秋名山 夜
「うわっ…!?またドアンダーを出しちゃった…!!」
「気にすることはないよ。今は夜だからここはあまり通らないし、対向車は僕が見ておくから、走りに専念するんだ」
「了解です…レオさん」
左ハンドルの車に乗っては視点を変えてみてはどうかというレオの提案に乗ったタケルは、レオが持ってきたプジョー・206を借りていくが。初めて乗る左ハンドルの操作に手こずり、秋名のコーナーを抜けていくのにシフトを右手で変えてはブレーキングし、途中アンダーを出しながらも慎重に運転していっては感覚を覚えようとする。
「どうだいタケル君。左ハンドルに乗ってみての感想は?」
「そうですね。ドライビングポジションを変えただけでこんなにも走りにくくなると思いませんでしたよ。普段右ハンドルで運転してますからシフト操作も逆になっては慣れないですし、右コーナーを曲がっていくのに前が見えにくくなっては曲がりにくいですからね。こればっかしは僕といえど苦労する気がしますよ…」
「君がそう思うのは無理はないよ。左ハンドルは走りの感覚が得やすくなっては視界が良くなるけど、日本では左側通行がスタンダードで左ハンドルは適さないから走りにくく感じるのは当然だよ。でも、その不利な条件を乗り越え、克服さえすればドライバーの底上げをすることもできるんだよ」
レオは左ハンドルで乗ることがどれほど難しいか語っていくき、206のステアリングを握っているタケルは秋名の峠を流していく中であることに気付く。
「この車…205T16よりかはパワーは抑えられてはいるとはいえ、中低速域からのトルクが太く、フィーリングもよくて走りやすいですけど…。そういう仕様になってるんですか?」
「御名答。君が操作してるこの206RCはプジョーがWRCでマニファクチュラーズタイトルを3年連続で獲得したのを機に作った特別仕様のモデルでね。スポーティモデルのS16をベースに2リッターのエンジンを載せては足回りも強化が施されては中低速域からのトラクションも良くなり、コーナーの立ち上がりで出だしが良くなるなど改良に改良を重ねた至極の逸品なんだ」
「へぇ〜そうだったんですか…。206は2000年以降の世界ラリーで活躍してはプジョーの黄金時代を再び築き上げた一台として有名なのは聞いたことありましたけど、そんなロマン溢れるモデルに乗れるとなると感激しますよ…」
レオからプジョー・206RCについて軽く説明を聞き、自分が乗ってる車がどれほど優れた車なのかを実感したタケルは、その素性の良さに感動するや、乗せてくれたからには集中していかなければならないと気合を入れては練習に励むのだった。
レオとの特訓を開始してから数時間が経過。時刻は日付が変わる寸前の11時過ぎとなっており、走り終えたタケルとレオは麓の駐車場にて休憩するのである。
「よしっ。今日はここまでにするか。明日もあることだし、後はタケル君が自分で考えては車を走ら続けることだよ」
「はい、態々秋名に来てくれては練習に付き合ってくださりありがとうございます!!」
夜遅くまで練習に付き合ってくれたレオにお礼を言っては頭を下げ。レオの指導もあってかドラテクに磨きが掛かったとタケルは言う。
「それじゃあ僕はここで失礼するけど…くれぐれも事故には気を付けることだよ…。そうだ。今僕が住んでるマンションに妹のアンナが遊びに来ていてね。もしタケル君が大丈夫だというなら、今度うちに招待してはアンナが手作りのお菓子を振る舞うと言っていたよ」
「いいのですか?フランスのスイーツといえば甘くておいしいのもありますし、見た目も華やかで最高なヤツですよね」
「そうだよ。味に関しては僕が保証するよ。何せアンナはフランスで菓子職人をしてる母直々に教わっているからね」
「おおっ…!!それは是非ともお呼ばれしたいです!!」
「そうかい、そう言ってくれるとアンナも喜ぶに違いないよ。Salut(またね) タケル君、君とはまた会えるのを楽しみにしておくよ」
いずれ近いうちにタケルを自宅に招待するとレオが言うと。タケルはアンナの手作りのスイーツが食べれることに喜びを見せ。
レオはタケルに検討を祈るよう言い残してはプジョー・206に乗っては秋名を走り去っていき。その場に残ったタケルは再びヴィッツに乗り込んでは言う。
「レオさんには走らせ方に関して色々と教わったんだ。これを無駄にしないよう走り込みを続けていくとするか…」
レオから教わったことを大切にしては、次の段階へ進もうとするタケル。スイスポが仕上がるまでの間、タケルは自分の限界をどこまで底上げすることができるだろうか。
「姉ちゃん、迎えに来たよ」
「ありがとうタケル。今肌寒くなっては外にいるだけでも大変なのに、迎えに来てくれるなんて本当助かるわ」
時刻は午前5時過ぎ、タケルはヴィッツで夜勤を終えた姉の遥香を迎えに行くや、仕事でクタクタになってるであろう遥香を助手席に乗せ。早速車を走らせてはホテルを後にする。
「へへっ、もう慣れたから別にこれくらい平気さ。姉ちゃんには世話をかけてばっかしだからね」
「そう…。タケルがそう言ってくれるなら気使わずに済みそうね…」
赤城での一件でまだ負けたことを引きずってるであろうタケルを遥香は心配するが、タケルはいつものような笑みを見せては元気であるのを見せつけては遥香を安堵させる。
ブォオオオン
「ん?」
姉を乗せては自宅に帰る途中で、聞きなれたエンジン音が響いてはタケルが乗るヴィッツの横を通り過ぎていった。
「あれ?拓海のハチロクじゃないか。ひょっとしてもう車が直っては豆腐の配達でもしに来たのかな?」
見慣れた白黒のハチロクが通るのを目撃したタケルは、拓海のハチロクが直ったと直感で感じる。
「姉ちゃん、ちょっと拓海と話をしたいから麓の駐車場に車停めてもいい?」
「いいわよ。少しくらい話してもいいけど、あまり長引かせないでよね」
秋名山 麓 駐車場
タケルは運転を麓の駐車場に着くや、下りのゴール地点となっている場所の近くに車を停め。ハチロクが下りてくるのを待つ。
ブォオオオン
「おっ、来た来た…早速拓海をこっちに呼び寄せては走った感想を聞くとするか」
エンジンを載せ替えては再び走れるようになったハチロクについて聞き出そうと、タケルは車のハザードを点灯させてはハチロクに合図を送り、それに気付いたハチロクは進路方向をタケルがいるスペースに来てはその場で停止し、中から拓海が出てきてはタケルと鉢合わせる。
「よっ、拓海。ハチロク、直ったのか…」
「…そうだけど、どうしてお前がここにいるんだよ」
「何っ、ついさっきまでここで車を走らせては姉ちゃんを迎えに来たたからに決まってるでしょ。スイスポを勇さんの工場に預けてる今、このヴィッツに乗っては腕を磨いてる最中だったんだ」
「…そうか」
拓海はまだタケルのことを許していなかったか、近寄り難い雰囲気を見せるも。これ以上仲違いを起こしては意味がないと思ったか、タケルは今までのことを忘れたかのような感じで接しては拓海に話しかける。
「ところで拓海、そのハチロクはエンジンを載せ替えたんだろ。どう変わったか聞かせてくれる?」
「どうって…前よりかはハンドルとクラッチが固くなっては乗りにくくなったのもそうだけど、なんて言ったらいいか…
「え?
「いや、俺もよく分からないけど…。前に乗った時と比べて今まで思い通りにやれたことができなくて…。悔しいってことだけは言えるかな…」
「…そう。拓海がそういうのなら信じる他ないね」
エンジンを載せ替えてはパワーアップしてるであろうハチロクがまさかの馬力が落ちては乗りにくくなったことに疑問を持ち。載せているエンジンについては、性能が上がる筈が逆に落ちていると拓海が言うからには本当のことであると信じる他ないのだった。
鈴木自動車整備工場
その日の夕方、学校を終えたタケルは帰宅してすぐさま政志のいる整備工場に出向き。そこの主である政志から拓海のハチロクについて話を聞こうとする。
「おじさん。拓海のハチロクには例のエンジンに載せ替えたんだよね?」
「おうっ、文太と一緒にしたんだから間違いはねえぞ。何故それを聞きにきたんだ」
「だって、拓海が言うからにはパワーが落ちては扱い難いって不満が出たんだよ。だったら整備に不手際があったとしか考えられないじゃないか」
「なるほどな。まぁ文太の倅が言うことはあながち間違っちゃいねえよ。何せハチロクにはある物を取り付けていないからな」
「え?ある物って…」
「それに関してはだなタケル。今、ハチロクに載せているエンジンの本領を発揮するのに必要なパーツを取り付けていないからだよ。文太が言うに息子に自分で考えさせてはその答えに辿り着くまで絶対にするんじゃねえぞって達しがくるぐらいだからな」
「はぁ…」
政志がまるで意味深なことを言っていることにタケルは疑問を抱くしかなく。拓海がその答えに気付くのを待つしかなかったのであった。
「それよりもお前、今日はバイトなんだろ。そろそろ準備しとかねえと不味いんじゃねえのか?」
「へ?あ、もうそんな時間帯になってたの…!?ヤバっ、早くいかないと遅刻するー!!」
政志に言われては時刻が夕方の17時過ぎとなっているのに気付いたタケルは、すぐさま整備工場を後にしてはバイト先である旅館へ一直線に駆け出していくのだった。
高橋家
「秋名のハチロクが蘇った…?」
「ケンタが走ってるとこを見たって話だ…。間違いなく、藤原とうふ店って書いてあったそうだ…」
高橋家でパソコンを打っては論文を書いてる涼介に拓海のハチロクが再び走ってることを聞いた啓介が、兄である涼介にそのことを伝える。
「載せ替えたのかな…新しいエンジンに」
「見ておく必要があるな…」
「ああ…」
高橋兄弟の二人は拓海のハチロクが新しいエンジンに載せ替えたことに興味を示し、ハチロクがどれ程パワーアップしては走りが上がったかを一目見ようと決意するのであった。
旅館 中庭
「おしっ、中庭も綺麗になったことだし。次はお部屋の整頓でもしましょうかね〜」
ギリギリバイトの開始時間に間に合ったタケルは、溜まりに溜まったチューニングの費用を稼ごうとバイトに励み。中庭の掃除を済ましては次の仕事に取り掛かろうとするのであった。
「タケル君、ちょっといいかしらー」
「はい、何でしょうか?」
タケルを呼びつけたのは働いてる旅館の女将さんで、タケルは呼ばれてすぐに女将さんの元に向かう。
「実はね、今日から入る新入りの子の面倒をタケル君にみてほしくてね?その子は私の姪にあたるんだけど、あなたに姪の教育係をお願いしていいかしら?」
「僕が教育係…でありますか?」
「ええ。私の姪、和美っていうんだけど…。気が強くて人当たりがキツい子でね、多分タケル君にならうちの和美を任せられると思ってお願いしたいの」
女将さんは自分の姪っ子をタケルに頼めないかとお願いし、タケルは一度考えるや引き受けることに。
「…いいですよ。女将さんからの頼みとあっちゃ断らないわけにもいきませんし、僕でよければお引き受けいたしますよ」
「そう、じゃあ早速お呼びしようかしら…和美ー。ちょっとこっちに来て頂戴」
「はーい」
女将さんに呼ばれてはタケルの元に来た若い女性。黒髪を一つに束ねては浴衣を着用し、旅館の従業員だという趣を感じさせるような雰囲気を出す。
「じゃあ…タケル君、今日からこの子…うちの和美の面倒をみてもらうわよ」
「はい、おまかせください。えっと和美さんでしたっけ…僕は斎藤丈瑠、よろしくお願いしますね」
「はじめまして、私…秋山和美っていうの。今日からよろしくね、タケル君」
そんなわけでタケルは、今日から入る新人である秋山和美の教育係を任されることになっては手取り足取り教えることになるのだった。
秋名山 早朝
翌日の朝、涼介は啓介を引き連れては秋名山へと赴き。ハチロクがどう変わったかをこの目で確かめようする。
「ふぁ〜あ…。こんな朝早くから秋名に来るなんざ、兄弟揃って熱心だな。…」
「そういうお前こそ、ハチロクが蘇ったと聞きつけては観に来るなんざどうかしてるぞ…。ま、お互い考えてることは一緒だけどな」
秋名には高橋兄弟と同じ赤城の走り屋である瀬名も来ていてはハチロクを見ようと駆けつけており。瀬名は呑気に欠伸をしてはハチロクが通り過ぎるのを待つ。
グォオオオン
「来た…」
「(このエンジン音は…)」
早朝なのもあってか山頂付近は霧がかっては見えにくくなってはいたが、リトラクタブルのヘッドライトに照らされ一台の車が下りては涼介達のいる箇所に近づく。
「「「!!」」」
そこで三人が目撃した車、正真正銘パンダトレノのハチロクで。ハチロクは颯爽と涼介達の横を横切り。過ぎ去っていくのだった。
「兄貴、今のは…」
「ああ…。まだ充分に乗りこなせていないようだが…。恐ろしい車になって蘇ったもんだ…」
「そうだな。ノーマルの4A-Gにしては音が違ってたからな。多分あのハチロクはいつもとは違う高性能なヤツを載せてるに違いない。拓海の奴、どこであんなヤバいモンを手に入れたってんだ…」
新しく生まれ変わったハチロクに三者三様で走行シーンを見た感想を口にし。拓海のハチロクが再び走れるようになっただけじゃなく、更に戦闘力が上がったに違いないと確信を得るのだった。
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