頭文字D 峠の弾丸   作:ペンギン太郎

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 遂にThird Stageへと突入しました。
 原作に沿いつつ、どう展開していくのか方向は定まってはいませんが。書き続けていくよう頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。


THIRD STAGE
ACT.88 涼介からのオファー


 拓海が秋山渉と、タケルが藤咲玲とバトルしてから、ちょうど2週間が過ぎようとしていたこの日。授業を終えた拓海が帰路に就こうと校舎の廊下を歩いていると。後ろからイツキに話しかけられる。

 

 

 「おーい拓海!!この頃どうなんだ?」

 

 「何がだよ?」

 

 「車だよ、車…。車に決まってんだろ…」

 

 「ああ、調子いいよ…。いい感じで乗れるようになってきた…」

 

 「へぇ~…。エンジン載せ替えてから、あんなに乗りにくいって言ってたのになァ」

 

 「劇的に変化したんだ…。回転計(タコメーター)付けてから。速いぜ、今ウチの車は…」

 

 「え!?ちぇっ、一度でいいから言ってみたいぜ…、そんな台詞。なァ今度、峠で横乗せろよな…」

 

 「いいけど…。怖いぞ?」

 

 「どういう意味だよそれ!?」

 

 「失神すんなよ…」

 

 「なっ!?なんてこと言うんだよ…!!」

 

 

 イツキは生意気なことを言った拓海に蹴りを放ち。それを尻で受けた拓海は笑いながら軽く流してはそのまま廊下を歩き続ける。

 

 

 「…拓海君」

 

 

 廊下の角に身を隠すようにして、二人の後ろ姿を見つめていたのは拓海のガールフレンド、茂木なつきだった。なつきは、軽快に歩いていく拓海の背中を目で追いながら、どうしても複雑な気持ちが胸に広がっていくのを感じていた。

 

 

 「どうしたの茂木さん?思い詰めたような顔をしてるみたいだけど…」

 

 「タケル君…」

 

 

 なつきに話しかけてきたのは、拓海達と同じ走り屋であるタケルで。タケルは、なつきの表情から心境を察しては、声をかけたのだ。

 

 

 「ひょっとして茂木さん、拓海に話しかけるのに躊躇してるのか?」

 

 「え?…うん、そうなの。前にも一度…拓海君と長く話せなかった時期はあるのに…。こんなにも辛い気持ちになったのかなって…」

 

 

 なつきは自分の心に詰まった思いを、タケルに打ち明け。タケルは静かにそれを聞きながら、なつきの話をじっくりと受け止めるや、自分の言葉で答えを返す。

 

 

 「だったら、拓海と話ができるように僕が話を付けてあげるよ。今の拓海は何かと調子いいみたいだし、きっと茂木さんの言うことを聞いてくれるに違いないだろうしね…」

 

 「いいの?そんなお願いをして…」

 

 「別に構わないよ。僕としても、拓海に何があっては茂木さんと距離を置いたのか知らないけど…。二人の関係が修復して欲しいからね」

 

 「…ありがとう、タケル君」

 

 

 タケルはそう言って、拓海となつきが再び元の関係に戻れるよう、手助けすると約束し。なつきは胸のつかえが下りたような安堵を覚え、柔らかく微笑んでは。タケルに感謝の気持ちを伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ガソリンスタンド 夕方

 

 

 「ありがとうございました」

 

 

 学校を終えた拓海とイツキは、いつものようにスタンドでバイトに励み。

 学ランからスタンドの制服に着替えたイツキが給油を終えた車に丁寧に礼をし、車が走り去っていくのを確認すると、スタンドの中に戻っていくと。拓海はボンネットを開けた車を前に、池谷がエンジンの様子を確認しているのをじっと見つめていた。

 

 

 「あれ?拓海、何見てんの…?」

 

 「ん?」

 

 

 イツキの言葉をきっかけに、池谷が後ろを振り返り。近くにいた拓海が、池谷に向かって質問を投げる。

 

 

 「あの…ちょっと、聞いていいですか?」

 

 「何だ?」

 

 「池谷先輩はどういう風にして、メカに強くなったんですか?」

 

 「えぇ?」

 

 

 池谷は、拓海が突然メカについて詳しくなった理由を聞いてきたことに、意外そうな顔をすると。少し考えながら質問に答える。

 

 

 「う~ん…。どういう風にって言われてもー…。俺、高校の時から単車とか弄って遊んでたからな…。自分の車買って弄るようになるとどんどん面白くなるんだよな…。気が付いたら、メカ好きになってたんだ」

 

 

 単車から始めては、次第にのめり込んでいったと池谷が言うと、拓海の横にいたイツキが首を縦に振っては頷き。拓海は真剣な顔をしては話を聞くのだった。

 

 

 「拓海。お前随分とメカに興味出てきたな…」

 

 「いや…、やっと分かったんだ…。なんとなくなんだけど…。例えば、回転計(タコメーター)を付けてエンジンの回転数を上げたら、車自体の性格がガラッと変わっちまう…。メカ次第であんなにも走りが変わってしまうと思ってなかったから…。ドライバーの操作では限界があるわけだし、速くなる為にはもっと色んな知識を身につけないとダメだなって…、つくづく思ったんだ」

 

 

 拓海の口からもっと車について知らなければならないという言葉を聞いた池谷とイツキは、その心境の大きな変化に驚くしかなかった。

 

 

 「くーっ…!!なんて凄い進歩なんだあっ!!」

 

 「確かに…。ついこの頃、夏前までは。ハチロクって呼び方すら知らなかったのにな…。だけど…、タケルと一緒に秋名のダウンヒルで彗星の様にデビューしてからは、連戦連勝だったよな…」

 

 「ですよね。意欲的なタケルと違って、バトルに引っ張りだすのに苦労しましたもんね…」

 

 「そうそう…。あれも今になっちゃ、いい思い出だよ…」

 

 

 池谷は、拓海がタケルと共に走り屋としてデビューして以降、勝ち続け、その名を轟かせていったことを懐かしむように語り。イツキもそれに合わせて、「苦労したな」と小さく呟いていく。

 二人がそうして思い出を振り返っている間、拓海もまた、過去にバトルした相手との記憶を静かに思い返していた。

 

 

 「拓海の奴、バトルする度に進化してますよね…。タケルも拓海に負けじと成長してますし…」

 

 「うん…。ここの所、意欲的だよな…。ホント、急成長だよ…」

 

 

 イツキと池谷が、拓海とこの場にはいないタケルの変化に頷き合っていると、スタンドに一台の車が入ってきて、給油機の前で静かに停止した。

 

 

 「あれ?白のFC…」

 

 「……」

 

 

 スタンドに白いFCが滑り込んでくると、池谷がいらっしゃいませと声をかけながら近づく。車から降りてきたのは、よく知った顔。

 レッドサンズのリーダーの高橋涼介だった。

 

 

 「とりあえずハイオク満タン。入れてもらおうかな…」

 

 

 ガソリンを入れるよう指示した涼介は、ゆっくりと視線を巡らせ、すぐ近くに立つ拓海に目線を留めるのだった。

 

 

 

 

 

 タケル 自宅

 

 

 「ただいまー」

 

 「おかえりなさい。タケル、あなたにお客さんよ」

 

 「えっ、お客さん?誰なんだろう…」

 

 

 拓海達が涼介と会っていたその頃、タケルは自宅に戻り家の中へ入り。姉に出迎えらては客人が来てると言われ。

 タケルがすぐさまリビングの扉を開けると、リビングのソファーに座っている一人の青年に目が入り、青年はタケルに呼びかける。

 

 

 「よぉタケル、先日の赤城以来だな」

 

 「瀬名さん?」

 

 

 リビングにいたのは、レッドサンズと同じ赤城の走り屋である風間瀬名だった。

 瀬名はタケルが帰ってきたことに気付くと、軽く手を振っては話を切り出す。

 

 

 「タケル、帰ってそうそう悪いんだけど、今夜ちょっと時間を空けといてくれないか」

 

 「え?…別にいいですけど、何か用事でもあるのですか?」

 

 「そうだ。っと言っても用があるのは涼介の方なんだが、あいつは今、拓海のところに向かってる最中でな。だから俺が代わりに来てお前のところに寄ったってわけだ」

 

 「涼介さんが…ですか?」

 

 

 瀬名は涼介から頼まれた用件を伝えるや、タケルに今晩時間を空けとくよう達し。タケルはそれを了承する。

 

 

 「涼介は来年の春に向けてある構想を練っている真っ只中でな。それを完成させるのにお前と拓海を呼んだんだ。その事について、詳しいことは涼介本人から聞いといてくれるかな」

 

 

 瀬名はそう言いながら、一枚のメモをタケルに渡していき。タケルがそれを受けると、メモには涼介の携帯の番号が書かれていた。

 

 

 「…じゃあ、今晩、涼介さんと待ち合わせをして、話を聞けばいいんですか?」

 

 「ああ。涼介の番号はここに書いてある。詳しいことは涼介から聞いといてくれ。俺はこの後、別の人物と会う約束があるんでな」

 

 「…わかりました。涼介さんが僕と拓海に何を話すのかは分かりませんが、会って話を聞きますね」

 

 「まあ、深刻に考えすぎないことだ。お前はただ、いつものようにスイスポを走らせればいいんだし。涼介の考えてることは、大抵面白いことになるからな」

 

 

 タケルが戸惑いながら言うや、瀬名はソファーから立ち上がってはタケルに深く考えないよう言い残すと、ソファーから立ち上がってはジャケットの裾を軽く直し、出口に向かって歩き出す。

 

 

 「じゃあな、タケル。今夜はちゃんと時間空けとけよ。連絡は涼介から入る筈だ」

 

 「…はい。気をつけてくださいね、瀬名さん」

 

 

 タケルがそう言っては見送り、瀬名は軽く手を挙げてはリビングを後にした。

 

 

 「(…それはそうと、涼介さんは一体何の用があって僕と拓海を誘ったんだろう…。もしかして、僕達にリベンジを果たしに挑戦状を叩きつけようとしてるんじゃないよね…)」

 

 

 涼介が自分達を誘った理由に、疑問を浮かべるタケルだったが、瀬名から来るよう言われた以上断らないわけにもいかないので。タケルは今夜、涼介と会うことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 駅前児童公園 夜

 

 

 その後、タケルは涼介から連絡を受け、近くの駅前児童公園へと足を運んだ。

 公園の入り口にある街頭の下に、その傍らに涼介が佇んでいるのが見え。タケルが近づくと、すでに拓海も来ていては、一緒に涼介の話を聞き始める。

 

 

 「え!?県外遠征チーム…」

 

 「呼び出されては何を聞かされるかと思いましたけど、聞けば聞くほど…壮大な計画をしようとしてるんですね…」

 

 「そうだ…。このエリアから少数精鋭のメンバーを集めて、県外の峠に遠征し。地元の走り屋達に…バトルを仕掛けていく…。各地のコースレコードを塗り替え、伝説を残して…解散する」

 

 

 涼介が語る県外遠征チームは、県外を渡り歩いてはその爪痕を残していくと二人に話し。

 それを聞かされた拓海とタケルは、涼介が予想を遥かに超える構想を練っていたことに驚くしかできなかった。

 

 

 「俺には…残念ながらあまり時間が残されていない…。後一年ぐらいをリミットと考えている…。それまでに…どうしても、このゲームのエンディングが見たいんだ」

 

 「(…後一年。涼介さんが走り屋として走れるのは、もうそのぐらいしかないってことなんだ…)」

 

 

 タケルは涼介の言葉を聞いて胸がざわめき、複雑な気持ちが込み上げてくるが。涼介はタケルの心中をお構いなしに、本題を切り出した。

 

 

 「単刀直入に言おう…。お前ら二人の技術(テクニック)が欲しい…」

 

 「え…?」

 

 「…それって、僕と拓海を、涼介さんの考える県外遠征チームのメンバーに加えたい…ってことですよね?」

 

 「そうだ。お前達二人…俺達の遠征チームに参加しないか?」

 

 「…俺が?」

 

 「……」

 

 

 拓海は言葉を失い、ただ黙って涼介を見つめていき。

 涼介から来た突然の誘いに、二人は戸惑いを隠せずにいたが。涼介は話を続ける。

 

 

 「お前達二人は俺の連勝記録を止めた男だ。勿論、これは俺のゲームだから協力してくれれば、それなりの見返りを提供できると思っている…」

 

 「見返り?」

 

 「へぇーそれが本当なら乗りたいですけど。具体的にどう返してくれるというのですか?」

 

 

 タケルが見返りをどう返していくか尋ねると、涼介はそれについて説明を開始する。

 

 

 「お前達二人は才能とセンスだけでここまで走り続けてきた…。だけど、そろそろ壁みたいな物に突き当たる筈だ…。壁を越えて更にその上の領域へ向かう為には…。正確な理論に裏打ちされた走りが必要だ…」

 

 「…そう言われれば、確かにそうかもしれないですけど…」

 

 「斎藤…。お前は先日、赤城で藤咲に勝ったとはいえ、まだ心のどこかにしこりが残っている筈だ…。今のままでは、藤咲のような走り屋は勿論、中嶋にリベンジを果たすことは不可能と言っても過言でない」

 

 「ゔっ…」

 

 

 痛いところをズバリと突かれたタケルは思わず息を詰め。涼介はそんなタケルの反応を静かに見つめると、今度は拓海の方に向き直る。

 

 

 「藤原。お前も速くなる為には知識が必要だと気付き始めてるんじゃないか?」

 

 「!!」

 

 「俺にはわかるんだ…。何故なら、お前は弟の啓介とよく似たドライバーだからだ」

 

 「…啓介さんと?」

 

 「…そうですね。拓海はどっちかというと、頭じゃなくて感覚で走るタイプですから、涼介さんの言う事は強ち間違ってはいませんね」

 

 

 涼介から車に関する知識が不足していると指摘され、拓海は大きく目を開き。更に続けて自分は啓介と同じタイプと言われたことで、言葉を失い、押し黙るしかなかった。

 

 

 「天性の才能に理論が加われば無敵だ。お前達二人が一番必要としていることを俺が教える。そういうことは走りの現場で体験しながら覚えるのが一番なんだ」

 

 「(…確かに、自分一人でやるより、涼介さんの元で教わった方が確実に腕は上がる。この提案には乗った方がいいような気がする…)」

 

 

 タケルは内心でそう考えては、涼介の提案に乗ろうかと気持ちが傾き始めるが。拓海の方はまだ結論が出てないのか、ずっと沈黙を続けている。

 

 

 「俺達と一緒にやろうぜ…。考えてみてくれ…」

 

 「「はい…」」

 

 「…いい返事を待っている」

 

 

 そう言い残すと、涼介はFCに乗り込み、エンジンを掛け。

 二人の前をゆっくりと発進し、やがて夜の道路の向こうへと走り去っていった。

 

 

 「拓海。お前は涼介さんからの提案について、どう考えてるんだ…?」

 

 「…まあ。悪くない話だとは思うんだけど。まだ心のどこかに引っかかって、どうも踏ん切りが付かないんだよ」

 

 「…そうか。僕としては絶対に乗った方がいいと思うんだけど、どうしたいのかは自分でちゃんと決めた方がいいよ」

 

 

 タケルは涼介の考える県外遠征チームに加わる方向で気持ちを固めつつあったが、一方、拓海は。まだ迷いが晴れず、はっきりとした答えを出せずにいたのだった。




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