狂って歪んで   作:むきむき

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剥がれた仮面

 

 小学3年生になった。アイツらなかなか手を出してこない。今年でマイシスターが卒業してしまうのでさっさとして欲しいのだが。しかし、だからといって計画が失敗したわけではない。

 わたしを取り巻く環境はとんでもないくらいドッロドロだ。

 

 この学校の男子は全員とある一人の女子生徒を狙っている。つまりみーんな恋敵ってこと。その女子生徒と少し仲良くなった男子は他の男子全員から粛清を受ける。そして他の女子は好きな男子に振り向いてもらえない。もし仲良くなっても、女子生徒に近づくためだったとかだ。そしてその女子生徒はそんな男子に友達のように接して弄んでいる。

 

 つまり一部の女子に蛇蝎の如く嫌われてるってこ•と。

 

 そんなモテ過ぎるあまり嫌われてしまった悲劇のヒロインこそ! 

 

 

 このわたし! 西園寺琴乃だ! 

 

 まぁほんとに一部だけどね。悪いことはしてないし。男子に友達のように接してるけどね、それはわたしが男女平等ってだからだ。別に弄んでいるわけじゃ……ないとは言い切れないが周りから見たらただ無邪気にみんなと遊んでいるだけ。そしたらみんなが勝手に恋してきた。

 

 客観的に見てわたしに非はない。そうなるよう立ち回っているから当たり前だが。

 頭も顔も性格も最高。そんな子が何も悪いことしてないのにいじめられる……そそるなぁ! 

 

 さてと、今日も今日とてみんなが好きな無邪気で元気な琴乃になるか。

 

 本当のわたしなんて出したらどうなってしまうか考えたくもないよ。

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 きた……! 

 

 マイシスターと一緒に家に帰ろうとしたら、下駄箱に手紙が置いてあった。

 

「なんだろう? お姉ちゃん見て見て!」

 

「こ! これは!」

 

「これは?」

 

「……なんでもない」

 

 ふふ、浮かない顔をしているねぇ。

 そう、これは

 

「えーと、『3年1組の教室に一人で来てください』だって! もしかして、ラブレターかな!」

 

「……」

 

 ラブレター! 

 

 ではなくひっそりとわたしを呼び出して良からぬことをするレターだ。文字に憎しみが見える。

 

「わあ。初めてこういうの貰っちゃった。どうしよう。行った方がいいよね」

 

「……そうだね」

 

 妹が普通の青春を送り出したと思い込んで、明らかに落ち込んでるマイシスターを置いて駆け出す。

 

「ちょっと行ってくる!」

 

 わたしもマイシスターと一緒で普通の青春なんて送れないから安心してね。

 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす。……あれ?」

 

 騙された演技をしながら教室に入ると三人ほどの女子がいた。

 

「……えっと、どうしたの?」

 

「あんた、なんかズルしてるでしょ」

 

「え?」

 

「あんたばっかりみんなにちやほやされて、そんなのおかしい!」

 

「テストもいっつも一番だし、走るのもいっつも一番だし! お金とか渡してるんでしょ!」

 

 なんだその理論。

 

 馬鹿らしいとんでも理論だが、小学生だし仕方ない。

 

 ぜんぜん傷つかないが傷つかないといじめられていないみたいなので泣き真似でもするとしよう。

 

「ち、違うもん! そんなことしてない!」

 

 必死に否定しながら泣き真似をする。わたしは演技で涙が出せないのでよくみたら泣いていないのが丸わかりだが、泣きそうになっているのは分かるだろう。

 

「あはは! 必死じゃん! やっぱりそうなんだ!」

 

「やばー! 泣きそうになってる!」

 

「ズルするなんて信じられない!」

 

 調子に乗ってここぞとばかりにマウントをとってくる。

 

 小学生の悪口なんて効きませ〜ん。

 

「それに知ってるんだから。あんたが男子を弄んでるの」

 

「人をいじめて楽しんでるんだ。とんでもない性悪じゃん」

 

「本当のあんたを知ったらみんなあんたのことなんか嫌いになるわ」

 

「ち、ちがう」

 

 それの何が悪い。わたしはそういう人間なんだ。

 

「さっきから違う違うって言うなら証拠はあるの!」

 

「それは……一緒に遊んでるだけで「はぁ?」」

 

「その歳で男子を意識してないの?」

 

 

 

 

 

「分かった! あんた女子が好きなんでしょ!」

 

 

 

「……え?」

 

 

「否定しないんだ! ってことはマジじゃん。きも」

 

 

「わたし達のこともずっとそういう目で見てたんだ!」

 

 

「あんたみたいなやつのことなんて言うか知ってる? 異常者って言うんだよ!」

 

 

 

『異常者め!!』

 

 

 

「うっ……」

 

 な、なんだ。頭が……

 

 

 

『どうして⬛︎⬛︎⬛︎は、そんな酷いことをするの!』

 

 

 

 これは……

 

 

 

『あいつ人が苦しんでるのが好きらしいぞ』

 

 

 

『もっと普通の優しい女の子に育ってよ!』

 

 

 

 前のわたし? 

 

 

 

『⬛︎⬛︎⬛︎はみんなとぜんぜん違うね』

 

 

 

『⬛︎⬛︎⬛︎は頭がおかしい』

 

 

 

『へんなの』

 

 

 

『なんで女の子なのに女の子がすきなの?』

 

 

 

 

 

 

 

『異常者みたい』

 

 

 

「あ……ぅあ」

 

 ポタリと雫が床に落ちる。

 

「あははは! どうしたの?」

 

 わたしは……

 

「ちがくない」

 

「なにが?」

 

「わたしはみんなとちがくない!」

 

「うわ!」

 

 わたしは失敗してない! 

 

 今度はちゃんと演じ切れたはずだ。

 

 みんなが求めるような、みんなと同じの

 

 

 普通の女の子を

 

 

 

「ちっ、暴れんな!」

 

「ぐぅっ」

 

「いきなり暴れるなんてますます異常者じゃん」

 

「わたし達に逆らったらどうなるか教えてやる」

 

 ブチリとランドセルから音が鳴る。

 

「そーれ!」

 

「あっ」

 

 姉と一緒のキーホルダーが……

 

 わたしの「同じ」の証が……

 

 ゴミ箱へ投げ込まれる。

 

「えっ 汚ったな」

 

 取り戻さないと、

 

 

 また「違う」になるのはイヤだ。

 

 

 

「ぷくく、いい気味」

 

「そうだ! いい事思いついた!」

 

 

 

 あった。

 

 

 そのちっぽけなキーホルダーを胸に抱く。

 

 

 これでまた「同じ」だ。

 

 

 

「いっっ」

 

 

 髪を引っ張られる。

 

 

 

「ゴミで汚れちゃったでしょ! 切ってあげる!」

 

 

「……あぇ」

 

 

 

 ジョキジョキと軽快な音が鳴り響く。

 

 

「まっっっやめて!」

 

 

 失われていく

 

 

「いや!」

 

 

 髪が……

 

 

「同じ」が……

 

 

 パツンという音と皮切りに首元が少し涼しくなる。

 

 頭が軽い。

 

 

 何故かは分かりたくもなかった。

 

 

 

 なのに……

 

 

 

「じゃーん! これが新しい顔だよ!」

 

 

 

 手鏡に写ったわたしには姉と違い、肩までしか髪がなかった。

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 こんなはずじゃなかった。

 

 ちょっといじめられて姉の反応を見たかった。

 

 なのに、余計な事を思い出してしまった。

 

 やっぱり、みんなと違うからこうなっちゃったんだ。

 

 中身もみんなと同じになれたら、もっと楽しくいられたんだ。

 

「次はどうしよっかなー」

 

 いや、違う。

 

 わたしはもう⬛︎⬛︎⬛︎ではない。

 

 だから「同じ」に固執する必要はない。

 

 琴乃はそんな些細な事、気にしない。

 

 だから……笑え

 

 いつものように、無邪気の仮面を貼り付けろ。

 

「その大事そうに抱えてるやつ、ちょうだいよ」

 

 早く

 

「そしたらもうやめたげるよ。たぶん」

 

 隠せ

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎を

 

 

「無視してんじゃねぇよ!」

 

「うぐっ」

 

 ほら、⬛︎⬛︎⬛︎のままだからこうなっちゃう。

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎を否定しろ。

 

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎を殺せ。

 

 

 

 

 こんなやつを好きな人はいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「琴乃をいじめるなぁ!」

 

 

 

 ──あぁ

 

 

 来ないでほしかった。

 

 

 

 貴女にだけは⬛︎⬛︎⬛︎は見せたくなかった。

 

 

 

「だれ!」

 

 

「大丈夫? 琴乃」

 

 

 

 ────なのに、

 

 

 

 

 

「お……ねえ、ちゃん」

 

 

 

 少しだけ、嬉しい

 

 気がする。

 

 

 

 

「誰だか知らないけど邪魔しないでよ! 関係ないでしょ!」

 

 

「黙れ! ……琴乃、お家帰ろ?」

 

 

 その手を掴んでもいいのだろうか? 

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎でも、

 

 

「あんた騙されてんのよ! そいつはとんでもない性悪で女の子なのに女の子が好きな異常者なの!」

 

「そうよ! そいつは悪いやつなの!」

 

 

 

「もし、本当に琴乃がそんな子だったとしても、わたしは気にしない!」

 

 

 嗚咽が止まらない

 

 

「な、なんでよ!」

 

 

 

 

「欠点があっても! みんなと違っても! それも全部愛する!」

 

 

 

 

 

「それが人を好きになるってことだから!」

 

 

 

 

 

「わたしは琴乃を愛してるから!!」

 

 

 

 酷いマッチポンプだ。

 

 彼女を歪めたのはわたし。

 

 わたしのことを、

 

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎のことを受け入れてくれるのは当たり前だ。

 

 

 

 だけど、こんなこと言われたら、

 

 

 

 もう、彼女で遊べない

 

 

 遊びたくない

 

 

「ちっ、こいつも異常者かよ」

 

 

 

 一人の人間だと認識してしまった

 

 

 

「異常者は異常者同士仲良くしてろ」

 

 

 

 愛してしまった

 

 

 

 もう異常者と罵る声も気にならない

 

 

 

 貴女が愛してくれたから

 

 

 

 貴女が愛してくれるなら

 

 

 

 わたしは異常者でも構わない

 

 

 

 

「さぁ、帰ろ!」

 

 

 手を握る

 

 

「……うん!」

 

 

 何度も握ったその手は

 

 

 いつもよりずっと愛おしい。

 

 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

「お姉ちゃん、わたしのこと好きってほんと?」

 

「いや、えっと、あれは勢いで言っちゃったみたいな」

 

 さっきまであんなにかっこよかったのに、急にどもりだした。

 今はそんな仕草も愛おしくてたまらない。

 

「わたしのこと、好きじゃないの?」

 

「い、いや好き好き。大好き。あっでも家族愛ね! べ、別に琴乃に欲情とかしてないから!」

 

 不安そうに言えば慌てて否定してくれる。

 

 彼女ならわたしを愛してくれる。でも……

 

 まだ、わたしから本当のわたしを告白するのは怖い。

 

 だから、わたしの覚悟が出来るまで

 

 もっとわたしに釘付けにしてあげる。

 

 

「わたしもお姉ちゃんのこと大好き!」

 

「にゅわ」

 

 待っててね

 

 お姉ちゃん

 

 




キャラ崩壊とか言わないでね。
ノリで書いてるから多少は許してくれ。

一口人物紹介

「⬛︎⬛︎⬛︎」

琴乃の前世
その嗜好から異常者として扱われた。
そのせいでみんなと違うということを異常に嫌う。
無意識のうちに詩織とお揃いを揃えていた。
ロリコン=異常者
⬛︎⬛︎⬛︎≠ロリコン
つまり⬛︎⬛︎⬛︎≠異常者
という謎の理論で精神を保っていた。
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