自由にヤクキメてもいいって、幸せじゃない?   作:ふぃーあ

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風紀委員の大訓練(監修:夜久野ミコ)

 とりあえずどんなに聞いても足舐めの話が聞けなかったことを述べておく。残念で仕方ない……聞きたかった。

 

「……で! そこで変な縛られ方されてるのは美食研究会だな!?」

「足舐め……」

「美食研究会だな?」

「あ、うん。美食研究会だよぉ? たまたま上手くやったら行けた」

 

 イオリちゃんはその言葉に首をひねりつつ、とりあえず部下に連行を命じている。状況がどうあれ、まずは職務に忠実たれというのは彼女の好ましいところだと思う。この混沌の元でよくやるよねぇ……まあどうにも力不足感が否めないのだけれども。

 

「なんだか複雑な気持ちだ……」

「イオリちゃん、これは下心じゃなくて純粋な思いやりとして聞いて欲しいんだけどぉ……おねーさんがみっちり風紀委員会、扱いてやろっか?」

「……何を考えている?」

「おーっと辛辣ぅ……ヒナ抜きでも美食研究会くらいなら鎮圧できるスペックを風紀委員会に求めてみようかな、とか思ってるだけだよぉ。ヒナもそこら辺頭回ってないわけじゃないだろうけどぉ……集団には集団の訓練法があるんだよねぇ」

 

 イオリちゃんはアコちゃんや委員長と少し考えてみる、と言ってその場を離れ、職務に帰っていった。

 

 私はそっと救急医療部を呼んでからその場を離れた。

 

 忠実だけどちょっと抜けてるよねぇあの子……。

 

 

 

「風紀委員に訓練をつけてくれると、イオリから聞いた」

 

 ヒナちゃんが開口一番にそう言う。ここは風紀委員会の執務室であり、私は後日の連絡で風紀委員に呼び出されていた。

 

「本当?」

「もちろんだよぉ、ヒナちゃん……君もそろそろ気になってきてるんだろう? 風紀委員がワンマンすぎること。だからおねーさんが一肌二肌脱いで、どころか全裸になってあげようかなって」

「……何をする気なの?」

 

 見定める眼に射抜かれる。さすがにゲヘナ最強は威圧感も違うねぇ……

 

「んんっ、その視線貫かれるのゾクゾクしちゃうなぁ……ちょっと胸の内のマゾが目覚めそう」

「早く話してもらっていい?」

「おっとごめんねぇ。訓練の内容としては私の教えられる全てになるけれど……銃の撃ち方とかそんなところはやらない。基本の体捌きは実践で勝手に形態化されるものだ、というのが私の理屈でね」

 

 私はプランニングをヒナに伝えていき、ヒナはそれについて質問をし、それに対して答える……そんな時間が少し続いた後、ヒナは頷いた。

 

「うんまあ、ミコが教官、というのは不安ではあるけれど……私もつけばいい。よろしく頼める?」

「任せておいてね、期待は裏切らないから」

 

 と、いうわけで。早速風紀委員たちを掻き集める。グラウンドの一角に集合した風紀委員の前で、ヒナが訓練をこれから一時的に外部教官の手に委託する旨を伝えるのをぼーっと聞き流し、それでは自己紹介をしてほしい、とヒナに言われて前に進む。

 

「風紀委員諸氏、夜久野ミコだ。本日付で貴女らの教官となり、短い間ではあるものの君たち全員を強くしてみせる。団体としての風紀委員も、個人としての君たちも強くするための訓練であり、本訓練の最たる要旨は空崎委員長抜きの風紀委員の戦力増強であることを覚えておいてもらいたい」

「……アコちゃん、アレ誰?」

「私も今疑っているところなんです……誰なんでしょう、アレ」

 

 イオリちゃんもアコちゃんもひどいなぁ……私が真面目にやるだけでこれだぜ? 

 

「ハッキリ言う。貴女ら風紀委員は今著しく力を欠いている。その現状を憂うゲヘナ生もまた、少なくともここに2人いる。私と、空崎委員長だ。故にこそ、風紀委員から委員長と行政官のふたつの柱が失われた時のことを思い、この度訓練教官を引き受けた」

 

 ざわざわ、とし始めた瞬間。ここだ、声を張り上げろ。マウントを取れ。立場の上下を分からせろ。

 

発言を許可した覚えは無い!! 

「「……ッ!」」

「ただいまより訓練を開始するが、返答は全て短く、大きく行うこと! 報告を要求することがあるが、全て簡潔にとりまとめ、報告を行え! 報告時はまず起きたことの結果のみを報告! 次に過程を述べよ! なお、ただいまより訓練対象者全体の呼称を『貴官』とする! 返答!!」

「「「はいっ!」」」

「声を張れ! 貴官らは誇り高くこの混沌の中に秩序を求めんとする異端! 混沌の坩堝に弱々しい意思は無用! この訓練を完全に修了すれば貴官らはゲヘナに秩序をもたらせる! そのくらいの心持ちで挑め!! 言い忘れていたが、本訓練中は貴官らの返答は『了解』のみとする! では、返答!」

「「「了解!」」」

 

 かくして訓練が始まる。私の訓練は原則として、対応力と行動力を育てる訓練となる。だから、まずは。

 

「では第一に、10人を1単位としてグループを構築、整列せよ! 本日は2人余るため余った者は私のところまで出るように! 時間は20秒以内! 開始!」

 

 ザザッと10人でグループを構築していく風紀委員。さすがに集団行動はよく教えているのか、手早く組み上がる。2人の風紀委員が前に出てきて、これでOK。

 

「よし! では、グループ先頭、三番目の者、七番目の者でペアを組み、残りは1チームとして3vs7での人数偏重戦闘訓練を行う! 三人側はより長く生き残り、七人側は素早くペアを制圧することを目標とせよ!」

「教官! 発言の許可を!」

「許可する! 名乗ってから発言せよ!」

「風紀委員一年、裁間です! 何故このような人数差での戦闘を行うのですか? お教えいただけると訓練に対する取り組み方への理解に繋がります!」

 

 元気溢れる良い声で、私に質問をぶつけてくる風紀委員の少女に思ったより未来は明るいのかもしれないなぁ、とか思いながら、私は答える前に褒めておく。私のスタンスは基本的にムチを振るう分、褒めておくところは褒めないと反感を買うのだ。

 

「裁間、良い質問の仕方だ。完璧と言っても良い。貴官らもなにかあれば彼女のように質問を行うように。人数差戦闘の意義だがこれは戦場で平等な状態での戦闘が行われないことに起因する」

 

 戦闘というのはゲヘナではよーいドンではスタートしない。基本的に、秩序維持側というのは、混沌サイドの理不尽な始め方に対応する必要があり、可能な限り素早く鎮圧する必要があるのだ。

 

 初手で多くの味方を失ってこちらが少数で対応しなくてはならないかもしれないことはきっとある。優勢を取っても規則違反者を素早く鎮圧できなければその分だけ被害が広がる故に、手早く取り押さえる必要があるだろうことは想像出来る。

 

 だから、3-7という人数での戦闘なのだと懇切丁寧に教えてやると、彼女は一礼した。

 

「よし、残りはいないね? では第1グループから前に出て開始!残りの2人。君たちにはちょっと大変な訓練になるが、第3グループ終了後に……」

 

 少しスパイスを加えねば、訓練というのはダレるのだと私は知っている。3戦目が終わり、私の指示で各々の意見を交換しているタイミングで、煙幕が投げ込まれる。

 

「……ッ! 煙幕弾! 各員背中合わせ! 周囲警戒!」

 

 声を張り上げたのは、第2グループのリーダーを務めていた少女。その言葉に落ち着きを取り戻したか、各々が陣形を組み上げていくのを、2人の少女が模擬弾で銃撃していく。

 

 煙幕が晴れたのを見計らい、号令。

 

「全員傾注! ……今のは奇襲訓練だ。余ってしまった2人に私が手ずから方策を教え、やらせた。さて、素直に手を挙げ申告せよ。今の状態で第2グループのリーダーの令までに動けなかったもの!」

 

 手が上がる、上がる。申し訳なさげな手の上げ方だ。それに私はあえての叱咤。

 

「仕方ない、と正当化することは簡単。だから、私はあえてそれをしないぞ、貴官らは風紀を正す者。この程度で2人に何十人もが翻弄されていてはならない! 様々な状況、様々な状態から対応する判断能力を個々人が身につけ、適切に発揮してこそこのゲヘナで風紀を広める1歩が踏み出せる! いいな!?」

「「「了解!!」」」

「以後、様々な方策、手段でもって午前中はこの2人。午後はチームを組み直し、別のふたりにも奇襲訓練を行ってもらう。常に気を抜くことなく、精神を張り詰めさせろ! いいな!!」

 

 その訓練を眺めていた幹部たちは、レベルの高い訓練に驚くと共に、どこでこの訓練が効果的だと学んだのかという気持ちが高まっていた。その疑問が顔に出るタイプのイオリちゃんに、遠くからステップして距離をグイッと詰める。意味はあんまりない。

 

「うおおっ!?」

「さて、幹部組は幹部組で別の訓練があるんだぁ……ヒナちゃん、これあげるから向こう見といてもらっていい?」

「え? あぁ……分かったわ。このプログラム通りに進めるのね?」

「そうだねぇ。あと、定期的に私が仕込んだ2人の襲撃があるけどぉ……それは驚かないで、手を出さないでねぇ。奇襲の内容は都度実行前に教官……ヒナちゃんに報告するルールだから、その内容を聞いておいてねぇ」

 

 ヒナを風紀委員の訓練の方に送ると、悠然と私は振り返ってイオリちゃんの方に目をやる。

 

「じゃ、イオリちゃん。君は私のスタンスとかなり近いからぁ……仕込んであげるよぉ。強くなりたいでしょ? 辛いだろうけどぉ……頑張れるかなぁ?」

「……分かった。上等だ……絶対モノにしてやる」

「チナツちゃん、彼女を救護できる準備をしてねぇ。あと、アコちゃんは悪いんだけど映像撮影機材とかで記録残して欲しいねぇ」

 

 二人は頷いて各々に用意を進める。イオリがスナイパーライフルを構え、その場で飛び跳ねるのを見て、愛銃(R-18G)を端に立てかける。そして、今日ずっと杖代わりにしていたスナイパーライフル。

 

美食研究会の結局下の口まで美食か確かめられなかった彼女(ハルナ)に聞いて用立ててもらった、彼女の愛銃《アイディール》の原型となる一丁。それをオリジナルにカスタマイズしたスナイパーライフル。

 

 銘はこう名付けさせてもらった。

 

「《ディープ・オンスロート》……一昨日組んだ割には手に馴染むねぇ」

「名前何とかならなかったのか? そのデカブツといい、それといい……」

「何を想像してるんだい? 深い虐殺、それ以上の意味は無い!」

「……さすがに嘘だよなそれは!!」

「んふふ……ふふふっ」

 

 しょーもない話で二人の準備完了を待つ。イオリちゃんには見せてやらないといけない。スピード型スナイパーの戦い方を……あと私の言葉は全部今のチナツみたいに呆れた顔して放置しとけばいいことも。

 

あでもイオリちゃんに放置プレイされるならそれはそれで体ビクビクしちゃう、最高かな?風紀委員ってやっぱえっちの塊だよね。

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