自由にヤクキメてもいいって、幸せじゃない?   作:ふぃーあ

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最速 VS 最強

「さあ……じゃ、改めてぇ……仕切り直しぃ?」

「キメておいて仕切り直しとは太いわね。それでも構わないけれど……なにか、隠しているわよね。まだ使う気は無いのかしら?」

 

 最初の攻防を切り抜けた私に、ヒナちゃんはそう言ってきた。バレてる……見せてないし、見せる予定もなかったんだけどぉ? 

 

 ま、これだけ太い銃で普通のライフル、って思うわけもないかぁ、なんて。

 

「そうだよぉ、とっておきを隠してる……ま、ヒナちゃんならいけるよね。……耐えてよ?」

「出し惜しみして私が勝つのは暴れ足りないし気に食わない……全力で来て、と何回でも言わせてもらうわ。風紀委員としてではなく、一人のゲヘナに暮らす者として……全力で、全力を超えるから」

 

 ヒナちゃんのむっつりとした無表情が、口角がそれとなく上がった笑みへと変わる。笑顔とは本来攻撃的な表情だ、だとかなんとか、よく言う話だが……やっぱり、ヒナちゃんの笑顔は最高だ。如何なる笑みであろうともね。

 

「大概ヒナちゃんもキマってるよねぇ……じゃ、いくよぉ? イッちゃうよぉ……!? ふひっ、くひひっ、あはっはっはっははははぁ!!」

 

 銃身に密かに取り付けられた、小さな紐と紐の先端に着いた取っ手を握り締め、勢い良く引いてやれば! 

 

 ドルルルルンッ!!!!! とエンジンが唸る轟音が鳴り響き、誰もが私の手元を反射的に見ているのが分かる! 

 

「あーーーっはははははは!!! 全力のご開帳だ! 恐れおののき踵を返して元の居場所へ引き返すなら今だよ空崎ィ!」

「驚いた……とんでもない隠し玉ね。まさか、チェーンソーを搭載したライフル、なんて怪物を用意してくるなんて!」

 

 対戦車用チェーンソー搭載大型ライフル《R-18G》。銃身の半分から先、中央を貫くように、チェーンソーが搭載され、ギミック作動により銃口を有したチェーンソーへとその姿を変える怪物マシンが、その全容を詳らかに世界へ露出したのを私は確かに見届けた。ここからは全力、それは向こうも! 

 

「なら……私も、本気で行く!」

 

 バサッと、腰から伸びた翼を広げてヒナちゃんは愛銃を構え……

 

「早いけれど、これで終わらせるつもりで……!!」

 

 紫の色を有した、扇状に解き放たれそのまま連射され層になった弾丸。マシンガンなのになんで扇状に5発同時に出てるんだ、相変わらず訳の分からないことをやるよねぇ!? 

 

「あっ……はぁぁぁぁっ! 気持ちイイねぇ!!」

 

 だから、訳の分からないことで対抗する! チェーンソーを横薙ぎに、銃は別口にセットしたトリガーを引き続け、回転。空中でいくつもの火花が散り、落ちる。軽く回転してからしゃがみこみ、次は地面にチェーンソーを突き立てる。

 

 本来、チェーンソーはこういうこと……地面に突き立てるなど、乱雑な扱いをすると破損する脆いものではあるのだが、この銃は事前にそういう扱いしかしない、という私の断言により専用にチューニングされ、特殊な加工をいくつも施して、創られているので問題は無い。主にミレニアムの開発に携わったロマン好きのとある生徒には無理を言ったが、報酬は弾んだので問題はなかろう。

 

「礫で迎撃ってねぇっ!!」

「なるほど……なら、これで、どう!?」

 

 瞬間、次は単発の物凄まじい勢いの紫弾が飛来する。

 

「本気の愛のムチってワケ!? 足りないよぉヒナちゃん!! 本気を出すんだろ!!?」

 

 横に一閃振り抜かれたチェーンソーで紫弾を両断し、ヒナの前まで飛び出す。

 

 ヒナちゃんが繰り出したハイキックを地につけた銃を支えに繰り出した回し蹴りで相殺。奇しくも先程の立場の逆転による再演、楽しくて仕方ない! 

 

「あはぁっ!!」

 

 どるんっ、と豪快な音を立てチェーンソーが宙を薙ぎ払い、ヒナがその身を縮めて頭上を通過させてから拳を振るう。

 

「甘い!」

「いーや!」

「なっ」

 

 相棒を振り抜く勢いのままに、腹部を狙ったであろうアッパーをさらに回し蹴りで対応。重量物を振り回すということは、遠心力を使えば宙を舞えるということだ。

 

「なんて無茶を……!」

「まだまだ行くよヒナ! 君に距離取れるわけないからねぇ!!」

「それが一番面倒……!」

 

 ヒナがころり、と投げ込んだのは手榴弾。

 

「甘えてんのかヒナちゃぁん!!」

 

 即座に蹴り飛ばし、そして。

 

「それに……何回やられたと思ってるのかしら!」

 

 手にしたデストロイヤーを突き出すことで点で弾き返したヒナの絶技に、わあわあとめいめいに叫んでいた観客たちのボルテージが跳ね上がる。しかし、それでも甘い! 

 

「スラッシュアンドシューット!! あっはははは!!」

 

 それも、読んでいる! だからエイムを置いておいて、撃ち抜く! 

 

「なっ」

「チャンス……!」

 

 爆発し、煙に包まれた場を躊躇いなく突貫する私。

 

「なんてね……! 歯を食いしばりなさい!!」

「……!!」

 

 向こうから、ヒナが飛び込んできていた。最初から、この状態を作るつもりだったのだ、と理解する。アッパーだ、来る、喰らえば終わる、避けられない、防御も間に合わない、終わりたくない、こんなに楽しい時間を誰にも見られずに終わらせてたまるか。

 

 答えてくれメメントラル、限界の限界まで連れていってくれ!! 

 

「おおおおおおおおおおっ!!」

 

 傍から見ていた者たちはそれに気付いた。彼女たちが砂煙で戦うが故に見えなくなった場で、唐突に光りかがやきだしたミコのヘイローに。

 

「はぁっ!!」

「耐える!!!」

 

 結論! 避けられない、防御不可、なら身体のリソースを瞬発的に身体に回す! 頭の上のヘイローは私たちに力をくれる、固くなれと思えばある程度は固くなれる! 

 

 砂煙が晴れる。腹に拳をめり込ませるヒナ、それを狂気的な笑みで受け止めるミコ。

 

「仕留めきれないっ!」

「無粋な煙も晴れたぁ! カタを付ける!!」

 

 同時にステップした。ヒナちゃんと、私で、交錯するように前へ。距離が、大きく離れた。

 

 ……読みを、外された? 

 

「見てたわ、あなたとイオリの戦い。未来視はもう通用しない」

「……あは、あははは! はーっははははっ!! 楽しい! 本当に楽しいことをしてくれるよねぇヒナちゃぁん!! 最高だ! 最高だよ!! だから……私が勝つ。ごめんね……終わりにする」

 

 絶対の未来視を打ち砕かれ、なお笑う。問題ない。初めて、これを使う。なら破れるはずもない。

 

「奥の手だ、ヒナちゃん」

 

 奥義開帳、ってガラじゃあないけどぉ……楽しいしぃ! やっちゃおっか! 腰のポーチから……! 

 

「……フラッシュバン!?」

 

 全力の投擲、1.3秒後に撃ち抜いて起爆。目を閉じて撃ち抜く離れ技、誰もが絶句するのが分かる一瞬の静寂の中で、そのままチェーンソーを轟かせ前進。

 

「奥義ッ!!!」

「〜〜〜ッ!!!」

 

 見えずとも間違いなく迫り来るチェーンソーの範囲から逃れ出ようとするヒナの反射的な後退に対して、轟かせたチェーンソーを全力で……

 

「こんなもん対人で使えるかよ物理学の叡智キーック!!!」

「ぐぅぅぅうっ!!?」

 

 投げ捨ててヒナへ飛び蹴りを叩き込んだ。速度×重さは破壊力である。物理学の叡智が詰まった渾身の飛び蹴りは、ヒナの矮躯の、その胴体にぶち当たり。ヒナは勢いのままに転がっていった。

 

「結局最後にものを言うのは初見殺しのスタック、ってね!!」

 

 高らかに笑う。最強とは呼べずとも、一度の勝ちをもぎ取る刃として。

 

 監禁中暇すぎて考えに考えたヒナ対策が全て実を結んだのを、大いに笑っているなどとは誰も思わないらしかった。

 

 

 

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