頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 更新しました。
 もうそろそろThird Stageに行こうかと思いますが、どのような展開にしていくかはまだ決め兼ねていませんので。
 もうしばらくお待ち下さい。


ACT.86 スイスポ対決 後編

 赤城山 麓

 

 

 タケルと玲が赤城の下りを攻めているその頃、麓の駐車場では瀬名が二台が下りてくるのを静かに待ち続け。

 その隣で、真希がストップウォッチを片手に、鋭い視線を向ける。

 

 

 「真希、あの二人がどれくらいのペースで行ってるか、わかるか?」

 

 「ああ…。中継地点からの報告だと、上りではイマイチだったのが、下りに入ってからはまるで水を得た魚のように一気に速くなったと言ってたからな。おそらく、下りだけに限定すれば…、あの二台は啓介と同等か、それに近いタイムを出すと見ていいかもしれないぞ」

 

 「そうか…。俺の想定を超えた走りをしてるのか…。俺としては、タケルには中嶋の出したコースレコードを塗り替えて欲しいと思っていたが、あいつがそれを更新するには、まだ程遠いからな…」

 

 「まあな…。上りも含めたコースとはいえ、下りだけでここまで食いついて来られるだけでも上出来だろ…。後は、あの二人がどこまで本気で攻めてくるかだが…」

 

 

 

 

 

 「そう心配する必要はないわ…。玲ちゃんに限って、同じスイスポ乗りのタケル君に負ける要素なんて、見当たらないと、あたしは思うけど?」

 

 

 声のする方に二人が振り向くと。そこに立っていたのは、前に啓介を相手に負かしたであろうクリスが腕を組んでいたのだった。

 

 

 「だ、誰だよお前は…!?見たところ男みてえだが、なんつー気色悪い話し方をしてるんだよ…」

 

 「ちょっとォ…気色悪いだなんて、失礼な子ねぇ…。そこはちゃんとオネエって言ってほしいわ…」

 

 「……!!」

 

 

 真希が顔を引き攣ると、クリスがムスッとした顔をしては真希を睨んでいくが。

 瀬名はクリスのことを知っていたか、意外そうにしては話しかける。

 

 

 「お前…来栖真琴だよな?」

 

 「ええ、そうよ…。あたしを知ってる走り屋が群馬にいたなんて意外ね…」

 

 「風間…。こいつのことを知ってるのか?」

 

 

 真希がクリスについて尋ねると、瀬名はクリスについて説明する。

 

 

 「こいつは来栖真琴っていって、神奈川エリアじゃあ三強とも呼ばれてる走り屋チームの一つ、『サイドワインダー』のダウンヒルを担当している走り屋でな。その走りは、相手だけじゃなくギャラリーまで魅了する程流麗で華麗だって言われてるぐらいだ」

 

 「ふふっ…君にそう言われると照れちゃうわね…。あたしとしては普通に走ってるつもりなんだけど…」

 

 「…な、何なんだよこいつは…。こんな奴が走り屋の聖地では有名な奴だっていうのかよ…」

 

 

 真希は露骨に顔を顰め。後退りしては呟くも。クリスはそこから話をする。

 

 

 「ま、あたしのことは置いておくとして…。玲ちゃんがタケル君に負ける筈がない理由を説明してあげるわ…」

 

 「?」

 

 

 瀬名と真希が頭に?マークを浮かべるような顔でクリスを見つめ。

 クリスは腕を組んでは、真剣な目でゆっくりと二人に始める。

 

 

 「あの子、普段は男勝りな性格をしては豪快な走りをするけど…。それは悪魔で直線に特化した時の話で。あたしの見立てじゃあ、玲ちゃんが本気を出すとするなら、おそらくコーナー出口からの加速で決めてくる筈よ」

 

 「!! ちょっと待て…!!コーナー出口からの加速って…。つまり、立ち上がりで勝負を決めに行くってことか!?」

 

 「…その話が本当なら、タケルにとってはヤバい展開だな。あいつのスイスポはスーチャー仕様とはいえ、コーナー出口でターボの爆発的な加速に勝負を持ち込まれたら…。更に苦戦を強いられることになるかもしれないぞ…」

 

 

 クリスから話を聞いた瀬名は、コーナーでの勝負で玲が本気を出してしまえば、タケルは敗北を喫するのではないかと不安になるしかないのであった。

 

 

 

 

 

 「(どうやら、君のことを甘く見ていたみたいだね…。ターボを武装したボクのスイスポにここまで追いついてくるなんて、普通じゃ考えられないのに…。群馬最速のスイスポ使いと言われるだけのことはある…)」

 

 

 下りに突入しては、タケルのスイスポに後ろから張りかれた玲は初めて冷や汗を浮かべ。想像していた以上に速く走れることに内心驚きを見せる。

 

 

 「(ここまで来たとなれば…そろそろ本気を出さないといけないね…。タイヤはまだ保っているし、余裕はあるから。次のS字セクションに入ったその瞬間…君にボクの全てを見せてあげるよ…!!)」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 次のS字コーナーにて、本気を出そうと決意したか。玲はアクセルを踏み込み、ターボのブーストを高めるや。S字の中間セクションの手前でフルブレーキングし。車体をイン側に寄せて、荷重を前輪に乗せてコーナーを曲がると。玲のスイスポは爆発的な吹き上がりをしては加速し。その勢いを付けてはタケルのスイスポを突き放す。

 

 

 「(なっ…!?ターボラグが発生しては加速が落ちてる筈なのに、そこから一気に立ち上がっていくだと…!!)」

 

 

 コーナー出口からの加速では、スーチャーを載せているタケルのスイスポが有利の筈が、まさかの逆転をされ。玲のスイスポターボは高回転域に入ると、ブーストを上げては距離を広げていく。コーナーからの加速ではスーチャーが有利である筈が、立ち上がりで負けてしまったことにタケルは動揺する他なかった。

 

 

 「(へへっ…驚いたでしょ?ボクのスイスポはハイレスポンスタービンを仕込んでは、立ち上がりでも一気にブーストが乗るようにしてるんだ…。)」

 

 

 玲はスイスポに搭載しているハイレスポンスタービンを上手く活用し、タケルとの差を広げることに成功する。

 無論、ターボがスーチャーに立ち上がりで勝ることができたのは車の性能だけではなく、玲のドラテクの技量も反してるからで。ターボラグが発生している中、玲はアクセルワークのタイミングを完璧に合わせ、そこから立ち上がりで一気にブーストを掛けては加速させたからこそ。タケルのスイスポをコーナーで突き放すことができたのだ。

 

 

 「(やられた…。まさかターボ相手に立ち上がりで負けてしまうとは思いもしなかった。けど、立ち上がりで遅れをとったとはいえ、まだ勝負が決まったというわけではない…!!)」

 

 

 タケルが荷重移動でリアを軽く流してはコーナーを曲がろうとするが、立ち上がりで再びターボの加速に差を広げられてしまい。タケルはその差を縮めようと次のコーナー手前で決意する。

 

 

 「(見てろ…。そっちがそう来るなら、こっちだってとっておきを見せてやるよ!!)」

 

 

 コーナーに入る直前、タケルはステアリングをちょんちょんと左右に引いてはタイミングを計り、フルブレーキングしては荷重を掛けながら、リアをスライドさせ。スイスポは立ち上がりで再び低速域からの加速で、玲のスイスポのケツに張り付く。

 

 

 「(噓でしょ…!?リアを滑らせ、Fドリしてはコーナーの立ち上がりで加速しただと…!!)」

 

 

 玲は後ろから追うタケルのスイスポがFドリで追いかけてくるのに度肝を抜かれては冷や汗を掻くが。直線でその差を縮めるや冷静に観察する。

 

 

 「(無茶苦茶するなぁタケル君は…。Fドリでコーナーを抜けて立ち上がるなんて、かなりの技量と度胸が要されるのに、それをぶっつけ本番でやってのけるなんて…。技術(テクニック)だけじゃなく肝も座っているんだね…)」

 

 

 自らの走りに追いつこうとする為とはいえ、危険を惜しまないタケルのメンタルの強さに関心する玲は、更に負けじとタービンを回しては引き離し。

 タケルもまた、離されないようFドリ気味のコーナリングで食らいついては差を保ち続ける。

 

 

 「(FFの限界を通り越してはここまで追いついたんだ…。このまま攻め込んでは最後のヘアピンであれを決めては彼女に勝つ…!!)」

 

 

 タケルはもう一つ秘策を思い付いたか。最後の大一番で仕掛けようと画策しては赤城の峠を攻め続け。

 勝負は、終盤戦へと持ち込んでいくのだった。

 

 

 

 

 赤城山 最終セクション 連続ヘアピン

 

 

 「ここでいいのか、京一?こんな分かりにくいところでギャラリーを決め込んでよ」

 

 「何度も言わせるな。ここ以外の場所で、バトルを観る場所など有り得ない」

 

 

 赤城の下り最終セクションの連続ヘアピン。タケルと玲のバトルを観ようと須藤京一を始めとするエンペラー勢が押しかけては石垣の上で観戦し。

 清次が不満気に肩をすくめる横で、京一が腕を組んだまま視線をコース上に向けていく。

 

 

 「お前も熟知している筈だ。この先の右のヘアピンからの左ヘアピン、そこを抜けた先には長い直線区間が待ち構えている。あの二台がタイヤの限界を向かえた状態で勝負を決めるとするなら…ここが最もふさわしい場所だ」

 

 「だろうな…。タイヤが悲鳴を上げてる中で、あの二台のスイスポが大一番で勝負を仕掛けるとするなら、ここ以外思い当たる場所はないからな…」

 

 

 帯同してきた浩二も京一の予想を肯定するや、コース上に目を向けては。タケル達が来るのを待ち侘びる。

 

 

 「けっ…。なんで遥々赤城に来てはスイスポのバトルを観ねえといけねえんだか…。あんなもん、ただ単に軽いボディが持ち味なだけの車のくせに…」

 

 「そうは言うけどよ、清次。お前はそのスイスポにいろは坂で負けた事を、もう忘れたのか?おかげでエンペラーはランエボに乗ってるだけでイキってる連中だと、県内の奴らから舐められる羽目になったんだぞ…」

 

 「うるせえ…!!あの時はハチロクとスイスポに立て続けに負けて調子が悪かったんだ!!次やったら俺が勝つに決まってんだろ!!」

 

 「はぁ?お前が負けたのバトルの殆どは、相手を見誤って過信したが故の結果だろうが。それなのに、次にやったら勝てるとか、どう考えたらそんな結論になるのか聞かせてもらいたいぐらいだよ…」

 

 「んだとォ!!」

 

 「いい加減にしろ二人共。今はバトルを観るのが先決だ。下らない喧嘩をする暇があるなら、コースに集中しろ」

 

 「…ちっ。悪かったな、京一。余計な気を使わせてよ…」

 

 「ああ、今はそんな場合じゃないからな…」

 

 

 京一に一喝された二人は渋々口を閉ざしては静まり、京一と同じようにコース上に視線を向けては。今バトルしているタケル達が、ここを通り過ぎるのを待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(…っつ。フロントタイヤのグリップが落ちてる。上りから突っ込み重視で攻め過ぎては、制動力が欠けてきてる…。どうやら最後まで持つかどうかは…分からなくなってきたね…)」

 

 

 玲のスイスポターボは、序盤から積極的に突っ込みをしては、ゴール直前でタイヤのグリップが限界に近づき。

 タケルを相手にタイヤマネジメントを見誤ったことに玲は気付く。バトルはすでに終盤戦に入ってはゴールが迫っている為、玲にはリタイアするという選択肢はなかった。

 

 

 「(タイヤの感触からして、最後の立ち上がりでの加速はあと一回が限界か…。赤城の下りで最後に決めに行くとすれば…。ヘアピン入り口の右コーナーで決めていくしかないね…)」

 

 

 スイスポターボを走らせながら、最後に仕掛けるポイントを決めた玲は、後方から迫り来るタケルのスイスポを意識していく。

 タケルも後ろからFドリ気味のコーナーリングで差を縮めながら追いかけ。終盤戦の連続ヘアピンに近づいてると知っては呟く。

 

 

 「(そろそろヘアピンに近づいてきたか…。玲さんのスイスポはタイヤが垂れてるに違いないだろうから、ヘアピンに入ってはすぐに決めてやる…!!前回と同じあれで、彼女が開けた隙を付いては一気に突き放す!!)」

 

 

 タケルもヘアピンで仕掛けると決意したか。

 玲のスイスポと距離を保ちながらも、すぐさまヘアピンに近づいては行動に移ろうとする。

 

 

 

 

 

 「来たぞ!!二台の差は然程開いていないみたいだ!!」

 

 

 赤城の最終セクションである連続ヘアピンにて、スイスポが迫って来るのを浩二が声を上げては京一達に知らせていき。

 京一を始めとするエンペラーの三人はコース上に視線を向ける。

 

 

 「どう決めると言うんだ…。こんな狭い道幅でオーバーテイクするなんざ、ありえねってのによ…」

 

 「黙って見てろ…。それがどうなるかは見ていけば分かるからな」

 

 

 タケルのスイスポが前を走る玲のスイスポターボをどう追い抜いて行くのか、清次が疑問を浮かべながら見ていき。京一が大人しくするよう注意していく。

 

 

 

 

 

 「(よしっ、右コーナーに入った。後はこのまま突き進んで左からのヘアピンで一気に加速する。この勝負貰ったよ…タケル君…!!)」

 

 

 玲が右コーナーへ侵入し、次の左ヘアピンに向かって立ち上がろとしたその瞬間、

 

 

 

 

 

 タケルのスイスポが忽然と玲のバックミラーから姿を消した。

 

 

 「え…!?タケル君のスイスポが…消えた!?」

 

 

 タケルのスイスポが視界から消えたことに一瞬動揺し、玲はアクセルをわずかに緩めてしまい。その隙に、タケルのスイスポは玲が開けたイン側のスペースに素早く滑り込み、玲のスイスポターボと並ぶのに成功する。

 

 

 「(いつの間に…!?一体タケル君はどんな仕掛けをしたというの…!?)」

 

 

 玲は何故抜かれたのか考えていくが、タケルはすぐに押さえつけたイン側のスペースを突き進んでは前を陣取ろうとする。

 

 

 「(くっ…!!どうやったのか知らないけど、そう来るというのなら…。最後の立ち上がりをここで決めては君をよりも前に出てやる…!!)」

 

 

 玲はタケルのスイスポに抜かれてたまるかと、立ち上がりでターボを加速させようとアクセルを踏み出したその時、

 

 

 ズルッ

 

 

 「なっ…!?」

 

 

 スイスポターボのフロントタイヤは既に限界を越え。グリップを失った加速が仇となっては外へと膨らんでいき、タケルのスイスポと距離を広げていくのだった。

 

 

 「(そ、そんな…。ここに来て、もう限界に近づいたというのか…?ボクのスイスポが、峠の走り屋に負けるなんて…)」

 

 

 玲はここにきて、負けてしまう事実を受け入れられなかったか動揺してしまうが。タケルのスイスポは更に先へと突き進んではバトルに終止符を打つのであった。

 

 

 

 

 

 「な、なんなんだ今のは!?俺には斎藤のスイスポがあの女のスイスポを抜かしただけに見えたんだが…」

 

 「消えるラインだ…」

 

 「え?」

 

 

 京一が冷静に答えては、消えるラインについて語り出す。

 

 「斎藤は秋名で浩二にやったのと同じ技を決めたんだ。藤咲のスイスポがコーナーに侵入して立ち上がる寸前、バックミラーの死角に入り込み、動揺した隙を付いてイン側を押さえつけた…。あの場面で完璧に決められたら…もう追い越すのは難しい」

 

 「やっぱりな…。タケルの奴、あの状況で決めちまうとは中々やるじゃねえか…」

 

 

 浩二も腕を組んでは自信が味わった消えるラインの記憶をよみがえらせ、苦々しい表情を浮かべるが。

 タケルのスイスポは玲のスイスポを振り切り、赤城の最終直線を駆け下りていっては、京一達の目前から過ぎ去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 赤城山 麓

 

 

 「来たぞ…!!どっちが先に下りてくるんだ…!!」

 

 

 真希の言葉を合図に、麓の駐車場に集まっていた走り屋達が一斉にコースの方へ集中させていく。

 夜の闇を切り裂くように、二つのヘッドライトが迫ってくるや、先頭を走っていたのは…タケルのスイスポだった。

 

 

 「や、やりやがった…!!タケルの野郎、藤咲のスイスポに勝ちやがった!!しかも見てみろよ…。タケルの奴、下りだけに限定すれば啓介とタメを張れるほどのタイムを出しやがったぞ!!」

 

 「そうだな…。来栖からタケルが負けるかも知れないと聞かされた時はどうなるかと思ったが…。見事に抜き返しては戻ってきたか…」

 

 

 真希がタケルの出したコースレコードを見せては盛り上がり、瀬名が満面な笑みを浮かべてはタケルが勝ったことに嬉しそうにする一方、少し離れたところで、クリスは腕を組んだまま静かに二台を見ては言う。

 

 

 「…あの坊やが、玲ちゃんに勝ってしまうなんて…、全く予想していなかったわ…。でも…この負けは、あの子に取って悪いことばかりじゃないと思うわね」

 

 

 クリスは複雑な表情を見せながらも、玲への気遣いと、タケルへの僅かな驚きが混ざった視線を向けては、麓に戻ってきた二台のスイスポを見つめるのだった。




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