頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 早くも次話を更新しました。


ACT.67 さようならハチロク

 「なんですって!?拓海君が赤城に行ってはエンペラーのランエボとバトルしてるのですか!?」

 

 「俺もつい先程涼介さんから聞いたばかりで何故そうなったのかはわからないが。途轍もなく不味い状況になったということだけは確かだ…」

 

 「そんな…彼のハチロクはもう限界寸前だというのに、私の忠告を無視しては何てバカなことを…」

 

 「松橋。車の状態を気にせず走らせることにお前が憤りを見せるのは分かるが、バトルが行われている以上結果がどうなったか涼介さんからの報告を待つしかないんだ」

 

 

 場所は赤城から少し離れた某整備工場へと移り変わり。そこで働いている松橋七奈は拓海が赤城に向かったと先輩である松本から話を聞いては驚きを隠せず大声を出し。

 松本は怒り気味になってるであろう七奈を落ち着かせては冷静になるよう注意する。

 

 

 「(拓海君…。あなたが何故赤城に行っては勝ち目のないバトルをしてるのか私には理解できないけど、ただ一つだけ言えるとするならば…。ハチロクは…攻め込んでいく途中で限界が来てはもう持たないかもしれないわよ…)」

 

 

 七奈は拓海のハチロクがどうなるのかわかりきっていたか、ハチロクはもう限界に近づいては走れなくなると断言するやバトルの結果がどうなるのかを心配しては涼介からの報告を待つしかないのだった。

 

 

 

 

 

 京一のエボⅢに抜かれた拓海はハチロクのエンジンが刻一刻と限界に近づいていることに気付かず、必死に車を飛ばし後ろからエボⅢに食いついては京一の走りに続いていく。

 

 

 「(離れない…。一定の間隔でついて来ている。驚いたぜ!!抜かれてからペースを上げてきていやがる…!!)」

 

 

 後ろから追いかけてくるハチロクを見た京一は拓海の常識外れな走りに脅威を抱きつつ。それに抜かれまいとエボⅢのパワーを最大限まで振り絞っては赤城の峠を下っていき。勝負は中間セクションへと突入するのである。

 

 

 

 

 

 キキィ

 

 

 「ちーっす」

 

 「ようタケル、こっちに戻って来たか」

 

 「あ、タケル君。もう…私を置いてくなんて酷いじゃないのよ」

 

 「ごめん。拓海がなんでここに来たか知りたくて躍起になっちゃって」

 

 

 涼介達のいるエリアに割って入ってきたのはつい先程エンペラーの清次とのバトルを制したタケルであり。ルドルフから借りたエボⅨを近くに停めて涼介達の元に来てはすぐさま結衣から説教を受けるのであった。

 

 

 「それはそうと瀬名さん、拓海はどうなっているかわかります?」

 

 「ハチロクはエボⅢに中間セクションに入る手前で抜かれては不利な局面に陥ったと連絡が入った。今ハチロクが後ろについてはエボⅢに食いついているって話みたいだ」

 

 「そうですか。やはり拓海でも須藤京一を相手にするのは無理がありましたか…」

 

 

 無謀な挑戦とはいえ、京一のエボⅢ相手にハチロクでは歯が立たないと聞いたタケルはこうなるとわかりきっていたか平然とするも、啓介はランエボに乗ってきたタケルに近づいてきては話しかける。

 

 

 「おい斎藤。俺達のいる赤城でランエボに乗ってバトルするなんざいい度胸してるじゃねえか。まさかお前、スイスポからそいつに乗り換えようって言うんじゃないだろうな?」

 

 「いえ、そんなつもりはありませんよ。僕はこの先もずっとスイスポに乗り続けていくつもりですから乗り換えるなんて真似はしませんよ」

 

 「へっ…それを聞いては安心したぜ。お前にはランエボなんかよりもそっちの方が似合ってるからな」

 

 「そりゃそうですよ。この車は性能が良すぎては僕なんかが乗っても速く走れますし、もし僕が完全にランエボに乗り換えでもしたら、啓介さんのFDなんか全然目じゃありませんからね」

 

 

 ビキビキ

 

 

 「上等じゃねえか斎藤!!てめえのその調子こいた鼻をへし折ってやろうじゃんかよ!!」

 

 「うわっ、啓介さん!!今のは冗談ですよ冗談。そんな真に受けなくても…」

 

 「タケル君、今の発言は流石に言い過ぎだと思うわ」

 

 「いくらランエボを乗りこなすことができたとはいえ、啓介相手にそれはちょっとばかし度が過ぎてるぞ」

 

 

 タケルがスイスポに乗り続けていくと聞いた啓介は安心したような顔をしてはホッとするも、タケルがランエボに乗り換えたら自分のFDとは相手にならないという発言にブチギレては青筋を立て、タケルの胸ぐらを掴み。タケルが調子こいたことに結衣と瀬那は呆れるしかなく。

 それを見た涼介もフッと笑みを浮かべながらも切り替えては今行われているバトルについて話す。

 

 

 「斎藤、お前は京一のエボⅢにはあるものが載っていることに気付いていたか?」

 

 「ええ、ミスファイアリングシステムですよね。ここに来る前に須藤京一があなたに勝つ為に用意した秘密兵器だと浩二さんが教えてくれましたよ」

 

 「やはり知っていたか。今の京一のエボⅢはおそらくお前のスイスポでも適わないかもしれないぞ」

 

 「そうでしょうか。あのエボⅢはラリーカーに限りなく近いですし、僕のスイスポはエボⅢには及びませんけど、だからといって勝負に負ける気はありませんよ」

 

 「ふっ。まあいい…。あのエボⅢは途轍もない相手だということだけは知っておくことだな」

 

 

 ミスファイアリングシステムを搭載したエボⅢ相手にスイスポでは歯が立たないと言われたタケルは車の性能差では敵わないとはいえ、負けたと決まったわけではないと涼介に言い返し。涼介はそれを聞き流してはミスファイアリングシステムについてタケルを含む全員に言う。

 

 

 「一般には…ターボ車は立ち上がり勝負、NAは突っ込み勝負。わかりやすく大雑把に言えばそれが峠のセオリーだ。ところが、あのミスファイアリングシステムって奴はターボマシンのトルクとNAマシンのレスポンスの両方を同時に実現させてしまう…」

 

 「京一程の腕ならそれを載せた車を使いこなすなんざお手の物だからな。あのエボⅢはおそらくとんでもないコーナリングマシンに仕上がっているに違いないし、突っ込んでよし立ち上がってよしの正にドッグファイト御用達の一台になっているからな」

 

 

 涼介と瀬那が京一のエボⅢについて解説し、それを聞いた啓介はハチロクには重荷だと思ったか二人に反論する。

 

 

 「やっぱり無謀だぜこのバトルは…!!」

 

 「これは最初から速さを競うバトルじゃないのさ」

 

 「え?どういうことですか…?」

 

 「拓海はおそらく考えなしに突っ走っては京一とバトルしてると涼介は言いたいのだろ。そうでなきゃ態々地元でもない場所で京一とバトルする筈がないからな」

 

 「大方風間の言う通りだ。この赤城を何本も走り込んでいる京一に対して…藤原拓海はぶっつけ本番だ…。有利とか不利とかそういう概念はどこかにすっ飛んでいる。京一との間に何があったか知らないが…。あいつは初めから勝つ為の材料を全て捨ててきている…」

 

 「けどよ…何のためにそんな無鉄砲なことするんだ…?」

 

 「本人以外にはわからないことさ…。溜め込んだフラストレーションを吐き出したくて走ることもあるだろう…。俺にはそんな風に見えた…」

 

 

 拓海が勝ち負けに関係なしに京一にバトルを挑んでいると涼介は推測し、それに対して啓介はどんな理由でここに来たか涼介に聞くもそれに関しては拓海本人にしかわからずただ怒りをぶつける為に走ってるのではないかと返す。

 

 

 「じゃあ高橋先生の言うことが本当だとしたら…。拓海君は…何に対して怒ってるというのかしら…」

 

 「それについては拓海から聞かないと答えようがないよ…。ただ、言えるとするなら今の拓海は何も考えず怒りに任せてはハチロクをぶっ飛ばしてるってことだけは確かだからね…」

 

 「そうだ。いつもの藤原(あいつ)の走りじゃない…!!ハチロクの甲高いエキゾーストノートは…まるで…怒りの咆哮だぜ」

 

 

 今の拓海は怒りを糧にしてはがむしゃらに走ってるだけだとタケルと涼介は結論付け、バトルの行方がどうなるのかを見届けるのだった。

 

 

 

 

 

 「(まだ…まだ負けねえ…!!)」

 

 

 勝負は中盤のセクションへと突入し、拓海はハチロクを四輪ドリフトで飛ばしていってはエボⅢのケツに食いつき。先頭を行くエボⅢの走りに合わせてはそれに続けていくのだった。

 

 

 「(そういうことか…。奴はコースを知らないからな、先行だと限界一杯まで攻め込んでいなかったんだ…。だが後ろにつけば俺の突っ込みを参考にコースの先を読める…。大したもんだぜあんな非力なポンコツで、エボとハチロクの立ち上がり加速の差を考えれば、奴は俺よりも速いスピードで曲がっている。信じられないことだが…。神業のようなコントロールだ…!!)」

 

 

 自分の走りを見てはそれに合わせガードレール擦れ擦れのコーナーリングで曲がっていくのをバッグミラー越しに見た京一は、自分の走りについてきている拓海の技術の高さに圧倒される。

 

 

 「(どうする…!?タイヤの負担を覚悟でペースを上げるか…!?それともこの先の直線区間まで待ってイージーにパワーを上げるか!?)」

 

 

 京一は車のパワーの差で引き離そうとするか考えていくが、腹を括っては言う。

 

 

 「(ふん。俺らしくもない、答えは初めから決まってる筈だ。ペースを変えたりはしない。ここでカッとしてチャージするのは愚の骨頂だぜ。おそらく清次はそういう負け方をした筈だ…。タイヤの負担をコントロールしてこそ一流。普通のことを普通に熟して勝つのみだ!!)」

 

 

 変に走り方を変えずにタイヤを温存して走っていけば勝てるかのように言い切った京一は、いつもの様な走りで勝ちさえすればそれで構わないと結論付けるのだった。

 

 

 

 

 

 「差は開いていない。寧ろ縮まっている」

 

 「へ?」

 

 「ハチロクは秋名の時よりも速い突っ込みらしい…」

 

 「だろうな…」

 

 「だろうって…兄貴…」

 

 

 中継地点からの報告でハチロクはエボⅢと互角にやり合っていると聞いては意外そうな顔をする啓介だが。涼介はそうなることを見越していた事に啓介は疑問に思うが、そのことについて涼介は淡々と説明を開始する。

 

 

 「赤城の峠の中間セクションは、中字のS字コーナーの連続だ。このセクションでは一つのコーナーが次のコーナーに向けて全開する時間がほんの一瞬に過ぎない。残された殆どの時間は左右どちらかの横Gとの格闘になる。ミスファイアリングシステムを搭載した京一のエボⅢはコーナーからの脱出速度ではハチロクを寄せ付けない。これに対しハチロクはコーナーへのアプローチでそれを詰めるしかないんだ。唯一の武器である軽量を便りにギリギリのレイトブレーキングで突入し、4つのタイヤのトータルなグリップ能力のありったけを注ぎ込んではコーナリングスピードに変えていく。膨大な量の走り込みで自分の体の一部のように馴染んだハチロクをパートナーでなくては到底実現できない、奇跡的なパフォーマンスさ」

 

 「要するに、拓海はまだこのバトルを諦めたわけではないってことだ…。ハチロクという非力な車で京一のエボⅢとここまでやり合うなんざ常識外れにも程があるだろうによ…」

 

 「おそらく…諦めるという感情はないだろう…。奴の意識は、今マシンと一体になっている。それだけだ」

 

 

 涼介は拓海がハチロクと一心同体になってるかのように言い、まだ京一に勝つことを諦めたわけではないと言っては勝負の行方を見ていくのである。

 

 

 

 

 

 「(目一杯コーナーに詰めたつもりでも、ほんのちょっとの全開区間で苦も無く取り返されちまう…。これがパワーの差か…)」

 

 

 絶望的な状況に陥る拓海は限界が近づいてるハチロクのパワーを振り絞り、クルマ任せで余裕の走りをするエボⅢに食らいつこうと抵抗をする。

 拓海にとっては命懸けのコーナリングで削りとったタイムでも、京一にとってはコンマ数秒の差はいとも簡単に取り戻すことができ。二台のバトルは拓海にとって過酷な状況へと移り変わる…

 

 

 

 

 

 はずであった…。

 

 

 

 

 

 「(よくぞここまでついてこれたな…。褒めてやるぜまるで曲芸だ…)」

 

 

 ハチロクで自分について来る拓海を内心評価していく京一だが、すぐさま目の前に集中することに切り替えては呟く。

 

 

 「(頃合いだぜ。ダラダラS字セクションも丁度終わる。次のコーナーを立ち上がってエンジン全開!!俺自身ここからも全開ドライブだ!!一瞬で終わりだ!!)」

 

 

 ここに来て本気を出してきたか。京一は舌なめずりをしては左コーナー直前でフルブレーキングからのシフトダウンで車を減速させ車体を外側に寄せていき。そこから一気に車を傾けてはガードレール擦れ擦れのドリフトでコーナーを横切る。

 

 

 「(走りが変わった…!?)」

 

 

 エボⅢのブレーキングドリフトを見た拓海は京一の走りが豹変したことに気付き。そこから一気にハチロクとの差を引き離されていく。

 

 

 「(このバトルで初めて繰り出すフェイントモーションからのこのアグレッシブなドリフトは俺が勝負を決めに行くという意思表示だぜ!!長いストレートとはお世辞にも言えないが…。ハチロクを振り切るには十分だ!!)」

 

 

 全力を尽くしては拓海を仕留めに行く決意を見せつけようと京一は敢えてドリフトをしては拓海を驚ろかせ。コーナーをくぐり抜けそこから立ち上がり加速でパワーを上げてはハチロクを差を広げるのだった。

 

 

 「(速い。離される…!!ダメか、ダメなのか…!!)」

 

 

 目前に直視するストレートでエボⅢに引き離されては差を広げられてはもう追い付くことができないのかと拓海は不安に駆られ。

 パワーの差で大きく引き離され、もう勝ち目はないのかと絶望を感じたその瞬間。

 

 

 

 

 

 グシャッ

 

 

 

 

 

 ハチロクはエンジンが限界に達したか、フロントから大きな音を出しては失速しては車体をゆらゆらと揺らしては大きく一週回るや後ろ向きで右側のエスケープゾーンに入り、ガードレール寸前で動きを止めたのだった。

 

 

 「……」

 

 

 拓海が動揺しながら車から降りていくと、そこには限界がきてしまったハチロクがボンネットの上からもくもくと白い煙を出しては下にオイルを漏らし。完全に動かなくなったハチロクを目の当たりにした拓海は強いショックを受け涙を流しては立ちつくす。

 そんな中、先を行っていたであろうエボⅢが再び戻ってくるや拓海の後ろで制止してナビシート側の窓を開け、京一は強いショックを受けてるであろう拓海に諭すように言う。

 

 

 「レースの世界ならエンジンブローは負けなんだがな…。初めに言った通り俺はバトルしたつもりはないからな…。現実ってものがよくわかっただろ…。その車はもう寿命だぜ」

 

 「……」

 

 「完全にエンジンが終わってるだろう…。いい機会だからハチロクは潰したらどうだ?いくらコーナーが速く曲がるテクニックがあっても、速い車と遅い車の差は歴然としている…。俺と競い合えるだけの車に乗り換えるまで勝負は預けておくぜ」

 

 

 京一はもうハチロクが走れなくなったと言い放つやこのバトルの決着は別の機会まで取っておくと言い切り。エボⅢを全開に飛ばしてはその場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 「あ、さっきの黒い車がこっち来ますよ…」

 

 「どうやら拓海との間に何らかのトラブルが合っては勝負が終わったみたいだが、一体どうなったんだ…」

 

 

 バトルの行方を待ち構えていた涼介達のいるところにエボⅢが戻ってきては涼介達の前に車を停め、京一が降りてきては涼介と対峙する。

 

 

 「何かあったのか?」

 

 「こんなもんさハチロク相手に…。余興みたいなもんだからさ…」

 

 「余興?それにしては余裕がなかったようだが?」

 

 「いやァ…余興にもなんねえな。これからって時にエンジンブローでハチロクはお釈迦だ」

 

 「!?」

 

 「そんな…。ハチロクが…エンジンブロー…ですって…!?」

 

 「馬鹿野郎が…!!」

 

 

 拓海のハチロクがエンジンブローを起こしては走れなくなったことに涼介は勿論、タケルを含む全員が驚愕するのだった。

 

 

 

 

 

 「ハチロクが負けたらしいぜ…」

 

 「本当かよ…」

 

 「レッドサンズの連中が騒いでる…」

 

 「エンジンが逝かれちまったらしいぜ…」

 

 「やっぱパワーのあるエボⅢには敵わなかったか…」

 

 

 ハチロクがエンジンブローを起こしては負けてしまったという知らせは早くも、赤城にいた走り屋達に知れ渡っていき。無敗を誇っていた秋名のハチロクが負けたことに群馬の走り屋は皆、衝撃を受けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 「メインイベントは週末まで取っておこう…。楽しみにしておくよ」

 

 「僕もその日は絶対に駆けつけますから、いい勝負を期待してますよ。勿論、乗ってくる車はランエボではなくスイスポですけどね」

 

 「けっ、余裕こいていられるのも今のうちだぜ。高橋涼介、お前とそこにいるスイスポの小僧をぶちのめして群馬エリアは俺達エンペラーが完全に制覇してやるぜ!!」

 

 

 涼介とタケルが赤城を後にする京一に別れを告げるや京一はエボⅢに乗りながらも二人に勝利宣言を言い放ち。エボⅢを全開に飛ばしては赤城を後にするのだった。

 

 

 「タケル君…」

 

 「分かってるよ…。今から拓海のところに行っては様子を見に行かないと」

 

 「結衣ちゃんは俺が自宅まで送っていって上げるよ。拓海については任せたぞ」

 

 

 結衣から拓海のいる場所に行って上げてはどうかと聞かれては、即座に向かうと決め。エボⅨを飛ばしては拓海がいるであろう赤城の中間セクションへと車を運ばせていくのだった。

 

 

 

 

 

 「……」

 

 「拓海…」

 

 

 拓海がいるであろう赤城の中間セクションにあるエスケープゾーンに行くと、そこには動かなくなったハチロクのドライブシートに座り込んではショックを受けている拓海がおり。それを見たタケルは想像以上に落ち込んでいるであろう拓海にどう声を掛けたらいいか、言葉に行き詰まるしかなかった。

 すると、どこからかヘッドライトの灯りを灯しては中型のレッカー車が近づいてくるとハチロクの前に止まっていき。そこには拓海の父である文太がレッカー車を運転していたのだった。

 

 

 「よォ…」

 

 「お、親父…」

 

 

 文太はレッカー車から降りてくるやハチロクのボンネットを開け、焼け焦げてしまったエンジンを見ては押し黙り。そっとボンネットを閉めていく。

 

 

 「あの、どうして拓海が赤城にいると知ったのですか?」

 

 「それについては後だ。さっさとやることをやっちまおう。乗っけるぞ車」

 

 「わ、わかりました…」

 

 

 文太に言われるがままタケルは拓海と共にハチロクをレッカー車に載せる手伝いをし、文太がレッカーの床を下に下ろしていくと。タケルがレッカー車の牽引ロープをハチロクに取り付け、それを確認した拓海がウィンチを作動するとハチロクはズルズルとウィンチに引っ張られていってはレッカー車の床に載せられていき。それを見た拓海は何とも言えない複雑な気持ちになるのだった。

 

 

 「何やってたんだ…。ボーっとしてないで早く乗れ」

 

 「ああ…」

 

 「すまねえな、手伝ってもらって…」

 

 「いえ、これくらい別に大したことじゃありませんから…」

 

 「そうかい。んじゃ、俺は拓海を連れて帰るが。お前さんも気を付けて戻ることだな」

 

 

 文太は拓海をレッカー車に乗せては赤城を走り去っていき。この場に一人だけ残ったであろうタケルはその場で立ちつくしては見送るのだった。




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