大した話じゃありませんよ。じゃあ拓海、僕は家に帰るから昼からのバイト頑張れよ」

 

 「あぁまたな」

 

 

 拓海との話を済ませたタケルは豆腐が入った袋を貰っては自転車に乗っては急いで自宅へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 その日の夜。池谷は仕事を終えてはスタンドのピットにて自分の車の足回りを弄っており。健二を始めとするスピードスターズのメンバーが車を弄る池谷を見に来ていた。

 

 

 「よぉ…新品のタイヤ入れてんのか」

 

 「ダンロップのフォーミュラRSVかぁ。奮発したなぁたっけーんだろこれ」

 

 「タイヤだけでもハイグリップに変えてタイムを稼がないとな…。ついでにブレーキパッドも交換するんだ。下りを走るにはブレーキがキモだからな…」

 

 「やるのか…池谷」

 

 「あぁ…下りは俺が走る。死ぬ気で秋名の下りを攻めてみるさ…」

 

 「あんまり無理はするなよ。下りは怖いからなワンミスが命取りになるぞ…」

 

 「わかってる。わかってるけど少しは無理もしねーとな…。地元の意地があるじゃん…」

 

 

 

 

 

 秋名山

 

 「調子はどうだ池谷?」

 

 「ダメだぁ…全然乗れてねーよォギクシャクしてる」

 

 

 池谷は早速タイヤを変えては走ってみたものの、大した変わり様はなく冴えない顔をする。

 

 

 「それはそうと今日も来てるぜレッドサンズのRX-7」

 

 「FDだったな。あれは高橋兄弟の弟の啓介だ…」

 

 「あれから毎晩見かけるようになったな」

 

 「たまんねーよあんだけテクニックのあるドライバーにあれほど熱心に練習されちゃーな」

 

 

 地元であるスピードスターズからすれば余所者である高橋啓介に走り込まれては堪らないものであり。啓介は地元の走り屋の視線を気にすることなく秋名の峠を走り込んでいた。

 

 

 「(今日も現れない…あの時のハチロク!!)」

 

 

 啓介は昨夜のハチロクが出て来ないのに怒りを募らせては秋名を猛スピードで駆け抜けて行く。

 

 

 「(地元の走り屋じゃなかったのか…そんな筈はない…。奴は秋名の峠を知り尽くしていた。走り屋としての勘だ。もう一度奴に会いたい!!会ってリベンジかましてやらなきゃ俺の気が収まらない、出てこい秋名の幽霊!!)」

 

 

 ハチロクへの対抗意識を激しく燃やしてはFDを飛ばし続ける啓介。

 

 

 「(スピードスターズなんざどうでもいい。俺はお前に会いに来てるんだ!!)」

 

 

 

 

 ガソリンスタンド

 

 

 「店長ガソリン入れに来ました。ハイオク満タンでお願いします」

 

 「おう。今入れるから待ってろ」

 

 

 翌日の朝、修理を終えたスイスポにガソリンを給油しにスタンドに寄っては祐一にガソリンを入れて貰い。その間に拓海達がドリフトについての話をしているを聞いては耳を傾ける。

 

 

 「なぁなぁ拓海。お前ドリフトってどういうことか知ってるか?日本中の走り屋が大好きな用語だぞ」

 

 「それぐらい俺だって知ってるよ」

 

 「じゃ言ってみろよ」

 

 「それは…えーとカーブで」

 

 「カーブって言うなーダセーから…走り屋はコーナーって言うんだ」

 

 「あっそ。だからそのコーナーでさ…内側にコーナーが行き過ぎないように前のタイヤを外に流すんだろ…こうやって…」

 

 「「はああ?」」

 

 「(え?今拓海が言ったドリフトって確か…)」

 

 「「だーはっはっはっはっはっ」」

 

 「勘弁してくれよ拓海」

 

 「前輪が流れるのはそりゃアンダーっていって一番カッコ悪い下手くその代表だよ」

 

 

 タケルは拓海が説明したドリフトを理解しては驚くのに対し二人は笑い転げては拓海を馬鹿にしていた。

 

 

 「ドリフトってのは前輪(フロント)じゃなくて後輪(リア)を流すの…お前っておっかしーよサイコーだよ拓海」

 

 

 「笑いすぎですよ池谷さん。今拓海が言ったドリフトは物凄い解答なんですからね」

 

 「え?そうなのか?」

 

 

 池谷が拓海にドリフトについて偉そうに語るやタケルは拓海をフォローしつつ呆れながら池谷に拓海が答えたドリフトを解説する。

 

 

 「さっき池谷さんはドリフトは後輪(リア)を流すって言ってましたけどドリフトしている時の車は基本アンダーになる傾向なんです。それに先程拓海が言ったドリフトは4輪ドリフトという難易度の高い技術をマスターしてないと答えることができない凄い回答ですからね」

 

 「なんだと!?それは本当かタケル!?」

 

 「えぇ。ドリフトに関しましてはスイスポをくれたおじさんから色々と教わりましたので、自分で言うのもなんですけどそれなりの知識は持ってますよ」

 

 

 タケルは車の走らせ方を政志から教わった時にドリフトも教えてもらっていた為ドラテクの知識をそれなりに持っており。拓海が4輪ドリフトについて語っていたのを理解しては池谷達に拓海の技量の高さに語り。それを聞いた池谷は拓海の凄さに驚愕するのだった。

 

 

 「なぁタケル、マジで言ってるのか!?拓海は車について全く知らない筈なのにどうしてそんな凄い技を知ってるんだ!?」

 

 「それはねイツキ、拓海は…」

 

 

 ドゥン

 

 

 「悪いタケル、今客が来たからその話は後で聞かせてくれ」

 

 「ちぇ、人が折角言おうとしたのに邪魔が入っちゃったか…」

 

 

 タケルが話している途中スタンドには激しいエキゾースト音を響かせては車がスタンドの中に入り、拓海達は来店した客を出迎えては前に出た。

 

 

 「(あれは高橋啓介のFDじゃないか。僕のスイスポと同じ黄色で思いっきし目立ってるよ…)」

 

 「ハイオク満タンだ…」

 

 

 来店したのはレッドサンズの高橋啓介のFDであり、拓海と池谷はそれに気付くも平然としては客として振る舞う。

 

 

 「随分熱心ですねお客さん…」

 

 「んっ」

 

 

 啓介はスタンドの端に止めてあるS13を見てはあることに気付き始める。

 

 

 「どっかで見たようなS13だと思ったら…。スピードスターズの…」

 

 

 池谷は啓介の言うことを無視しては懸命にFDの窓を拭いていく。

 

 

 「ひとつ…聞いてもいいかな…。あんたなら多分知ってるだろ…」

 

 「?」

 

 「秋名山には幽霊が出るんだろう?」

 

 「(幽霊?一体何のことだ?)」

 

 「鬼みてぇに馬鹿っぱやいハチロクの幽霊さ…」

 

 「からかうのはやめてくれませんかねお客さん」

 

 「ちょっと待ってください!?今ハチロクって言いましたよね!?」

 

 

 タケルは啓介の口からハチロクという言葉が出た瞬間、慌ただしくして啓介に尋ねる。

 

 

 「おいタケル!!お客さんに失礼だぞ!!」

 

 「あ、すみません。でもこの人の口からハチロクという言葉が出たのが気になってしまいまして…」

 

 「ん?誰だお前は?ここの店員じゃないみたいだがお前もスピードスターズのメンバーなのか?」

 

 「あー僕ですか。僕は斎藤といいましてあそこに置いてあるスイスポのドライバーです」

 

 「はぁっ?スイスポだぁ…」

 

 

 タケルは啓介からの質問に返事をしては反対側に止めてあるスイスポを見せ、それを見た啓介は納得したような顔を見せてはタケルを見つめる。

 

 

 「そうか。お前が兄貴に挑んだあのスイスポ乗りの走り屋だったか…。お前のことは聞いてるぜ、『俺に真っ向から勝負を仕掛けに来た面白い奴』だってな」

 

 「なんだとォ!?タケル。お前、高橋涼介に挑んだって話は本当か!?」

 

 「実は池谷さん達が帰った後で僕一人秋名を走ってた時に高橋涼介と少しばかしバトルをしたんすよ。まぁ結果としは全然敵いませんでしたけど」

 

 「当然だろ。群馬じゃ兄貴に勝てる奴なんざ誰一人だっていないんだ。にも関わらず挑もうとするなんざ無謀にも程があるぜ」

 

 

 啓介はタケルとの話を終えるや視線を池谷の方に向けては話を続ける。

 

 

 「幽霊ってのは冗談だけどな白黒のパンダトレノだ。見た目は普通のハチロクだけど中身は多分途方もないモンスターだろ。地元が知らねー筈がねぇぜあれだけの車を…」

 

 「何言ってんだ…!?」

 

 

 池谷は啓介の言ってることに驚くも未だに半信半疑である。

 

 

 「しらばっくれやがって…まぁいいさ。土曜日の交流戦の秘密兵器のつもりならこっちも望むところだぜ!!あのハチロクのドライバーに伝えておけ…。この前負けたのはコースに対する熟練度の差と俺の油断だ。俺は同じ相手に二度負けねぇってな」

 

 「!?」

 

 「ありがとうございましたー」

 

 

 拓海が過ぎ去っていく啓介に礼をしては頭を下げ、見送った後。池谷は啓介が言ったことが余程信じられないのかその場で立ちすくんで呆然としていた。

 

 

 「(高橋啓介が一度負けただぁ…!?何のことだ…そんなハチロク知らないぞォ俺だって)」

 

 「(……)」

 

 

 池谷は何か思い出しては拓海の方に顔を向けるも即座に反らした。

 

 

 「(まさか…。だけど拓海ん家のハチロクも確かパンダトレノだ……!!店長の言ってたことは眉唾じゃないってのか…。今でも下り最速のハチロクは本当(マジ)で実在するのかぁ…!!)」

 

 

 池谷は前に祐一が言っていたことを思い出しては例のハチロクが本当にあるとその場で信じようにも信じられない気持ちで一杯だった。

 

 

 「なぁ拓海…。池谷先輩とレッドサンズのFD。何か話してたろ?何話してたか聞いてたか?」

 

 「さぁなー…俺も聞いてなかったよ」

 

 

 拓海はイツキからの質問に素っ気なく返しては仕事に戻る一方タケルは拓海を見ては驚きを隠せなかった。

 

 

 「(高橋啓介の口振りからしてその話は本当みたいだね。それにハチロクに乗っていたのはおそらく…)」

 

 「タケル。ボーっとしてるとこ申し訳ないがもうガソリンは入れ終えたぞ」

 

 「あ、すみません店長。ガソリン代は姉ちゃんにツケといてくださいね」

 

 「またかよ。ったく少しくらいは自分で払えるようにしとけよなー」

 

 

 

 

 

 秋名山 夜

 

 

 「(ダメだ…。こんな恐ろしい思いをしてもタイムはちっとも縮まってない。俺は今までアクセルさえ開ければタイムは縮まると思ってたけどそんな甘いもんじゃない…。俺達は今までこんなトライをしたことがなかったからな…)」

 

 

 この日の夜。池谷は秋名の峠をギリギリまで攻めて行ってはタイムを縮めようと奮闘するも記録は一向に変わらず、時間と走った分のガソリンを無駄にしてしまった。

 そもそも同好会寄りのスピードスターズと本格的な走りを追求するレッドサンズでは下地が違うのでその差を埋めることなどそう簡単ではない。

 

 

 「(レッドサンズはモータースポーツの経験者だからタイムの削り方をよく知っている…。このままじゃとても太刀打ちできねぇ…。俺のテクニックなんてこの程度だったのか…!!)」

 

 

 自らの無力さに池谷はただ一人嘆くしかなかったのであった。




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