狂って歪んで   作:むきむき

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トモダチ

 

「あ、あの西園寺さん!」

 

「なに?」

 

「どっか行きたいところある? ないならわたしの行きたいとこ行こうかなって思ってるんだけど……」

 

「坂村さんの行きたいところでいいよ」

 

「じゃあー、西園寺さんって甘いの好き? 新しいパフェのお店出来たから行きたいなーって思ってるんだー」

 

「わかった。あと琴乃でいい」

 

「うぇっ! じ、じゃあこ、琴乃……ちゃん」

 

「……ふふっ」

 

「あー! 今笑ったでしょ!」

 

「いや、照れすぎだし」

 

「もうっ! やめてよ! 恥ずかしいから!」

 

「ごめんて……ふふっ」

 

「そっちがそういう態度とるなら、さ……こ、琴乃ちゃんには罰ゲームとして今日一日わたしの言うこと聞いてもらおうかな〜」

 

「ふふっ、いいよ、なんでもしてあげる」

 

「えっ、ほ、ほんとに?」

 

「うん」

 

「うあ、えっと、その、じゃあ……ひ、陽菜乃って呼んでほしい……」

 

「陽菜乃、早くパフェ食べに行こ?」

 

「えへへ……うん!」

 

 これが健全な女子同士の会話です。

 

 小中と同年代はお姉ちゃんとしか話してなかったからなんか新鮮っすわ。

 

 いいなーこいつ。理想的な元気っ子じゃん。こういう子が友達に友情以外の感情をもち始めて戸惑うの琴乃大好き! ……と数年前のわたしなら言っていただろう。いや、そういうのが好きなのは変わらないが。どうしても、あの日からお姉ちゃん以外に興奮しないというか恋愛感情を持てないというか。

 

 まぁ、その……なんだ……

 存外、わたしは一途……らしい……

 

 いや! そうじゃなくて! 

 

 こいつはそういう感情抜きに接することができる奴だってことだ。

 

 ……前世含めて初めて友達といえる相手かもしれない。

 

 お姉ちゃん以外どうでもいいと、別に友達なんて要らないと思っていたが……ちょっと……うれしい。

 

 ほんとにちょっとだけどね! 

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 陽菜乃といっしょにパフェの店にきた。結構ちゃんとした店でメニューが多い。

 

 どれも美味しそうでどれにしようか迷う……なんてことはない。

 

「ストロベリー生チョコマシュマロパフェください」

 

「えと、フルーツパフェください」

 

 ストロベリー生チョコマシュマロパフェ……なんて魅力的な響きなんだ。これしかないだろう。この世にそんなものが存在していたとは……! 

 

 ウキウキでパフェができるまで席について待つこと数分。店員さんがこっちにきた。そろそろわたしたちの番だろう。

 

 さてと、お手並み拝見といこうか。このわたしを満足させるパフェを出せたら大したもんだ! さぁ、こい! ストロベリー生チョコマシュマロパフェ! 

 

「お待たせしました。こちらフルーツパフェです。ごゆっくりどうぞ」

 

 …………え? 

 

「わー! 美味しそー!」

 

 わたしのストロベリー生チョコマシュマロパフェは? 

 

「琴乃ちゃんのやつはおっきいからまだかかるっぽいね」

 

「そう……」

 

 わたしのストロベリー生チョコマシュマロパフェ…………

 

「いただきま〜す」

 

 あぁっ パフェが……

 

「ん〜 おいし〜」

 

 いいなぁ……なんかすごい美味しそうだ

 

 わたしも食べたいなぁ……

 

「そ、そんなに見られると食べにくいんだけど……」

 

「ごめん」

 

 はやく来ないかなぁ わたしのストロベリー生チョコマシュマロパフェ

 

「……ちょっと食べてみる?」

 

「……いいの?」

 

「まぁ、そんな悲しそうな顔されるよりかはね」

 

 はぁ? 

 

「そんな顔してない」

 

 ガキじゃねえんだからするわけないだろ。舐めやがって。

 

「じゃあこのパフェ要らないの?」

 

「……要らない」

 

「もう〜冗談だってば。ハイ、一口どうぞ!」

 

 差し出されたスプーンの先にはキウイとバニラアイスが乗っている。とっても美味しそうだ。とっても、うん。

 ……まあ、別にパフェがなかなか来なくて悲しそうな顔なんてしていないが、ここまでされたら食べないわけにはいかない。断ったら相手に失礼だしね。仕方なくだ、仕方なく。

 

「んむっ」

 

 スプーンとその先に乗った宝石のように綺麗なパフェを頬張る。

 

「どう? 美味しい?」

 

「……うん」

 

 パフェは美味しかった。

 

 わたしが甘いものが好きというのもある

 

 けどそれ以上に友達といっしょに食べたという事実がとても嬉しくて

 

 わたしにとって、特別な味がしたからかもしれない。

 

「ありがと!」

 

 思わず笑みが溢れる。

 

 この純粋な友情も悪くない気がした。

 

 

 ♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 小学生のときのあの事件から、琴乃はよりわたしにベッタリ引っ付くようになった。

 

 依存している……そう言ってもいいかもしれない。

 

 少し、心地良かった。

 

 好きな人に必要とされているというのは。

 

 それに、彼女は成長するにつれ、より美しく、より可憐になった。

 

 抱きついてきた時に感じる柔らかな感触

 

 隣を歩く度に香る彼女の香り

 

 そして……わたしにだけ見せる無邪気な笑み

 

 全てが愛おしくて、おかしくなってしまいそうだった。

 

 でも、その笑顔は……わたしが惚れ込んだ彼女の笑顔は曇らせたくはなかった。

 

 彼女には幸せに生きてほしかった。

 

 わたし以外の人とも関わりを持って、いろんな世界を見て、たくさん笑って欲しかった。

 

 例え、そのせいでわたしが必要とされなくなったとしても

 

 彼女が笑ってくれるならそれでいいと思えた。

 

 

 だから、わたし以外の人に笑みを浮かべる彼女を見て胸が苦しくなることはない。

 

 

 今わたしの胸が苦しいのは

 

 

 

 きっと冷たいパフェのせいだ。

 

 

 

 

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