頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 ようやくSecondStageが終盤を迎えることができました。
 続きはいつになるかはわかりませんが、書き続けて行きます。


ACT.87 移りゆく季節の中で

 タケルと玲の二人によるスイスポ同士でのバトルは、最終セクションでタケルがオーバーテイクしては勝ち星を上げ。

 玲はタケルと対峙するや、いつものように微笑みを見せる。

 

 

 「いやぁ~参ったよ…。あそこでバックミラーから忽然と消えられちゃあお手上げだね…。へへっ、まさかボクがタケル君に負けるとは思わなかったよ」

 

 

  玲は額に汗を拭うや、タケルに近付き。負けたにも関わらず、満足気な表情を見せつけては手を差し伸べた。

 

 

 「この借りは、絶対に返してあげるから。その時が来るまで、絶対に負けないでよね。次はボクが本気で負かしてやるんだから」

 

 「…ああ、。今日のバトル、君の走りから教わることは沢山あったから、次はもっと速くなっては、君の本気を引き出してあげるよ」

 

 

 タケルは差し伸べたられた手をしっかりと握り返し。固く握手を交わす。

 同じスイスポに乗る走り屋として、熱い絆が赤城で結ばれるのであった。

 

 

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 赤城IC

 

 

 「あ、陸ちゃん…。丁度良かった、あなたに報告しないといけないことがあって電話したのよ…」

 

 

 赤城山から少し離れたIC付近、クリスは車を停めたまま、携帯を耳に当ててタケルと玲のバトルについて話していく。

 

 

 「玲ちゃん…。タケル君にバトルを挑んでは負けちゃったみたいでね。負けた瞬間は物凄く悔しそうだったけど…、今まで見たことがないくらい清々しい顔をしてたわ…。きっと、あの子にとっても良い経験になったんじゃないかしら」

 

 『どうかな…。同じスイスポに乗っては最後の立ち上がりでタイヤが限界に来ては、負けてしまったんだろ?調子に乗って上りを付け加えたりしなけりゃ、下りで勝てたのを、あいつが自分で台無しにしただけだ』

 

 「相変わらず冷たいことを言うわね…。少しくらいは褒めてもいいんじゃないの?」

 

 『ふん。カート上がりのくせに、峠の走り屋に負けるなんざ恥さらしもいいとこだ。素人同然の奴に負けてしまったあいつを褒めるなぞ、更々ねえよ…。俺はスポンサー探しで忙しいから。これ以上無駄話をするというなら切らせてもらうぞ』

 

 「あ、ちょっと陸ちゃん…!何勝手に…」

 

 

 全力を尽くしたであろう玲にひと言くらい言ってやってはどうかとクリスは言うのだが、陸は負けてしまった玲に言葉をかける必要はないと、冷たく突き放すようなことを言っては電話を切るのだった。

 

 

 「んもぉ〜相変わらず自分勝手なんだから…。あの冷たさ、いつになったら直るのかしらね…」

 

 

 クリスは肩をすくめ、携帯をポケットにしまいながら、夜の高速道路を見つめていく。

 そこに、一台の車がこっちに近付き。クリスのS2000の後ろに停め。中から玲が下りてくる。

 

 

 「やぁクリス…。先程のバトル、観に来てたんだ…」

 

 「えぇ…。ちゃんと見てたわ。今日の玲ちゃん、いつも以上にいい走りをしていたわよ…」

 

 「あははっ、やっぱり見てたのか…。まぁ、バトルには負けちゃったけど…。いい走りができたんだし、満足してるよ」

 

 

 玲はいつものように笑ってはいるが、その瞳には悔しさが滲み出ては明らかに潤んでおり。強がる笑顔の裏で、悔しさが滲み出ているのが見て取れる。

 クリスはそんな玲を見ていったは目を細め、口を開くや優しく言う。

 

 

 「玲ちゃん…。無理に振る舞わなくてもいいわよ…。いつものあなたは、陸ちゃんに負かされる度に泣きじゃくってたのを、あたしはちゃんと知ってるんだから、変に誤魔化す必要はなんてないわ」

 

 「ははっ、やっぱり気付いてたんだ…。流石はクリス、何もかもお見通しだね…」

 

 

 玲の声が僅かに震えては堪えていた表情が崩れ。大粒の涙が頬を伝い、彼女はクリスに勢いよく抱きつく。

 

 

 「ひっく…。悔しいよ…。ボク、タケル君には負ける気なんてなかったのに…。男には負けないっていつも言ってるのに…」

 

 「いいわよ、玲ちゃん…。今日は思う存分、泣いていいわ…。あたしがちゃんと受け止めてあげるから…」

 

 

 

 夜の高速道路の端にて、玲はその場で泣き崩れてはクリスに抱き締められ。

 タケルに負けた悔しさを滲ませ、感情を吐き出していくのだった。

 

 

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 学校 屋上

 

 

 「なあタケル。お前、赤城であの藤咲って子とバトルしたんだろ…?結果、どうなったんだよ」

 

 

 穏やかな風が吹いている学校の屋上で、イツキが興味津々で先日の玲とのバトルについて聞いてくると。

 タケルはバトルの結果をこの場にいるイツキ達に話す。

 

 

 「あぁ、それに関しては…紙一重だったよ。僕が勝ったとはいえ、あれ程緊迫したバトルは中々だったんだ。同じスイスポで、立ち上がり加速とライン取りは完璧だったし。ケツに張り詰くだけでもひと苦労したからね」

 

 「ふぅ〜ん…。お前がそこまで言うってことは、相当ヤバい走り屋だったんだな…。」

 

 「まあね。あのバトルを通して、自分がまだ未熟だったってことを思い知らされたくらいだし、次やる機会があるとすれば、多分負けてしまうかもしれないよ」

 

 「…お前がそう言うなら、相当なもんだったんだろうな。」

 

 

 タケルが勝ったことにイツキが嬉しそうな顔をする一方、拓海はいつもの無表情のまま、遠くの景色を眺めては言う。

 

 

 「俺が埼玉で秋山渉とやった時と同じように、同じ車で、そこまで差が出るってことは…あいつの技術(テクニック)が上だったってことだろ。そんな奴を相手に勝つなんて、タケルも少しは成長したんじゃないか…」

 

 「へへっ、拓海にそこまで褒められるとなんか照れるな…。まあ、彼女は本当に速かったんだし。次に会う時がすれば、絶対に負けられないよ…」

 

 

 拓海から走りを評価されては満更でもなさそうに言うタケルではあるが。

 いつかまた、玲とのバトルが来るのに備え。今よりも腕を磨いていこうと決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 神奈川県某所 サーキット併設ピット

 

 

 「そうか。こっちに移ってからの手続きはパパが全部しておくから、お前はちゃんと先生に挨拶をしておくんだぞ。うん。それじゃあ切るぞ」

 

 

 ピッ。

 

 

 群馬から遠く離れた神奈川県某市にあるサーキット場にて、サーキット場に併設されているピットの端で、一人の男が電話越しにいる娘と話を済ませてはため息をつく。

 

 

 「やれやれ…。折角日本に帰ってきて、群馬の母さんの所に預けたと云うのに、今度は俺のところに来るとはな…。相変わらずのジャジャ馬娘だ」

 

 

 そう呟いていくこの男は、名前を藤咲厳といい。

 藤咲玲の父親であり、現在はレーシングチーム『R.T.カタギリ』の監督兼テクニカルアドバイザーを務めている。

 嘗ては神奈川エリアで名の知れた彼は、峠の走り屋からプロの世界に転校し、数多くのレースで実績を残した実力者で。

 名前の通り、厳格で口数の少ない性格から、レーサー時代は『冷徹の鬼』と恐れられていた。

 

 

 「監督。今のはもしかして、娘さんからですか?」

 

 「ん?ああ、皆川か…。まあな。娘がこっちに来て俺のところに住むと言ってな。…全く。勝手に群馬から飛び出してくるなんて、本当に我儘な奴だ」

 

 

 厳に声をかけたのは、チームカタギリの所属レーサー・皆川英雄だった。

 皆川は厳と同じく厳い顔付きをしているが、上司である厳に対しては親しげな口調で話しかける。

 

 

 「そうですか?そう言いながら、監督、随分と嬉しそう顔をしてますけどね」

 

 「へ?」

 

 

 厳は一瞬目を丸くした後、苦笑いを浮かべた。

 

 

 「ははっ、お前にはそう見えるか。まぁ、確かに…娘とまた一緒に過ごせる日が来ると思うと、悪い気はしないな」

 

 

 厳はそう言いながら、窓の外に広がるサーキット場のコースを眺めた。再び小さくため息をつくとは裏腹に、口元は僅かに柔らかい笑みを浮かべており。

 皆川がそれを横目に、厳格で口数の少ないこの男が、一人娘のことを心の底から嬉しがっていることは、チームの誰よりもよく知っていた。

 

 

 「それよりも皆川、お前…最近、長尾峠あたりでかなり振り幅を利かせてるらしいな。そこはどうなんだ?」

 

 「ええ。一応『レーシングチーム・カタギリSV(ストリートバージョン)』という名目で走ってはいますが…元々はギャラリーが勝手に付けた名前です。俺自身はただの憂さ晴らしですよ。レースの合間に、気分転換で峠を走ってるだけなんです…」

 

 「ははっ、まあ、いいじゃないか。俺達の主戦場はサーキットだが、偶には峠を攻めるのも悪くはない。何しろ、峠でしか磨けない感覚もあるからな」

 

 

 厳はプロドライバーである皆川が峠を走っていること対して、咎めずにいようとした。

 寧ろ肯定的に捉え、軽く背中を押すような口調で言葉を続けては、峠で走ることをより勧めていくのであった。

 

 

 

 

 

 数日後。

 

 

 「えぇ!?玲さんが学校を辞めたって!?」

 

 「うん…。タケル君とバトルしたあの日から、急に決まったみたいでね…。私や緒美に何も言わずに、先生に連絡して転校手続きを済ませちゃったの…」

 

 

 この日のタケルは結衣と久しぶりのデートをしており。結衣から玲が群馬から離れたと聞いては一瞬言葉を失うが、結衣と隣合わせで歩いていっては話の続きを聞く。

 

 

 「そうか…。玲さんのお父さんが神奈川にいるって話は聞いてたけど…、こんな急にいなくなるとはね…」

 

 「先生の話だと…。玲さんはお父さんが一緒に暮らすみたいよ。なんでも、玲さんのお父さんはレーシングチームの監督をしてるみたいだから、そこで一からやり直すって…」

 

 「…玲さんらしいね。もし、また会う時があるとすれば、向こうでやり合うと思うけど…。きっと彼女は、メキメキ腕を上げては、僕のところに乗り込んで来るに違いないよ」

 

 

 玲が群馬から離れては神奈川に移り住んだと聞かれたタケルは、口ではリベンジを果たしにくるかもしれないと言い、胸に熱いざわめきを感じる。

 彼女との再会は、先日の赤城よりももっとハードで、より一層激しいものになる。

 そう予感しながら、タケルは遠く神奈川の方へと静かに見つめていくのだった。

 

 

 「それよりもタケル君、折角のデートなんだから何か食べにいきましょうよ。私、さっきから焼きまんじゅうを食べたくて仕方なかったんだ…」

 

 

 結衣が少し上目遣いに言いながら、タケルの袖を軽く引っ張った。

 

 

 「いいね、早速車に乗って、食べに行こうか…」

 

 

 タケルは笑顔で頷き、結衣の手を自然に取った。

二人は並んで駐車場に向かいながら、焼きまんじゅうを食べに行くことにした。

 

 

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 タケルと玲のスイスポ同士の激闘から、数日が経った夜。

 赤城山では、バトルをしている走り屋を涼介が腕を組んだまま、ヘッドライトが織りなす軌跡を見つめては隣に瀬名が突っ立っており。

 その後ろにいた啓介が後ろから声をかける。

 

 

 「兄貴、群馬の選抜チームの編成は?」

 

 

 涼介は後ろを振り向いては、ゆっくりと答える。

 

 

 「候補は絞った…。後は、あの二人が乗ってくれるかどうかだ…」

 

 「どうだろうな…。一人は間違いなく受けてくれるとは思うが、もう一人の方は…気まぐれ次第ってところか…」

 

 

 瀬名は涼介が誘おうとする二人の内、一人は受けると断言しては、もう一人がどうなるかは気分次第ではと予想する。

 

 高橋涼介が密かに構想を練っている群馬の選抜チームとはなんなのか。

 その全貌が明らかになるのは、また後日になるのであった。

 




 次回からはいよいよThirdStageに入っていきます。
 原作沿いにしつつ、溜まりに溜まったリクエストキャラとの絡みも増やしていきたいとは思いますので、応援よろしくお願いします。
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