TS聖女は理想の『聖女』を演じたかった   作:ほうき星

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13. 水着回をしたかったと供述しており

 

 例の聖女誘拐事件から少しばかり日が経った。

 俺はその事件の影響で街へ行くのも禁止されてしまったせいで暫く囚われの聖女になってる。

 平和になったからって油断してたわ。

 

 残り一年と少しぐらいの命しかない聖女なんて誘拐しても残念な結果になるだろうけどな! 

 だから暇で仕方がないのだ。

 

 いつものように教会内をうろうろ。

 すると、とある集団が目に入る。

 後輩たちが談笑に興じている中、見知った人影を見つけたのもありそちらへと足を運ぶ。

 

 

「こんにちわ」

「あっ聖女さま……!」

「この間はアイスありがとうございますー!」

 

 薄紅色の髪に黄土色の髪をした小さなシスター。

 いつぞかにアイスを贈った後輩の女の子たちだ。

 たしか……名前は──。

 

「リランさんと、メーシュさんでしたよね? あの時のアイスはお気に召しましたか?」

 

 優しく微笑むと薄紅色のメーシュは驚いたように表情を変えた。

 

「名前、覚えててくれたんですか……!?」

「じゃあ私達、もう聖女さまと友達(マブ)って事ー!?」

「こ、こら……リラン……聖女さまに失礼でしょ!」

 

 天真爛漫に喜ぶリランはとても活発で元気がいい。

 それを抑えるようにメーシュは控えめに袖を引っ張る。

 この二人は実のところ姉妹だという。

 仲良さそうでなにより。

 全てではないが俺はある程度シスターの顔と名前は頭にはいってる。まあ、前世はよく名前付きモブNPCの名前でも覚えてたしな。ここでは意志ある人だけど。

 

「ほら、言った通りだったじゃん!」

「嘘、リランの妄想じゃなかったの……!?」

 

 二人の輪に入っていたもう一人のシスターも驚いたように俺を見ていた。

 初めてこんな近くで見た……と言葉を漏らしているのを俺は聞き逃さない。

 寮生の方には滅多に行かないもんな……。その意見は仕方ない。

 

「あっ、無礼をお許し下さい……!」

「そんなに畏まらなくても……」

 

 リランとメーシュともう一人、黒髪美少女のシスターが頭を下げる。

 

 聞けばどうやらリランは聖女である俺と知り合ったのを自慢気に言いまわっていたらしい。彼女らからすれば国の英雄である俺と近付ける事自体がレアなんだとか。

 これもいい機会だと思い俺はそのまま彼女たちの輪に入る。

 若い見習いシスターの輪にお邪魔するお淑やか系TS美少女の俺。

 まあ、年齢を言えばキツイんだろうけど。

 TS娘は、ほら。永遠の美少女! だからさぁ!? 

 

 女子の輪に挟まる男性はご法度だという意見もあるけど、俺はTS娘だしセーフだよね。

 最近は刺激が無かったからね……? 

 

「それにしても聖女さま、相変わらず涼しい顔で尊敬しますー」

 

 そう言いながらパタパタと裾を仰ぐリラン。

 ロリコンではないのだけど、白い太腿がなんとも健康でいいね! 

 んー、でも確かに夏本番になったのもあり暑さは厳しい。

 エアコンなんてものないし、氷魔法で冷やすにしてもこの広さだし効率が悪い。

 またアイス食べる? 

 

「こんなに暑いと海なんて行きたくなりますよね」

「あっ、海水浴! 私、海見たことない!」

 

 このオムファロスは内陸の方にある。

 だから川や湖などは比較的珍しくないのだが、海というものは遠く離れている。だから本の中にある絵なんかでしか見たことが無いという人は多いだろう。

 そもそも戦争中は海の魔物だって出没していて泳ぐなんて自殺行為に等しかった。

 

 旅をする勇者パーティーの俺は何度か見たけれど。

 前世とあまり変わらなくて海は青、時々魔物が出る。

 だが、今は随分と駆逐されて海水浴に行く人も増えたらしいね。

 

 ここで俺は閃いた。

 水着回、しちゃいますか!? 

 

 ──水着回。

 それはアニメやゲーム内イベントなどで頻出するイベントである。

 女の子が肌の露出を広げて眩しい太陽の下、キャッキャと遊ぶ……。

 男性諸君ならこの響きに高揚感を感じないだろうか……? 

 

「海……いいですね。幸い、私は旅の途中で比較的安全なビーチも知っていますし」

 

「わっ、わぁ……」

 

 メーシュ、そのなんとも言えない表情はなんだい。

 まるでリランに餌を与えたなって表情だね??? 

 今更だけどリランとメーシュの性格は正反対だな。

 

「聖女さまが連れて行ってくれるんですかー!?」

 

「……!!」

 

 まるで光明を見出したかのようにメーシュ以外の瞳に期待が灯る。

 言えない。

 目の保養に水着回が見たいだなんて言えない……! 

 

「え、えぇ……。少し距離がありますが、私の転移でなら許容範囲内ですね」

「じゃあ、友達に聖女さまが海に連れて行ってくれるって言っても……!?」

「え、っと……そんなに多くなければ」

 

 前のめりになり俺の目の前でキラキラした目を見開く。

 メーシュは何故かため息をついている。

 こうなると予見していたのだろう。

 だ、大丈夫。見習いシスターはそんなに多くない。

 俺ならやれる! 水着回の為に! 

 

「じゃあ、日程決めて──あ、水着も買わなきゃですねー! それから声かける人を……」

 

 一人はしゃぐリラン。

 他は聖女である俺の前では遠慮しがちにしているのがわかる。そんなにビクビクしなくてもいいのに。

 

「──水着が、どうかしましたか?」

 

 突き刺すような声が輪に割り込んでくる。

 凛とした表情で俺達の側で聞いていたマデリーンだった。

 

「ぐへ……いつからそこに」

「アルジェ様、私を甘く見てもらっては困ります」

 

 鋭い眼光に睨まれる俺は思わず素の言葉が漏れてしまう。

 今日は別行動でマデリーンを侍らしていなかった。

 だから俺がどこに居るかはわからなかった筈なのに。

 そもそも最近はルシアンのほうも忙しいらしくマデリーンがよく付いてくるのだ。

 半分ぐらいは外出禁止された俺の監視だと思う。

 ルシアンは俺に甘いから……と皆が知っているのだろう。

 くっ、なぜバレた。

 ルシアンだったら幼馴染のよしみで見逃してくれるのに! 

 

「淑女たるもの、肌の露出は控えるべきです。そもそも、アルジェ様は外出禁止の身……また主教様に怒られますよ」

「うぐぅ……!」

 

「そうだったんですか……?」

 

 ちらりとメーシュが不安そうな視線を向けてくる。

 マデリーンが後輩たちの前で俺が誘拐されたと暴露するもんだからみるみるうちにその表情が曇っていく。

 心配する声が満場一致となった結果、凄く申し訳ない気持ちになる。

 ああっ! そんなイメージが崩れていくような暴露しないで! 

 せっかくの理想的なアルジェで接してたのに! 

 

 水着回、したかっ……た……。

 

 

 

 ──いや、少し待って欲しい。

 水着で無いならいいのでは? 

 果たしてそれは水着回と呼べるかはさておき。

 

「……マデリーンは肌の露出が多くなければいいんですね?」

「そこは……確かにそうですが」

「そして、私が外出と見なされなければよろしいんですよね?」

「……アルジェ様、何か良からぬ事を考えていますね?」

 

 失敬な! これは下心なしの善意だよ! 

 

「海水浴とまではいきませんが、簡易的な避暑地を作って遊ぶぐらいなら出来るでしょう」

 

 つまり、選択肢が無い訳じゃない。

 前世は何も夏の風物詩は海だけじゃなかった。

 とりあえずは、だ。

 すこーし大きめの子供用プールでも作ってしまえばいい。

 何も本格的なプールで泳ぐつもりはない。

 ほんの少し水遊びが出来る程度でいいのだ。

 

 水着の美少女を拝めないのは残念だけど、この暑さを紛らわせて彼女らに少しの思い出を提供するくらいは出来るはずだ。

 場所は……そうだな。

 俺の屋敷の庭なんて広くていいんじゃないだろうか。

 無駄にデカいそこに子供用の水遊びスペースぐらいなら余裕で入るはずだ。

 

「シスター・マデリーン! お願い! 聖女さまのお屋敷で遊ばせてー!」

 

 その提案に即答で乗ったリラン。

 まだ子供の彼女は少しでも楽しい事には目が無いのだろう。

 

「……はぁ。一日だけですよ。過度な露出をしない、見習いとはいえそこはしっかりと弁えてると期待しています。そして提案者であるアルジェ様には彼女たちが危ない事をしないようにしっかり見守る事。それを約束出来るなら許可します」

 

 マデリーンはため息混じりに了承してくれた。

 リランは私に手を向けて、ハイタッチ。

 

 ともあれ、後輩たちへの少しばかりの息抜きの場を与える事になった。

 別に水着回じゃなくても思い出になるならそれでよし。

 

 こうしてなんとも無い日が過ぎ去って1週間後。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。見てくれはばっちりですね」

 

 今日の天候は快晴。

 じりじりと焼くように照らされた陽光の下、俺は設営の準備を終わらせていた。

 子供用のプール──それでも数人が入って遊ぶぐらいなら余裕のものをこしらえた。

 おまけに給水口をちょこっと細工して辺りにミストが噴出するようにしておく。

 

 これだけでもこの場は温度が下がることだろう。

 約束の時間までに準備できてよかった。

 

「最初はどうかと思いましたが、なかなかよく出来たんじゃないですか?」

 

 そう言うのは庭に椅子やら日除け付きのテーブルなんかを設営をしてくれていたルシアンである。

 俺は別に水に濡れる予定はないので、こうして優雅に座って傍観するつもりだ。

 だから夏服である。

 まあ濡れてもいい服装で来るようにと言ってあるとはいえ水着でくる子はいないだろう。

 マデリーンは用事があるみたいで提案者兼保護者役は俺が任された。

 

「アルジェ様ー! ご来客ですー!」

 

 屋敷の入口から、我がメイドの一人ケイトリーが声を上げて呼んでくる。

 ああ、そろそろ子どもたちが来た頃かな? 

 俺はルシアンに後のことを任せ、門のほうへと向かう。

 

 

 ──が、見えたのは子どもたちの姿ではなかった。

 

 黒髪ポニテを揺らし、俺へと手を振る少女。

 笑顔が眩しい元気っ子。シンシアがいた。

 

「元気しとったァー!? アルジェ、遊びにきたでー」

「シンシア? なんとタイミングの悪い……いや、逆にいいタイミングですね」

 

 そう言いつつ歩みを進め──彼女の元へ到達する前に身体が何かに触れる。

 もにゅん。

 

 とそういう効果音が鳴りそうな感触だ。

 文字通りそれは俺の()()()()()()に訪れるものだが。

 それと同時にもごもごと我が双丘が揺れ動く。

 んっ、……ちょっとくすぐったい。

 

「もご、もが──ぷはっ! キサマ、今のわざとだろう!?」

「あら? いたんですかレスタリカ。小さすぎて見えませんでした」

「嘘を付くな! シンシアを見たあとボクの方を見たはずだろ!」

「さぁ? わかりませんね~」

 

 わざとらしく声を裏返し、再びもにゅもにゅと胸へと押し付ける。

 その都度彼は抗議の意思を示す。そのノリは昔とちっとも変わっていない。

 

「いやーちょうどここに向かってる道中でこいつと出会ってな? ついでだから一緒にアルジェの家に遊びにいこうーってなってん」

 

「ボクはノルつもりはなかった! だいたいなんだこの土地は! こんな坂道で馬車も使わせないとは。シンシアのような筋肉ダルマとボクを同列にしないで欲しいね!」

 

 ここまでの道で息一つ上げていないシンシアを指さして憤慨する少年。

 

 緑髪に気の強そうな目つき。

 小柄で身長なんて俺の胸元程度しかない。

 そして赤褐色の肌を持つショタ。

 

 俺とシンシアにも容赦なく文句を垂れる。

 勇者パーティーの『狩人』の称号を持つエルフのレスタリカと数ヶ月ぶりのやりとりをした。

 

曇らせの程度って

  • ほんのりカジュアル
  • 聖女が盛大に曇るやつ
  • 周囲だけ曇っていくやつ
  • もう全方位曇らせで
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