頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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ACT.85 スイスポ対決 中編

 ガソリンスタンド

 

 

 「えぇっ!?タケルが藤咲と赤城でバトルしてるんすかァ…!?あの野郎、俺に一言でも言ってくれたら、絶対に応援に行ってやったのに…!!」

 

 「そう怒るなよ、イツキ。俺もついさっきタケルが給油した時に聞かされては知ったんだが、藤咲から直接バトルを申し込まれては、そのまま赤城へ直行したんだ。あいつも、何か思うところがあったんだろうから、敢えて話さないでいたんだよ…」

 

 「……」

 

 

 スタンドでバイトしていたイツキが、池谷からタケルが玲と赤城でバトルをしていると聞かされては、自分や拓海に言わなかったんだと怒り気味に呟き。タケルなりに事情があったんだろうと池谷が宥め。拓海は無言を貫いては二人の話を聞いていく。

 

 

 「でもですよ、池谷先輩。あの藤咲って子は…前にランエボ相手にスイスポで勝ったって噂じゃありませんか?そんなヤバい相手に、タケルが勝てると本気で思います?」

 

 「どうだろうな…。同じスイスポとはいえ、カート上がりの藤咲とはキャリアの差が全然違うし、峠上がりのタケルがどこまで通用するかは、正直俺にも分からねえよ…」

 

 

 イツキと池谷はタケルが勝つかどうか話をする横で、沈黙を貫いていた拓海が口を開く。

 

 

 「…俺、タケルなら勝つと思いますよ」

 

 「「え?」」

 

 「あいつとは、豆腐の配達中に秋名ですれ違うことがあるんですけど…。最初に走ってた頃と比べて、明らかにキレが増してましたし、ブレーキングも、スムーズにいれてる時もありましたからね…」

 

 「そ、そうなのか…?お前がそこまで言うってことは、タケルは、前よりかは走りのテクニックが上がってることなのか?」

 

 「さあ…。でも、あいつのことですから…、きっと勝って来ては、いつもの様に俺達のところに戻ってくると思いますよ。あいつは昔から、そういう奴ですので…」

 

 

 拓海はそう言いながら、夜空を眺め。タケルが勝つと密かに信じては戻ってくるのを待つのだった。

 

 

 

 

 赤城山

 

 

 「(くっ…。直線の長い区間だと、スーチャー仕様のこいつでは追いつけない…!!ただでさえFFは上りでは荷重が後輪に移っては走り難いっていうのに、こうも引き離されたら、下りで差が縮めれそうにない!!)」

 

 

 赤城で激闘を繰り広げられては二台のスイスポが赤城の道路を駆け上がる。

 ターボ仕様を施した玲のスイスポが先陣を切り、ブーストが一気に回り始めては、排気音が高まる。

 それに負けじとタケルのスイスポが後ろから食いついては後から攻め込み。

 タケルのスイスポはスーチャー仕様にしては、低中速トルクを活かし、コーナー出口からの立ち上がりで食いつき、玲のスイスポに張り付いていくが。直線の長いセクションに入っては、ジワジワと距離を広げられていく。

 

 

 「(どうやらタケル君は上りで苦戦してるみたいだね。本来FFは、車を作るのに必要なコストを抑える為に作られた駆動方式だから…。上り坂では重心が後ろに逃げて、前輪に駆動が伝わりにくく。ターボで武装したボクのスイスポが直線でブーストを乗せれば、こうも簡単に離せちゃうんだよね…)」

 

 

 そう言った玲は中盤からのS字セクションに入っていくや、左足ブレーキで荷重を調整し、インを抉るように曲がっては、コーナーへと突っ込み。立ち上がりでターボを吹き上がらせては、排気音を響き渡らせ。

 タケルもアクセルを早めに開け、スイスポのレスポンスを活かしてはコーナーへと突っ込むが。直線に入ってはまたもや玲のスイスポと差を広げられる。

 

 

 「(このままじゃマズいかもしれない…。スーチャーはコーナー出口の加速でターボには勝るが、直線に入って高回転域での勝負となると、どうしても一歩遅れてしまう…。このままペースを広げられたら、下りに入ってからの勝負で攻めても追いつけなくなる…!!)」

 

 

 タケルは自分のスイスポがスーチャー仕様故に、直線での伸びで玲のスイスポに遅れをとっているのを痛感しながらも。後ろから玲の走りを観察する。

 

 

 「(コーナー侵入のあの左足ブレーキ。出口からの立ち上も一切無駄がない。理想的なライン取りをしては、次の直線へと加速に繋げている…。流石にカートをやってただけに走りには無駄がない…!!)」

 

 

 峠上がりである自分が、カート上がりの玲を相手にどこまでやり合えるか。そう考えながら車を飛ばし。

 S字セクションを抜けては道が開き、次の直線へと入っていく二台のスイスポ。それぞれがスーチャーとターボの持ち味を活かしては赤城の峠を駆け上がり。

 ターボを載せた玲のスイスポが一歩リードをしてはタケルのスイスポがそれに食いつく。

 しかし、玲のスイスポターボが直線に入るや一変し。載せているターボがフルブーストに達し、強烈な加速を生み出しては車体を押し上げ。

 その走りを後ろから見たタケルは、差が広げられては焦りを見せるも、それに離されないよう後ろから追う。

 

 

 「(バトルはまだ上りを走っているから、この先のことはまだ何とも言えないけど…。上りで玲さんに追いつき、赤城を上りきってUターンする瞬間、下りからのバトルで一気に巻き返す!!)」

 

 「(ふふっ…。君の狙いはお見通しだよ…。上りで無理に追わずにタイヤを温存させ、下りに入ってから逆転しようとする気だね…。でも、それまでに差をどこまで縮められるのか…。ボクとの差を保てるかどうか、そこで全てが決まると言っても過言じゃないからね…)」

 

 

 バックミラー越しにタケルの走りを見た玲は、一瞥して静かに微笑み。タケルが赤城を上りきっては下りに入るセクションで勝負を付けると読みとっては、それに合わせて行きながら峠を上り続けるのであった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 赤城 頂上

 

 

 「二台の差は…然程広がっていないようだ。中継地点に立たせてるマーシャルからの報告だと、二台はコーナーに入る度にその差を詰めてるとのことだ」

 

 

 頂上で待機してる涼介達に無線機を通じてはスイスポの状況を史浩が事細かに伝え。

 涼介は腕を組みながらもそのことに驚いておらず、寧ろわかりきっていたのかのように公道を眺めては口を開く。

 

 

 「…予想通りだな。上りで藤咲のスイスポターボがリードするのは当然だが、直線が終わってS字や中速コーナーが増える中間セクションでは、斎藤のスーチャー仕様のスイスポのレスポンスの良さが活きてくる。奴は直線で無理に追おうとせず、コーナーで確実に食いついている…。直線ではなくコーナーで差を付けるやり方は藤原と同じと言ったところだ」

 

 「へっ…あいつも案外やるじゃねえか…。上りで全部取り返そうとせず。下りで一気に決めるってところか」

 

 「……」

 

 

 啓介は兄の話を聞いた啓介が、タケルは下りで勝負を決めに行くと予想しては静かにコース上を見ていき。その隣で涼介達と一緒にバトルを見ていた結衣は、静かに佇んでは二人が来るのを待つのだった。

 

 

 「結衣、顔色が悪いみたいだけど…大丈夫?」

 

 

 結衣が心配そうに声をかけ。結衣は少し迷っては緒美に気持ちを語り出す。

 

 

 「ねえ、緒美…。私、どっちを応援したらいいのか分からなくて…。タケル君は、私にとって本当にかけがえのない存在だから負ける姿なんて見たくないし、もし負けたら、どれだけ傷つくかと思うと辛くて…。でも、玲さんも…ここ最近知り合ったばかりだけど、あんなに明るく振る舞って、私達に勇しくしてくれる子が負けるのも…見たくないの…」

 

 「…結衣」

 

 

 結衣が心の中に溜め込んでいる不安を緒美に打ち明かし。それを緒美が押し黙っては聞いていくと、麓から車のエンジン音が響いては近づいてくことに気付く。

 

 

 「来るぞ!!二台ともこっちに突っ込んでは旋回する!!」

 

 

 啓介の鋭い言葉が響いたその瞬間、頂上にいた全員が一斉にコース上に目を向けていくと。二つのヘッドライトが近づいてくと、

 玲のスイスポが頭を取っては走るにつれ、それに続けてはタケルのスイスポが後ろから食らいつく。二台は頂上のコースに設けられたパイロンを横切るように旋回し、タイヤのグリップを上手く路面に当て。そのまま車体をUターンさせて勢いを付けては下り方面へと突き進み。下りのバトルに突入しては峠を下りていくのだった。

 

 

 「凄いわ…!!二人が車を走らせるのを見るのは初めてとはいえ…。あんなにも慣れたようにここを曲がっていくなんて、凄すぎるとしか言葉がでないよ…」

 

 「どうやら、斎藤はタイヤを上手く温存させて上りを乗り切ったようだな…。後半の下りで、フロントタイマに最も負荷も負荷がかかる下りをどう攻め込むかで勝負が決まる…」

 

 「ああ、FFのスイスポは下りに入ってからが本番だからな。上りで差を付けられたこの展開を…。どう巻き返せるかはあいつの腕次第ってところか…」

 

 「タケル君、玲さん…」

 

 

 高橋兄弟と緒美が目の前を駆け下りていく二台のスイスポを見つめながら話していき。その横で、結衣は両手を組み、タケルと玲が無事を祈っていくのであった。

 

 

 

 

 

 先程まで上りを走り続けていた二台は、下りに突入するや、その差を少しずつ縮めていく。

 赤城の下り序盤のS字コーナーが続く低速セクションにて。二台のスイスポはFF特有のアンダーステアが出やすい局面であるにも関わらずそれを難なく曲がり切っていき。

 玲はカートで磨き上げた精密なステアリング操作と左足ブレーキで、理想的なライン取りをしてはリズム良くS字コーナーへと繋いでいき。

 タケルも峠ならではの走りを活かした技術(テクニック)とバランス感覚で車体をイン側に滑り込ませては、難なくクリアする。

 

 

 「(ふふっ…やはり下りになって本気を出してきたか…。FFのスイスポが真価を発揮できる下りで、峠上がりの君がボクとどう食らいつくのか、試させてもらうよ…!!)」

 

 

 玲はバックミラー越しに迫り来るタケルのスイスポを観察し、下りに突入してからのタケルの走りは潜在能力(ポテンシャル)を発揮するが。それを見た玲は興奮を覚えるも、冷静さを保ったままアクセルを踏み込んでは、左足ブレーキで調整し。タービンを全開にしては、マフラーから火花が飛び散るも。ターボのブーストを最大限に活かしては赤城の下りを攻め立てる。

 

 

 「(くっ…!!下りならフロントに荷重が乗って走りやすくなると思っていたのに…。向こうのスイスポも同じ恩恵を受けている…!!)」

 

 

 タケルは下りに入っては積極的に玲のスイスポとの距離を詰めようと試みるも、両者共にスイスポの下りの特性である前輪荷重の恩恵を受け、玲はターボエンジンによる高回転域での加速で引き離そうとし。

 タケルは必死にステアリングを切っては、遅めのブレーキングで食いつこうとするが、上りを走っていた状況と変わらず。差は縮まらないでいた。

 

 

 「(今はS字が続く低速セクションだから差は縮まらないけど…。その先の長い直線区間に入ったら、また離されてしまう…。ここを切り抜けるには一体どうすれば…。待てよ、前に勇さんと一緒に群サイを走った時に、勇さんは言ってたよね…)」

 

 

 タケルは必死に頭を張り巡らせては、玲にどう勝てばいいのか考えを巡らせ。走っていく中で、勇から教わったアドバイスを思い出す。

 

 

 

 

 

 話は拓海が高橋涼介との一騎打ちに勝利した翌日に遡り、タケルが勇に連れられては群サイに来てはそのコース上を走っていく。。

 タケルはチューニングしたスイスポのナビシートに座る勇から、マンツーマンで指導を受けては、ある重要なアドバイスを受ける。

 

 

 「タケル。FFを速く走らせるのに必要なのは…リアを活かした荷重移動だ」

 

 「リアを活かした荷重移動…でありますか?」

 

 

 群サイのコース上を走らせていくタケルに、勇はリアで荷重移動を移してはスイスポを走らせるようにアドバイスし。その理由について説明をする。

 

 

 「FFはFRみたいに後ろから押す感覚で走らせることはできない。駆動軸が前輪にある関係で引っ張る走りになってしまうから、どう走らせようがアンダーが出やすくなる。下手にアクセルを踏みながら曲がろうとすると、前輪に余分な荷重が加わってはタイヤに負荷が掛かっては外に膨らんでしまう…。だからこそ、ブレーキングでしっかり前に荷重を掛け、切っ掛けをつくってはステアリングを切る。そこからコーナーに突っ込み、出口でアクセルを早めに開けつつ、リアの荷重を抜かないようにコントロールするんだ」

 

 「つまり、スイスポの軽いリアを振り子みたいに使っては、イン側に車を引っ張り込めばいいと勇さんは言いたいのですね…」

 

 「そういうことだ。FRは車を滑らせて曲がるけど、FFは前をグリップさせて、最短距離を効率良く抜ける走り方だ。アクセルを全開で踏む時間をどれだけ長くできるか、それがFFの真骨頂だぜ」

 

 

 「なるほど…。その言葉…胸に刻んでおきますね…」

 

 

 タケルは勇からFFの極意を教わり、そのことを胸に留めては今になってようやく思い出したのだった。

 

 

 

 

 

 「(…ははっ。こんな時にそれを思い出すとは…情けないなぁ…。でも、今になって攻略口を掴んだんだ…。それを使ってはこの窮地を切り抜ける…!!)」

 

 

 タケルは呼吸を整えるや、勇から教わった走りに切り替える。

 ブレーキングで荷重を掛け、フロントに荷重が加わる感触を得ては、ステアリングを素早く切る。

 すると、スイスポのリアが振り子のようにイン側へと引き込み。先程までとは違い、キレが生まれ。ラインがシャープになり、コーナーを抜けるスピードが上がっていき。そこからタケルのスイスポは、玲のスイスポのケツに張り付く。

 

 

 「(…な、なんだ?タケル君の走りがさっきよりかは鋭くなっている…?一体何をしたと言うの…!?)」

 

 

 その走りをバックミラー越しに見た玲はタケルの走りに変化が生じたのに気付いたか。ほんの少しではあるが焦りが生まれる。

 

 

 「(ようやく、追いつくことができたんだ。ここから巻き返してはこの勝負に勝つ…!!)」

 

 

 タケルは玲との距離を大幅に縮めることに成功し、そこから攻め立ててはケツに食いつくが。

 このバトルは、どちらに軍配が上がるであろうか…。




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