ビナーに向き直ったと同時に駆け出す
現状周囲に障害物はない
だから現在俺の耐久は自身の機動力、つまりはどれだけ相手の攻撃を避けられるかに依存している
そしてそれもビナーが広範囲の攻撃を多用して来る以上
回避できる可能性も低くなる
ならどうするか
「突っ込んでぶん殴るしかねぇよなぁ!クソッタレ!」
実に安直な思考だが近づけばクソつよビームも当たらんし俺の射程距離にも入る!
なんとしてでも俺に注目させユメ先輩を逃す!
凄まじい速度とそれによって巻き上げられた砂と共に接近して来るユクエに対しビナーが取った行動は点での攻撃による小手調べ。普通では回避出来ないであろう攻撃、だがそれは…
「それは悪手だろ!クソ蛇ィ!」
持ち前の機動力で避けれる!おそらく今後は来ないデレ行動!
チャンスだッ!短期決戦!ここで叩く!
攻撃を掻い潜りながらビナーに接近しその巨大に飛び乗る
ビナーの体は蛇の様に唸る、しかしその為体の構造にはどうしても可動域確保のための隙間が空く、そこをそこを掴みパルクールの様にビナーの背中を移動する
「狙うなら頭ぁ!頭蓋かち割ってやるよぉ!」
咄嗟にビナーがミサイルを発射しようとするが遅い、渾身の力を込め弓の様に体を引き絞りそして—————
「死ねやぁ!」
渾身の力を込めビナーの頭を殴りつける、ガンッ!と金属が軋む様な音がする、しかしその攻撃は装甲を若干へこませる
「カッッッた!?ふざけんっ!?マズッ!」
ビナーがユクエに対し取った行動はミサイルによる自爆攻撃
咄嗟に離脱しようとしたが遅く、かなりのダメージを負い左腕が吹っ飛ぶ
灼熱が体を襲い、身を焼いていく。爆破が粘土でも千切るかの様に熱に焼けた左腕を千切飛ばした
「がぁぁぉぁぁ!!!くそがッッ!!」
クッッソいってぇ!だがまだマシだ、両足はある!まだ戦える!
治せ!治せ!
実のところユクエのパワーと再生力は
具体的に言うなら酷く中途半端になる
超人の様なパワーはなく一般的なギヴォトス人の様な身体能力と何十分間かけてようやく四肢の再生が終わる。その様な肉体へ成り下がる。
だから戦闘時は力の全てを身体強化へ向け、負傷時には再生に力を回す必要があるのだ、そうする事で超人的な再生力とパワーを両立している
左腕を再生させきりビナーを睨みつける
先ほどの渾身の打撃でも決定打にはなり得ないことが判明した、それはつまりユクエではビナーにほぼ傷をつけられない事を意味する
ある部位を除き
装甲越しの攻撃はダメだ、なら狙うは眼球…!
ビナーは己の敵を観察していた
先ほどの人間とは明らかに違う、地面が砂であるにも関わらず攻撃を避け接近する機動力
特出すべきは瞬く間に負傷した体が治っていくという驚異的な再生能力、そしてあまりにも脆いその耐久性……それを察知したビナーが取った行動は…
ビナーの胴体部分とでも言うべき所に穴が開く、それは当たれば勝ちとでも言いたいかの様に大量に開いていた。
その行動をユクエは知っている
ミサイルの一斉掃射、ユクエの耐久力をビナーが考慮しただただ当てることにのみ特化させた面による攻撃である
!!
クソ行動がきやがった!!モロに当たりゃ全身吹っ飛ぶ!だが下手に動けば対応されるだけ………、発射タイミングをよく見ろ…
俺の機動力かつこの距離なら躱せる!
…………今!
ビナーの背中からミサイル発射される。その次に爆風範囲から逃れようとするユクエは前に前進
目論見どおりミサイルはユクエの後方で爆発したしかし…
ユクエに対しビナーは鞭の様に体を唸らせる
「あん?なにを…まさか!」
ビナーな巨大な体によって砂による波が形成され前進しているユクエに襲いかかる
「ミサイルは陽動かよ!?頭使いやがって!」
元プレイヤーであるが故にユクエには固定概念がある、ゲーム以外の攻撃はしてこないだろうと言う。しかしここはもはや現実となった、それは転生者たるユクエにとって致命的な弱点となり得る
そうこうしている間にビナーの姿さえ見えなくなるほどの砂の波はユクエを飲みこむ
砂の波はゲーム内でもかなりのダメージ量だった。それを考慮し力の配分を再生へ回していたが…しかし想定していたダメージはなく身動きが取れない程度に収まっていた
クソッ!早くしないと追撃が…
まて、ビナーは何処だ?
砂に潜ったのか…?それに俺が無傷?ゲームではダメージがあったはず…?
立ち上がり、辺りを見渡しても先程まであったビナーの姿は何処にもなくただ一面の砂漠だけが広がっていた
何処に消えた?不意打ちか?
だとしてもゲームでは砂からの不意打ちなんて…
その思考がユクエにとって命取りとなる
ビナーは貯めている、わざわざ先ほどの砂津波の威力を低下させる様にしたのも、その代わりに次の行動に素早く移動できるようにしたのも、この為だ。ユクエの場所を固定するための、必殺を必中にする為の…
敵対者の再生能力を鑑みて一撃で相手を消し炭にするために…
それは回避不可の砂中からによる…
アツィルトの光
光が、大地へ、空へと立ち上る
全てを消し飛ばさんとする光線はユクエを文字通り消し炭にした
しかし対象を捉えていない事が仇となった
砂中から放った事による威力減少と標準のズレ、体全てを消すには至らず、ユクエの下半身を消し炭にするだけにとどまった
それをくらった当人は何が起きたか把握できないでいた
視界が、地面が、世界が迫ってくる。倒れそうになっている事を理解し足を踏み出そうとする——————なにも出来ず地面に転がる
なにが起きた?
たしか砂の中から強烈に光る何がでて、咄嗟に回避しようとして…それで…
なんだ?なんで俺は転んでる?早く立たないッ!?
「がぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」
熱い、痛い、動けない
内臓が露出し体の一部は炭化していて最早人間の体とは思えないほど黒ずんでいる
辺りには血は流れていない、血管を焼き切り血を塞いでいるからだ。周りにあるのは砂とあまりの高温によりガラス化した己を貫いた跡だけだ
クソクソクソクソ痛い痛い痛い痛い!!
やばいやばいやばい!
機動力が死んだ!治せ治せ治せ治せ治せ!
片足だけでもいい、追撃が!
死ぬ!死ねない!
砂の中から姿を表したビナーの顔あたりは砂の中から打った影響か焦げていた、しかしそんな事は気にも止めず確実に相手を排除するため攻撃を再開する
マズイマズイ!死ねない死ねない死ねない!!俺は!まだッ!
どうにか…どうにか!死っ…
危機迫るユクエの頭に走馬灯の様に前世の記憶が再生される
それは、まるで映画のフィルムの一部分だけ切り取った様な光景だった
特に何か特別な事が出来るような人ではなかった
ただどこにでもいる様なインドア派でゲームやアニメ好きなただの一般人だった
あぁそうだった、アニメとかMAD系のやつも好きだった
名言集とかよく見てたし…
およそ数十年前の思い出、それが脳内に溢れ出すなかでも特に印象に残ったのは……
なんだったけなぁ〜そう!
化物語とか進撃とか呪術とかよく見てたな!
名言とか結構あったよなぁ…どんなやつだったか…
走馬灯とは一説では自身に危機が迫った時その危機を回避する為に脳が働いた結果発生するものであるとされている
本能は、脳は、心は、体は、理解していた
———足りないのは覚悟だ
何かを変えることのできる人間がいるとすれば、
大事なものを捨てることができる人だ、
化け物をもしのぐ必要にせまられたのなら…
勝つためのヒントをあげよう
肉体は変わらない、ならば変わるのは——————
確か………
"人間性をも捨て去ることができる人のことだ。"
"人間である事を諦めろ"
………………
なるほどね。
納得と理解、疑問が晴れた時の様な、もはや清々しい様な気持ちの中で
何かが崩れる音がした